2016年05月24日

南海トラフ沿いの「ひずみ」を実測:海上保安庁

 海上保安庁が南海トラフ沿いのひずみの実測分布をイギリス科学誌ネイチャーに論文として公開した。
 海保では2000年度から観測器を海底に置き、ひずみがたまる陸側と海側のプレート境目の動きを測定。
 南海トラフ沿いの15カ所について、06年度から15年度の動きを分析した。
 その結果、陸側プレートに置いた観測器が年間2〜5・5センチ移動しているのが観測された。
 ひずみの場所はほぼ、政府が南海トラフ巨大地震の震源域として想定する領域にぴたりと一致する。
 ひずみ蓄積状況は、地域によって濃淡があり、四国沖から日向灘のあたりにひずみの大きい地域が広がっているのが目立つ。
 
 この情報は報道によって無頓着に伝えられており、注意が必要だ。
 まるで、南海トラフ巨大地震が目前に迫っているかのような印象を与えてしまっているが、そうではない。
 海上保安庁は、このデータをもって、巨大地震が迫っていると警告しているわけではない。
 ただ、今後の地震研究に役立ててもらえれば、ということでのデータ公開だということをまず確認しておこう。

 今回の海上保安庁の公開した情報は、陸側プレートの年間移動距離が地域によって偏りがあり、それが初めてマップ上で確認できるようになったことに意味がある。
 ただ、年間の移動距離と地震発生との関連は分かっていない。
 移動距離が大きいところは、それだけ大きくひずみがたまり続けている地域なので、限界に近づくのも早そうだ。
 逆に移動距離の小さいところは、プレートが滑ってひずみがたまらない地域なので、限界にまで余裕がありそうだ。

 だが、逆の見方もできる。
 移動距離が大きいということは、ひずみのたまり方が大きい地域だが、まだひずみの限界まで余裕があるのでひずみがたまりやすくなっているのかもしれない。
 移動距離の小さいところは、ひずみの蓄積が小さいところではなく、すでに十分なひずみがたまっており、限界が近づいているために、それ以上のひずみがたまりにくくなっているのかもしれない。
 特に、四国沖に広がっているひずみの大きいエリアは、この地域では最後に起きた1946年の南海地震のエリアと重なっており、ひずみの蓄積が少ないはずのところで、いま大きく移動していることになる。
 それに、スロースリップ現象と言って、巨大地震が近づくと海側と陸側のプレートの固着部分が少しずつはがれ、滑り始めるのではないかと予想されている。
 すると、年間移動距離が大きい地域は、まだスロースリップが起きていないことの証拠になる。

 いずれにしても、海側のプレートに押されて陸側のプレートにひずみがたまり続けていることは、データ上でも確認された。
 このひずみが限界に達したとき、一気に破壊し、南海トラフ巨大地震になる。
 わたしたちは、南海トラフ巨大地震へのカウントダウンは、着実に進行していることの科学的な裏付けとして受け止めるべきだろう。

posted by 平野喜久 at 11:46| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月22日

その手があったか舛添都知事

 舛添都知事の政治資金不正疑惑。
 20日の記者会見が物議をかもしている。
 
 毎週末、外遊時の高額なホテル代の是非、別荘の湯河原に公用車で通っている公私混同から始まった報道。
 はじめのうちは、舛添氏も強気に突っぱねていたが、スキャンダルネタは、政治資金の不正流用の領域に広がっていった。
 週刊文春は、舛添氏が突っぱねるたびに、第2、第3の告発記事を放ち、さらに追い込みをかける。
 そして、20日の記者会見となった。

 最悪でも、提示された疑惑の1つ1つについて釈明をし、直ちに法に抵触しないことをもって、グレーゾーンの中に逃げようとするだろうと思った。
 しかし、1つ1つの釈明を試みるには、不正疑惑が多岐にわたり、膨大な内容になる。
 いくつかの案件はうまく逃げ切れたとしても、すべての疑惑を一気に解消することは不可能。
 すると、細かい言い訳はせずに、きっぱり辞任を表明して幕引きを図るしか、方法はないと思っていた。
 ところが、記者会見の内容は、予想を超えるものだった。
 記者会見では、一切の説明をせず、すべては弁護士などの第三者の厳しい公正な目による調査にゆだねる、ということで押し通した。
 何を質問されても、同じ答弁を繰り返した。
 記者らが根負けして、質問を諦めるまで、延々と2時間半の間、同じフレーズを繰り返した。
 結局、疑惑に対しては一切、答えることなく会見を終了した。

 舛添氏の精神力には驚嘆する。
 こんな答弁を繰り返せば、都民にどんな印象を与えてしまうかは分かっているはず。
 目の前の記者らは、いらだち、脱力し、ため息を漏らす。
 その姿を目の前にしながら、表情を変えずに淡々と同じフレーズで押し通すことができることが驚きだ。

 誰かの入れ知恵か、自分の判断かは分からないが、この会見は、個別の案件にいちいち釈明するよりも、すべてをひとくくりにして答弁拒否にもっていった方が得策という考えだったのだろう。
 答弁拒否の言い訳として、第三者にゆだねるという方法だった。
 今回の不正疑惑を逃れる方法として、この手があったか、という印象だ。

 「公正で厳しい第三者の目で」ということをしきりに強調していた。
 ここに舛添氏の本音が見える。
 マスコミのスキャンダラスな報道では、公正さが保てないと思っているのだ。
 冷静に法律と照らし合わせれば、明らかに違法と確定するものはそれほど多くないはず。
 厳密な判定をすればするほど、明確な違法判断は出にくくなる。
 弁護士による調査が、「直ちに違法というわけではありません」という案件ばかりになれば、世間が騒ぐほど悪いところはありませんでした、となる。
 そこを狙っているのだろう。

 実際、いま明らかになっている疑惑は、いずれも、明らかに法に抵触するような案件はほとんどないという。
 解釈の仕方でどうとでも判断できてしまうものばかりらしい。
 そのことを舛添氏も承知しているのだろう。
 弁護士の手を借りて、グレーゾーンに逃げ込もうという策略だ。

 ある市民団体が、舛添氏の政治資金規正法違反の疑いで東京地検に告訴状を送った。
 舛添氏にとって、裁判になるのはむしろ好都合だ。
 「裁判にかかわることなので、法廷外での説明は控えさせていただく」「すべては弁護士を通して」という戦術が取れるからだ。
 この市民団体は、舛添氏に逃げ場を与えてしまっていることになる。
 今回のスキャンダルを法律の問題に限定できれば、舛添氏の勝ちだ。





posted by 平野喜久 at 10:29| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月17日

五輪ムードはしらけきっている

 東京オリンピックについて、また不透明な実態が発覚した。
 オリンピック招致で裏金が支払われていたのではないかというもの。

 招致委員会からシンガポールの会社に対し、約2億2200万円に上る送金があったことが分かり、これが裏金だったのではないかと疑われている。
 竹田会長は「業務に対するコンサルタント料で問題があるとは思っていない」「国際陸上連盟前会長と関係のある会社とは知らなかった」「招致コンサルの実績ある会社として電通の紹介を受けた」と正当性を主張した。
 たぶん、竹田会長は、何もわかっておらず、アドバイスされるままに金を払わされただけという印象が強い。
 日本は金払いがいいために、世界中のハゲタカの餌食にされたという感じだ。

 報酬は2013年7月と10月に支払われている。
 7月の支払いは、国際ロビー活動や情報収集業務として、同年10月の支払いは勝因分析業務として支払われたらしい。
 9月に開催地決定があったので、普通に考えれば、7月の支払いは手付金で、10月の支払いは成功報酬となる。

 オリンピック招致活動とはこういうものというのが実態なのだろう。
 ただ、国民には、あのさわやかなプレゼンシーンばかりが印象に強く、プレゼンのうまさで招致を勝ち取ったかの印象だが、裏ではもっとドロドロした世界があったのに違いない。
 裏のドロドロが見えてきてしまっていることが、今回の五輪ムードをしらけさせている。
 
 競技会場の件もそうだ。
 いろんな業者が関わればかかわるほど、建設予算はどんどん膨れ上がった。
 エンブレムの件もそうだ。
 広告会社の出向者がお膳立てをして、特定のデザイナーの作品を採用させ、利権をむさぼろうとした。
 そして、今回の裏金疑惑だ。

 この問題の深刻なのは、フランスの検察当局の捜査で発覚し、シンガポールの汚職捜査局も動き始めたという点だ。
 競技会場やエンブレムの場合は、すべて国内の問題であり、うやむやにやり過ごしている間に、国民の関心が薄れてしまった。
 問題の原因は何か、責任者は誰かなど、何もわからないまま放置されている。
 だが、今回は、国際的な問題に発展しており、ことはうやむやでは済まない。
 今回は、竹田会長の当事者能力を超えているようだ。
 「そんなことは、知らなかった」「正当な業務契約だった」と答えるのが精いっぱい。
 日本側にこの問題に責任をもって対処できる人がおらず、漂流し続ける。
 フランス当局の捜査に翻弄されることになるだろう。

 東京五輪については、今後もいたるところで問題が発覚するだろう。
 そのたびに、国民のムードは冷めていく。



 
 
posted by 平野喜久 at 11:57| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月05日

村井氏の地震予測は失敗した

 GPS地震予測を売り込んでいる村井氏。
 今回の熊本地震は予測できていたのか。
 結論は、ノーだ。
 熊本地震直前の4月13日発行のメルマガには、次の地域に地震の可能性ありとして情報発信されていたようだ。

--------------------------------------------------- 
レベル4(震度5以上の地震が発生する可能性が極めて高い)
・南関東地方(相模湾、駿河湾・東京湾に面する地域、伊豆諸島、小笠原諸島)

レベル3(震度5以上の地震が発生する可能性が高い)
・北信越地方、岐阜県
・南海、東南海地方
・東北、関東の太平洋岸
・奥羽山脈周辺
・釧路、根室、えりも周辺

レベル2(震度5以上の地震が発生する可能性がある)
・鳥取県、島根県周辺
・南西諸島

レベル1・何らかの異常変動があり今後の推移を監視する
・山形、福島、茨城のL字型エリア
・北海道道南、青森県
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 レベル4とかレベル3とかいうのは、村井氏が勝手にランク分けした可能性の高さを表しているようだ。
 本来なら、レベル4のところに熊本の表示がなければならないはずだが、それがない。
 それどころか、すべてのレベルに熊本の文字はかけらも存在しない。
 村井氏は、今回の熊本地震はまったく予測できていなかったことになる。
 それよりも、この事前に予測されていた地震発生の可能性ありとして指摘された地域の広さに驚かされる。
 日本列島の北海道から沖縄までほぼ全域をカバーしているのではないかと思えるような広範囲に地震の可能性を指摘している。
 的中率75%とか80%とかいうのは、こういう仕掛けだったのだ。
 これほど広範囲を予測範囲にして指定ながら、熊本を外すとは、大外れもいいところだ。
 こんな予測だったら、むしろ外す方が難しいぐらいだ。
 村井氏は、自分の運の悪さを悔しがったことだろう。 

 村井氏は、ツイッターで次のようにつぶやいているらしい。
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地震予測は難しいですね。
数か月前からメルマガで鹿児島・熊本・宮崎周辺に「3月末頃まで」ということで要注意を呼びかけていました。
4月になったので4月13日に取り下げたところ昨日熊本で震度7の大きな地震が起きました。
反省してます。
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 なんという呑気なコメントだろう。
 1月時点で、雑誌で「鹿児島、熊本、宮崎周辺」を予測していたことをもって、実は、今回の地震は予測していたが、発生時期が少しずれてしまっただけ、と言いたいようだ。
 人の命を救いたいとの思いで、勇気を出して地震予測を出し続けていたのではなかったのか。
 彼の地震予測は、まったく役に立たなかった。
 むしろ、熊本を地震予測から外したことで、間違った情報を提供したことになり、そのことで被害拡大を招いたケースがあったかもしれないではないか。
 そのことに対する深刻さが全く感じられない。
 それとも、自分の情報はどうせ誰も真剣に受け止めていないから大丈夫、とでも思っているのか。

 今回の熊本地震は、複数の地震が連鎖して起きたのが特徴だ。
 地震の地域は、熊本、阿蘇、大分にわたる。
 本当に地震を正確に予測するとしたら、予測地域は「鹿児島、熊本、宮崎」ではなく、「熊本、阿蘇、大分」になっていなければいけないはず。
 それなのに、ただ「熊本」という地名が入っていたから「当たり」としている。
 彼が、地震予測を防災に役立てようという気はなく、単に予測の当たりはずれにしか関心がないのがよくわかる。

 本来なら、自分の予測方法は未確立だと自覚し、情報発信は停止するぐらいの措置があってもいい。
 だが、彼にはそんなつもりはまったくないようだ。
 発生時期が少しずれただけで、予測は当たっていたということで、やり過ごすつもりらしい。
 これを面白がって取り上げるメディアも依然存在する。
 そろそろ、彼のいい加減さを究明するメディアが登場してもいいころだ。


 彼は、4月13日に取り下げたと言っているが、実際に取り下げたのは4月6日のメルマガだった。
 こういうところにも、彼の不誠実さがにじみ出る。
posted by 平野喜久 at 18:46| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月03日

熊本地震の教訓:地震が起きないと思われている地域こそ危険

 4月14日に始まった熊本地震。
 これまでに余震が1100回を超え、最大震度7を記録する地震が2回も発生するなど、観測史上例を見ない推移を見せている。
 今なお余震は続いており、今後も震度6弱以上の地震が発生する可能性ありとして気象庁は注意を呼び掛けている。

 今回の地震で一番驚いたのは、地元の人たちだろう。
 なぜなら、熊本では地震は起きないというのが普通の認識だったからだ。
 2014年に公表された地震動予測地図によると、首都圏と静岡県から紀伊半島、四国の太平洋側に高確率の赤い色が塗られている。
 これは、以前から予想されている首都直下地震と南海トラフ巨大地震の影響する地域だ。
 それ以外の地域はオレンジ色か黄色に塗られている。
 この地図は、地震リスクの高い地域を知らせ、その地域の人々への啓発を目的に作られたものだ。
 だが、本来の目的に反して、利用されてしまっている。
 赤色に塗られていない地域は、地震の起きないところだ、という誤ったメッセージを送ることになってしまったのだ。
 この地図で、熊本は黄色になっている。
 このことで、熊本は地震の起きないところという根拠のない安心感を与えることになってしまった。

 以前、熊本県は、企業誘致のうたい文句として地震の少なさを売りにしていた。
 過去100年間に起きた地震を日本列島の地図上にプロットし、東北地方を「危険地帯」、熊本周辺を「安全地帯」と表示していた。
 過去100年だけのデータをもとに危険地帯と安全地帯を分けてしまうのはかなり乱暴だし、科学的根拠のない危なっかしい主張だった。
 熊本を安全地帯と信じて拠点を移した企業があったとしたら、詐欺にあったようなものだろう。
 このように、地震の少なさを企業誘致の売りにしようとする自治体は、日本海側にもいくつか存在するが、同じような危なっかしさを抱えている。

 地震調査研究推進本部が公開した地震動予測地図は、次はどこで大地震が発生するかを予想したものではない。
 過去の地震発生のパターンから確率的にはじき出された数値を、分かりやすいようにビジュアル表示させたものだ。
 だから、研究の進んでいる首都直下地震と南海トラフ巨大地震の発生確率だけが際立って高く表示される。
 それ以外の地域は軒並み発生確率は低く表示される。
 発生確率が低いのは、2つの理由がある。
 1つは、発生周期が長いので、今後30年間に限ってみると、確率は極端に小さい数値になってしまうこと。
 もう1つは、発生周期が不明なので、確率計算できないこと。
 特に活断層が引き起こす内陸型の地震は、何千年に1回、何万年に1回という頻度なので、次の発生時期を予測するのは不可能だ。
 無理やり計算したとしても、ほとんど0に近い数字にしかならない。
 しかし、どんなに発生周期の長い地震であろうと、その時はいずれやってくる。
 「ちょうどその日が万年目」ということがありうるのだ。
 しかも、活断層は、日本列島には無数に存在し、今なお新たに発見されるものもある。
 まだ見つかっていない活断層も相当あると予想されている。
 それらの活断層1つ1つは、数千年に1回の頻度であったとしても、日本列島全体でみれば、常にどこかの活断層がいつ破壊するかわからないという状態にある。
 そう考えると、地震の発生確率が低く表示されている地域は、地震の起きない地域と考えるのではなく、次にいつ地震が起きるかわからない地域と捉えた方がいい。
 その意味では、首都直下や南海トラフよりも、リスクは大きい。
 首都直下や南海トラフについては、どこでどのぐらいの地震が発生し、各地の被害はどの程度になるのかなど、既に豊富な情報が提供されている。
 ところが、それ以外の地域は、いつどんな地震が起きるかわからないので、予想ができず、切迫感もなく、対策も進んでいない。
 そこを地震が襲うと、地震の規模以上に被害を拡大させてしまうことになる。

 いま、地震対策に積極的な自治体と消極的な自治体がある。
 消極的な自治体にもそれなりの言い分がある。
 「あまり地震の脅威ばかり強調すると、人が住みたがらなくなってしまう。企業がほかに逃げてしまう」
 だが、この認識は、間違いだろう。
 地震リスクがあるにもかかわらず、それが認識されていない地域は、地震対策が進んでいないのは明らか。
 そんな地域に住むことは、安心できるどころか、むしろ不安が大きい。
 地震の少なさを売りにして企業誘致をしようとする自治体は、一番危なっかしい。
 そのような自治体は、地震への備えは何もできていないと宣言しているようなものだからだ。
 
 



 

  

 
 
posted by 平野喜久 at 11:08| 愛知 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする