2016年03月30日

政府によるBCP認証制度の構想

 2013年、国土強靭化基本法が成立し、国が計画に基づき施策を推進する一方、地方でも計画の策定が進んでいる。
 ところが、この国土強靭化は、行政がやるべき公共事業というイメージがあるために、誤解を与えることになった。
 本来、国土強靭化とは、行政と民間が一体となって取り組むべき事業であるはずなのに、民間への普及がいまひとつ及んでいない。
 そこで、民間を巻き込むために、国土強靭化に貢献している民間企業を高く評価し、インセンティブを与える仕組みを作ろうということになった。
 
 民間企業の取り組む国土強靭化は、大きく3つに分類できる。
1、防災用品やサービスの提供。
2.事業継続のための自助活動。
3.社会貢献のための共助活動。
 これらの活動を国としても積極的に評価し、後押ししようというわけだ。

 ただ、1については国が評価すべきものではなく、市場が判断すべきものなので、ひとまず見送られることになった。
 そこで、市場に乗りにくい2の事業継続のための活動を国として認証し、取り組みを促進しようというところに焦点が絞られた。
 
 スキームとしては、外部委員による審査委員会を立ち上げ、そこが企業のBCPを審査し認証する。
 認証企業には登録マークの付与などのインセンティブを用意する。
 認証取得した企業は、それを積極的に広報に利用することができる。

 事業継続の認証規格としては、すでにISO22301があるが、あまりにもスペックが高度で、一般の中小企業には不必要にハードルが高すぎる。
 すると、一般に公表されているガイドラインやフォーマットに基づいて独自に策定したBCPで自己認証するしかないが、これではただの自己満足に終わってしまう恐れがある。
 それで、その中間の仕組みとして今回の認証制度の構想が立ち上がった。

 この動きは歓迎すべきだ。
 国土強靭化政策が行政レベルでとどまっており、一向に普及しないことにじれったさを感じていたが、ようやくそこに手が届くように泣てきた。
 民間企業のBCPは取り組みが随分進んではいるが、まだまだ一部の企業に限られている。
 BCPの必要性を認識している経営者は多いのに、なぜ、取り組みが進まないのかは、明らかだった。
 そのメリットがはっきりしないからだ。
 BCPに取り組まないと取引が続けられないとなれば、真剣に取り組むだろう。
 だが、取り組んでも取り組まなくても、ビジネスに何の影響もないとなれば、誰も真剣に取り組もうとしない。
 国のBCP認証制度は、その問題を解消しようとするものだ。

 この制度は、まだ構想段階であり、具体的な実行段階にはない。
 今後、実務レベルの詰め作業が行われるのだろう。
 実務レベルの話になると、いろんなところに問題や課題が出てきそうだ。
 まず、心配されるのが、認証の審査基準をどうするのか、ということ。
 その企業のBCPを調べて、形式的な要件が揃っていればOKとするのか。
 それとも、その企業の事業実態を勘案して、BCPの実効性まで審査するのか。
 形式的な要件に絞れば、基準は明確だし審査は簡単だ。
 だが、それは、形を整えた書類がそろったことが証明できただけ。
 BCPの目的は書類をそろえることではなく、実際に大災害に見舞われたときに、企業が生き残って事業を継続できるかどうかに重点がある。
 形式審査では、ただ書類を整えることに注力し、実際の防災対策は何も行われていないということにもなりかねない。
 これでは、何のためのBCPか分からない。
 むしろ、認証制度のために企業を形式的な取り組みに向かわせてしまったら、それは弊害の方が大きい。


 ならば、実態審査まで行うのか。
 すると、審査にはかなりの時間がかかり、審査員には高度な知識と能力が求められることになる。
 BCPは、単なる防災対策とは違うので、その企業の事業内容や経営実態を理解した上でないと評価できないはずだからだ。
 それは、ただ提出された書類を見ただけでは判断できない。

 更に、審査項目は多岐にわたり基準もあいまいにならざるを得ない。
 どこまでの対策ができていることをもって認証とするのか。
 この認証が国のお墨付きになるのだから、余計にその基準は重要になる。
 この内容ならOK、この内容では不十分。
 簡単にはこんな判断はできないだろう。

 今回の認証制度の構想は、方向性としては素晴らしい。
 ただ、運用面でまだまだかなりのハードルがありそうだ。





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2016年03月17日

ショーンK氏の経歴偽装:食品偽装と同列の不正

 ショーンK氏の経歴詐称疑惑が、週刊文春で報道された。
 その報道によると、英文のウェブサイトに記載されていた経歴がことごとく実体のないものだったという。
 ハーバード大MBA、パリ大学留学など学歴については、その実績が1つも確認できない。
 世界に7つの拠点を持つ国際経営コンサルタント会社を経営し、年商37億円を誇ると言われるが、その実態も確認できない。
 オフィスもレンタルオフィスかバーチャルオフィスで、とても年商37億円の国際コンサルファームには見えないらしい。
 更に、アメリカオフィスの納税額は、13年度では僅か2万円程度だという。
 コンサルパートナーとしてサイトで紹介されている人物の写真も、別人のものをネットで拾ってコピペしたもの。
 NY生まれのクオーターという触れ込みだったはずが、純粋な九州男児らしい。
 ルックスは、高校時代から激変しており、極端な顔面改造したことを伺わせる。
 これでは、単なる経歴詐称レベルではない。
 学歴も、職業も、血筋も、ルックスも、すべてが偽装。
 徹底的にあるイメージに沿って架空の人物を作り上げたという印象だ。
 彼としては、完全に虚構の人物に成りすまして、堂々とメディアに露出していたことになる。
 まずは、この大胆さと度胸に感服だ。
 人は、ちっぽけな嘘よりも、大胆な嘘に騙される。
 それを証明した。
 
 そして、日本人の外人コンプレックスは、今でも生きていることが分かる。
 外国人風の名前とルックスで、国際的に活躍しているように見せることができれば、簡単に人を信用させられるのだ。
 10年もの間、メディアに出続けていたが、誰もその経歴を疑おうとする者がいなかったのが驚き。
 それほど、彼の成りすましっぷりが徹底していたのかもしれない。
 
 報道番組でレギュラーのコメンテーターを務めていたが、すべて降板することになった。
 4月からの情報番組のMCの予定もキャンセルとなったようだ。
 当然だろう。
 これは、よく騒がれた食品偽装と同じだからだ。
 外国産の牛肉を国産と偽って販売。
 賞味期限を改竄。
 レストランメニューの材料表示を偽装。
 これらは、別に健康被害をもたらしたわけでも、客に迷惑がかかったわけでもない。
 ただ、表示が中身と違っていただけだ。
 なのに、猛烈な非難を浴び、事業者は社会的制裁を受けた。
 中には、廃業に追い込まれたところもある。
 消費者を欺いた報いは大きい。

 ショーンK氏の経歴偽装は、これと同じだ。
 この経歴を権威にメディアでコメンテータを務めていたとしたら、これは視聴者を欺く行為として、非難を浴びるのは当然だ。
 この時、実際に彼のコメントが素晴らしいかどうかは関係ない。
 経歴の怪しいコメンテータを使い続けたメディアの責任も大きい。

 ショーンK氏を擁護しようとする者もいる。
 脳科学者の茂木健一郎氏は「ショーンK氏の発言は的確で素晴らしい」「私は人を評価する時、学歴などは一切参考にしていない」と言っている。
 茂木氏は、「人は肩書で判断すべきではない」ということを言いたいのだろうが、その指摘は的外れだ。
 ここでは、ショーンK氏の発言が素晴らしいかどうかは問題にされていない。
 まず、経歴で人を判断するという世間の風潮があり、その世間を偽の経歴で騙してやろうというのがショーンK氏の行為だ。
 この、経歴を偽って世間を欺こうとする行為自体が非難されているのだ。
 彼の発言や人格がどれほど素晴らしかったとしても、この経歴偽装が正当化できるものではない。
 それは、食品偽装が、「どこの食材だろうと、おいしければいいじゃないか」では済まないのと同じだ。

 ショーンK氏には、本当の経歴でコメンテータになってほしかった。
 彼のコメントは、分かりやすくで偏りのない正統派の意見が多く、安心して聞いていられる。
 テレビに登場するコメンテータの中では、最もまともではないかと思えるぐらいだ。 
 だが、本当の経歴や本当のルックスでは、メディアは見向きもしてくれないのだろう。

 テレビコメンテータには、極端な思想の持主か、珍しい経歴の人物ばかりが採用される。
 こうして、一般の人びとの感覚とかけ離れた言説がメディアにあふれることになる。
posted by 平野喜久 at 22:26| 愛知 | Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月14日

地震予想屋の情報は有害ノイズにしかならない

 3月6日の「Mr.サンデー」という情報番組、「首都直下地震予測SP」とタイトルがあった。
 公式に新たな地震予測のデータが公表されたのかと思い、観てみた。
 結果、程度の低さに愕然としたというのが正直なところだ。
 地震予測として紹介されていたのは、あの村井俊治氏だった。
 村井氏は、GPS地震予測でメディアでしばしば取り上げられている。
 この番組では、過去に6回も取り上げているのだという。
 今回紹介されたのは、NTTドコモがLTEネットワークを活用して地震予測と津波監視に貢献する新しい取り組みを行うというもの。
 村井氏の地震予測にも貢献するという。
 これで、また一つこの地震予測の権威づけが行われてしまった。

 村井氏のGPS地震予測は、専門家の間では、ほとんど話題になっていない。
 なぜなら、検討するに値しない代物だからだ。
 研究論文もないので、この予測法の真偽を検証することもできず、専門家は評価のしようがないというのが実態だ。
 真っ向から専門家に否定されないのをいいことに、一般向けに怪しい地震予測を発信し続けている。
 
 村井氏を権威づけているのは、「東大名誉教授」という肩書だ。
 メディアで紹介されるときは、必ずこの肩書とともに村井氏が紹介される。
 本人も、ことあるごとに自分のことを「東大名誉教授として」とか「科学者として」と強調している。
 ここが自分を相手に信じ込ませる唯一の拠り所だということが分かっているからだろう。

 だが、彼のやっている地震予測は、とても科学者の研究とは思えない杜撰なものという印象がぬぐえない。
 まず、「的中率80%」という大げさな触れ込みが怪しさの第一。
 何をもって的中率と言っているのか不明だからだ。
 的中率には2つの側面がある。
 1つは、実際に起きた地震のうち、どれだけを予測していたか、というもの。
 もう1つは、予測した地震のうち、どれだけが実際に起きたか、というもの。
 地震予報屋が言う的中率はどういう計算根拠で言っているのか不明だ。
 たぶん、自分に都合のいい数字を抜き出して、計算しているだけなのだろう。
 まったく、客観的な検証に耐えられない。

 メディア報道によると、村井氏は、「過去一定期間に震度5以上の地震が25回発生したが、そのうち村井氏が予測していた地震は23回だった」という。
 ものすごい的中率を誇っているように見える。
 しかし、実態を知るとがっかりする。
 予測期間は6か月。
 予測エリアは非常に広い地域で曖昧。
 予測はマグニチュードではなく、震度。
 これなら当たって当たり前だ。
 日本中のいろんなエリアに常に地震予測を出し続けていれば、必ずどこかが当たってしまうことになる。

 これほど、いろんな地震を予想しまくっているのに、あの東日本大震災は当てることができなかった。
 日本史上最大級の地震であれば、その予兆は、いままで見たこともないような異常値を示していたはずなのにだ。
 しかも、この巨大地震の2日前には前震があった。
 大地震が2回も連続して起きているのだから、そこには異常値がくっきりと示されてなければいけないはずだ。
 ところが、彼は、この大地震を見逃したことを深刻に受け止めている様子がない。
 「国土交通省から提供されるデータが遅すぎたためにはっきりわからなかった」「予兆は掴んでいたが、発表をためらってしまった」ということで終わっているようだ。
 科学者の態度としては、非常に不誠実に見える。

 予測が震度で行われているのも非常に奇妙だ。
 地震の規模はマグニチュードで表され、1つの地震に必ず1つのマグニチュードが決まる。
 震度は、各地の揺れの大きさを表しているだけなので、同じ地震でも場所によって揺れの大きさはまちまちだ。
 局地的に地盤の柔らかいところがあれば、そこだけ揺れが大きくなることもある。
 1カ所だけでも震度5を観測したところが見つかれば、当たり、となる。
 マグニチュードではなく、震度で予測しているのは、その方が当たりやすいからではないか。

 GPS地震予測は、どのように行なっているかというと、全国にある1300カ所の電子基準点のデータを取り寄せて、各点の地盤の上下動を調べるのだという。
 短期的に大きな変動が起きたときが異常値の発生とみて、地震発生の前兆とする。
 ここに大きな問題がある。
 地震発生前に地盤の上下動があるのか、ここがまず検証できていない。
 GPSデータでは時々異常値が出るが、それは気象条件などノイズによるデータの揺れと国土交通省では解説している。
 だが、村井氏はそんな警告はお構いなし。
 異常値は、すべて地震の前兆と捉える。
 このような異常値は、日本中いろんなところで常に出るので、そのたびに新たな地震予測が出ることになる。
 そのうちにどこかで実際に地震が起きると、「大当たり」となる。

 6か月という長期間の予測で、非常に広い範囲を複数指定して予測するが、それでも外れてしまうことがある。
 その場合は、「地震が起きなかったのは幸い」「外れることを恐れず、勇気をもって予測を発信し続けたい」というコメントになる。
 村井氏は勇気ある孤高の研究者を気取っているようだ。
 何の責任もない地震予想屋は、予想が外れたとしても意に介さない。

 村井氏は非常に悔しい思いをしたことがあるという。
 北海道南部に地震予測を出していたが、青森県の方で地震が起きたために、これがこの地震予測だったのだと解釈し、予測情報を取り下げてしまったところ、その直後に北海道で地震が起きたのだ。
 「あのまま、地震予測を出し続けていれば、大当たりだったのに」という悔しさだ。
 これは、とても科学者の態度に見えない。
 ただ、当たり外れのギャンブルを楽しんでいるかのようだ。
 彼は、青森県で地震が起きた時点で、自分の予想は場所が少しずれただけと解釈し、その後、北海道で地震が起きれば、実は、自分の予測はぴったり当たっていた、と解釈する。
 彼の予想とはこの程度なのだ。
 
 GPSデータの異常値は地震発生の前兆である、という仮説設定に問題はない。
 だが、その仮説を科学的に検証した形跡がなく、途中をすっ飛ばして、GPSデータで地震予測ができるという結論に短絡してしまっている。
 異常データを見て、どこにいつどの程度の地震が起きそうかは、村井氏の勘で決めているようだ。
 「このぐらいの異常値だったら、このぐらいの地震だろう」という感じだ。
 なぜ、この異常値だと、そういう予測になるのかは、彼の頭の中にしかない。
 彼自身、経験値が蓄積してきたので、昔よりも予測精度がよくなっていると言っている。
 だから、この地震予測は役に立つのだと言いたいらしいのだが、こういっている時点で、本当に彼は科学者か、と疑わしい。
 彼が経験値を積まないと予測精度が高まらないのでは、科学ではない。
 小保方氏でないとSTAP細胞はつくれない、では話にならないのと同じだ。

 Mrサンデーでは、村井氏の特集を流した後、コメンテーターにコメントを求めていた。
 コメンテーターも困っただろう。
 全面肯定するには胡散臭すぎるが、立場上、否定的なコメントをするわけにもいかない。
 コメンテーターの1人はこんなことを言っていた。
 「とにかく、選択肢が増えるのはいいことですよね」
 いろんな地震予測が出て、その中から私たちが選べばいい、ということだ。
 肯定も否定もしない、ぎりぎりのコメントだった。
 番組コメンテーターとしては、これが精一杯だろう。

 だが、実際は、地震予測情報が氾濫するのは、選択肢が増えて結構ということにはならない。
 私たち一般人は、予測情報の真偽を確かめるのは不可能。
 となると、本当に科学的根拠にのっとった信憑性のある情報があったとしても、それは、多くのノイズの中に埋もれてしまう。
 村井氏のような予測屋の情報の方が、大げさで分かりやすいので、一般の人たちには訴求力がある。
 怪しげな情報の方がメディアでセンセーショナルに取り上げられ、本当に注目すべき情報が消し去られる。
 悪貨が良貨を駆逐するという現象が起きてしまう。
 こちらの方が大問題だ。
 
 村井氏の地震予測については、科学的な立場で批判しているサイトやブログが少数ながら存在する。
 このような動きがあることに安心した。
 
posted by 平野喜久 at 09:12| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月06日

オリンピック聖火台の設置場所:相変わらずマネジメントの不在

 オリンピック競技場に関して、新たな話題が登場した。
 新国立競技場の現在のデザインには、場内設置が盛り込まれていないことが分かったのだ。
 遠藤五輪相は、「聖火台については、具体的な議論をしてこなかった」と釈明した。
 都知事は、「発注主体のJSCが考えていると思っていた」と語った。
 またまた、責任の所在不明が浮き彫りになった。
 いったい、誰が総責任者としてこのプロジェクトを動かしているのだろう。
 遠藤五輪相は、何のために存在しているのだろう。
 先の競技場デザインのごたごたの時も責任者の不在が事態を悪化させ、問題解決を遅らせた。
 この問題は、解消されないまま、同じ体制でプロジェクトは進行している。
 再び、同じような問題がそこかしこで噴出する。
 マネジメントの不在。
 日本型組織の欠点が露呈している。
 
 遠藤五輪相は記者会見で、競技場内に設置するためデザインを変更した場合も、トータルの建設費は、国が上限と定めた1550億円以内に納めるとし、工期の遅れも「ない」と明言。
 この発言は、信憑性はゼロだ。
 遠藤五輪相が、プロジェクトの実態を把握し、進行をコントロールできていないからだ。
 外部に指摘されてから、初めて聖火台の設置に気づいたような人物が何を言っても、信頼されない。
 この発言は、記者に追及されて条件反射的に答えた、その場限りの言い逃れの域を出ないだろう。

 聖火台設置のために計画変更。
 そのための、予算の追加。
 後期の遅れ。
 こうなることは目に見えている。


posted by 平野喜久 at 11:07| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月04日

中小企業のBCP策定は二極化傾向:静岡新聞

 静岡新聞の報道による。
 中小企業のBCP策定状況は、少しずつ進んではいるが、二極分化が起きてしまっているのが分かる。
 策定済み企業が5分の1ぐらいまで増えてきて、これは過去最高の値だ。
 だが、その一方で、策定予定なしが4分の1も存在している。
 いち早く行動を起こした企業は、とっくに先頭を走り続けているが、のんびりした企業は現状にとどまったまま。
 その格差は、どんどん開きつつある。
 これは、私も現場指導の中で実感していることだったが、データ上でも確認できた。
 静岡県は、南海トラフ巨大地震の震源域に含まれており、最も大きな揺れと、大きな津波被害が予想されている地域だ。
 どこよりもBCPの策定は進んでいるはずだが、それでも、中小企業の実態はこの状態なのだ。
 震災リスクを我がことと考えられていない事業経営者がまだまだいるということなのだろう。
 震災リスクを免れる企業は存在しない。
 経営基盤の脆弱な中小企業こそ、BCPは真剣に考えていかなくてはならない。

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 静岡県が県内中小企業530社を対象に行った事業継続計画(BCP)の策定状況調査。
 BCP策定済みの企業:18・7%
 策定予定なし:26・2%
 BCP策定済み、策定中:12・6%
 防災計画の一部に編入:7・7%
 今後策定する予定:24・7%

 策定しない理由(複数回答)
 「必要なノウハウ、スキルがない」(52・5%)
 「策定する人手を確保できない」(48・9%)

 策定率向上につながる制度として、自治体や商工団体による策定支援、策定企業への優遇措置、BCP勉強会の開催などを求める意見が挙がった。
 県商工振興課は「BCPの意義をいかに理解してもらうかが鍵」として、中小企業向け策定マニュアルの普及など、市町や産業支援機関と連携した啓発活動を強化する。
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posted by 平野喜久 at 09:10| 愛知 | Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月01日

改訂版リリース:「ケーススタディ『八甲田山死の彷徨』」

 「ケーススタディ『八甲田山死の彷徨』」の改訂版をリリース。

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 2013年に電子書籍の初版をリリースしてから、多くの方々にお読みいただいてきた。
 3年の間に、新たな知見が蓄積してきた。
 また、この間、八甲田山リーダーシップ研修を行なう中で、私自身も受講者の皆様から多くの気づきをいただいた。
 それらを電子書籍に反映させ得るため、このたび、内容を全面的にリニューアルすることとした。
 古くなった情報は最新の事例に置き換え、説明の不足する部分は加筆し、新たな論点は項目を増やして丁寧な説明を追加した。
 分量としては、1.5倍ぐらいになった。
 内容の充実度としても、1段階レベルアップしている。
 『八甲田山死の彷徨』にこれから読んでみようとする初心者の方はもちろん、今まで何度も読んできたベテランの方にも、十分な気づきを提供できるコンテンツに生まれ変わった。

 初版と改訂版との違いは次の通り。

 初版では、「ムービー・ガイド」というコーナーを設け、映画『八甲田山』を観るときの手助けになる豆知識を収録していたが、改訂版ではすべてカットした。
 その代り、『八甲田山死の彷徨』のケーススタディの方を充実させた。

 ケーススタディの前に序章を設けた。
 この序章では、なぜいま『八甲田山死の彷徨』なのかについて、詳説した。
 この小説を題材にしてケーススタディを行う意味づけをはっきりさせるためだ。
 特に、失敗事例から教訓を学ぶ意義と、後知恵の講釈を排除することの重要性をここでご理解いただくことに重点を置いた。

 第31連隊の成功事例の分析を充実させた。
 この小説は、第5連隊の失敗事例が主要テーマだが、それは、第31連隊の成功があったからこそその意味が際立つ。
 その成功要因もしっかり分析するとともに、徳島大尉の欠点にも敢えて言及してある。
 
 最後は、第5連隊の失敗要因の分析に一章を費やした。
 第5連隊の失敗要因はさまざまなものが考えられるが、その失敗の本質は何だったのかをここで見極めたい。
 
 今回のケーススタディは、少し趣向を凝らしてある。
 それは、ケーススタディ全体が、第5連隊の失敗の本質は何だったのかという謎解きになっている。
 ストーリーの進行に従ってケーススタディを進めるが、その都度、第5連隊の様々な失敗要因が出てくる。
 そこには、表面的な失敗要因もあれば、本質的な失敗要因もある。
 では、本当の失敗要因は何だったのか、というのがケーススタディ全体の大きなテーマになっている。
 これは、ちょうど、推理小説を読むときの謎解きに似ている。
 推理小説では、犯人は誰か、動機は何か、トリックはどうしたのかが謎解きのテーマだ。
 同じように、このケーススタディでは、本当の原因は何か、なぜそうなってしまったのか、そうならないためにはどうしたらよかったのか、が問われることになる。
 最後には、私なりの答えを用意している。
 読者の皆様にも謎解きに挑戦していただきながらケーススタディを進め、最後に答え合わせをしていただきたい。
posted by 平野喜久 at 08:06| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする