2019年01月22日

韓国との協議打ち切り:レーダー照射問題

 防衛省が、レーダーの探知音を公開するとともに、最終見解を発表した。
 探知音は、レーダー波を音声に変換したデータで、ビーという持続した音だ。
 探索レーダーであれば「ビ、ビ、ビ・・・」というパルス的な音声になる。
 だが、公開された音声は持続型のレーダーであり、これは火器管制レーダーがロックオンしたことの証拠となる。
 これは、韓国側が今月18日になって、「韓国の警備救難艦が捜索レーダーを発しており、それを日本側が誤認したのでは」と言い始めたため、それへの反証として公開されたものだ。
 日本の哨戒機が受信したのは、捜索レーダーではなく、明らかに火器管制レーダーであることが、素人でもはっきりわかる。

 ところが、韓国側はこの音声を「実態の分からない機械音」としてはねのけた。
 この音声を公開したことの意味をまったく理解していない。
 それとも、理解していないふりをしているのか。

 防衛省は、同時に最終見解として文書を公開した。
 その文書を読むと、いままでの協議の経緯と、韓国側がまったく真相解明に協力的ではないこと、それどころか主張が二転三転し、論点をずらし続け、とても話し合いで問題が解決できる状態ではないことが分かる。

 ここには、協議の様子を印象付ける文言が盛り込まれている。
 協議で韓国側が「脅威を受けたものが脅威と感じれば、それは脅威だ」とまったく客観性に欠ける主張を繰り返している、というくだりだ。
 協議に臨む日本側の担当者の脱力感が伝わってくるようだ。
 協議打ち切りもやむなし、との判断は実感として理解できる。

 今回公表された最終見解は、非常に冷静で論理的な文章で、分かりやすく納得感が高い。
 ところが、不安がある。
 このような客観的で理性的なメッセージは韓国国民には届かない。
 これは、韓国国民へではなく、日本人と世界世論へのメッセージなのだろう。

 韓国側の対応には終始驚かされどおしだ。
 国家機関が信じられない反応をし続けている。
 だが、これが韓国流のケンカの手法なのかもしれない。
 口論で勝つには、いかに相手を黙らせるかがポイントとなる。
 そこでは、事実であるかどうかや論理的であるかどうかは関係ない。
 黙ってしまうと負けを認めたことになるので、とにかく言い返す。
 さらに、相手のトーンよりも上を行く口調で攻撃をする。
 言い返す言葉を失った方が負けということになる。
 今回の韓国側の反応は、まさにこのパターンを再現しているかのようだ。
 特に、レーダー照射問題を、哨戒機の異常接近問題にすり替え、逆に日本に謝罪を要求するあたりは、韓国流クチゲンカの定石なのではないか。

 日本人としては、韓国流のクチゲンカは対応しにくい。
 論点が次々に拡散し、手が付けられなくなる。
 1つ1つは出鱈目な主張なので反論するのは簡単なのだが、それにいちいち反論していると、際限がなく本質からどんどん離されて行ってしまう。
 防衛省の最終見解も、哨戒機の異常接近の話、無線の問いかけの話など、本質と関係ないところに字数をかけている。
 そのために、文章が異常に長くなり、相対的にレーダー照射のウェイトが小さくなってしまっている。
 第三者がざっと目を通すと、日本側は細かい理屈をくどくどと言い訳しているような印象を持たれかねない状況だ。
 韓国流クチゲンカの定石に見事にはまってしまったか。
 日本を黙らせたということで、韓国側の圧勝ということになるのかもしれない。

 事件、事故が起きたとき、やるべきことは「事実の確認」「原因の究明」「再発の防止」。
 日本側が求めたのは、再発の防止だったが、韓国は最初の「事実の確認」から先に進めなかった。
 今回のレーダー照射はどうして起きてしまったのか、二度と起きないためにはどうしたらいいのか。
 韓国の軍組織に問題があるとすれば、それを至急取り除く絶好の機会だったはずだが、検証されることもなく、問題を温存したまま存続する。
 韓国軍の組織は本当に大丈夫か。
 

 
 
 
 

 
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2019年01月14日

韓国大統領の記者会見:がっかりは日本人だけではなさそう

 10日に韓国大統領の年頭記者会見が行われた。
 その中で、日韓問題について「日本政府はもっと謙虚な態度をとるべき」と発言したことが報じられ、日本の世論に火が付いた。
 大統領の発言のすべてに突っ込みを入れたくなるほどの無責任な発言に終始していた。
 普段は韓国の立場を配慮した言説を心がけている朝日新聞や毎日新聞までが批判的な社説を掲載。
 大手マスコミの論調が一致するのは珍しい。
 それほど、大統領の発言は擁護のしようがないほどの無責任なものだった。

 日韓問題への言及は、年頭の所信表明では一切触れられず、その後の記者会見でも、韓国の記者からは一切質問がなかった。
 その場に居合わせたNHK記者は、その雰囲気に違和感を覚えたという。
 このままでは、日韓問題への言及はないまま終わってしまう。
 大統領の指名する指先が自分に向いたと思った瞬間、直ちに立ち上がり、徴用工問題についての質問をぶつけた。
 この質問への回答で、あの問題発言が飛び出したのだ。
 この時、大統領はNHK記者を指名したつもりではなかったようだ。
 後ろの記者を指名したつもりが、NHK記者が質問を始めてしまったらしい。
 日韓問題はこじれにこじれており、できれば言及を避けたかったのかもしれない。

 日韓問題に対する大統領の発言を聞くと、問題を我がこととしてしっかり受け止め、自らの責任で解決していこうという姿勢はまったく見られない。
 ひたすら責任逃れをしようとしているようにしか見えない。
 これは、日韓問題だからこうして逃げ回るしかないのだろうと思ったが、どうやら、今回の記者会見全体がこのような雰囲気だったらしい。

 韓国人記者から日韓問題に関する質問が一切出なかった。
 これは、日韓問題に触れなくない大統領に配慮したためではない。
 韓国人記者には、もっと他に聞かなくてはならない重大な問題が山ほどあったのだ。
 現在、韓国経済は冷え込んでおり、若者の失業率は10%を超えている。
 年齢層を限れば、4人に1人が職に就けないような状況だという。
 ポスト半導体、ポストサムスンの見通しが見えず、先行きの不安ばかりが増幅している。
 これに韓国国民は危機感を抱いている。
 この経済問題に対する大統領の明確な答えを聞きたがっているのだ。

 ある韓国記者は厳しく大統領に詰め寄った。
「現在の経済が凍り付いている。それでも、経済政策を変えようとしたいのはなぜか。その自信はどこからくるのか」
 大統領の回答は、とても国民を納得させられるようなものではなかった。
「先ほどの年頭所感で30分も述べており、これ以上新しい答えは不要だ」と突っぱねるような回答だった。
 具体的な経済政策としてはっきりしているのは、最低賃金の引き上げと労働時間の短縮。
 これ以上のものは何も出てこなかった。
 たぶん、経済浮揚策も具体的なものが何もないということだろう。

 文大統領は、北朝鮮問題については、実に行動的だった。
 これだったら、自分が積極的に進められる。
 行動を起こすたびに世界の注目を浴び、世論の喝采を受ける。
 今年のノーベル平和賞かと噂されたことも。
 これほど気持ちのいいことはない。
 北朝鮮問題にかまけている間、経済と日韓関係は悪化し続けた。
 もはや国内経済や日韓問題を真正面から受けとめ、責任をもってドライブするだけの意思も力量もなさそうだ。

 この北朝鮮問題も、いろいろは政治イベントは行なわれたものの、実質は何も進展していない。

 いま、日本は文大統領に絶望している。
 同じように、韓国国民も彼が大統領のうちは経済好転の可能性はないと絶望しているのではないか。


 
posted by 平野喜久 at 10:44| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月06日

日本国民は密室での協議を望んでいない:韓国レーダー照射問題

 韓国国防省の公開した映像。
 日本人から見ると、一方的な主張を述べただけで、何の説得力もない。
 ところが、これが韓国世論への情報発信という視点で見ると、別の見方ができる。
 このような働きかけでないと韓国世論は動かないのだ。

 日本の防衛省が公開した動画は、自らの主張は控え、客観的な事実を淡々と提示しただけで、その解釈を視聴者にゆだねている。。
 一方、韓国国防省の動画は、客観的な事実よりも自らの主張を前面に押し出したものになっている。
 だから、動画に含まれるメッセージはすべて、主観的な表現で飾り立てられている。
 例えば、動画中に出てくる字幕には、こんなメッセージがあった。

「人道主義的な救助作戦中の艦艇に非紳士的な偵察活動を継続し、広開土大王艦の人道的救助作戦を妨害する、深刻な威脅行為を行いました」

 ここに客観的な情報は1つもない。
 事実を提示する前に、結論を先取りした主観的な表現だけで構成されている。
 全編がこんな感じなのだ。 
 だが、韓国国民が見たとき、納得感が高いのは、韓国国防省の動画の方かもしれない。

 日本防衛省の動画は、ぼーっと見ているだけでは何を言おうとしているのか分からない。
 ただ、機内から撮影した映像と機内での会話が延々と続いているだけだ。
 13分もの間、この動画を集中して見続けるのは辛い。
 更に、いったいこれで何が分かるのかは自分で考える必要がある。

 一方、韓国国防省の動画は分かりやすい。
 4分という集中力を途切れさせない短さ。
 そして、結論をはっきり提示してくれる。
 この問題をどうとらえるべきかは、すべて動画の中に提示されている。
 視聴者は余計なことを考える必要はない。
 
 韓国世論は論理よりも感情による感応度が高い。
 だから、韓国の政治家やメディアに登場する有識者は、主観表現だらけの感情に働きかける言説が多いのだ。
 過去に何度も繰り返された歴史問題もすべて同じ構図だろう。
 慰安婦、徴用工、旭日旗、靖国神社・・・。
 日本側が、「強制連行の事実はない」「20万人などあり得ない」と客観的なデータで説明しても受け入れられる素地がない。
 きめ細かい説明で事実を証明しようとすればするほど、伝わらなくなる。
 あの防衛省の動画が韓国国民に伝わらないのと同じだ。
 
 韓国国防省は今回のレーダー問題を実務者協議に舞台を移そうとしている。
 密室における話し合いなら、日本側をうまく抱き込めるからだ。
 これで過去に日本側は何度も失敗し、問題をこじらせ続けることになった。
 今回の問題を密室で決着させたらどうなるかは、手に取るように見える。
 決着したあと韓国側は次のようなメッセージを国民に発するだろう。

「韓国国防省の毅然とした対処で、日本の悪辣な策謀をはねのけた」

 そして、韓国側のレーダー照射の事実はなく、日本側が低空飛行で救助活動を妨害してきたということだけが事実として書き込まれる。

 日本国民は密室でのあいまいな決着を望んでいない。
 事実はどうだったのか。
 原因は何だったのか。
 再発しないためにどうするのか。
 これらを明確にしてもらいたい。
 
 
posted by 平野喜久 at 11:41| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月05日

日本は韓国国民への説得を試みたらどうか:レーダー照射問題

 日本の自衛隊の哨戒機が韓国の駆逐艦から火器管制レーダーを照射された事件。
 韓国側の対応がぐずぐずで決着の糸口が見えない。
 韓国国防省の対応は、不祥事を起こした企業のダメな対応ぶりをそのまま再現したかのような様相を呈しており、事態はますます悪化している。

 問題が発覚した時は、「事実の把握」「原因の究明」「再発の防止」とステップを踏んでいかなくてはいけない。
 だが、最初の事実の把握の段階で、行き詰まっている。
 韓国国防省が、日本防衛省の主張をことごとくはねのけており、そこから先に進まない。

 日本防衛省が最初に火器管制レーダーの照射を発表したとき、韓国側の言い分は「レーダーの照射はしていない」だった。
 そこから、韓国の主張は、防衛省の反論を受けるたびに、二転三転し続けた。
 「遭難船探索のレーダーは照射したが、管制レーダーは照射していない」
 「荒天だったため、管制レーダーを含めあらゆるレーダーを総動員して探索した」
 「たまたま、管制レーダーの照射範囲に自衛隊の哨戒機が入り込んだ」
 「日本哨戒機が異常接近したため、警告のためレーダー照射した」
 「日本哨戒機からの無線は、受信状態が悪く他船への呼びかけだと思った」
 「日本哨戒機が韓国駆逐艦に威嚇行動をとったが、わが軍はレーダー照射は行なわなかった」
 「日本哨戒機からの無線は、受信状態が悪い上に、英語の発音がひどく聞き取り不能だった」

 いったいどこに韓国側の最終回答があるのか不明だ。
 反論する側としても、次々に繰り出す言いがかりに、どこから反論すればいいのか戸惑う。
 
 4日になって、韓国側の反論動画がネット上にアップされた。
 それを見た多くの人は驚いただろう。
 新しいデータの開示も確定的な証拠の提示もなく、これまでの自分らの主張を稚拙な動画にまとめているだけだったからだ。
 全4分の動画のうち、韓国側が撮影したとされる現場の映像はわずかに11秒だけ。
 あとは、自衛隊が撮影した現場映像と意味不明な民間の旅客機が空港に着陸するシーンが編集されている。
 バックにはBGMが流れ、字幕が躍動的に表示される。
 安っぽい演出は、バラエティ番組でよくあるUFO目撃談の再現映像を見るようだ。
 本当にこれは韓国国防省が正式に発表したものだろうか、といぶかしく思っていると、最後に「韓国国防省」のロゴマークが表示され、背筋が寒くなるような驚きを覚える。

 一体、これで韓国国防省はなにを証明しようとしているのか。
 一説には、この動画は防衛省や軍事専門家に向けた情報発信ではなく、韓国一般国民への言い訳動画であるらしい。
 日本に言われっぱなしで、何の反論もできない国防省は国民世論が許さない。
 その国民世論に応えるために、今回の動画公開となったようだ。
 だから、その内容に客観的なデータや決定的な証拠は不要。
 力強く日本側の主張をはねのけている姿勢を見せられればOKというわけだ。

 不思議なのは、韓国の一般国民は今回の騒動をどう見ているのか、ということだ。
 これが、まったく逆の立場で同じことが起きていたらどうなっていたかを考えてみよう。
 自衛隊の言い訳が二転三転し、あんな無様な動画を公開してぐずぐずの対応を続けていたら、日本国民は黙っていない。
 自衛隊は国民の信頼を失い、その批判は政府にまで及び、安倍政権は吹っ飛ぶだろう。
 韓国でそうならないのが不思議でならない。

 もしかしたら、国民には正確な情報が届いていないのではないか。
 日本の防衛省が説得を試みるのは、韓国国防省ではない。
 韓国国民ではないのか。
 韓国は国民情緒が何よりも優先する国だという。
 だとしたら、日本が相手にすべきは韓国政府ではなく、韓国国民だろう。
 大臣や官房長官が記者会見で日本語のコメントを発表しただけでは、韓国国民には伝わらない。
 韓国のマスコミによって情報がゆがめられ、大事なニュアンスはすべてそぎ落とされてしまうからだ。
 防衛省の反論も、韓国語で韓国国民に直接届けられるような工夫がいる。




 
 


 


 
posted by 平野喜久 at 13:18| 愛知 ☔| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月13日

「半割れ」避難:南海トラフ巨大地震

 政府の中央防災会議の有識者会合が、「半割れ」の時の一斉非難を呼び掛ける内容を示した。
 「半割れ」とは何かというと、南海トラフ巨大地震が発生した時、想定される震源域全体が一度に破壊されるとは限らず、部分的な破壊から始まり、時間差をもって残りが破壊するというケースがある。
 今回は、この時間差で破壊が起きた時を想定した緊急時対応のことを言っている。

 過去に時間差の破壊が起きたケースは、1854年と1944年〜45年だ。
 1854年の場合は、32時間後。1944年の場合は、2年後に残りが破壊している。
 時間差で連続して破壊が起きるとしても、どのくらいの時間差になるか不明だ。
 数時間かもしれないし、数日、数か月、数年かもしれない。
 ただ、過去の事例から、想定震源域の半分が破壊しながら、残りが破壊せずに済んだケースはないので、一部でプレートの破壊が起きれば、残りは間もなくと考えるのが妥当だ。
 それで、今回は、一部の破壊が始まった時は、残りの地域も避難を開始した方がいいという指針を示したことになる。

 これには戸惑いの声も多い。
 残り地域の避難は、地震が起きる前に行動を起こす必要がある。
 これがまず大変なこと。
 風水害避難でも、大雨暴風が目の前で激しくなってきているのを目の当たりにしていながら、避難の呼びかけに反応せず、逃げ遅れる人がいる。
 何も起きていない地域の人々を避難させるのは、並大抵ではない。

 そして、必要な人が全員避難したとしても、問題はある。
 時間差で地震が起きるとしても、どのぐらい後で起きるかは分からない。
 避難完了したタイミングに合わせるように次の地震が起きてくれればいいが、そんな都合のいいことはないだろう。
 いまのところ、1週間ほどの避難を想定しているらしいが、1週間たっても何もなかった時、そのまま帰らせるのか。
 その直後に地震がきたら?
 1週間も避難生活をしている間に、少しでも自宅の地震対策や荷物の整理などをしておいた方がよかった、となりかねない。

 さらに、1週間も公的避難所に避難するとして、それだけの備蓄があるのか。
 福祉施設や医療機関の場合は、入所者や患者が移動するだけでは足らず、スタッフや医療機器も同時に移動しなければならず、その負担は膨大になる。
 具体的に考えれば考えるほど、非現実的な事態が想定され、とても対応不能に見える。
 
 だが、今回の呼びかけは、国民に対する問題提起だと捉えるべきだろう。
 こういうことが起こり得るとして、さて私たちはその時どうしたらいいのか、ということを一人一人が考える時期がきている。
 だれかが答えを教えてくれる、だれかが指示を出してくれる、という人任せの姿勢に対する戒めにもなっている。
 簡単に答えが出せる問題ではない。
 だからこそ、私たち一人ひとりが真剣に考え始めなければいけない。

 新聞報道では、戸惑う自治体の声が取り上げられている。
 ある市の担当者は、「国や県の指針ができていない段階で、市の防災対策を検討するのは難しい」と言っている。
 これは、「国や県が指針を示したら、それを見ながら考えます」ということで、まさに人任せの姿勢に陥っている。
 地域の防災は、国や県よりもまず市がその責任を負う。
 第一の責任者として、市が対応を検討し始めるべきだろう。
 市の担当者も、自分らだけですべての行動計画を明確にしなければいけないと思うから気後れし、その責任を国や県に求めたくなる。
 そうではなく、まずは、現状の問題のありのままに住民に伝え、住民自らに考えてもらうチャンスを与えてあげるべきではないか。

 住民は、すべて公的避難所に頼らなければならない人ばかりではない。
 中には、親戚や知人宅に身を寄せることができる人がいる。
 「いざという時には、あの人のところにお世話になろう」と考えれば、事前に話をしておくこともできる。
 自宅にこもってその時を迎えようと覚悟を決める人もいるだろう。
 その人は、屋内の安全対策や食料の備蓄を真剣に考えるはず。
 こういうことを検討するチャンスを与えるべきだ。

 この話は、企業におけるBCPでも重要となる。
 「半割れ」で避難勧告、避難指示が出たときに、会社の操業をどうするのか。
 直ちに行動計画の確定までは難しいが、具体的な想定に基づいて、イメージトレーニングをし始める時期にある。




 
 
 
 
posted by 平野喜久 at 13:02| 愛知 ☀| Comment(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月25日

ゴーン氏解任は日産の自己防衛か

 ゴーン氏の逮捕は、誰も予想しておらず衝撃をもって受け取られた。
 直接の容疑は、有価証券報告書の虚偽記載というものだが、ゴーン氏の報酬をめぐる不透明な部分が次々に明るみになるにつれて、底なしの様子を見せている。
 ゴーン氏の報酬を実際より少なく報告書に記載していただけではなく、退任後に残りの報酬を受け取る契約にしてあったという。
 株主総会では常にゴーン氏の高額報酬が問題にされており、その批判を回避するのが目的のようだ。
 さらに、ゴーン氏の親族の高級住宅を日産に提供させたり、ヨットを600万円で購入し、その名義をゴーン氏に書き換えたりということも発覚している。
 ゴーン氏の姉をアドバイザー契約を結ばせ、活動実態のないまま報酬を払うようにしていたとも。
 ゴーン氏の家族旅行や食事代まで日産に負担させていたという情報まで漏れ出ている。
 守銭奴ゴーン氏の姿が浮かび上がってくる。
 自分はもっと高額報酬をもらってしかるべきなのに、株主批判でそれがやりにくい。
 それで、少しでも日産から搾り取る方法をあれこれ仕組んでいるように見える。
 別に、手元資金がなくて住宅やヨットが買えないわけではない。
 ゴーン氏にとって、600万円のヨットなど、釣銭でついで買いするような買い物だろう。
 しかし、グローバル企業のトップとしては不当に安い報酬しかもらっていないという意識が先に立ち、このようなことに無感覚になっているのかもしれない。

 今回の不正発覚は、日産の内部告発によるという。
 どの部署の誰による告発かは不明。
 だが、有価証券報告書の作成には多くの人物がかかわっており、長年の不正の実態は内部では広く知られていたはず。
 それが、いままで不問に付されていたことの方が不思議だ。

 さて、今回の逮捕劇は、単なる不正発覚という単純な話ではなさそうだ。
 ことはフランス政府も絡んでおり、もっと大きな構図が背景にあるらしい。
 
 日産の無資格審査が発覚し問題になった時、ゴーン氏は一切表に出てこなかった。
 三菱自動車との提携の時には、全面的に出てきてアピールしていたのとは対照的だ。
 無資格審査の問題で記者会見を開いたのは、西川社長。
 当然ながら、記者からゴーン会長の責任を追及する質問が相次いだが、ゴーン氏に責任が及ばないように防戦一方だった。
 役員が報酬を自主返納しているということを明らかにしたが、その詳細は公表されなかった。
 ゴーン氏は報酬を返納したのかとの質問には、「あくまで自主返納なので内容は差し控える」と答弁を逃げている。
 実際には、ゴーン氏は自主返納をするどころか、非公表の報酬をもらい続けていたことが今回の事件発覚で分かった。

 この時、日産の経営陣は必至でゴーン氏の身を守ることに汲々としている様子が見える。
 それが、一転、ゴーン氏の不正を暴露し、日産のイメージダウンを覚悟してまでゴーン氏の追い出しに向かったのはなぜだろう。
 そこに、フランス政府の動きがあるらしい。
 フランス政府はルノーの筆頭株主であり、現在のマクロン大統領は経済産業相の時代から、ルノーと日産の合併を働きかけていたという。
 業績好調の日産を取り込み、フランス国内の生産拠点の維持や雇用の拡大を狙っていた。
 ところが、それに強力に抵抗していたのがゴーン氏だったのだ。
 そんなことをすれば、日産側の抵抗が激しいことが分かり切っていたからだ。
 日産側にとって、この時点のゴーン氏はフランス政府の圧力をはねのけてくれる守護神であった。
 ところが、その後、フランスの大手新聞に、ゴーン氏退任の観測記事が出始めた。
 フランス政府がゴーン氏を追い出し、別の役員をルノーから日産に送り込んで、一気に合併を進めようとしているとの観測だ。
 ゴーン氏は18年の6月をもって会長職を退任との具体的な情報まで流れ始めた。
 この段階で、ゴーン氏を追い出したがっていたのはフランス政府であり、それを阻止しようとしていたのが日産側であった。

 それが、今回の逮捕劇では、立場が逆転している。
 日産側がゴーン氏を追い出し、それをフランス政府が批判している。
 もしかしたら、その後の働きかけで、フランス政府はゴーン氏の取り込みに成功していたのか。
 日産側は、ゴーン氏の変身を察知し、会社を守るために追い出しにかかったのかもしれない。

 いずれにしても、長年にわたりゴーン氏に頼りすぎた日産側の自業自得との印象をぬぐえない。
 ゴーン氏による大改革で経営が立ち直った時点で、ゴーン氏の役割は終わっていたはず。
 それを、ゴーン氏に任せておけば間違いないとばかりに、ずるずると経営を任せきりにし、フランス政府のつけ入るすきを作ってしまっていた。
 西川社長もゴーン氏に抜擢されたイエスマンであったはずだが、ギリギリのところで踏みとどまったということか。



 



 
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2018年10月17日

KYB免震装置数値改竄

 KYBとカヤバシステムマシナリーが製造した免震制振装置のオイルダンパーで検査データの改竄が見つかった。
 改竄は00年から先月まで行なわれていた。
 00年〜07年はKYBが製造、07年以降はカヤバ社が製造していた。
 免震用903件、制振用83件、合わせて986件。
 このうち、410件で不正が確認されており、残りは調査中。
 用途別では、住宅265件、事務所175件、医療福祉施設159件、庁舎109件など。
 地域も、東京都250件、大阪府107件、愛知県93件、神奈川県71件など。

 8月上旬、カヤバ社の内部告発で発覚。
 きっかけは、従業員同士の会話の中で、検査担当者から改竄の話を聞いた1人が上司に報告したのだという。
 カヤバ社から報告を受けたKYBが調査を始め、先月19日に国交省に報告した。
 
 免震装置と制振装置では仕組みが違う。
 免震装置は、揺れを建物に伝えないようにする装置だ。
 免震ゴムの上に建物を乗せ、直接地面に接触しないようにする。
 建物の固有周期を延ばすことで、地震の揺れと共振しないようにする仕組みだ。
 免震装置は、揺れないようにするのではなく、建物が地震の揺れと共振しないようにするのが目的だ。
 これで、建物の破壊を防ぐことができる。
 だがこれだけだと揺れを減衰させる機構がないため、ダンパーを設置し、一定以上の揺れにならないように、揺れても早くに減衰するようにしている。

 制振装置は、建物に伝わった地震の揺れに抵抗し、揺れを抑えようとする装置だ。
 建物内の柱と梁との間に斜めにダンパーを設置する。
 地震の時には、このダンパーが水平方向のエネルギーを吸収し、建物の揺れを小さくする。

 今回の検査データの改竄は、このダンパーの性能が基準に達していない恐れがあるために問題となった。
 ダンパーは揺れを抑える装置なので、建物の耐震性に直接関係するものではない。
 国交省が、今回の改竄を受けて、「震度7程度の地震でも倒壊の恐れはない」としているのは、こういう理由だ。
 ただ、性能不足のダンパーが使われている可能性があり、これをそのまま放置しておくのは利用者が納得しない。
 KYB側も、データ改竄の可能性のあるダンパーは特定できても、どのダンパーが基準未満のものだったかは、たぶん記録に残っていない。
 となると、該当期間に設置されたダンパーはすべて取り換えるということにならざるを得ない。
 これは、KYBにとって過酷な負担であり、事実上不可能だ。
 ダンパーの性質上、建物の耐震性には直接の影響は少なく、揺れの減衰効果がやや劣るかもしれない程度ということにして、現状維持になるかもしれない。
 
 
 
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2018年09月26日

月刊誌「新潮45」休刊

 新潮社は月刊誌「新潮45」を10月号を最後に休刊すると発表。
 休刊といいながら、実質的には廃刊となりそうな気配だ。


 騒動は、8月号で杉田衆議院議員の「LGBTのカップルは生産性がない」と主張する論考が掲載されたことに端を発する。
 この刺激的な主張が反発を招き、杉田氏の政治家としての資質を問う指摘が相次いだ。
 杉田氏への批判の嵐の真っただ中に出されたのが、10月号の特集「そんなにおかしいか杉田水脈論文」だった。
 複数の論者による杉田氏擁護の論考が掲載されたが、その中の小川栄太郎氏の主張が注目された。
 電車内の痴漢を例に引き、「彼らの触る権利を社会は保証すべきではないのか」と述べた。
 LGBTと痴漢を同列に扱う姿勢が、さらに世間の攻撃を受けることになる。
 攻撃は、論考の執筆者よりも新潮社へ向かう。
 「どうしてあんな低劣な差別に加担するのか」といった批判が相次いだ。
 新潮社社内にも疑問の声が広がったという。
 新潮社社長までもが「偏見と認識不足に満ちた表現があった」とコメント。
 そして、10月号をもって休刊とする旨の発表となる。 


 一説には、「新潮45」は売上低迷から、編集長が交代し、売上拡大にテコ入れの最中だったらしい。
 それで、刺激的な論考を掲載し、炎上マーケティングを仕掛けたのかもしれない。
 杉田氏の論考で炎上マーケティングは成功。
 第2弾として、今回の杉田氏擁護の特集となった。
 だが、その擁護論が、あまりにも刺激的過ぎた。
 問題となった小川氏の論考は、このデリケートな話題を慎重に議論しようとする姿勢はなく、わざと騒ぎを起こそうと煽っているようにも見える。
 小川氏がこんな粗雑な文章を書くとは、と驚いた。
 「なぜ、事前に編集部内で内容のチェックができなかったのか」という指摘があるが、編集者からの依頼で、執筆者が無理やり刺激的な論考を執筆したのかもしれない。

 掲載した論考への批判から廃刊に追い込まれた雑誌として、「マルコポーロ」が連想される。
 「ナチスによるホロコーストは本当にあったのか」と疑問を投げかける論考だった。
 これが国内だけでなく、国際的な反発を招くことになり、文芸春秋の社長と編集長の辞任と雑誌の廃刊にまで発展した。
 いまや、ナチスを擁護するような姿勢やホロコーストの存在に疑問をさしはさむような言説はタブーとなっている。

 今回の新潮45の騒動で、今後はLGBTを否定したり疑問を抱いたりする言説はタブー化しそうだ。
 注目を浴びた新潮45の10月号は、既に手に入らなくなっている。
 「低劣な論考」がどのように低劣なのかを確かめることもできない。
 
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2018年08月05日

大塚家具:自力再建困難

 大塚家具がいよいよ自力再建が困難になってきた。
 15年末に109億円あった現預金は18年3月末時点で10億まで減少。
 17年12月期単体決算は、最終利益が2期連続赤字。
 18年通期で13億円の黒字を見込んでいたが、業績の予想を下方修正する方針という。
 いま、貸し会議室大手のTKPに支援を求め、資本業務提携に踏み切り、増資の引き受けや協業の進展など交渉をしているという。
 別の企業にも支援交渉を進めているらしく、事態は流動的だ。

 大塚家具の社長大塚久美子氏は、かつて創業者の父親大塚勝久氏と経営権をめぐり派手な争いを見せた。
 マスコミで格好の話題となり、世間の注目を浴びた。
 従来型の客ひとりひとりに寄り添う接客サービスに拘る勝久氏と、新しいカジュアルな店舗運営を目指す久美子氏との戦いだった。
 経営権闘争の当時から、久美子氏の目指す経営戦略へは疑問の声が投げかけられていた。
 カジュアルな家具店としては、既にニトリやイケアが頑強なポジションを確立しており、そこに後発の大塚家具がどのように参入するのか。
 ニトリ、イケアと同じ市場に進出するのだから、圧倒的な差別化を確立しないと、成功はおぼつかない。

 それまでの大塚家具は、ニトリ、イケアとはまったく違うポジションに立っていた。
 ターゲットもサービス内容も、客単価も違う。
 それを、ニトリやイケアと同質化してしまったら、自ら差別化要素を捨てるようなものだった。
 結果は、多くの予想通りとなった。
 企業経営は水物で多くの人々の予想通りにはいかないものだが、これほど予想通りの展開を見せるのも珍しい。

 大塚家具としては、経営権争いで話題を集めているときが最大のチャンスだった。
 その時に、新生大塚家具のブランドカラーを確立できていたら、一大転機となっただろう。
 ところが、騒ぎを沈静化させることだけにエネルギーを使い果たし、落ち着いた時には目の前に客がいなかった。
 
posted by 平野喜久 at 09:37| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クロネコヤマト:過大請求

 宅配最大手のクロネコヤマトで不正が発覚。
 長年にわたって法人向け引っ越し代金を過大請求していた。
 4割ほどで過大請求があり、総額は16年5月から18年6月までで17億円に上る。
 5年前にさかのぼると31億円に膨らむ。
 実際には600キロ程度の荷物を5トンと見積もり、約10倍に当たる17万円を請求した例もあったらしい。
 また、実際には行われていないサービスの料金が付加されていたこともあったという。

 不正があったのは、法人向けの引っ越し代金だった。
 社員の転勤に伴う引っ越し代金を企業が負担するケースで不正が行われやすい。
 引っ越しは単発で発生する需要であること、法人の場合、請求書のチェックが緩いことが、背景にある。
 単発の引っ越し業務であれば、総務の担当者レベルで発注し決裁される。
 アイミツなどという煩雑な手続きは行なわれないし、実際に転勤者の荷物がどれほどあるのかを総務が把握しているわけもない。
 支払いは事務的に処理されるだけで、見積や請求の中身まで細かいチェックは行われない。
 このチェックの穴に付け込んだような不正行為だった。

 これが個人の引っ越しであると、少しでも支払いを減らそうと請求書のチェックが厳しいので、ごまかしはきかない。
 また、法人向けでも、製品の入出荷のような定期的な運送業務の場合、コストダウンの圧力が強く、ごまかしは不可能。
 これらのチェックをすり抜ける唯一の業務が、単発の法人向け引っ越しサービスだったのだ。

 今回の不正の深刻なのは、11年に内部告発によって過大請求の事実を把握していたのに、問題を放置したまま同じことを繰り返していたことだ。
 更に、この不正は一部の営業所だけで行なわれていたものではなく、全国規模で同じことが起きていららしいことも問題の根深さをうかがわせる。
 一部の現場の人間が勝手なことをしていたというレベルではない。
 むしろ、現場の個人には代金の過大請求によって得られる利益はなく、不正に手を染める動機がない。
 組織的に不正が行われていたことが疑われる。
 
 客は、クロネコヤマトのブランドを信用して発注している。
 請求額をわざと過大に乗せてくるなど、夢にも思わない。
 その信用を裏切る行為であり、ブランドの棄損は深刻だ。
 
  
posted by 平野喜久 at 09:04| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする