2017年05月12日

無断使用の迷惑料1,000円:DeNAの小ばかにした対応

 毎日新聞の報道による。
 医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」などで、記事や写真の無断使用が問題化し、10サイトが非公開に追い込まれたDeNA。
 無断使用された人に「迷惑料」名目で金銭の支払いを始めているらしい。
 
 当初、DeNAは「ただ場所を貸しているだけのプラットフォーム事業者で、記事の内容には責任を負わない」「投稿者が勝手にやったこと」と責任回避の姿勢を見せていた。
 だが、第三者委員会の調査により、DeNA自身も記事作成に積極的に関わっていたことが判明し、著作権侵害が逃れられなくなった。
 調査によれば、サイトに掲載された記事の最大5.6%、写真計74万件に著作権侵害の疑いがあったという。

 DeNAは、記事や写真を無断で使われたのではないかとする人の問い合わせに応じ、「迷惑料」を支払う対応を進めている。
 「迷惑料」の金額や算定基準については、はっきりしないが、個別に判断されているようだ。
 事業者の場合は万円単位、個人の場合は1,000円程度になるという。
 事の重大さに比べて、金額の安さに驚き、DeNAと交渉、「この写真を撮るためにどれだけの苦労と経費をかけたか」を説明し、値段を上げさせた個人もいたそうだ。

 DeNAは、個人は対処しやすいとみてなめてかかっている。
 相手が大手企業だったりすると、法的手段で膨大な損害賠償を求められる可能性があり、対応を間違うととんでもないことになる。
 ところが、相手が個人であれば、口先だけで対応していれば、やがて相手は泣き寝入りする。
 それで、対応が甘くなるのだろう。

 損害賠償の算定基準は難しい。
 相手が事業者であれば、実際に被った損失を算定しやすく金額も高額になりがちだが、個人が趣味で公開しているブログだと、実質的な損失はなく、心理的な被害しかない。
 ウェルクによって無断使用された側としては、不快極まりない。
 その不快感を慰撫する金額とはどのぐらいかは、個人差があり一律で決めるのは無理だ。
 過去に、個人情報漏洩事件を起こした企業は、個人への見舞金として500円程度を払うというのが相場になってしまっている。
 今回は、それを基準に、1,000円あれば十分だろうとの判断があったのかもしれない。

 しかし、1,000円という金額は、子どもの小遣いでも喜ばれない金額であり、あまりにも事態を軽んじている印象を受ける。
 被害個人だって、何も高額の賠償額をふんだくってやろうとは思っていないだろうが、具体的な金額を提示されたおかげで、却って、「この程度の被害だと思っているのか」というのが目に見える形で分かってしまうだけに、納得がいかなくなる。
 個人は、たとえ趣味のブログに挙げている写真であったとしても、その写真を撮るためにどれだけの苦労をし、どれだけのコストをかけ、どれだけの思いを傾けたか分からない。
 こだわりのある写真であれば、その思いはなおさら大きい。
 それを、ネット上でたまたま見つけ、勝手にコピペして、自分のサイトで堂々と使用している姿は許しがたい、と思って当然だ。
 DeNAという大手企業のブランドを背負った業者であり、こちらは一個人。
 個人には何もできないだろうという小ばかにした態度にも見え、余計に不快だ。
 さらに、DeNAは、これを商売に使い、集客効果を高めるために利用して、実質的な利益を得ているのだ。
 そのことを思うと、その「迷惑料」がたったの1,000円では、あまりにも安すぎる。
 本来なら、「同じ写真を独自に撮影しとしたら、どれだけのコストがかかったか」という視点が算定基準にならなければいけないだろう。
 被害者にとって、「迷惑料」という言い方も、不愉快だろう。
 「あ、ごめんね」という程度の態度に見えるからだ。

 今回、DeNAは、申し出があった被害者に対して迷惑料を払うことにしたようだ。
 つまり、「文句があるなら言ってこい」という態度だ。
 自分らが犯した無断使用なのだから、自ら相手先を探し出して、「迷惑料」の支払いを申し出るべきところだ。
 どうして、個人の側がDeNAサイトを調べて、自分の記事や写真が無断使用されているかどうかを確認しなければならないのか。
 だが、写真の無断使用だけでも74万件とあまりにも多く、範囲も膨大で、とても1件1件フォローしきれない。
 面倒だから、クレームを言ってきた人に個別対応するということにしたのだろう。
 元のサイトは既に閉鎖されており、今更確認することすらできない。
 自分の著作が剽窃されたことすら気づいていない人も多いかもしれない。
 DeNAとしては、このままそっとしておいた方が得策だ。

 個人ブログの場合、記事や写真がコピペされたとしても、業務妨害されたわけでもないし、何か物が盗まれたわけでもないので、「実質的な損失がないんだからいいじゃん」と解釈されやすい。
 しかし、金銭的なコストがなくとも、精神的なコストが大きい。
 実際には、無断で使われたという不快感だけでは済まない。
 同じ記事や写真がDeNAの管理サイトに表示されたとすると、どういうことになるか。
 DeNAのサイトと個人ブログのサイトに同じ記事や写真が載っていることになる。
 第三者が見たとき、どちらがオリジナルかは分からない。
 まさか、DeNAが個人ブログから盗んだとは思わないだろう。
 個人がDeNAサイトから勝手に剽窃していると判断されかねない。
 そうすると、個人の社会的信用が棄損されることになる。
 個人にとってこの信用喪失のコストはあまりにも大きい。
 
 
  


posted by 平野喜久 at 10:34| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする