2017年05月25日

京大に使用料請求せず:JASRAC

 京大の学長が入学式の式辞を大学ウェブサイト上に公開したことで、JASRACから問い合わせがあったことについて、決着がついた。
 式辞の中で、歌手のボブ・ディランさんの「風に吹かれて」の歌詞の一節が含まれていたために、それについて著作権使用料が発生するのかが問題になっていたのだ。
 JASRACの理事長が記者会見で「引用と判断している。請求はしない」と述べたことで、問題は収束した。
 
 そもそも、当初、JASRACから京大に問い合わせがあったのかが不可解。
 ボブ・ディランさんの歌詞をそのままネット上に公開しているわけでもなく、式辞の中で歌詞の一節を引用しただけだし、その式辞を大学のウェブサイト上に公開しただけだ。
 引用という形式をとっている。
 その目的もはっきりしている。
 式辞をネット上に公開した意義も明確。
 どこにも著作権を侵害するような不自然な点は見当たらない。
 京大側は、問い合わせに対して、意味が分からず対応しなかったという。
 だが、この情報がネット上で拡散し、世論が反応した。
 「こんなものにも使用料を請求するのか」とJASRACの姿勢に批判的な論調が強かった。
 世論の反発の強さに驚いたのか、JASRACは「別に、請求しているわけではない。問い合わせをしただけ」と途端に逃げ腰になった。
 そして、理事長の定例記者会見で記者に問われ、先の発言となった。

 JASRACからの問い合わせというのは、電話であったらしい。
 「歌詞の引用をサイトに掲載するには、著作権料に関わる手続きが必要」という趣旨だったという。
 確かに、使用料を請求はしていない。
 手続きをせよと言っているだけ。
 JASRACに歌詞の引用を届け出ると、その使用方法などを見て、JASRACが使用料を算出し、請求してくる。
 著作権法で認められた引用という形なら使用料は発生しないが、その判断はJASRACがするので、使用者が勝手に判断するな、という姿勢が見える。
 今回は、世論が先に反発したので、JASRACは手を引いた。
 だが、これが個人だったらどうなっただろうか。
 JASRACから問い合わせがあっただけで、圧力を感じただろう。
 急いでネット上の文章を削除するか、手続きを進めてしまうかしただろう。
 場合によっては、うっかり使用料を払ってしまうかもしれない。
 もしかしたら、JASRACの問い合わせというのは、相手がビビッて使用料を払ってくれればOKぐらいに思って、片っ端から問い合わせの電話を入れているのではないか。
 だとすると、これは実体のない請求書を送りつけて、間違えて払い込んでくれるのを待つ「架空請求詐欺」のようなものだ。

 今回の騒動で、JASRACは理事長の「請求しない」という発言だけで収束となった。
 だが、誤解を招く行為についての反省も謝罪もない。
 これを機に、「著作物の引用とはどういう条件で成り立つのか」ということを広く国民に知ってもらうこともできたはずだが、それもない。
 とりっぱぐれて、そそくさと逃げた、という印象しかない。
 音楽著作権の保護者というイメージからは程遠い。
 

 
posted by 平野喜久 at 10:20| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月22日

地下天気図は使えない:地震予知最前線

 BS-TBS「諸説あり!」5月6日放送:「地震予知は本当に不可能なのか」
 番組の後半では、東海大学教授の長尾氏の研究が紹介された。
 長尾氏は、「地下天気図」という奇妙なものを使って地震を予知しようとしている。
 地下天気図というのは、地下の状態を天気図のように可視化したものだ。
 まず、過去に起きた地震の記録を地図上にプロットする。
 当然、地震活動が活発な地域とそうでない地域とが存在する。
 その活動度の変化を捉えて、天気図のように可視化するのだそうだ。
 例えば、活動が活発になっている地域は高気圧とみなして赤色に、活動が沈静化している地域は低気圧とみなして青色に表示される。
 この時、地震の予兆として注目するのは、意外にも、赤色ではなく、活動が沈静化している青色の方なのだ。
 どうも、大地震発生の直前に、その地域には地震活動が沈静化する現象が起きるので、それを捉えることができれば、地震予知が可能という理屈らしい。
 これも、なぜ大地震の前に沈静化現象が起きるのかは、よくわからない。
 だが、過去の大地震のデータを解析すると、地震発生の半年から1年ぐらい前に、その地域に青色の表示が強く現れるらしく、それが根拠になっている。

 番組では熊本地震の時のデータが紹介された。
 発生1年前の2015年4月の時点で、長崎と紀伊半島先端に青色エリアが現れた。
 この地域の地震活動が低下していることを意味している。
 嵐の前の静けさだ。
 これが6月になると、長崎の青色エリアは勢力を拡大し、紀伊半島の方は縮小していく。
 その後、いったん勢力は弱まるが、9月になってぶり返し、九州北部の青色だけが目立つようになり、他の地域の青色は姿を消していく。
 すると、10月には九州の青色も勢力が衰え始め、12月には消滅してしまう。
 消滅して4か月後に熊本で大地震発生となる。
 この予知法の特徴は、一番の異常データは地震発生の半年前に出るという点だ。
 実際に、このとき、長尾氏は九州北部で大地震が起きるかもと予想していたそうだ。
 「厳密には熊本とのずれがあるが、九州での異常を捉えていたことには変わりはない」と胸を張る。
 この研究も、熊本地震の前兆を捉えたとみるには、こころもとない。
 異常データが地震発生の半年前に現れること、そして、地震が起きた場所にピンポイントで現れるのではなく、そこからずれて現れること。
 地震予知には、「いつ」「どこで」が重要情報だが、この両方にずれが生じる予知情報は珍しい。
 「九州での異常を捉えていた」と言うが、九州といっても広い。
 他の地域の人から見れば、九州とひとくくりにしてしまえばどこも同じという印象かもしれないが、その土地のひとからすれば、福岡と熊本はまったく違う。

 また、この地下天気図の時間変化を見ると、別に気になるところが見るかる。
 地震が起きた2016年4月の天気図では、小笠原諸島から房総半島にかけて強い青色エリアが広がっているのだ。
 そのほかに、広島のところにも青色エリアが見つかる。
 異常データが出てから半年後に大地震発生というのなら、この地域に、半年後に大地震が起きていなければいけない。
 当時、長尾氏もリアルタイムでこのデータを見ていたはずで、この異常値を見て、熊本地震に続いて、首都圏や広島でも大地震が起きそうと予想していたのではないか。
 だが、そうはならなかった。
 この青色エリアについては地震の予兆ではなかったということになる。
 ということは、青色エリアは、地震の予兆になることもあれば、そうならないこともあるということだ。
 ここが非常にこころもとない。
 大地震が起きてから、その地域の過去のデータを調べて、異常値を見つけているだけという印象を受ける。
 
 番組では、熊本地震の直前に起きた三重県南東沖地震についても予兆を捉えていたと説明していた。
 2015年4月の段階で、紀伊半島先端と長崎で青色エリアが発生したが、このときの紀伊半島先端の異常値が、この三重県南東沖地震の予兆だったという。
 この時の地震はM6.1で最大震度4.
 ほとんど被害らしい被害は起きなかった。
 こんな小さな地震でも予兆を捉えることができたと言いたいようだが、説得力がない。
 ここの異常値が最大になったのは1年前。
 地震が起きてから、過去にさかのぼってデータを調べて異常を探しているという風にしか見えない。
 
 2016年10月に起きた鳥取中部地震も取り上げていた。
 熊本地震が発生した4月の段階で、広島に青色エリアが現れていた。
 この広島の青色は、6月になって急に勢力を拡大し、広島から島根にかけて広い範囲に広がった。
 7月にはさらにエリアを広げ、瀬戸内海、岡山まで広がっている。
 その後勢力は縮小し、地震発生時には広島北部から島根県の一部のエリアだけが青色に。
 これが、鳥取中部地震の予兆だったというのだ。
 これも、とても予兆には見えない。
 そもそも、震源だった鳥取県は、一度も青色に染まることはなかった。
 ずっと青色が続いたのは広島県だけだ。
 しかも、今度は、地震発生時に青色エリアは消滅していなかった。
 青色エリアは、半年から1年前に消滅するのではなかったのか。
 残念ながら、地震予知という観点で見たとき、「いつ」も「どこで」も外し続けているという印象しかない。
 番組内で長尾氏は、青色エリアが消滅していないことを捉えてこう言っていた。
 「もう1回、大きな地震が中国四国地方で発生する可能性が高い」
 これほど外していて、なお、予知しようとしている。
 この人にとって、中国四国地方はどこも一緒くたなのだ。
 このエリアのどこかで地震が起きれば、「予兆を捉えていた」ということになりそうだ。
 これほど広いエリアを長いスパンで捉えれば、地震が起きるのは当たり前だ。
 もうこうなると、怪しげな占い師の領域に足を踏み込み始めているように見える。

 こんな危なっかしいデータばかり紹介しているということは、ずばり「いつ」「どこで」を言い当てた異常データはまだ存在しないのだろう。
 この番組では、東日本大震災のデータは紹介されなかった。
 この異常データは、東日本大震災の予兆を捉えることがなかったのだということが分かる。
 紀伊半島沖のM6.1の地震は予兆を捉えたのに、M9の超巨大地震は予兆を捉えられなかったのだ。
 
 もちろん、まだまだ研究途上であり、完璧な予知を期待する方が無謀だ。
 地震予知に向けた基礎研究がようやく始まったところと考えれば、これらも貴重な取り組みと言えるかもしれない。
 だが、研究者の姿勢に疑問を感じる。
 安易に「予兆を捉えていた」とか、「予測が可能だ」などと言うからだ。
 時期がずれていても、場所がずれていても、近いからOKで当たったことにしてしまう。
 自分の研究が本物であると信じたいし、それが世の中の役になってほしいという強い思いがあるために、このようなやや大げさな物言いになってしまうのだろう。
 しかし、これは、占い師の姿勢であって、研究者の姿勢ではない。
 本当なら、ずれが生じたときこそ、そのずれに注目し、なぜずれが生じたのかを解明することが、本当の地震予知につながるのではないか。
 また、東日本大震災の時はなぜ予兆が現れなかったのか。
 そして、小笠原諸島から房総半島にかけて異常データが現れたのに、なぜ地震が起きなかったのか。
 ここにこそ、本質があるのではないだろうか。

 この番組で取り上げられた2人の研究者は、民間のうさん臭い地震予想屋とは違う。
 ちゃんとした研究者であり、科学論文があり、その研究内容が第三者によって検証できるからだ。
 地震予知は、現時点では無理であるにしても、いずれできるようになるかもしれない。
 そのためにはこのような地道な研究の積み重ねが必要なのだろう。



 

 
 
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地震予知研究の最前線:上空の電子数で予知できるか

 BS-TBS「諸説あり」5月6日放送:「地震予知は本当に不可能なのか」。
 この番組は、世に存在する様々な諸説を掘り起こし、徹底検証する情報バラエティだ。
 この回では、地震予知研究の最前線の紹介だった。
 京都大学教授の梅野健氏、東海大学教授の長尾年恭氏の研究が紹介された。
 梅野氏の研究は、「地震が起こる20分から1時間前に、その地域の上空で電子数に異常が見られる」というもの。
 熊本地震のデータを解析した結果を科学論文として発表し、話題となった。
 番組では、その時の異常データの時間変化が動画として紹介された。
 熊本地震の1時間前に、九州と北陸に異常を示す赤色のエリアが現れた。
 時間を進めると、北陸の赤色が消え、中国地方から九州にかけての地域だけ赤色が残る。
 しかも、赤色の地域は、帯状の畝のように縦に何本も発生しており、それが時間とともに西へ移動している。
 30分前になると、赤色エリアは九州だけになり、やがて地震発生となる。
 まるで、赤色のエリアが震源地に向かって集まってきているような動きがみられる。
 これを見れば、どこで地震が起きるか事前にわかるというわけだ。
 だが、私が映像を見た感じでは、これで、熊本地震の発生を予知できたという印象は持てない。
 30分前に赤色エリアが九州だけになるが、その赤色は主に福岡から宮崎にかけてのエリアに帯状に広がっている。
 そのあと、赤色帯は西に移動し続けるが、同時に中国地方にも再び帯が何本も等間隔で現れ、同じように西に移動し続ける。
 地震発生の時には長崎から熊本を通って鹿児島のあたりに1本の帯、大分のあたりにもう1本の帯が赤くなっている。
 たしかに、地震発生時に熊本のあたりも赤色になっているが、赤色の範囲は九州全土に広がっており熊本地震の発生をピンポイントで予知しているように見えない。

 この帯状の赤色エリアが日本列島の上に何本も平行に一定間隔で並び、それが同じ速度で西に移動している。
 これが、とても自然現象に見えないのだ。
 データの収集過程で何かノイズが入り、それが干渉を起こしているようにしか見えない。
 赤色エリアが移動して震源の熊本に向かって集まってきているように見えるのは、ただ干渉を起こした帯状の模様が左に動いていただけで、たまたま左の端に熊本があったということではないのか。

 梅野氏は、どうして地震発生直前に上空の電子数に異常が起きるのかは分からないとしている。
 「もしかしたら、地面の破壊現象が上空の電子数に影響を及ぼしているのではないか」と予想しているようだ。
 異常を表すエリアは、日本列島上に縦に帯状、それも複数が平行に均等間隔で並び、西へ同じ速度で移動する。
 ということは、地面の破壊現象も同じような動きをしているということか。
 地面の破壊現象がそんな規則的で幾何学的な動きをするはずがない。
 だとすると、別の原因でそのようなデータの動きをしていることになる。
 それが何なのかを解明しないことには、とても地震との関連は証明できないだろう。

 番組では、東日本大震災の時のデータ解析も紹介された。
 地震発生1時間20分前になると、日本列島のあちこちで赤いエリアが現れ始める。
 そのエリアは、現れては消え、消えては現れ、日本中をうごめいているように見える。
 20分前になると、近畿、中部、関東エリアに強い赤色のエリアがはっきり現れる。
 10分前になると、紀伊半島から御前崎の沿岸部に強い赤色のエリアが集中する。
 次の瞬間、このエリアの赤が突然消え、続いて関東地域が赤く染まる。
 と同時に地震発生となった。
 この時も、全国に広がっていた赤色のエリアが震源の方に集まっていく様子が見られると解釈していた。
 だが、東日本大震災の震源は宮城県沖であり、関東ではない。
 地震発生時、宮城県周辺は赤色になっていない。
 赤色エリアは全国をうごめいていたが、地震の被害の大きかった東北地方はほとんど赤くなることがなかった。
 東日本大震災も無理に解釈しようとしているが、とても地震の予兆を捉えているようには見えない。
 むしろ、10分前の映像を見ると、まさに南海トラフ巨大地震の想定エリアが真っ赤に染まっており、そちらの予兆であったと言った方が説得力がある。
 だが、真っ赤に染まった南海トラフ地震は発生せず、赤色に染まることのなかった宮城県沖で地震発生。
 これは、むしろ、このデータは予兆を捉えていないと解釈すべきではないのか。

 地震発生と同時に動画がストップしてしまい、そのあと赤色エリアはどのように動いたかは放送では分からなかった。
 東日本大震災発生後は、余震が頻発した。
 長野と静岡では誘発地震も起きた。
 その部分のデータを見てみたいものだ。。
 本当にデータが地震の予兆を捉えているのなら、地震発生後は、余震の続く東北太平洋側全体が常に真っ赤に染まっているはず。
 東日本大震災は日本の観測史上最大規模の地震だった。
 だったら、異常データもいままでに見たこともない最大規模で表れていなければおかしい。
 たぶん、データはそのようになっておらず、見せられないのだろう。

 「上空の電子数に異常がみられる」という表現をしているのも、違和感がある。
 異常とは何か。
 電子数が増えるとも減るとも言っていない。
 たぶん、電子数が突然増えたり減ったりする現象をとらえているのだろう。
 それを「異常」とみなして、地震の予兆と解釈しているのだ。
 本当に捉えたデータ値の変化は、電子数の異常なのか。
 どうして電子数に変化が生じるのかが分からないのに、「異常」と決めつけるところに恣意的な解釈が入ってしまっている。
 
 これは科学論文として発表されているのが救いだ。
 他の科学者によって、しっかり検証されるのを待ちたい。
 
 
 
 
 
 
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2017年05月15日

Jアラートが鳴ったらどうする

 政府は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を知らせる全国瞬時警報システム「Jアラート」による避難指示を変更。
 発射直後の第1報から「頑丈な建物や地下に避難してください」と呼び掛けるようにした。
 これまでは、
 第1報で、ミサイルが日本の領土領海に届く可能性。
 第2報で、日本の領土領海に着弾の可能性。避難指示。
 第3報で、着弾の状況。
 これだと、避難指示が遅すぎるので、ミサイルが日本に届きそうだと分かったら、第1報から非難を呼びかけるようにすることとなった。

 昨日の早朝のミサイル発射時にはJアラートは発信されなかった。
 日本に届く恐れなしと判断されたからだ。
 東京メトロは、前回のミサイル発射時に電車の運行を10分間停止した。
 だが、これはやりすぎとの批判があったことから、Jアラートが発信された時に運航停止に対応を切り替えた。
 柔軟に対応しているところが好ましい。

 北朝鮮のミサイルは、日本にとって、現実のリスクとなりつつある。
 今回のミサイルは、従来にはない新型のようで、上空2,000qにも達してから自由落下させるように打ち上げられたらしい。
 上空2,000qというと完全に宇宙空間であり、一度宇宙空間に打ち上げられたミサイルが、大気圏に再突入して着弾したことになり、軌道コントロールが非常に難しいことをやっている。
 北朝鮮は、狙い通り正確に着弾させることに成功した、と見解を表明しているが、本当にそうか危なっかしい。
 今回はたまたま何ごともなく済んだが、少しでも軌道にずれが生じただけで、着弾地点は大きくずれる。
 試作段階のミサイルを次々に打ち上げ、失敗しないと考える方が間違っている。
 いままでの失敗は、途中で爆発したり、北朝鮮の領土内に落下したりという完全な失敗だったからよかった。
 だが、完全な失敗ではなく、少しミスした程度の失敗だった場合、そのミサイルはどこに着弾するか分からない。
 北朝鮮の意図にかかわらず、日本領土内に着弾する可能性はある。
 国がJアラートのシステムを開発し、国民に呼びかけているのは、現実のリスク対応として当然だろう。
 
 ところが、このJアラートに苦情を申し立てる人がいるそうだ。
 「子どもが怖がる」
 「不安をあおるのはやめてほしい」
 リスクに目を向けさせまいとする勢力は常に存在する。
 
 リスクに目を背けるのではなく、リスクを正しく直視し、冷静に対処法を考えておくことだ。
 Jアラートが鳴ったらどうしたらいいのか。
 国は屋内避難しか呼びかけていないが、本当は、もっと詳しく解説した方がいい。
 北朝鮮から日本に飛んでくるミサイルはどんなタイプになるのかは分からない。
 ただ実験用のミサイル筐体だけが落ちてくるのか、爆薬が仕掛けられているのか、爆薬とともにバイオや核が搭載されているのかによって、予想される被害はまったく違う。
 最低限、頑丈な建物の中に逃げ込むのが第1。
 これは、上からの落下物を回避するため。
 次に、窓際から離れ、建物の奥に退避する。
 これは、爆風から逃れるためだ。
 そして、目を両手で抑える。
 これは、爆発の閃光で失明しないため。
 目をつぶるだけでもいいが、核爆弾の場合その閃光は瞼を透過してしまうので、両手で覆った方がいい。
 爆発音もすごいので、耳を塞いだ方がいい。
 この時、目を覆いながら耳を塞ぐ姿勢になる。
 爆風が収まったら、情報収集。
 いまの爆発がどんなミサイルだったのか、周辺状況がどうなっているのかを確認。
 確認できる前に、勝手に動き回らない方がいい。
 生物・化学兵器や核爆弾の場合、その後の被害が大きくなる。

 
 
 
 



北朝鮮を巡る情勢が緊迫化しているためで、ミサイルは発射から最短数分で着弾することから、一刻も早く国民に避難を促す必要があると判断した。
政府は弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合に、Jアラートを使用して警報を出し、防災行政無線や緊急速報メールを通じて情報を伝達する。

これまでは、ミサイル発射後、日本の領土・領海に届く可能性がある場合、警報の第1報を出し、1〜2分後、領土・領海内に着弾する可能性が高くなった段階で第2報、着弾した段階で第3報を出すことにしていた。
避難指示は第2報の段階で「屋内に避難してください」と伝えていたが、今後は第1報から避難を指示し、屋内避難を呼び掛ける。

 
posted by 平野喜久 at 14:31| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月14日

批判のための批判はいらない:野田幹事長の街頭演説

 民進党の野田幹事長の街頭演説。
 安倍政権への批判を繰り返していたが、その内容は口先だけの批判にとどまっているという印象が強い。

 安倍首相が憲法改正を2020年までにと考えている件については、
 「全く関係のないことまで2020年に絡めるおかしな発言が出てきた」
 「何故憲法改正を2020年までとするのか。全く関係ない」と批判。
 「トップダウンで方向性を決める問題ではない」
 「日本は大統領の国ではない」
 「お門違いの発言だ」などと厳しく指摘。

 さらに、テロ等準備罪については、次のように批判していた。
「2020年に向けて新たにテロ対策をやらなければいけないくらい安全に不安のある国だったんですか?そうじゃない筈であります」

 安倍政権のやろうとすることを批判することに精一杯で、その主張に無理やり感が強い。
 民進党の中でも野田氏だけは、現実的な判断ができる政治家だと思われたが、その彼にして、この程度の主張しかできないとは驚いた。
 立場上、こう主張せざるを得ないのだろう。
 「提案型の野党になる」というのが公約だったはずだが、その様子はなく、安倍政権に難癖をつけることに終始している印象だ。

 テロ等準備罪に対する批判として、「日本はそんなに危険な国なのか」という批判は、リスクから目をそらそうとする悪魔の言説だ。
 リスクに目を向けなければ、問題が存在しないことになる。
 問題が存在しなければ、対策を講じる必要はない。
 対策を講じる必要がなければ、テロ等準備罪は不要だ。
 前提となるリスクを否定することで、政府の対策を否定するというのは、ただ国民の目をそらそうとしているだけで、何のリスク対策になっていない。
 現状ではテロ等準備罪が必要ないのであれば、いったいどうなったら必要になるのか、という判断基準が必要になる。
 提案型の野党なら、その基準が示せるはずだが、そんな基準は示せないだろう。
 政府を批判するために理屈をつけているだけだからだ。
 おそらく、テロ等準備罪が必要となる判断基準を明確に示せる人はいない。
 ここまでだったら必要ないが、これを超えたら必要になる、などと言えれば簡単だが、そんな基準はどこにも存在しない。
 どこにも存在しないものを前提にした議論に現実性はまったくない。
 民進党(旧民主党)は、何のために政権を経験したのか。
 せっかくの経験がまったく生かされていないではないか。
 人は失敗を通して多くを学び成長する。
 だが、民進党は民主党から党名を変え、悪いイメージを断とうとしたが、同時に、貴重な経験知も断ち切ってしまったようだ。

 本日のサンデーモーニング。
 トランプ政権批判と、安倍政権批判に終始し、北朝鮮の脅威は1つも語られることがなかった。
 番組が始まる僅か3時間前に北朝鮮がミサイルを発射し、30分前には官房長官が記者会見をしていたというのにだ。
 北朝鮮の脅威を取り上げると、安倍政権を批判しにくくなることを嫌がったのだろう。
 だが、ミサイル発射は、すでにネット上で情報が出回っており、視聴者はとっくに知っている。
 コメンテーター全員が申し合わせたように、北朝鮮の脅威を無視して安倍批判を繰り返す様子が滑稽でさえあった。
 コメンテーターの1人は、こんなことを言っていた。
 「日本だけが北朝鮮と対話しようという姿勢を示さないのはおかしい」
 このコメンテーターもミサイル発射の情報は知っていたはずだ。
 それが、30分間も飛び続けるような新しいタイプのミサイルだったことも分かっていたはず。
 すべてを知ったうえで、平然とこんなコメントを発信できる神経は異様だ。



  
 
 
 
 
posted by 平野喜久 at 20:15| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月12日

無断使用の迷惑料1,000円:DeNAの小ばかにした対応

 毎日新聞の報道による。
 医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」などで、記事や写真の無断使用が問題化し、10サイトが非公開に追い込まれたDeNA。
 無断使用された人に「迷惑料」名目で金銭の支払いを始めているらしい。
 
 当初、DeNAは「ただ場所を貸しているだけのプラットフォーム事業者で、記事の内容には責任を負わない」「投稿者が勝手にやったこと」と責任回避の姿勢を見せていた。
 だが、第三者委員会の調査により、DeNA自身も記事作成に積極的に関わっていたことが判明し、著作権侵害が逃れられなくなった。
 調査によれば、サイトに掲載された記事の最大5.6%、写真計74万件に著作権侵害の疑いがあったという。

 DeNAは、記事や写真を無断で使われたのではないかとする人の問い合わせに応じ、「迷惑料」を支払う対応を進めている。
 「迷惑料」の金額や算定基準については、はっきりしないが、個別に判断されているようだ。
 事業者の場合は万円単位、個人の場合は1,000円程度になるという。
 事の重大さに比べて、金額の安さに驚き、DeNAと交渉、「この写真を撮るためにどれだけの苦労と経費をかけたか」を説明し、値段を上げさせた個人もいたそうだ。

 DeNAは、個人は対処しやすいとみてなめてかかっている。
 相手が大手企業だったりすると、法的手段で膨大な損害賠償を求められる可能性があり、対応を間違うととんでもないことになる。
 ところが、相手が個人であれば、口先だけで対応していれば、やがて相手は泣き寝入りする。
 それで、対応が甘くなるのだろう。

 損害賠償の算定基準は難しい。
 相手が事業者であれば、実際に被った損失を算定しやすく金額も高額になりがちだが、個人が趣味で公開しているブログだと、実質的な損失はなく、心理的な被害しかない。
 ウェルクによって無断使用された側としては、不快極まりない。
 その不快感を慰撫する金額とはどのぐらいかは、個人差があり一律で決めるのは無理だ。
 過去に、個人情報漏洩事件を起こした企業は、個人への見舞金として500円程度を払うというのが相場になってしまっている。
 今回は、それを基準に、1,000円あれば十分だろうとの判断があったのかもしれない。

 しかし、1,000円という金額は、子どもの小遣いでも喜ばれない金額であり、あまりにも事態を軽んじている印象を受ける。
 被害個人だって、何も高額の賠償額をふんだくってやろうとは思っていないだろうが、具体的な金額を提示されたおかげで、却って、「この程度の被害だと思っているのか」というのが目に見える形で分かってしまうだけに、納得がいかなくなる。
 個人は、たとえ趣味のブログに挙げている写真であったとしても、その写真を撮るためにどれだけの苦労をし、どれだけのコストをかけ、どれだけの思いを傾けたか分からない。
 こだわりのある写真であれば、その思いはなおさら大きい。
 それを、ネット上でたまたま見つけ、勝手にコピペして、自分のサイトで堂々と使用している姿は許しがたい、と思って当然だ。
 DeNAという大手企業のブランドを背負った業者であり、こちらは一個人。
 個人には何もできないだろうという小ばかにした態度にも見え、余計に不快だ。
 さらに、DeNAは、これを商売に使い、集客効果を高めるために利用して、実質的な利益を得ているのだ。
 そのことを思うと、その「迷惑料」がたったの1,000円では、あまりにも安すぎる。
 本来なら、「同じ写真を独自に撮影しとしたら、どれだけのコストがかかったか」という視点が算定基準にならなければいけないだろう。
 被害者にとって、「迷惑料」という言い方も、不愉快だろう。
 「あ、ごめんね」という程度の態度に見えるからだ。

 今回、DeNAは、申し出があった被害者に対して迷惑料を払うことにしたようだ。
 つまり、「文句があるなら言ってこい」という態度だ。
 自分らが犯した無断使用なのだから、自ら相手先を探し出して、「迷惑料」の支払いを申し出るべきところだ。
 どうして、個人の側がDeNAサイトを調べて、自分の記事や写真が無断使用されているかどうかを確認しなければならないのか。
 だが、写真の無断使用だけでも74万件とあまりにも多く、範囲も膨大で、とても1件1件フォローしきれない。
 面倒だから、クレームを言ってきた人に個別対応するということにしたのだろう。
 元のサイトは既に閉鎖されており、今更確認することすらできない。
 自分の著作が剽窃されたことすら気づいていない人も多いかもしれない。
 DeNAとしては、このままそっとしておいた方が得策だ。

 個人ブログの場合、記事や写真がコピペされたとしても、業務妨害されたわけでもないし、何か物が盗まれたわけでもないので、「実質的な損失がないんだからいいじゃん」と解釈されやすい。
 しかし、金銭的なコストがなくとも、精神的なコストが大きい。
 実際には、無断で使われたという不快感だけでは済まない。
 同じ記事や写真がDeNAの管理サイトに表示されたとすると、どういうことになるか。
 DeNAのサイトと個人ブログのサイトに同じ記事や写真が載っていることになる。
 第三者が見たとき、どちらがオリジナルかは分からない。
 まさか、DeNAが個人ブログから盗んだとは思わないだろう。
 個人がDeNAサイトから勝手に剽窃していると判断されかねない。
 そうすると、個人の社会的信用が棄損されることになる。
 個人にとってこの信用喪失のコストはあまりにも大きい。
 
 
  


posted by 平野喜久 at 10:34| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月08日

映画「太陽の蓋」:危機のリーダーのあり方

 映画「太陽の蓋」を鑑賞。
 去年の封切時に観たいと思ったが、上映館が少なく、チャンスがなかった。
 ようやくレンタルDVDで鑑賞できた。
 
 この映画は、福島原発事故直後の数日間を、官邸の視点で描いたドキュメンタリータッチのドラマだ。
 時々NHKでやっている原発事故の再現ドラマに近い。
 官邸内部ではどのようなやり取りがあったのかを映像として確認できる。
 いろいろ考えさせる場面が多い。
 その中でもクライマックスの1場面を取り上げる。
 東電が撤退を申し出てきた場面。
 官邸内でも様々な意見が出る。
 「これだけの危機的状況じゃ、やむを得んだろう」
 「民間企業に政府がとどまれと命令できるのか」
 「まさか死ねとは言えんだろう」
 その中で、菅総理だけは逡巡する様子もなく「撤退はあり得ない」と言い切る。
 これで、官邸内の意思が固まった。

 後に、総理は東電本店に乗り込んで撤退はあり得ないことを伝える場面になる。
 総理たちが東電の危機対策室に入ったところで呆然とする。
 対策室の壁面には巨大な多面モニターが掲げられており、原発の現場映像もリアルタイムで映し出されていた。
 東電の危機対策室は現場とつながっていた。
 なのに、官邸には何の情報も伝えられていなかった。
 「いったい東電は何をやっていたのだ」との怒りが込み上げるのが分かる。
 
 菅総理はモニターを背に立ち、東電幹部らに向かって怒りの演説を始める。
 「撤退はあり得ない。死ぬ気でやれ」
 断固たる言葉に会場が凍り付く。
 この場面、菅総理は一度も頭を下げることがない。
 だれかと握手をすることもない。
 演説に先立って、東電職員らの苦労をねぎらう言葉もない。
 実際に、この菅総理の演説を聞いた東電社員の中には、反感を覚え、士気阻喪した者もいたらしい。
 東電社員らも彼らなりに苦労し、一生懸命対処しているつもりでいたのだ。
 それを何も認めないような総理の言動に反感を覚えたのだろう。
 だが、この時の有無を言わさぬ断固たる言葉によって、東電幹部らの覚悟が決まったのは間違いない。

 果たして、この時の菅総理の言動は、危機に臨んだリーダーとして正しかったのかどうかは、ディスカッションのテーマになりそうだ。
 
 
posted by 平野喜久 at 11:10| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月06日

原発事故ルポの名著:危機のリーダーを考えさせる

 遅ればせながら、福島原発事故のドキュメンタリーを読んだ。
 このような本は、事故直後よりも、時間を置いてからの方が、落ち着いて読める。

大鹿靖明 著 『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』(講談社文庫)
船橋洋一 著『カウントダウン・メルトダウン(上)(下)』 (文春文庫)

 原発事故関連の書籍はいろいろ出ているが、この2冊が最も内容が充実しているようだ。
 関係者へのインタビューと周辺情報の取材がしっかり行われており、人々の動きや気持ちが手に取るようにわかる。
 現場では何が起きていたのか、東電幹部らは何を考えていたのか、保安院や委員会は何をしていたのか、官邸はどう行動したのか。
 まるで、小説でも読むようなリアルさで再現されている。
 これが、フィクションではなく、現実に起きていたことだけに、胸に迫るものがある。
 リアルタイムでは国民に何も知らされていなかったが、実際には、日本消滅の危機に瀕していたのだということが分かって背筋が寒くなる。
 この2冊は同じ原発事故を取り上げており、当然、同じ場面が出てくるが、視点の置き所の違いか、本によってニュアンスが違うのが興味深い。
 このような多面的な視点で事故を取り上げることで、真実が見えてくる。

 事故時の対応で、菅直人総理の言動が批判されることが多い。
 事故直後に、総理自身が官邸を離れて事故現場に押しかけ、現場を邪魔した。
 東電本社に乗り込み、幹部や社員らをどやしつけて萎縮させた。
 常にイライラし、周りの人間を怒鳴り散らし、誰も近づかなくなった。
 これらの言動はどうやら事実のようだ。
 だが、菅総理の立場に立ってみると、彼のイライラ感はよくわかる。
 腑抜けのように当事者能力を失っている東電幹部。
 責任放棄して逃げることしか考えていない保安院職員。
 まともに判断できず適切なアドバイスもできない安全委員会。
 その実態を知ると、菅総理でなくてもイライラを爆発させたくなる。
 もちろん、官邸の対応にも反省すべき点はあっただろうが、政治家まで腑抜けになっていたり、逃げ腰になっていたりしなかっただけでも、よかったと思う。

 官邸の中の1人が、「菅総理でよかった」と思わず漏らす場面が出てくる。
 東電本社に乗り込み、「撤退はあり得ない! 死ぬ気でやれ!」と大声でどやしつけ、東電幹部らの表情が引き締まる場面だ。
 ドラマだったら、ここがクライマックスになる。
 確かに、菅総理だから、これができた。
 その前の総理だったら、「トラストミー」「腹案がある」と言っているだけで、何も行動できなかったに違いない。
 
 この本は、危機の臨んでのリーダーの在り方を考えさせる絶好のケーススタディになる。
posted by 平野喜久 at 09:14| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする