2016年08月04日

集中豪雨による鉄道全面運休:名古屋

 8月2日の夜は名古屋駅周辺が大変な混乱状態にあった。
 名古屋〜岐阜間の集中豪雨により鉄道が運休したためだ。
 集中豪雨に伴い雷も発生しており、停電の恐れありということで、豊橋から大垣までの広い範囲で全面運休となった。
 JRだけでなく、名鉄まで運休したので、行き場を失った客がたちまち駅にあふれかえることとなった。
 この運休は簡単には解消しなかった。
 4時間ほどたってようやく運行再開となったが、直後にどこかの駅でホームから人が転落する事故が起き、再び運行中止となった。
 最終的には、340分遅れで電車が動き始め、この混乱は、日付が変わった後まで続いたという。

 この時の混乱の様子は、ツイッターに投稿された写真を見るとよくわかる。
 金山駅では、改札に入れない人であふれている。
 名鉄も止まっているので、金山駅のあの広いコンコースは、全面、人で埋め尽くされている。
 名古屋駅の改札内の様子を写した画像もある。
 ホームに上がる階段通路はヒトで埋め尽くされ、身動きできない状態。
 電車がなかなか動かない苛立ちと、人いきれの熱気で、この群衆の不快指数はピークを迎えていただろう。
 ひとりこければ、たちまち群衆雪崩が起きそうな危険な状態にあったことが分かる。
 危機管理の観点で言えば、このような不快指数の高い群衆の中に身を置いてはいけないというのが鉄則だ。
 鉄道会社の「再開の見込みは立っていません」というアナウンスを確認したら、ただちに別の行動を開始すべきだ。
 タクシーによる帰宅を考えるか、その日の帰宅は断念し、ホテルの宿泊を考えるか、だろう。
 タクシーは簡単に出払ってしまうし、周辺ホテルはすぐに満室になる。
 いち早い判断と行動がわが身を助けることになる。

 今回のできごとから、鉄道の全面運休が起きると、1時間もしないうちに駅はヒトであふれかえり、危険な状況が発生するということが分かる。
 このことは、地震の時の教訓になる。
 地震により公共交通機関が停止すれば、たちまち行き場を失った人たちで駅周辺はあふれかえる。
 この群衆の過密と混乱を放置していると、2次災害を招く恐れがある。
 いま、都市部の自治体が、地震発生時の帰宅困難者対策を真剣に行なうようになったのは、このためだ。
 駅周辺の事業者に協力を要請し、万が一の時の帰宅困難者の一時受け入れをお願いしている。
 駅周辺の事業者も、普段、駅周辺という至便の立地で事業を行なえている恩恵に報いるためにも、いざという時の社会貢献が期待されている。
 事業者によっては、食料の備蓄を増やし、寝袋や毛布の用意をして、いざという時の帰宅困難者の受け入れの準備をしているところが増えてきた。
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2016年08月02日

緊急地震速報の誤報:東京湾震度7

 8月1日17時9分、東京湾震度7の緊急地震速報が流れた。
 スマホのアラームが鳴って、画面を見たとき、緊張した。
 「ついに、首都直下地震が来たか」
 ところが、奇妙なことに第1報のアラームだけで次が続かない。
 地震アプリを開いて、情報を見ると、関東エリア一帯が震度7の表示で真っ赤。
 日本列島全域に震度表示が出ている。
 「なんか、おかしい」
 細かいデータを見るとマグニチュード9.1、深さ10km。
 ますますおかしい。
 やがて関東エリアでは地震が起きておらず、誤報だと判明した。

 今回の誤報は、落雷によるノイズが悪さをしたらしい。
 1か所の地震計に過電流が流れ、そのノイズデータを瞬時に解析して発信したために、とんでもない巨大地震という誤報になった。
 緊急地震速報には2種類ある。
 一般向けと高度利用者向け。
 高度利用者向けは、会員向けのサービスで、いち早くキメ細かい情報を提供することを目的とする。
 だから、1か所でも地震データを観測したら、その情報をもとに第1報を出す。
 第1報の速報性に重きを置いているからだ。
 だが、周辺の地震計に反応がなかった場合は、直ちに誤報として取り消される。
 今回、第1報だけで後が続かなかったのは、このためだ。
 3年前の8月初旬にも「奈良県震度7」という誤報があった。
 この時期は、落雷による誤報が起きやすい。

 一般向けは、テレビ、ラジオ、エリアメールなど、広域の不特定多数に配信される。
 複数個所で地震発生のデータを確認した段階でアラームが発信される。
 速報性に劣るが、誤報の少なさが優先されている。
 今回、テレビやラジオで緊急地震速報が流れることはなかった。

 今回の緊急地震速報では、電車が止まったり、オフィスでアラームが鳴ったりして、一時、騒然となった。
 直後に誤報と分かって、ほっとしたが、これは、いい訓練になった。
 本当にうちの装置はアラームが鳴るのか。
 アラームが鳴った時、うちの社員は迅速に安全行動がとれるのか。
 不意打ちの訓練だからこそ、実践レベルの確認ができる。

 誤報であったことに文句を言ってはいけない。 
 異常データを見逃さずに瞬時に反応してデータ配信されたことだけでも評価しよう。
 空振り三振はOKだが、見逃し三振は許されない。



  
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2016年07月01日

1人1票ではない選挙制度

 ただいま参議院選挙期間中。
 ここで、選挙制度について考えてみる。
 日本の選挙は、1人1票が原則となっている。
 私たちは、これが当たり前と思っているが、果たして1人1票が民主主義の唯一の基本原則なのだろうか。
 昔のように、納税額や性別で選挙権が制限されていた時代に比べれば、現在の1人1票の選挙制度は、格段に進歩したといえるが、これは、民主主義の到達地点ではない。
 より民意を正確に結果に反映させるにはどういう制度がいいのか。
 1人1票ではない選挙制度を考えてみよう。

1.定数と同じ人数を選べるようにする
 例えば、今回の参院選、東京選挙区では、定数6に対して31人が立候補している。
 この場合は、有権者は、31人の中から6人を選んで投票できるようにする。
 これで、当選者6人の構成バランスのあるべき姿を有権者が決められるようになる。
 31人の中から、たった1人を選ぶのは非常に難しい。
 一人ひとりの政見を比較検討して選ぶよりも、見た目の印象とか知名度で1人決めてしまえば、それ以上有権者が考える余地はなくなってしまう。
 ところが、定数と同じ人数を選べるとなると話は違う。
 6人の構成バランスを考えなくてはならなくなる。
 6人全員を保守系の候補者で選ぶ人がいるかもしれない。
 中には、2人を与党、2人を野党、2人を無所属で、バランスよく選ぶ人もいるかもしれない。
 その組み合わせは自由だ。

2.各候補者の評点投票にする
 有権者が候補者の中から1人を選ぶのではなく、すべての候補者に評点をつけて投票する制度。
 例えば、A候補は、政策も人柄も共感できる人物ということであれば、評点5を投票する。
 B候補は、人柄は好感が持てるが、政策が望ましくないと判断すれば、評点3を投票。
 C候補は、共感できるところが何もなく、政治家になってほしくないと判断すれば、評点マイナス5となる。
 その人物をよく知らないので、評価できない場合は、空欄で投票する。
 マークシート方式であれば、投票も集計も簡単だ。
 こうなると、有権者はすべての候補者を真剣に検討しなければならなくなるし、立候補者も、単に名前を連呼しているだけでは当選できなくなる。
 また、従来なら知名度が高ければそれだけで当選確実であったが、この方式では、有権者からマイナス評価が高いと当選圏内を外れてしまう。
 知名度の高い人ほど、強烈なファン層がある一方、極端に毛嫌いする人も多い。
 だから、知名度やパフォーマンスだけで当選しようという戦略は使えなくなる。
 アメリカの大統領選が、この方式で行われていたとすると、ヒラリー氏もトランプ氏も最終候補に残っていないだろう。

 ほかにも様々な選挙制度が考えられる。
 それらは、次回以降に。





 
 
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2016年06月23日

東電の「炉心溶融」隠蔽

 産経新聞の報道による。
 福島原発事故で、炉心溶融の公表が遅れた問題。
 21日に東電社長広瀬氏が記者会見を開き、隠蔽を認め謝罪した。

 16日に東電の第三者検証委員会が報告書を公表。
 その中に、当時の清水社長から「溶融という言葉を使うな」という指示があったこと分かった。
 それを受けて、今回の広瀬社長の謝罪会見となった。
 広瀬社長と原発担当の姉川常務の減給処分も公表した。

 5年もたって、ようやく隠蔽を認めた。
 深刻な事故であればあるほど、その危険性をいち早く住民に伝える必要があるにもかかわらず、それを隠し続けた罪は重い。
 炉心溶融に気づかずに公表が遅れたのではなく、その事実をつかんでいながら隠蔽していたことが問題だ。
 当時としては、「とにかく騒ぎが大きくならないように」ということが優先され、「情報は過少に、被害は軽微に」が情報公開の基本理念となっていた。
 政府、東電、保安院など、様々な組織がかかわっていたが、いずれも全責任を負う覚悟の者がいないために、事故の本質的な対応ではなく、表面的な騒ぎの鎮静化に焦点が当たってしまった結果だ。
 炉心溶融の公表が遅れたために、放射性物質の拡散の情報も公開されず、そのために、住民の適切な避難指示も出ないまま。
 このために、不必要な放射線被爆のリスクにさらされ続けることになった。
 事故の初動対応としては、まことにお粗末であった。
 福島原発事故については、様々なステップで対応の誤りが指摘されており、私たちが学ぶべき教訓がそこかしこに存在している。
 誰が悪かったという犯人捜しを目的にするのではなく、今後の教訓を得るための検証を徹底して行なってもらいたい。

 さて、この件で気になる問題がもう1つある。
 第三者委員会による検証報告書の中に、気になる記述があった。
 清水社長の隠蔽指示は「官邸側から要請を受けたと推認される」と指摘されている。
 第三者委員会としては、当時の官邸側に裏付け取材はしていないために、推認という表現にとどめているが、少なくとも、東電としては官邸に指示されたという認識であることは間違いない。
 当時の首相だった菅直人氏、当時の官房長官だった枝野幸雄氏は、直ちに反論。
 そのような事実はなかったとして、「党の信用を毀損する」と、法的措置も辞さない構えを見せた。
 参院選直前にこんな話が出てはダメージが大きすぎることから、過剰に反発した印象だ。
 これまで、各種の検証委員会による当事者へのインタビューが行われているが、菅氏の姿勢はひたすら「自分は悪くない」に終始しているように見える。
 原発事故という未曽有の大事故について、きっちり検証をして、後世への戒めを残さなければいけない立場にある。
 その時の当事者でなければ分からないことはたくさんあり、だからこそ自らの行いを謙虚に振り返り、そこから得られる教訓を示すべきだろう。
 にもかかわらず、その使命を放棄し、ひたすら自分の名誉を守ることだけに専念している。
 後世に伝えるべき貴重な経験があいまいなまま風化してしまいそうなのが心配だ。
 




 
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2016年06月21日

HOYA熊本工場閉鎖へ

 HOYAは2016年6月20日、同年4月の熊本地震で被災していた熊本工場(熊本県菊池郡大津町)を閉鎖すると発表。
 工場の復帰に向けて検討を進めてきたが、クリーンルームや精密機器などの設備が莫大な被害を受け、生産再開を断念。
 今後、液晶パネル用フォトマスクの生産は、台湾と韓国へと移管する。

 HOYAは、熊本地震の発生を受けて、4月14日の地震を受けて、15日から工場の操業を停止していた。
 16日の本震で工場内に原因不明の火災が発生。
 設備、装置等の被害が大きく、簡単には復旧できないだろうとみられていた。
 当面は、台湾、韓国、八王子での振替製造に切り替えて急場をしのぐこととなった。
 熊本はその後も断続的な余震で復旧活動がままならず、その被害の大きさから、最終的に再開を断念したものと思われる。

 地震発生後2か月での工場閉鎖の決断は、迅速な意思決定だった。
 熊本工場を再開させるには、あまりにもコスト負担が大きすぎると判断されたのだろう。
 もともと、生産拠点を海外にも分散させており、ある拠点がやられた場合は、ただちにほかの拠点に主力を移行するという基本戦略ができていたのかもしれない。
 これは、工場閉鎖に追い込まれたとみるより、戦略的な撤退とみるのが妥当だ。
 大企業は、1つの拠点がやられても、ほかにスイッチングすることで直ちに立ち上がることができる。

 だが、有名企業の工場閉鎖は、地域経済にとって、これから復旧復興に向けて力強く立ち上がろうとするときに、ムードを冷え込ませかねない。
 
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2016年06月19日

大震法を南海トラフ巨大地震に拡大

1978年に制定された大震法(大規模地震対策特別措置法)の対策強化地域を東海地震から、南海トラフ巨大地震へと拡大する方向で検討が進んでいる。
 大震法は、東海地震の発生に備えて制定された。
 というのは、1944年、46年に東南海地震、南海地震が起きたのに、東海地震だけ起きなかったことから、東海地域だけ歪みが蓄積したまま解放されていないと判断され、東海地震が切迫しているとの予想から制定された法律だ。
 ところが、その後の地震研究で様々な知見が明らかとなり、法律の内容が古いものとなっていた。
 特に東日本大震災以降は、東海地震という言葉は死語となり、南海トラフ巨大地震という言葉に置き換わって、東海から紀伊半島沖、四国沖、九州沖にまで広く連動するM9クラスの超巨大地震を想定して国は対策を行い始めた。
 大震法と現実との乖離を修正すべく、ようやく法改正の検討に入ったということだ。

 大震法では、東海地震は事前予知ができることを前提とした仕組みができている。
 これも、いまや絵に描いた餅となりそうだ。
 事前予知ができない可能性が高いこと、予知できたとしても事前警告できるかどうか分からないことなど、問題が大きいことがかねてから指摘されていた。
 事前予知の研究は地道に進めていくにしても、予知ができないことを前提に、不意打ちを覚悟した事前対策のほうに軸足を移した内容に重点を置くべきだろう。

 このニュースは、時代錯誤の法律を現実に即した内容に作り替えようという取り組みに過ぎない。



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2016年06月15日

JTB顧客情報漏洩

 大手旅行会社JTBの顧客情報漏洩事件。
 標的メールにてコンピュータがウィルス感染し、外部からの不正アクセスにより700万人分の個人情報が流出した恐れがあるという。
 不審な添付ファイルを開いてしまったミス、不正アクセスの感知から完全遮断までの遅滞、管理している個人情報を暗号処理していなかった不手際など、JTB側の反省点も多い。
 実際にどれだけの情報が流出したのかは不明で、今後、実被害が出始めると、その賠償責任がJTBに降りかかってくることになる。

 発端は、不審なメールの添付ファイルを開いてしまったことによる。
 なんという単純なミス。
 だが、このメールは、実在する航空会社のメールアドレスが表示されており、件名やメール文面も通常業務であり得る内容だったという。
 1日に膨大な量のメールを処理している担当者は、当然、変なメールは警戒しているだろうが、本物によく似たメールにまで神経を尖らせて警戒せよというのは酷だ。
 当然、不審メールは安易に開かないというルールは厳格に守るとしても、それでも、うっかり標的型メールに引っかかってしまう恐れは常にある。
 その場合は、ウィルス感染してしまったことを想定した対応策も用意しておかなくてはならない。
 感染しても、外部からの不正アクセスを遮断できるように。
 外部からの不正アクセスを許してしまったとしても、重要情報へのアクセスは防げるように。
 重要情報をコピーされても、解読されないように。
 多段階的に最悪の事態を阻止するバリアを用意しておくべきだった。

 利用者としては、JTB程の大手旅行会社が、顧客情報の管理がこれほど緩かったとは驚きだろう。
 今回は、初動に反省点があったが、その後の対応は迅速で申し分ない。
 いまのところ、実害は確認されておらず、事態は最小レベルで抑えることができている。
 今後は、実態の把握と、原因の追究、そして、再発の防止に取り組むことになる。
 会社の信用は、情報を透明化し、利用者への十分な説明責任を果たすことができるかどうかにかかわっている。
 
posted by 平野喜久 at 15:56| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

自ら傷を広げ続けた舛添氏

 舛添氏の政治資金騒動。
 ようやく辞任ということで決着となりそうだ。
 週刊誌による報道後、定例の記者会見で弁明を迫られ続けた。
 当初は、強気で突っぱねていたが、第2第3のネタが毎週のように報道され、そのたびに弁明をする羽目になった。
 不透明な政治資金の使途が次々に発覚し、いちいち弁明をするのも追いつかないほど。
 そこで、彼がとった策略が、第三者なる弁護士を立てて、すべての案件を一気に決着つけようということだった。
 その調査報告書があまりにもずさんで、とても第三者による厳しい調査には見えないことから、批判の声は一気に最大値に膨れ上がった。
 一気に決着がつくどころか、疑惑の目がさらに細かいところに向かうこととなり、答弁の矛盾点が至る所にみられるようになる。
 都議会の集中審議で、「リオオリンピックが終わるまで、今しばらく猶予を」と必死の懇願を行なったが、頼みの自民公明の辞任やむなしとの判断により万事休すとなる。
 一時は、都議会の不信任案可決を受けて、議会解散の暴挙に出るのではとの憶測も流れたが、さすがにそこまでは理性を失ってはいなかったようだ。

 今回の政治資金騒動は、舛添氏辞任の方向でしか決着しないことは誰の目にも明らかだった。
 それなのに、彼の執念を感じさせるような粘り腰に、「なぜ?」という疑問が常にあった。
 冷静な判断ができなくなっているのでは?
 意固地になっているのでは?
 リオオリンピックの閉会式に出たいから?
 いろんな憶測があるが、本心はわからない。

 リスクマネジメントの視点で今回の騒動をとらえると、舛添氏の対応は最悪のケースとなった。
 彼にとって最悪の事態は、辞任に追い込まれることだが、その最悪の事態を避けるための行動が、自らを追い込むことになってしまった。
 最悪の事態を避けているつもりが、さらに悪い状況を招いてしまう。
 彼としては、最悪の事態を最悪の状況で迎えることとなった。

 潮目が変わったのは、第三者による調査報告が公表された時点だ。
 彼としては問題を先送りするうまい戦術だったが、役者が悪すぎた。
 元検事の弁護士の態度が不遜で一般の人々を見下すような物言いで、反感を買った。
 厳しい第三者による調査どころか、雇われ弁護士が依頼人の言い分を代弁しているだけだった。
 都議会の審議では、細かい事実関係の検証が行われた。
 細かい事実の確認になればなるほど、舛添氏の答弁はあいまいになった。
 このことが、疑惑を深めた。
 肝心のところは、何もわからないままだ。
 正月の家族旅行の宿泊先で、出版社社長と政治的会合を行なったということすら、事実を証明できなかった。
 出版社社長は実在しないのでは?
 実在したとしても、正月に会っていないのでは?
 単なる家族旅行の経費を政治資金でまかなっただけでは?
 疑惑が最大限に膨らんだ状態での辞任となった。

 スキャンダル発覚初期に潔く辞任していれば、細かい疑惑までほじくり返されずに済んだ。
 政治家としてのダメージも最小限にとどまり、場合によっては再挑戦の機会も得られたかもしれない。
 ところが、ここまで傷が深くなると、辞任したぐらいでは収まらなくなってしまっている。
 一連の疑惑をきっちり解明しないことには都民が納得しない。
 政治資金報告書の不実記載、領収書の偽造などということになると、明確な刑事事件に発展するからだ。
 実際、それが疑わしい案件がそこかしこに見つかっている。

 舛添氏のいまの心境は分からないでもない。
 ほんの数万円程度の政治資金処理の問題で辞任させられることの悔しさ。
 都知事として何の実績も残せないまま終わることの未練。
 猪瀬知事の辞任を受けて、絶好のタイミングでつかんだ都知事の座をこんな無様な形で手放すことの無念。
 いろんなところに恨みを残したままの辞任だろう。
 
 振り返ったとき、辞任して事態を収拾できる最後のチャンスは、第三者による調査結果を公表する段階だった。
 そこで、違法は一件もなかったことを明確に示したうえで、「不適切な処理があったことを認め、責任を取って辞任する」と表明すれば、道義的な責任を取ったということで決着できたはずだった。
 その後の、細かい事実関係までほじくり返されずに済んだ。
 それまでの過熱したマスコミ報道では、すべてが疑惑まみれで真っ黒という印象だったが、それが、真っ黒は1つもないことを明確にできただけでも高得点。
 この時が、傷をもっとも浅く済ませることができた最後で最大のチャンスだったと言える。
 だが、彼はそのチャンスを捨て、多くを望みすぎ、破滅した。

 彼に政治家としての再起の目はない。
 テレビタレントとしての再起の目も失っているだろう。
 最悪の状況を迎えての幕引きとなった。






posted by 平野喜久 at 11:09| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月14日

都議会の集中審議:攻め手の力不足がひどい

 都議会で、舛添知事の政治資金問題について集中審議が始まった。
 各会派の議員から一問一答形式の厳しい追及が行われるということで、注目された。
 ところが、期待に反して、大した成果が出ずに終わったようだ。

 理由は、攻め手の力不足に尽きる。
 質問者の議員は、非常に辛辣な言葉で追及し続けていたが、用意してきた文章を読み上げているだけ。
 その文章の読み上げすら、緊張からか読み間違いや読み飛ばしを繰り返す始末だ。
 知事の答弁の弱点を突いて、さらに畳みかけるような質問をするわけでもなく、用意してきた質問を一通り読み上げて終わったという印象が強い。
 事前準備を怠らないのは結構なことだが、本当に追及するのであれば、相手の目と表情を見ながら、その時の言葉の勢いでぶつからなくてはならないはず。
 中には、質問をするのではなく、知事たるものはどうあるべきかという説教臭い持論を展開する質問者があり、とても追及になっていない。
 答弁者に語らせなければいけないのに、質問者が語ってしまっている。
 身構えて臨んだ舛添氏としては拍子抜けだったのではないか。
 たぶん、都議会議員らは、追及型の質問に慣れていないのだろう。
 通常の議会でも、準備してきた質問を読み上げ、用意された答弁をいただいて終わり、ということをやってきて、それが習慣になっているのかもしれない。

 ただ、自民党の鈴木議員の質問の中に、きらりと光る部分があった。
 それは、一連の政治資金疑惑に終始するのではなく、不自然な都市外交と、遊休地の韓国学校への貸与の問題を取り上げたことだ。
 国の外交を飛び越えて勝手に韓国の朴大統領に会いに行ったり、地元民の意向を無視して韓国学校の誘致を進めたりと、都政をないがしろにする政治姿勢を問いただした。
 そもそも、都民の舛添都知事への不信感の始まりはここにあった。
 資金問題は騒ぎを大きくするきっかけに過ぎない。
 鈴木議員は、舛添都知事への都民の不信感は、基本的な政治姿勢にあることを把握していたのだろう。
 今回の審議で、舛添氏から「遊休地の利用については、地元民の意向を無視して進めることはない」と言質を取ることに成功した。
 この部分は、近隣諸国に関連する話なので、マスコミは黙殺している。



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2016年06月13日

発生確率が低いところこそ警戒せよ:全国地震動予測地図2016年版

 6月10日、地震調査研究推進本部地震調査委員会は、確率論的地震動予測地図の2016年版を公表した。
 この地震動予測地図は、1,2年ごとに新たな研究データが出るたびに最新のものに更新している。
 前回は、2014年12月だったが、1年半ぶりの更新だ。
 2016年1月時点での確率を表示しているので、熊本地震の影響は考慮されていない。
 
 2014年版と2016年版とを見比べても、はっきりした変化は見られない。
 よく見ると、関東から四国にかけての太平洋側で、少しずつ確率が上昇しているのがわがる。
 あと、内陸では長野県の一部で確率の上昇している部分が見られる。

 それよりも、今回の予測地図の意味は、熊本地震直前の地震発生確率が分かるところにある。
 九州は全体に発生確率の低いことが一目でわかる。
 ピンポイントで確率を調べてみると、熊本は7.6%だった。
 千葉市が85%、横浜市が81%と表示される一方、熊本市の7.6%はいかにも確率が低い印象だ。
 2014年版では、熊本市の確率は7.8%だったので、むしろ2016年版では確率は小さくなっている。
 ほかの地域では少しずつ確率を上昇させているところが多い中、確率が下がっているのは珍しい。
 これが、熊本地震前に公表されていたら、熊本の人たちを油断させる効果しかなかっただろう。

 今回の地震動予測地図の公表の目的は、ここにあったのではないだろうか。
 つまり、地震発生確率は、あくまでも計算上の数値であり、次に発生する地震を予想するものでもないし、地震の起きない地域を特定するものでもない、ということだ。
 本来、この地図は、地震発生の確率の高い地域に警戒を呼び掛けるのが目的だったが、一方で、発生確率の低い地域に油断させるような影響を及ぼしてきた。
 近年起きた大きな地震はいずれも、発生確率が低く見積もられていた地域ばかり。
 阪神淡路、新潟中越、能登半島、東北地方太平洋、そして、熊本。
 発生確率が低くみられている地域は、準備が不十分なために、実際に地震が起きた時には、被害が大きくなる傾向がある。
 地震発生前、熊本県のウェブサイトでは、地震発生の少なさをアピールして企業誘致を呼び掛けていた。
 日本地図を表示して、余震の続く東北地方を「危険地帯」、過去120年間地震のない熊本を「安全地帯」と説明する念の入れようだった。
 行政がこのような認識だったので、当然ながら、地震への備えはまともにできているはずがない。
 
 日本列島に住んでいる以上、地震の起きないところはない。
 どこにいても、地震発生の恐れは常にある。
 「地震の起きないところはどこ?」という発想自体がナンセンスだと心得るべきだ。

 この予測地図の活用の仕方はこうだ。
 発生確率の高い地域は、大地震の発生は避けられないので、準備を確実に進める。
 発生確率の低い地域は、不意打ちの地震に見舞われる恐れがあるので、準備を怠らない。
 怖いのは、油断しきっている地域を襲う不意打ちの地震ではないだろうか。
  
 
posted by 平野喜久 at 10:23| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする