KYBとカヤバシステムマシナリーが製造した免震制振装置のオイルダンパーで検査データの改竄が見つかった。
改竄は00年から先月まで行なわれていた。
00年〜07年はKYBが製造、07年以降はカヤバ社が製造していた。
免震用903件、制振用83件、合わせて986件。
このうち、410件で不正が確認されており、残りは調査中。
用途別では、住宅265件、事務所175件、医療福祉施設159件、庁舎109件など。
地域も、東京都250件、大阪府107件、愛知県93件、神奈川県71件など。
8月上旬、カヤバ社の内部告発で発覚。
きっかけは、従業員同士の会話の中で、検査担当者から改竄の話を聞いた1人が上司に報告したのだという。
カヤバ社から報告を受けたKYBが調査を始め、先月19日に国交省に報告した。
免震装置と制振装置では仕組みが違う。
免震装置は、揺れを建物に伝えないようにする装置だ。
免震ゴムの上に建物を乗せ、直接地面に接触しないようにする。
建物の固有周期を延ばすことで、地震の揺れと共振しないようにする仕組みだ。
免震装置は、揺れないようにするのではなく、建物が地震の揺れと共振しないようにするのが目的だ。
これで、建物の破壊を防ぐことができる。
だがこれだけだと揺れを減衰させる機構がないため、ダンパーを設置し、一定以上の揺れにならないように、揺れても早くに減衰するようにしている。
制振装置は、建物に伝わった地震の揺れに抵抗し、揺れを抑えようとする装置だ。
建物内の柱と梁との間に斜めにダンパーを設置する。
地震の時には、このダンパーが水平方向のエネルギーを吸収し、建物の揺れを小さくする。
今回の検査データの改竄は、このダンパーの性能が基準に達していない恐れがあるために問題となった。
ダンパーは揺れを抑える装置なので、建物の耐震性に直接関係するものではない。
国交省が、今回の改竄を受けて、「震度7程度の地震でも倒壊の恐れはない」としているのは、こういう理由だ。
ただ、性能不足のダンパーが使われている可能性があり、これをそのまま放置しておくのは利用者が納得しない。
KYB側も、データ改竄の可能性のあるダンパーは特定できても、どのダンパーが基準未満のものだったかは、たぶん記録に残っていない。
となると、該当期間に設置されたダンパーはすべて取り換えるということにならざるを得ない。
これは、KYBにとって過酷な負担であり、事実上不可能だ。
ダンパーの性質上、建物の耐震性には直接の影響は少なく、揺れの減衰効果がやや劣るかもしれない程度ということにして、現状維持になるかもしれない。