2015年09月08日

責任者がいないまま漂流した五輪エンブレム事件

 五輪エンブレム事件。
 白紙撤回で、公募をやり直すことでひとまず事態収拾に至った。
 だが、問題は何も解決していない。
 問題は多岐にわたる。

1.このような問題含みのデザインがなぜ選ばれてしまったのか。
 プロのデザイナーから見て、佐野氏のデザインは魅力的に見えたのだろう。
 確かに玄人好みだなという印象を受ける。
 個人が試作したデザインがネット上にアップされていた。
 桜、折鶴、扇子などをオリンピックカラーでデザインしたものだ。
 これらは、一目見て、カラフルできれいな印象を受けるのが特徴だ。
 だが、これらは素人くさい。
 プロの審査員としては、こんな見た目がきれいなだけのデザインなんか選ぶ気にならなかったのだろう。
 それで、佐野氏のデザインに白羽の矢が立った。
 五輪エンブレムのデザイン候補の中でも、この地味で落ち着いたデザインは異質な存在感を主張していたのかもしれない。
 更に、佐野デザインは展開例の豊富さに特徴があった。
 細かいパーツに分解して組み合わせれば、無限のバリエーションができ上がる。
 オリンピック全体を統一的なイメージで装飾できる独特の要素を持っている。
 ここも、プロが魅力に感じたところに違いない。
 どうして、佐野デザインが選ばれたのかといえば、それが玄人好みだったから、ということだろう。
 だが、これがプロの勝手な価値観を国民に押し付けることになり、世論の反発を招いた。

2.なぜ2回も修正依頼が行われたのか。
 デザインの選考が行われたのが、14年11月18日。
 選考結果が組織委に報告されたのが、22日。
 そこから、類似商標の調査が始まる。
 調査開始まもなく、類似商標が見つかった。
 そこで、12月中旬に佐野氏に修正依頼がかけられた。
 この修正依頼をしたのは組織委だ。
 さて、この修正依頼を決定したのは誰なのか。
 審査委員会に相談もなく、勝手にデザイナーと交渉し、原案を修正させるとはどういう権限だろう。
 15年2月上旬に修正案が上がる。
 だが、この修正案は躍動感がないとして却下。
 再修正を依頼した。
 さて、この修正案にダメ出ししたのは誰なのか。
 審査委員会は関与していない。
 躍動感があるなしというデザイン評価を組織委の人間がやってしまっているのだ。
 そして、4月上旬に最終案が提出された。
 それで、OKとなった。
 さて、このOKを出したのは誰なのか。
 ここでも、デザインの出来不出来を組織委の人間が判断してしまっている。
 審査委員会には発表1週間ほど前に最終案の提示があったという。
 審査委員は、原案とまったく違うものに変わっているのを見て驚いただろう。
 審査委員長は、発表直前であれこれ言っても仕方がないと判断し、了承したという。
 審査委員の中の1人は、この最終案を選んだ覚えはないとして、反意を示した。
 残りの審査委員は、委員長の判断に従った。
 実に、不思議なことが起きており、不透明感がひどい。

 組織委の人間が、修正で問題を切り抜けようとしたのは、役人特有の判断だったのではないか。
 審査委員会から上がってきた原案は、類似商標が見つかった。
 この問題をどう処理するか。
 本来なら、審査委員会に差し戻し、再選考ということになるはず。
 だが、組織委の担当者は、姑息なことを考えた。
 佐野氏に頼んで少し修正してもらえば簡単に問題はクリアできる。
 それで、2度にわたって修正依頼。
 類似商標の見当たらない最終案で落ち着いた。
 こんなところだろうか。

 それにしても、「躍動感がない」という理由で行われた2回目の修正依頼は、異常だ。
 躍動感のあるなしを、いったい誰が判断したのだろう。
 その判断は、デザインの根幹にかかわる重大な判断のはずだが、組織委の担当者に、そんな判断ができるのか。
 そして、左下の三角形を削除することでOKにしたのは誰のなのだ。
 ここが一番不思議なところだ。
 もしかしたら、修正案というステップはなかったのではないか。
 2回目の修正依頼もなかったのではないか。
 最初の修正依頼で、いきなりベルギーロゴに似ている最終案が出てきたのではないか。
 それだと、原案からの飛躍がありすぎるので、その変化の途中経過を見せるために、最終案の前に修正案があったことにする必要があったと考えると、自然に流れが理解できる。
 
3.なぜ、白紙撤回の判断が遅れたのか。
 最大の責任は組織委にあるはず。
 だが、組織委は会長はじめ名前だけの役職者が名を連ねるだけで、実質は官僚の事務部門が運営している。
 事務部門には権限はない。
 ことを問題なく進めることにだけ責任を負っている。
 最大の関心は、問題なくことが進むかどうかだけ。
 当然、五輪エンブレムに問題が発生した時は、白紙撤回などというドラスティックな決断などできるはずがない。
 とにかくこのままやり過ごすこと以外に選択肢はない。
 誰も責任を負わず、意思決定の権限も持たない状態で、五輪エンブレム事件は漂流し続けた。
 組織委の森会長には、様々な方面から白紙撤回の進言があったという。
 だが、新国立競技場の白紙撤回に続いて、エンブレムもということになると、世界的な信用を失うことを恐れ、撤回の選択肢は初めから存在しなかったようだ。
 結局、森会長は、今回の白紙撤回の意思決定に関与していない。
 「ひどい目にあった!」と憤慨しているだけだったという。
 この白紙撤回の意思決定も不透明だ。
 武藤事務総長、永井審査委員長、佐野デザイナーの3人で話し合って、撤回を決めたという。
 明らかに意思決定の場所がおかしい。
 この案件は、組織委として判断しなければならないものだ。
 組織委が組織としてまったく機能していない。
 
 結局、今回の騒動は、誰も責任を取っていない。
 責任の所在は曖昧のまま。
 遠藤五輪担当相は、組織委、審査委員、デザイナーそれぞれに責任がある、などと曖昧答弁。
 この五輪担当相の役割もよく分からない。
 どんな権限と責任を負っているのか。
 彼の面構えを見ただけでも、重大な責任を負う覚悟はまったくないのがよく分かる。
 このような無用なポストばかり増やしても意味がない。 

 組織委は問題を抱えたまま、本番まで継続する。
 他にも同じような問題が続出しそうななのが心配だ。
 



posted by 平野喜久 at 17:12| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

佐野氏代理人通じ報道機関に申し入れ:五輪エンブレム事件

 東京スポーツの報道によると、佐野氏が代理人の弁護士を通して報道機関に忠告文を送付したらしい。
 昨今の過熱報道に対する苦情だ。
 別人によるデザインをあたかも佐野氏のデザインであるかのように報道したり、創作時期を確認もせず、単に似ているだけで、著作権を侵害しているかのような報道があることに不満を述べている。
 最後には、次のような脅し文句で締めくくっている。

「万が一、本書簡到達後も適切な取材に基づく客観的な報道が為されず、同様の取材・報道態勢が続くのであれば、名誉棄損等の法的責任を伴うものと判断した段階で、直ちに法的措置を講ずると共に、関係機関等に対して人権侵害を理由とする申立てを行う予定であることを、念のため申し添えさせていただきます」

 弁護士らしい文章だという印象を持つ。
 いつも、名誉棄損で訴えるぞと脅して相手を黙らせる方法を取ってきたのだろうか。
 だが、今回の騒動の本質が見えていない。
 こんなコメントを発したら、余計に騒動を拡大させるのは明らかではないか。
 どうして、エンブレム取り下げ後も、パクリ疑惑が告発され続けているのかが分かっていない。
 五輪エンブレムについては、原案も修正案も、模倣していない盗作していないの一点張りで突っぱねて、一般国民からの誹謗中傷がひどいから取り下げると一方的に言い捨てた。
 その後は、取材にも応ぜず、記者会見も開かず、姿を消したまま。
 この姿勢が騒ぎを長引かせているのだ。
 報道が過熱しているとしたら、それは、佐野氏側の世論への敵対的な姿勢と、情報発信のなさに原因がある。
 世論を鎮める唯一の方法は、情報開示しかない。
 なのに、情報開示できない。
 たぶん、損害賠償に発展することを恐れて、とにかく強気で疑惑をはねのけることしかできないのかもしれない。

 報道の中に、別人のデザインを取り上げている者があるのなら、その誤りを指摘すればいい。
 制作時期の時系列的に、模倣するのは不可能なケースが含まれているのなら、それを指摘すればいい。
 なぜしないのか。
 そんな指摘をすれば、それ以外はパクリの可能性ありということを教えているようなものだからだ。
 だから、報道全体を捉えて、間違った報道が行われているという言い方しかできない。
 
 コメントの中には、次のような一文もある。
「そもそも、思想・アイデアそのものが著作権法に基づき保護されるものではないことは、著作権制度の国際的かつ基本的な原則」
 これは、当たり前の法解釈を述べているだけ。
 これで、何を言おうとしているのか、佐野氏の何を弁護しようとしているのか意味不明だ。
 思想・アイデアを模倣しても著作権法に違反しないということは、佐野氏は、思想・アイデアを模倣しただけと言いたいのか。
 ということは、思想・アイデアの模倣は認めるということなのか。
 佐野氏は、ベルギー劇場ロゴは見たことはないと言っているし、チヒョルト展覧会のロゴは記憶がないと言っているのだ。
 思想・アイデアを模倣するどころか、他のデザインの存在すら知らなかったと言い切っている。
 代理人は何をしようとしているのか、よく分からない。

 今回の騒動は、法的に違反していることが原因ではない。
 だから、いくら、法的に問題ないことを強調したところで、騒ぎは収まらない。
 今回の騒動は、この代理人の力量を超えてしまっているようだ。
 もしかしたら、一連の佐野氏の対応のまずさは、この代理人の指導のせいだったのか。

 報道機関に対して、名誉棄損で訴えると脅しをかけているが、実際に訴えることはない。
 なぜなら、本当に訴えたら、裁判で報道内容の真偽を細かく検証されてしまうからだ。
 すると、いまいろいろ出ているパクリ疑惑のうちの一部は、疑惑が晴れたとしても、その他はパクリが確定してしまうことになる。
 いまのままなら、疑惑という曖昧な状態のままやり過ごせるのに、裁判で白黒がはっきりしてしまうようなことはできない。
 自分から積極的に情報発信してはっきりさせようという気がない者が、裁判に訴えることはありえない。

 危機対応のまずさにより事態を深刻化させ、立場をどんどん悪くした失敗事例として記録されそうだ。








 
posted by 平野喜久 at 00:27| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月04日

エンブレム騒動は、成功者への嫉妬ではない

多摩美術大学の広告作品にも「パクリ疑惑」が浮上。
「MR_DESIGN」広報担当者は15年9月3日夜、事実無根と全面否定した。
 今までは、メディアの取材に対しては「担当者がいない」としてコメントを避けるのが通例だったが、いきなり全面否定のコメントを出した。
 たぶん、取材に応対したデザイン事務所の人間が、その時の勢いで強い物言いになったのだろう。
 だが、これは、デザイン事務所の公式声明として報道され、拡散される。
 今回のパクリ疑惑は、誰が見ても元写真と問題のデザインが完全に一致し、似ているなどという程度の話ではない。
 事実無根などと強気に突っぱねているだけでは、騒ぎは更に大きくなる。
 騒ぎは多摩美大に及ぶ。
 多摩美大はこの問題をどのように処理するのかに関心が高まっている

 今回の騒動は、すべて佐野氏の対応のまずさが引き起こしている。
 8月5日に佐野氏は記者会見を開いた。
 ベルギーのデザイナーから劇場ロゴにそっくりであることを指摘されたのを受けてだ。
 その会見で、佐野氏は、全面否定の姿勢に出た。
 ベルギーロゴは見たことがない、両者はまったく似ていない、と強く主張した。
 更に、「私は人のものをパクるなんてことはしたことがない」と言い切った。
 この対応に、ネット世論が沸騰したのだ。
 過去の佐野氏のデザインの検証が始まったのはそれからのこと。
 検証が始まると、次々に疑わしい事例が見つかる。
 中には、言い逃れのできないような完全コピーの事例まで見つかり、騒ぎは拡大し続けた。
 
 これに対し、佐野氏は、サントリートートバッグのデザインはスタッフのミスということでやり過ごそうとした。
 同時に、「エンブレムは自分ひとりでやったので問題ない」と主張。

 この逃げの姿勢にネット世論は更に反発。
 トートバッグ以外の類似事例が次々に暴かれていく。
 この段階では、みんなで佐野氏のあら捜しをしているかのような雰囲気だった。
 中には的外れな指摘もあった。
 時には、誹謗中傷の投稿が見られたのもこの時期からだ。

 よく、今回の騒動を評して、「匿名の2チャンネラーによって、集団暴行を受けているかのよう」「成功者に対する嫉妬により引きずり落とそうとしている」とコメントする者もあった。
 しかし、今回に限っては、これはまったく見当違いだ。
 なぜなら、五輪エンブレムに選ばれて浮かれている佐野氏に嫉妬して始まった騒動ではないからだ。

 ネット世論が最大に沸騰したのは、8月28日の組織委の記者会見以降だ。
 エンブレムの原案を公開し、もともと劇場ロゴとは似てなかったことを証明しようとした。
 そして、五輪エンブレムに問題はないとして、このまま使い続けると宣言した。
 これが、ネット世論をたきつけることとなった。
 金曜日であったこともあり、その夜から土曜日日曜日にかけては、2チャンネルは五輪エンブレム一色となった。
 レススピードが1時間に5000を超える沸騰ぶりだ。
 よく、ネットは暇人とバカの遊び場と揶揄する人もいるが、この時の様子は全く違う。
 暇人が暇つぶしに遊んでいるような様子ではなかった。
 もちろん、レスの中には取るに足らない落書きも多いが、今回は鋭い指摘や、新たな暴露情報があふれていた。
 明らかに業界の専門家ではないかと見られる意見もあった。
 書き込みをする人だけではなく、多くの人がここに注目していたことだろう。
 とにかく、この時点で2チャンネルが情報の最前線だったからだ。
 刻々と新たなデータが発掘された。
 驚くべき発見が相次いだ。
 2チャンネルから目が離せなくなった。
 深夜でもレスは流れ続けた。
 24時間体制で、パクリ疑惑が暴かれ続けたのだ。
 
 この時のネット世論は、これほど問題が上がっているにもかかわらず、このまま強行突破しようとする組織委への不信感が大きかった。
 28日の組織委に対する義憤と言ってもいい。
 それが、土日の爆発エネルギーとなって噴出したのだ。
 




 
 
posted by 平野喜久 at 12:28| 愛知 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月02日

展開例の豊富さにこだわった理由:五輪エンブレム

 一連の組織委員会の会見の中で何度も出てきた言葉に、「展開例」というのがある。
 佐野エンブレムを選んだ理由に、この展開例の豊富さが高く評価されたのは間違いない。
 確かに、佐野エンブレムは、○▲■という単純なパーツに分解できるので、その組み合わせで、多様なデザイン展開が可能だ。
 多様でありながら、イメージの統一性のあるデザイン展開となる。
 エンブレムとして看板やポスターだけではない、キーホルダー、Tシャツ、うちわなどの関連グッズにも展開できる。
 更に、競技会場の装飾にも同じデザインイメージを展開できる。
 佐野エンブレムのパーツを利用したモーションピクチャーが公開されていた。
 これなどは、非常に動きのあるインパクトのある映像に仕上がっている印象だった。
 デザインパーツをフレームに配置して、競技映像をバックに配置すると、非常にスタイリッシュな映像に仕上がる。
 オリンピックの競技放送で、このようなスタイリッシュなオープニング映像が流れたらカッコよさそうだ。
 これは、悪くないという印象を受けた。

 たぶん、デザイン界の専門家が狙っていたのは、これだったのではないだろうか。
 オリンピック全体を統一的なデザインイメージで覆い尽くすというアイデアがあったのかもしれない。
 それで、多様なパーツ展開できる佐野エンブレムでないと困るのだ。
 パーツの色が暗くて地味なのは、フレームデザインに使った時、背景の映像を浮き立たせるためだ。
 そう考えると、どうして佐野デザインなのかということだわりに納得がいく。

 この構想は、今回の騒動で撤回となった。
 デザイン界の人びとから、「一般国民が理解しない」という侮辱的な言葉が出るのは、せっかくの壮大な構想が国民の低レベルの騒ぎで台無しになってしまったことへの恨みだろうか。

 だが、この壮大な構想も、デザイン界の一部の人間が、勝手に構想していたもののようだ。
 オリンピック全体の統一的な構想として確立したものではなかった。
 当然、この壮大な構想は前面に出してアピールすることもできず、結局、国民には理解できなかった。
 最も致命的だったのは、発表されたエンブレムデザインが、あまりにもダサかったことだ。
 デザインパーツによるデザイン展開は素晴らしかったとしても、エンブレムだけ見ると、あまりにもダサい。
 これで、国民の支持を失ってしまった。

 エンブレムデザインを一般の人気投票で選んだら、たぶん、ただ色がきれいなだけのデザインが選ばれるだろう。
 デザイン界の人たちは、それを一番恐れているのに違いない。






 
posted by 平野喜久 at 11:43| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

佐野氏コメント発表:被害者としての立場

 昨日、組織委が五輪エンブレムの撤回したことを受けて、佐野氏がウェブサイト上にコメントを発表。
 エンブレムデザインを取り下げる理由を説明した。

 理由は2つ。
 メディアの間違った報道により、悪いイメージが増幅したこと。
 自分や家族に誹謗中傷や嫌がらせが相次いでいること。

「家族やスタッフを守る為にも、もうこれ以上今の状況を続げることは難しいと判断し、今回の取り下げに関して私自身も決断致しました。」
 とある。
 騒ぎが大きくなって、耐えられなくなったので、取り下げることにした、という言い分だ。
 不当な威力業務妨害にあって、やむなく取り下げたという図式にしようとしている。
 これは、国民の納得が得られないだろう。

 彼はまずメディア批判をしている。
 「一部のメディアで悪しきイメージが増幅され、私の他の作品についても、 あたかも全てが何かの模倣だと報じられ、」
 とコメント分で言っているが、これはおかしい。
 ネット上では大炎上だったが、テレビや新聞雑誌などの一般メディアは、むしろ控えめな報道だった。
 佐野氏擁護のコメントをするコメンテーターの方が目立っていたぐらいだ。
 これは、必要以上に騒ぎを大きくしないようにとの配慮が働いていたのだろう。
 少なくとも、騒ぎを面白おかしく増幅したような報道を見たことがない。

 一連の騒動は、すべて2チャンネルを中心としたネット主導によるものだ。
 パクリ疑惑のすべては、2チャンネル上で次々に暴かれていった。
 当然、中には見当違いな指摘もあったかもしれない。
 しかし、見当違いの指摘は、膨大なレスポンスの洪水の中にたちまち流され、信憑性の高いものだけがクローズアップされていく。
 金曜日に組織委が原案を公開したことから、土曜日日曜日に膨大なレスが2チャンネルにアップされ、その中から、原案のパクリ疑惑、展開例の写真盗用疑惑がクローズアップされていった。
 
 写真盗用については、コピーライトの表示を消すなどの加工までしていることから、その悪質性が認識された。
 トートバッグについては、部下が勝手にやったこととして言い逃れてきたが、エンブレムデザインについては自分ひとりで行なったものと堂々と宣言していただけに、今回のパクリ疑惑は逃げ場を失うこととなった。
 
 一連の騒動を通して、佐野氏のデザイナーとしての姿勢が浮き彫りになった。
 他人の著作物をコピーしたり盗用することに抵抗のないデザイナーなのだなという印象を持つ。
 たぶん、普段からこのような姿勢で仕事をしてきたのだろう。
 それが、今回のエンブレムデザインの過程でも、当たり前に行われていたという印象が強い。

 展開例の写真については、初めてエンブレムが発表されたときに、既に公開されていた。
 40日も前の話しだ。
 それと同じものを、エンブレムデザインだけ原案のものに差し換えて、今回、紹介された。
 「この展開例は、内部資料として提出したもので公開を想定していなかった。ミスだった。今は既に著作者にアプローチしている」との言い訳をしているが、40日間もの間、何をしていたのか。
 今回初めて、写真盗用が指摘されたために慌てて釈明しているが、本当に意識があれば、40日前の段階で、この写真が公開されることを知り、著作者の許諾を得ようとしていたはずだ。
 著作者自身は、ブログ上で、無断で写真が使われたことに不満を表明している。
 既に著作者にアプローチしているというのは、嘘だということがばれた。

 著作権に対する無頓着さは、原案の応募にも表れている。
 原案のエンブレムデザインは、Tに赤丸の非常にシンプルで分かりやすいデザイン。
 こんなシンプルなデザインなら、類似デザインが他にあることが心配になって当たり前。
佐野氏のコメントには、つぎのようなくだりがある。
 「デザイナーにとっては大舞台であって、疑いをかけられているような模倣や盗作は、原案に関しても、最終案に関しても、あってはならないし、 絶対に許されないこと」
 これほど厳しい姿勢でデザインの応募に臨んでいたはずなのに、類似商標が簡単に見つかってしまうのはなぜなのだ。
 類似商標は、誰でも特許庁のサイトで簡単に検索可能だ。
 そんなことすらせずに、こんなシンプルなデザインを応募してしまったのか。
 ここには、デザインに対する厳しい姿勢は感じられない。

 彼は、著作権、オリジナリティに対する考えが無頓着すぎる。
 プロのデザイナーであれば、著作権や類似性は、もっとも神経を使わなければならないはずだ。
 これは、食べ物を扱うプロが衛生管理に最も神経を使わなければならないのと同じだ。
 
 騒動の中で、「こういうシンプルなデザインだから、類似のデザインが見つかるのは当たり前」と言って佐野氏を擁護する意見がよく聞かれた。
 だったら、類似のデザインが簡単に見つかってしまいそうなデザインを扱っているのであれば、余計に、神経を使って慎重に対応しなければいけないだろう。
 
 佐野氏は、結局、エンブレムデザインの盗用は否定し、いわれなき中傷により被害を受けたことを理由にデザインを取り下げることにした。
 ここで過ちを認めたら、今後、膨大な損害賠償の責を負わされる恐れがあり、それを見越しての防衛線なのだろう。
 一般の信頼は失ったが、デザイン界では立場を失っていない。
 今後も、デザイン界という特殊な世界で守られながら、やっていけそうだ。
 ここが、小保方氏と違うところだ。

 ネット上では騒動は終わっていない。
 新たなパクリ疑惑はなおも発掘され続けている。
 佐野氏がデザインしたと言われる多摩美大のポスターに、他人の写真転用が指摘されている。
 このポスターで、あるデザイン賞を受賞しており、その受賞が、今回のエンブレム応募の条件になっていたのではという情報もある。
 ことは、底なし沼の様相を呈している。







posted by 平野喜久 at 10:44| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月01日

組織委の会見:五輪エンブレム撤回

 五輪組織委員会の武藤事務総長が記者会見を開いた。
 五輪エンブレムの使用中止についてだ。
 武藤氏の説明は毎回、要領を得ない。
 だらだら話し続けるので、どこに要点があるのかが分かりにくい。
 
 記者会見で言っていた要点は次のようなことだ。
・金曜日に公開した原案は、ヤンチヒョルト展のロゴをパクったものではなく、完全オリジナルだ。
・佐野氏は、ヤンチヒョルト展には行ったことがあるが、その時のロゴがどんなだったかは記憶にない。
・デザイン界の専門家が見れば、両者はまったく違うが、一般国民には分からない。
・展開例の写真転用は、公開しない内部資料として作ったもので、デザイン業界ではよくあること。
・佐野氏は、五輪に貢献したいと思っていたが、自分や家族に誹謗中傷がひどい。
・パクったものではないが、原作者としてエンブレムを取り下げたい。

 この記者会見は、最悪だ。
 国民への釈明になっていない。
 むしろ、一般国民を小ばかにしたような物言いがそこかしこに見られた。
 これは、デザイン界と一般国民を対立関係においてしまっている点で失敗だ。
 審査委員長は自分らのことを「デザイン界」と称し、一般国民とは隔絶したところに存在する特別な人間であるかのような印象を受ける。

 この記者会見は、誰に向けたものか。
 それは、まさに一般国民に向けたものだ。
 なのに、審査委員長とデザイナーの言い分を一方的に伝えるだけ。
 国民がどうしてこれほどまでに今回のエンブレムに不満を持っているのかが、全く分かっていない。
 これでは、どうしてエンブレムを撤回するのかが分からなくなる。

 模倣でもなく、似てもいない。
 なのに、撤回する。
 それは、理解の悪い一般国民が騒がしいから。
 誹謗中傷が激しいから。
 こんな説明に誰が納得するか。

 どうして騒ぎがこれほど大きくなったのか。
 その理由は、すべて一般国民にあると本当に思っているようだ。
 たぶん、今回の騒動を受けて、責任を取る人は誰もいないだろう。
 処分を受ける人も誰もいないだろう。
 佐野氏は、損害賠償請求を受けることもなく、このままフェードアウトするだろう。
 審査委員もそのまま継続するだろう。
 組織委員会もそのまま。
 すべてがうやむやのまま、次のデザイン選考が始まる。
 本当にこれでいいのか。


 
posted by 平野喜久 at 18:52| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

五輪エンブレム見直しへ:本日19時に記者会見

 五輪組織委員会は、五輪エンブレムについて見直しを決定した。

 先週の金曜日に組織委が記者会見し、応募段階の原案を公開し、もともとベルギー劇場のロゴとは全く違うものだったことを示そうとした。
 ところが、その原案が別のロゴにそっくりであったり、展開例を示す画像が他人のブログからの無断転用ではないかとの疑惑が次々に指摘されるところとなり、却って窮地に追い込まれることとなった。
 そして、ついに五輪エンブレムの見直しということとなった。
 記者会見では、今後もこのまま継続使用すると強気の発言に終始していたが、世論の圧力に抗しきれなかった。
 これが、ネット上だけの騒ぎで済んでいれば、このまま強行突破もできたかもしれないが、テレビメディアまで通常のニュース枠で取り上げるまでになり、万事休すとなった。

 ことは、五輪エンブレムを取り下げたから終わり、というわけにいかない。
 どうして、これほど問題含みのデザインが最優秀作品として選ばれてしまったのか。
 そこには、初めからデザイン関係者の間の申し合わせで、コンペが出来レースになっていたのではないのか。
 人々の疑念は、審査員側、運営側の姿勢に向かっている。
 本日午後7時から記者会見を開くという。
 この辺りの疑念をしっかり晴らすことができるかどうか。
 これまでの組織委の姿勢を見ていると、今日の記者会見も責任をあいまいにした逃げの一手に終わりそうな気配だ。
 もしかしたら、佐野氏個人にすべての責任を押し付けて切り捨てるかもしれない。
 STAP騒動の時の理研の対応がこうだった。
 このような対応になったとすると、最悪だ。

 今日の記者会見は非常に重要だ。
 この1回を最後の記者会見にできるかどうか。
 対応を間違うと、騒ぎは更に大きくなる。






 
 
posted by 平野喜久 at 13:05| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする