2017年04月30日

オリンパス元経営陣への賠償請求:590億円の支払い命令

 オリンパスの株主代表訴訟で、約586億円の賠償責任という判決が出た。
 光学機器大手オリンパスの巨額損失隠し事件で損害を与えたとして、同社と個人株主が旧経営陣ら18人を相手取り、計約897億円の損害賠償を同社に支払うよう求めた訴訟。
 東京地裁は27日、元会長ら8人に計約590億円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、同社は1990年に運用していた株の大幅下落で損失が拡大。
 96年頃には資金運用の含み損が約900億円に達したが、海外ファンドに含み損を抱えた金融資産を移し替えるなどして損失を簿外で隠蔽。
 損失隠しは2011年に発覚。
 元社長ら3名は金融商品取引法違反に問われ、東京地裁で13年7月、執行猶予付きの有罪判決を受け、確定していた。
 オリンパス社は「会社に多額の損害を与えた」として元社長らを提訴。
 約37億円の支払いを求めた。
 同時に個人株主も株主代表訴訟を起こし897億円の賠償請求していた。
 今回の判決は両者を合わせた判断となる。

 判決は、菊川元会長ら旧経営陣について「簿外損失を公表する機会がありながら公表せず、損失隠しの中止や是正の措置も何ら講じなかった」と指摘。
 損失隠しによって、株主に本来の分配可能額を約586億円上回る配当が行われたとして、菊川、山田、森の3氏に約586億円の賠償責任を認めた。
 また、菊川氏らには、事件で同社が支払った課徴金の一部などの賠償も命じた。

 今回の賠償責任は、元経営陣8人に対するものだが、実質、元社長の菊川氏、元副社長の森氏、元監査役の山田氏に対するものだ。
 この3氏が損失隠しを主導した主役、他の5人は当時の経営陣として虚偽記載を防ぐ責任を果たせなかった脇役と認定された。
 主要3氏だけで586億円の賠償責任。
 これは、組織の賠償責任ではなく、個人の賠償責任という点が重要だ。
 単純に三等分したとしても、1人195億円。
 個人賠償としては、考えられないような額になる。
 
 被告の元経営陣らは、何も私腹を肥やそうと会社の金に手を出したわけではない。
 たぶん、本人らには、会社のためという経営判断で行なったものとの思いがあるだろう。
 だが、これだけの損失を会社にもたらしておきながら、自分は高額の役員報酬をもらい、退職金を満額手に入れているとしたら、自分の利益のために会社の利益を犠牲にしたも同然だ。
 私腹を肥やすために会社の金に手を出したのと同じことになってしまう。
 
 もう1つ、重要な点は、主役3氏だけではなく、脇役5氏にも賠償責任が認められたことだ。
 この5氏は、たぶん、損失隠しには直接関与していない。
 しかし、当時の役員として、損失隠しを知りうる立場にあったし、それを防ぐ責任があった。
 そのことを厳しく認定されたことになる。
 つまり、何かやらかしたことを責められているのではなく、何もしなかったことが責められているのだ。
 ただ役員会の場で、黙って座っているだけでは、いつ賠償責任を問われるか分からないということになる。

 さらに、賠償責任が認められた元役員の中には既に他界してい人もいるが、支払い命令はその遺族に出されている。
 賠償責任は死んでも許されないということだ。 
 
 仮にこの判決が確定したとすると、賠償命令が実行に移される。
 個人でこれだけの賠償に応じられるかどうか。
 世界的な富豪だったら小遣い程度の金額だが、普通は全財産を拠出しても足りないだろう。
 賠償請求に対して、自己破産は認められていない。
 当面の生活費だけを残して、強制的に身ぐるみをはがされることになる。

 菊川氏については、2012年の報道で、個人資産を親族に譲渡していたことが分かっている。
 今回のように個人賠償にまで発展することを見込んで、事件発覚直後から対策をしていたのだ。
 他にもあらゆる手段で、個人資産を分散させているのに違いない。
 このような行動は詐害行為とみなされ、すべての取引を取り消されることになる。
 相手が善意の第三者であったとしても、無理だ。
 取引の取り消しとは、取引自体がもともとなかったことにされるということだからだ。
 オリンパスの元経営陣らは、たぶん、逃げ切れない。

 中小企業の社長は失敗したら身ぐるみはがされるが、大企業の社長は、失敗しても辞任すれば退職金をもらって逃げ切れるというのが、昔の常識だった。
 ところが、いまは時代が違う。
 

 
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2017年04月28日

2017年版地震動予測地図:確率の低い地域こそ警戒せよ

 地震調査委員会が17年版「全国地震動予測地図」を公表した。
 この予測地図は、今後30年以内に震度6弱以上で揺れる確率を地図上に色分け表示したものだ。
 確率の高い地域として目立つのは、北海道太平洋側、関東から四国にかけての太平洋側が濃い赤色表示になっている。
 都市ごとにパーセンテージを見てみると、千葉:85%、横浜:81%、水戸:81%が大きい。
 そのほか、主要都市では、東京:47%、名古屋:46%、大阪:56%となっている。
 一方、日本海側は確率が低く、山形:3.6%、金沢:6.5%、松江:3.7%。
 地域によって確率の大小がくっきり分かれている。
 16年版と比較すると、全体に1ポイントほど上昇している。

 これを見ると、いまの日本のどの地域に震災リスクがあるのかが一目でわかる。
 千島海溝、首都直下、南海トラフのリスクが高まっているのが、このマップから確認できる。
 このようなデータを公表する目的は、国民に正しい情報を提供して、健全な危機意識を持ってもらうこと。
 国民の不安感を煽るような派手な演出もなく、さりげなく淡々と発表されるところがいい。

 ただ、この予測地図のやっかいなところがある。
 確率の高い地域では、健全な危機意識を持ってもらうことができるが、逆に、確率の低い地域には、不必要な油断を与えてしまうことになりかねない。
 昨年の熊本地震も、このマップからは読み取れなかった。
 近年の地震の多くは、確率の低い地域ばかりで起きている印象だ。
 だから、地震の起きない地域を探そうという視点でこの地図を見るのは間違っている。
 確率の低い地域は、地震が起きないのではなく、地震の原因になる活断層などが見つかっていないだけと思った方がいい。
 南海トラフ巨大地震は、どのような地震が起きるのかがはっきりわかっているし、どのような揺れになるか、どのような被害が出るかが詳しく予想されている。
 それに比べて、確率の低い地域は、いつどのような地震が起きるか分かっていないということだ。
 むしろ、不意打ちを食らう恐れがあるという点では、確率の低い地域こそ警戒しなければならないだろう。

 
 

 
 
 
 
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2017年04月25日

今村大臣の失言:在庫一掃大臣の限界

 今村雅弘復興相が辞任する意向を固めた。
 以前、記者会見での失言で物議をかもしたが、さらに新たな失言があったという。
 所属する自民党二階派のパーティーで講演し、東日本大震災の被害に関し「まだ東北で、あっちの方だったから良かった。首都圏に近かったりすると、莫大(ばくだい)な、甚大な額になった」と述べた。
 これが、失言として問題となる。
 このパーティには安倍総理も出席しており、ただちにこの発言を不適切として首相として謝罪をした。
 その日のうちに辞任が決まり、実質、更迭となった。

 今村大臣の発言の真意はよくわかる。
 東日本大震災では多くの犠牲者があり、経済被害も大きかった。
 しかし、東北だからこの程度で済んでいるのであり、これが、首都直下だったり、南海トラフだったら、被害は桁違いになる。
 このことを指摘しようとしたのだ。
 当たり前のことを言っているだけなのに、なぜ、問題になるのか。
 それは、「東北だからよかった」という表現にある。
 東日本大震災で被災した人々にとっては、災害規模の大きい小さいはまったく関係ない。
 ひとりひとりにとって被害はいずれも甚大だ。
 「東北だからよかった」という発言は、被災者の感情を逆なでする。
 「東北だからこの程度で済んだ」でも問題だろう。
 
 この手の話をするときには、言葉のニュアンスには神経質にならなければならない。
 特に、政治家は言葉がすべてだから、余計に慎重になって当たり前だ。
 慎重になりすぎて、話が面白くなくなったとしても、やむを得ないぐらいの覚悟がいる。
 今村大臣には、言葉の感性が鈍すぎた。
 いままで、閣僚経験がないために、公の発言に慣れていなかったか。
 それでも、政治家として言葉に無頓着すぎる。
 いままで、彼の発言が注目されることもなく、何を言っても問題になることがなかった。
 それが、大臣となって急に注目されるようになったことで、ぼろが出始めた。
 できる人間なら、大臣となると同時にスイッチが切り替わるはずが、彼はそのようなスイッチがなかった。
 以前にも失言を指摘されて、反省をしたはずなのに、言葉の無頓着ぶりはそのまま。
 致命的な失言を繰り返した。
 スイッチがないのだから、モードが切り替わりようがなかったのだ。

 在庫一掃の順送り人事で入閣した政治家は、失言を起こしやすい。
 大臣になったことで気持ちが大きくなっている上に、言葉への感性が以前のまま。
 いつもと同じ調子で、あるいは、それ以上に調子づいて受け狙いの発言を繰り返すうち、簡単に失言に至る。
 さらに、失言から名誉挽回しようとして、余計な発言をし、それが新たな失言となる。

 安倍総理も、匙を投げた。
 即日の更迭は、対応の迅速さが際立っている。
posted by 平野喜久 at 22:46| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月18日

『レジリエンス認証を取得しよう』出版:BCPノウハウ第3弾

 BCPノウハウ第3弾として『レジリエンス認証を取得しよう』をリリース。
 ただいま、アマゾンKindle版として販売中。
https://www.amazon.co.jp/dp/B06ZZB3DRK

 「レジリエンス認証」は、昨年度に始まったBCPの認証制度。
 日本で初めてのBCP認証制度として注目されているが、なにしろまだ始まったばかりで、情報が少ない。
 どんな制度なのか、どのようなメリットがあるのか、どのぐらい難しい認証なのか、など、分からないことが多い。
 内閣官房やレジリエンスジャパン協議会の公式ウェブサイトでは、表向きの情報は公開されているが、実際に申請する事業者側の立場に立った情報がない。
 その他のネット上を検索しても、レジリエンス認証の表面的な紹介文が見つかるだけで、ほとんど実践レベルの情報がない。
 そこで、この情報不足を補うために、今回の緊急出版を試みた。
 
 実際に、顧問企業のレジリエンス認証取得のお手伝いをさせていただいた過程で得られた知見をもとに、この制度のメリットや認証取得のためのノウハウを分かりやすくまとめている。
 現時点で、このレジリエンス認証に関する情報としては、質量ともに最も充実したコンテンツだという自信がある。
 レジリエンス認証は、今後、日本のデファクトスタンダードとなるべき認証制度だ。
 BCPに取り組んでいる方、レジリエンス認証に関心のある方には、ぜひお目通しいただきたい。


 
posted by 平野喜久 at 14:32| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月15日

ユナイテッド航空の不祥事:乗客の強制排除

 ユナイテッド航空の不祥事が世界で話題になっている。
 米国東部時間4月9日夜、シカゴ発ルイビル(ケンタッキー州)行きの短距離運航便。
 午後5時40分の定刻出発に向け、乗客の搭乗が完了した後、業務上の理由で乗務員4人が同便でルイビルに向かわなければならない事が判明。
 事実上のオーバーブッキングとなり、乗客が4人、飛行機を降りなければならなくなった。
 ユナイテッド側は降機に協力する乗客に対して協力金400ドルとホテルの宿泊代を提案したが、応じる人はいなかった。
 補償金を800ドルに積み増したが、それでも協力者が出てこなかったため、4人の客の指名に踏み切ったという。
 指名された4人のうち、3人は素直に応じたが、1人だけ降機を拒否したため、シカゴ航空局の保安係官が呼ばれ、客は席から強制的に引きずり出されることになる。
 その排除行為は、乗客が座席の肘掛けに顔を強打し、鼻を骨折し前歯を折るという非常に乱暴なものだった。
 その様子が複数の乗客によって撮影され、直ちにSNS上に投稿される。
 この動画は、瞬く間に世界中に拡散し、騒動となった。

 アメリカでは、航空会社による搭乗拒否はよくある話らしい。
 予約をしても、当日の事情で搭乗しない客がおり、空席のまま飛行機を飛ばすことを避けるために、常に多めに予約を受ける。
 つまり、いつもオーバーブッキングなのだ。
 予想通りドタキャンが出て、多めの予約がうまく定員に収まればOK.
 だが、必ずそうなるとは限らない。
 その時には、誰かに搭乗をあきらめてもらうしかない。
 何らかの方法で、客を選び、別便への振り替えをお願いすることになる。
 今回は、この一連の様子があまりにも乱暴で、他の乗客にも目に余る状況に見えたので、動画が撮影され、拡散されることになった。

 1人だけ強硬に降機を拒否したため、乱暴な排除行為になり、それが他の乗客に撮影され拡散されることになった。
 普段は、おとなしく客が応じ、問題なくことが収まっていたのかもしれない。
 選ばれた4人は、みんなアジア系の客だったという。
 白人を選ぶと「なんで私が?」と猛烈に抗議される。
 黒人を選ぶと「人種差別だ!」と問題がややこしくなる。
 アジア系なら、おとなしく応じる人が多いということで選ばれたのか。
 いままでの経験則から、アジア系を選んでおけばトラブルが少ない、ということが分かっていたのかもしれない。
 
 ユナイテッド航空の今回の対応はひどいものだが、問題が発覚してからの対応もひどい。
 会社側は、当初はオーバーブッキングを起こしてしまったことを謝罪していた。
 わざと問題をそらそうとしている。
 CEOは、社員向けのメッセージで、「乗客がけんか腰だった」と批判し、社の対応を正当化していたことが発覚し、騒ぎを大きくしている。
 その後、「無理やり排除された乗客と乗り合わせた全ての乗客に深く謝罪する」との声明を出し火消しに動き出すが、全く火消しになっていない。
 アメリカの経営者は、謝罪が下手だ。
 日本と違って、もともと謝罪で問題を収束させるという文化がないからだろう。

 たぶん、こんなことはいつものことであり、他の航空会社でもやっていること。
 今回は、たまたま客が抵抗し騒いだので乱暴な扱いになっただけで、自分らの行為に問題があるという自覚がないのではないか。
 むしろ、客に騒がれた自分らこそ被害者との感覚があったのではないか。
 保安係官を呼び強制排除させたのは、「客が騒いで降りないので、飛行機を発進できない」という理由だったのだろう。
 保安係官は、どういう事情か分からず、航空会社の言われるがまま、騒ぐ客を力づくで無理やり引きずっていった。

 米運輸省によれば、米国内で2016年にオーバーブッキングのため搭乗便を変更するよう求められた乗客数は43万人強に上ったという。
 オーバーブッキングを当たり前とし、定員を超えた場合は搭乗拒否をして対応するという航空業界の体質に問題の本質がありそうだ。

posted by 平野喜久 at 20:17| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

くら寿司のお粗末な対応:投稿者の情報開示請求

 産経新聞の報道による。
 奇妙な裁判があった。
 大手すしチェーン「無添くら寿司」を運営する「くらコーポレーション」が、プロバイダー業者「ソニーネットワークコミュニケーションズ(ソネット)」を相手取り、裁判を起こした。
 訴訟の内容は、インターネット掲示板上に「無添という表現はイカサマくさい」などと書き込んだ人物の情報開示を請求したもの。
 その判決が12日、東京地裁であった。
 結果は、請求棄却。
 「書き込みは、くら社の社会的評価を低下させるものではなく、仮に低下させるとしても、書き込みには公益性があるため違法性はない」ということだった。
 
 株式情報を扱う掲示板に、ソネットのプロバイダーを利用する誰かが「くら寿司」を批判する書き込みをしたらしい。
 それで、くら社がソネットに対して、投稿者の情報開示を求めていたのだ。
 くら社は、投稿者の情報を得て、何をしようとしたのか。
 投稿者に直接掛け合い、投稿を削除せよと要求するつもりだったのか。
 それとも、このような裁判を起こし、批判的な投稿をする匿名者への脅しのつもりだったのか。
 いずれにしても、上場企業の対応としては低レベル過ぎる。

 実際の投稿内容は、次のようなものだったようだ。
 「ここは無添くらなどと標榜するが、何が無添なのか書かれていない。揚げ油は何なのか、シリコーンは入っているのか。果糖ブドウ糖は入っているのか。化学調味料なしと言っているだけ。イカサマくさい。本当のところを書けよ。市販の中国産ウナギのタレは必ず果糖ブドウ糖が入っている。自分に都合のよいことしか書かれていない」

 これを読むと、誹謗中傷やデマの類とは全く違うのが分かる。
 この内容は、多くの人が漠然と感じていたことで、「確かに、そうだよなぁ」と思わせる。
 「無添くら寿司」という店舗名は、まるで、出されている食材は、無添加に徹しているかのように連想させる。
 ところが、この店舗の売り文句に、「無添加」の言葉はどこにもない。
 テレビコマーシャルにも、広告にも、店舗内装にも、無添加をセールスポイントにしている様子はまったくない。
 ならば、この「無添」とは、何の意味か。
 誰もが疑問に思うだろう。
 もしかしたら、「無添」とは、どこかの地名か? 人名か?
 名前の由来も公表されていない。
 もしかしたら、消費者に「無添加」を勝手にイメージさせるためにこのような店名にしているだけではないのか。
 あの投稿者の思いは、ここにあったのではないだろうか。
 
 それにしても、くら社の対応はお粗末すぎた。
 裁判に訴えたことで、この案件が広く知られることとなり、むしろ企業イメージの低下につながた。
 そして、店名のうさん臭さに改めて気づかせることになってしまった。
 くら社としては、裁判に訴えるのではなく、「無添くら寿司」の店名の由来を丁寧に説明し、我が社の創業理念を広く知ってもらう絶好のチャンスにすべきだった。

posted by 平野喜久 at 17:10| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月10日

表層地盤、想定の1.5倍以上の揺れ

 NHKwebnewsの報道による。
 地震の揺れの大きさについて。
 表層地盤によって局所的に揺れが増幅する恐れがあるとして、国の研究機関である防災科学技術研究所が分析した。
 いままでは、揺れの大きさは地盤の柔らかさによって決まると思われてきた。
 だから、山間部は地盤が固いため揺れは小さく、平野部は地盤が柔らかいために揺れは大きくなる。
 当然、平野部ほど建物の被害は多くなるというのが一般的な解釈だった。
 ところが、去年4月の熊本地震では、必ずしもそうなっていなかった。
 平野部でも、場所によって建物被害の大きいところと小さいところが極端に分かれていたのだ。
 特に、河川流域は体積地層が深いので、建物被害は甚大になるはずが、そうなっていなかった。
 むしろ、流域から離れた地域の方に被害が集中していた。

 この謎は、表層地盤の厚さによるものだということが分かってきた。
 表層地盤とは地表面に堆積した柔らかい粘土層の地盤のことを言う。
 山間部は表層地盤が薄いので、地震の揺れは増幅されることがない。
 これは従来からの解釈と同じだ。
 問題は、平野部だ。
 河川流域は表層地盤が厚い。
 当然、地震の揺れは表層地盤で増幅されて地表に伝わるが、その揺れは非常に周期の長い揺れになって伝わる。
 この周期の長い揺れは、地面を大きく揺さぶりはするが、低層階の木造住宅を破壊するような力を持たない。
 一方、河川流域から離れた表層地盤が少し浅くなっている地域は、地震の揺れが増幅され、地表面に達するときには周期1秒ぐらいの揺れになる。
 この周期の揺れが木造住宅に特に被害をもたらすことが分かっている。
 熊本地震で、同じ震度7を観測した地域でも、場所によって建物の被害状況に極端な違いが見られたのはこういう仕組みだったのだ。

 近い将来、首都直下地震の発生が懸念される関東地方。
 従来の地質調査で揺れの大きさをハザードマップで公表されていたが、これが全面的に見直しを迫られている。
 表層地盤の状況によっては、地震の揺れが、これまでの想定の1.5倍以上に強まる可能性のある地域が5000か所余りに上ることが明らかになった。
 場所によっては、揺れの大きさが3倍以上となるところもあり、従来の被害想定がまったく当てはまらなくなっている。
 今後は、他の地域の地盤調査も進み、より正確なハザードマップが作られるようになるだろう。
 地震の調査研究は、常に進化しており、ハザードマップも常に塗り替えられている。
 私たちが地震への備えを考えるときには、最新の情報に敏感になっておく必要がある。


posted by 平野喜久 at 08:38| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月09日

記者会見に不慣れな大臣はそれだけでリスクだ

 今村復興相が記者会見で、記者の質問に激高し、会見室から「出て行きなさい!」「もう二度と来ないでください!」「うるさい!」と声を荒らげたことが問題になっている。
 男性記者は、東京電力福島第1原発事故による自主避難者への住宅の無償提供が3月末で打ち切られたことに関して質問。
 福島県に帰るに帰れない人がいることに対して、国の責任を追及した。
 今村大臣は初めのうちは穏やかに回答していたが、記者側が繰り返し責任を追及し続けたことから対応が感情的になり始めた。
 なおも追及をやめない記者に対して、ついに「責任を持ってやっている。君はなんて無礼なことを言うんだ。撤回しなさい!」と怒りを爆発さるに至った。
 会見を一方的に切り上げ、退場する場面でも記者は質問を浴びせ、それに対して「うるさい!」が出た。
 この「うるさい!」が、原発被災者に対する本音とも受け取られかねないことから問題が拡大した。
 今村氏はその後冷静さを取り戻し、同日夕に復興庁で記者団に陳謝。
 安倍総理も陳謝している。

 記者会見の様子を見ると、執拗に同じ質問を繰り返す記者のしつこさにうっとうしさを覚える。
 今村大臣がいらだちを感じるのも無理はない。
 だが、そもそも記者会見とはこういうものなのではないか。
 記者としては、大臣の本音を聞き出すため、いろんな質問をぶつける。
 時にはわざといらだたせるような質問をして揺さぶりをかける。
 これは記者として当たり前のことだろう。
 今回は、今村大臣が記者の仕掛けにいとも簡単に揺さぶられてしまったという印象が強い。
 政治家経験の長いベテランでありながら、大臣経験が初めてという人は記者会見で対応を間違えるケースが多い。
 記者会見の不慣れな人は、どうしても、目の前の記者に反応してしまう。
 若くて生意気な記者が嫌味な質問をしてくると、それだけで感情的に反発してしまう。
 「こんな奴に、なんで丁寧に対応しなければならないんだ」との思いが先行してしまう。
 こうなったら、危ない。
 公式の場での記者会見は、目の前の記者を相手にしているようで、実はその背後にいる国民や関係者を相手にしているという認識でなければいけないからだ。

 記者会見に不慣れな人物が大臣に就任した場合、それだけでリスクだ。
 いつ、足元をすくわれ、それが国民の不評を買い、内閣の崩壊につながるか分からないからだ。
 大臣初心者は、まず、マスコミ対応のレクチャーを受けるべきだろう。
 
 今の内閣で、最も記者会見のうまいのは、菅官房長官だ。
 毎日2回ずつの定例記者会見を開いているが、いまのところ失態はない。
 これは、無難な物言いに徹しているという意味ではなく、時には外国に主張すべきことは明確に主張し、国民にしっかり伝えるべきことは明確に述べている。
 表現は洗練され、感情も安定していて、その言動は危なげない。
 余計なことは語らず、かつ、必要なことはしっかり伝える。
 スポークスマンの手本を見るようだ。
 
 
posted by 平野喜久 at 11:39| 愛知 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月06日

那須雪崩事故:事前準備の不備

栃木県那須町のスキー場付近で県立大田原高山岳部の生徒ら8人がラッセル訓練中に死亡した雪崩事故。
 追加の情報でいろいろなことが分かってきた。
 事前の準備に不備があったようだ。
 予定の登山を悪天候でできなくなった場合の訓練計画がなかった。
 実施要項に講師として記載のない教諭にラッセル訓練の先頭班を引率させていた。
 事故現場の国有林の管理元に入林届を出していなかった。
 生徒らに、雪崩発生時の対処方法をレクチャーしていなかった。
 
 当日の天候を見て山頂登山を中止したところまでは計画通りで問題なかった。
 ただ、登山中止の場合の計画はなく、そこからは行き当たりばったりの行動になってしまったようだ。
 雪崩など起きるはずはないという強い思い込みが前提なので、危機意識は全くなく、そのための備えは何もなかったといってもいい。
 特に、生徒らに、雪山遭難を避けるためのノウハウを伝えていなかったのは問題が大きい。
 何のための雪山訓練なのか。
 雪山のリスクを身をもって体験するための訓練ではないのか。
 結果として何も起きなかったとしても、リスクを意識しながら訓練をするのと、何も知らされずにただ引率教員の後をついて登っているだけとでは、経験値が全く違う。
 雪山リスクを実感できれば、その体験は一生の財産になる。
  
 この雪山のリスクを教えずに訓練をさせ、たとえ無事に下山することができたとしても、それは果たして成功と言えるか。
 ただ、みんなで雪山に登ってきました、という思い出ができるだけだ。
 その生徒らは、雪山リスクを学ぶ貴重なチャンスを逃す。
 雪山なんてこんなもの、という偶然の成功体験を増やしただけに終わる。
 偶然の成功体験を蓄積させてしまうと、リスクに鈍感になり、雪山をなめてかかるようになる。
 これは、将来の大きな事故の誘因になりかねない。
 こちらの方は、むしろ、弊害が大きい。
 責任者教員は登山歴の長いベテランだが、あの危機意識のなさは、成功体験しか蓄積してこなかった結果かもしれない。

 引率教員9人は、全員無線機や携帯電話を持っていたという。
 だが、その通信ツールは1つも役に立たなかった。
 ある教員は、何度も本部へ無線連絡を試みたが応答がなかったという。
 訓練開始前、本部と現場とで本日の訓練の打ち合わせをしている。
 その時の打ち合わせは、携帯電話でやり取りしたと本部責任者は言っていた。
 ならば、無線が通じなかったとしても携帯電話が使える状態だったはずで、なぜ、これを有効利用できなかったのか不明だ。
 本部に通じなかったとしたら、直接現場教員から警察に救助要請もできたはずだからだ。
 たぶん、現場教員も埋もれた生徒らの救出に大わらわで、救助要請の連絡をするというところまで気の回る状態ではなかったのかもしれない。
 
posted by 平野喜久 at 10:41| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ゴルフレッスンプロ1000人超がローン詐欺被害か

 東洋経済オンラインの報道による。
 レッスンプロ1000人超が破産の危機に瀕しているという。
 どういうことかというと、ゴルフ練習場のレッスンプロたちが、ある業者に不当な契約を結ばされ、多額の借金を背負うことになったという。
 ある業者とは、東京・港区のゴルフスタジアムという会社。
 そこが提供する、「ごるスタ」というウェブサイトの作成・運営管理サービスに絡み問題が起きた。
 
 この業者は、レッスンプロたちに無料でウェブサイトを作ると持ち掛け、実際にサイトを作成する。
 業者が無料でウェブサイトを作って終わりということはありえない。
 話には続きがある。
 最終的に契約書を取り交わす段階になると、「ソフトを買う形を取らせてほしい。ついては信販会社とクレジット契約も結んでほしい」と言い出す。
 無料でサイトを作るという話だったはずだ。
 その通り。
 サイトは無料で作った。
 ただ、サイトの運用には管理ソフトがいるので、それをローンで購入せよ、ということらしい。
 ウェブサイトを運用すれば広告料収入があるので、それを支払いに充てれば、実質、持ち出しにはならない。
 無料でサイトを作り、無料で運用できることになる、という理屈だった。

 はじめのうちは広告料収入もしっかりあり、それをローンの支払いに充てることで十分賄えた。
 ところが、今年の2月下旬になって、突然、広告料の支払いが滞った。
 それで、ローンの残債だけを抱えたレッスンプロが破産の危機に陥ったというわけだ。
 残債は少ない人でも300万円、多い人は900万円にも上るという。
 これで破産というのも大げさな感じもするが、急に多額の借金を背負わされた形になっているのは間違いない。
 いま、被害者の会が立ち上がり、信販会社に対して、回収をストップするように働きかけているようだ。

 これは、一時期流行したホームページ詐欺とよく似た手法だ。
 無料でホームページを作ると持ち掛け、管理料と称して、クレジット契約を結ばせる。
 サービスをローンの対象にできないので、管理ソフトという物品を対象にローンを組ませる。
 表向きは、毎月管理料を支払っているという形になる。
 客の方が、サービスを打ち切りたいと申し出ると、管理サービスは終わるが、ローンの支払いは終わらない。
 なぜなら、ローンの支払いは途中で打ち切ることができないからだ。
 ここで初めて客は、支払っていたのが管理料ではなく、ソフト代金のローン返済だったことに気づいてびっくりすることになる。
 
 今回の事例は、広告料収入でローンの支払いを賄うので、実質的な経費負担がないというのが前提だった。
 だが、毎月一定額の広告料収入が保証されているわけではないし、広告料収入とローン契約がリンクしているわけではなく、広告料収入があってもなくてもローンの返済は続く。
 ローンの期間は、7年84回。
 たかが管理ソフトにローンを組むこと自体があり得ないが、ソフトにこれほど長期のローン契約もあり得ない。
 これは、1回当たりの支払額を小さく見せることで、問題の発覚を避ける狙いがある。
 電話機のローン詐欺、ホームページのローン詐欺も、同じように7年84回だった。

 悪質商法であることに間違いないが、詐欺要件が立証できるかどうかは難しい。
 被害者は、スキームのすべてを理解したうえで契約書に署名捺印しているからだ。
 契約書に、ローン完済まで広告料収入を保証するという文言が盛り込まれていれば救われるが、たぶん、そんな業者に都合の悪いことは書いてないだろう。

 今回、なぜゴルフのレッスンプロばかりが被害にあったのかというと、もともとこの業者にゴルフ練習場との取引実績があり、そのコネクションを使って、この悪質ビジネスを立ち上げることを思いついたようだ。
 普段出入りしているゴルフ練習場や、仕事を世話してもらっている先輩からの紹介ということになれば、むげに断ることもできず、疑問に思いながらも契約してしまったという。
 不特定多数の一般の人々を対象としたものではなく、特定の業界の濃密な人間関係を利用した悪質ビジネスという点で特異なケースだった。
 

 
posted by 平野喜久 at 09:58| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月01日

第3回レジリエンス認証:審査登録結果

 第3回のレジリエンス認証(国土強靭化貢献団体認証)の審査結果が公表された。
 今回、審査登録されたのは7社だった。
 第1回が44社、第2回が20社だったから、第3回はずいぶん少ない印象だ。
 応募そのものが少なかったのか、それとも、応募はあっても審査に合格するレベルの企業が少なかったのか。
 応募総数や合格率などが公表されていないので、実態はよくわからない。
 これまでに審査登録になった企業は、71社。
 初年度に100社を目標としていたはずなので、やや低調だ。

 レジリエンス認証制度は、民間企業のBCPの取り組みを客観的な立場で認証し、国が応援しようという仕組みだ。
 いままで、BCPの必要性はいろいろなところで語られてきたが、各企業が勝手に取り組んでいるだけで、それが実質的に意味のある内容になっているのかどうかは、よくわからなかった。
 BCPに取り組んでいるといっても、いろんなレベルの取り組みがある。
 ようやく基本レベルが一通りできた初級レベル。
 基本レベルのBCPに基づき、具体的な対策を実行し始めた中級レベル。
 必要な対策は実行済みで、さらに実効性の向上にバージョンアップを重ねている上級レベル。
 「BCPに取り組んでいる」と表明していても、その企業が実際にどのレベルの取り組みを行なっているのかは外部からはうかがい知ることができない。
 外部から伺い知ることができないだけではない。
 取り組んでいる当事者も、自分たちの取り組みはこれで十分なのか、まったく足りないのか、それが分からないことがある。
 お手本を見ながら、見よう見まねで作っているだけだからだ。
 
 こういう状況にあるとき、レジリエンス認証のような客観的な審査制度は非常にありがたい。
 取り組んでいる当事者にとっては、自分たちのBCPが十分なレベルにあり、いままでの取り組み方が間違っていなかったことの確認になる。
 第三者に対しては、我が社のBCPは十分なレベルにあることの証明になる。
 このことから、BCPに取り組む企業には、まずはこのレジリエンス認証をクリアできるレベルを目指すことをお勧めしている。
 
 だが、このレジリエンス認証制度は、まだ昨年度に始まったばかりで、認知度は高くない。
 いままで認証取得した企業も、地域や業種が一部に偏っている。
 このレジリエンス認証の審査基準の1つに、過去2年ほどの活動実績があることが要求されている。
 これが1つのハードルになっているようだ。
 つまり、とりあえずBCP文書を作りました、というだけでは認められない。
 それに基づいて実際の活動が行われていて初めて認証される。
 この認証制度は、文書が形式的に整っているかは重視しない。
 実際に活動が行われており、今後もその活動が継続する仕組みがあるかどうか、という実質性の方に重点が置かれている。
 だから、この認証制度を知って挑戦しようと思っても、まずは活動実績がなければ申請できない。
 それで、いま、活動実績を作っているところということかもしれない。
 回を重ねるごとに登録企業数が減っているのは、こんなところに理由があるのだろう。

 国土強靭化は国策として取り組まれており、レジリエンス認証制度は、その一環として重要な位置づけにある。
 国は本気でこの制度を広げていこうとしている。
 レジリエンス認証に挑戦する企業が増え、このメリットが具体的に実感できるようになれば、一気に普及が進むだろう。


posted by 平野喜久 at 16:09| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする