探知音は、レーダー波を音声に変換したデータで、ビーという持続した音だ。
探索レーダーであれば「ビ、ビ、ビ・・・」というパルス的な音声になる。
だが、公開された音声は持続型のレーダーであり、これは火器管制レーダーがロックオンしたことの証拠となる。
これは、韓国側が今月18日になって、「韓国の警備救難艦が捜索レーダーを発しており、それを日本側が誤認したのでは」と言い始めたため、それへの反証として公開されたものだ。
日本の哨戒機が受信したのは、捜索レーダーではなく、明らかに火器管制レーダーであることが、素人でもはっきりわかる。
ところが、韓国側はこの音声を「実態の分からない機械音」としてはねのけた。
この音声を公開したことの意味をまったく理解していない。
それとも、理解していないふりをしているのか。
防衛省は、同時に最終見解として文書を公開した。
その文書を読むと、いままでの協議の経緯と、韓国側がまったく真相解明に協力的ではないこと、それどころか主張が二転三転し、論点をずらし続け、とても話し合いで問題が解決できる状態ではないことが分かる。
ここには、協議の様子を印象付ける文言が盛り込まれている。
協議で韓国側が「脅威を受けたものが脅威と感じれば、それは脅威だ」とまったく客観性に欠ける主張を繰り返している、というくだりだ。
協議に臨む日本側の担当者の脱力感が伝わってくるようだ。
協議打ち切りもやむなし、との判断は実感として理解できる。
今回公表された最終見解は、非常に冷静で論理的な文章で、分かりやすく納得感が高い。
ところが、不安がある。
このような客観的で理性的なメッセージは韓国国民には届かない。
これは、韓国国民へではなく、日本人と世界世論へのメッセージなのだろう。
韓国側の対応には終始驚かされどおしだ。
国家機関が信じられない反応をし続けている。
だが、これが韓国流のケンカの手法なのかもしれない。
口論で勝つには、いかに相手を黙らせるかがポイントとなる。
そこでは、事実であるかどうかや論理的であるかどうかは関係ない。
黙ってしまうと負けを認めたことになるので、とにかく言い返す。
さらに、相手のトーンよりも上を行く口調で攻撃をする。
言い返す言葉を失った方が負けということになる。
今回の韓国側の反応は、まさにこのパターンを再現しているかのようだ。
特に、レーダー照射問題を、哨戒機の異常接近問題にすり替え、逆に日本に謝罪を要求するあたりは、韓国流クチゲンカの定石なのではないか。
日本人としては、韓国流のクチゲンカは対応しにくい。
論点が次々に拡散し、手が付けられなくなる。
1つ1つは出鱈目な主張なので反論するのは簡単なのだが、それにいちいち反論していると、際限がなく本質からどんどん離されて行ってしまう。
防衛省の最終見解も、哨戒機の異常接近の話、無線の問いかけの話など、本質と関係ないところに字数をかけている。
そのために、文章が異常に長くなり、相対的にレーダー照射のウェイトが小さくなってしまっている。
第三者がざっと目を通すと、日本側は細かい理屈をくどくどと言い訳しているような印象を持たれかねない状況だ。
韓国流クチゲンカの定石に見事にはまってしまったか。
日本を黙らせたということで、韓国側の圧勝ということになるのかもしれない。
事件、事故が起きたとき、やるべきことは「事実の確認」「原因の究明」「再発の防止」。
日本側が求めたのは、再発の防止だったが、韓国は最初の「事実の確認」から先に進めなかった。
今回のレーダー照射はどうして起きてしまったのか、二度と起きないためにはどうしたらいいのか。
韓国の軍組織に問題があるとすれば、それを至急取り除く絶好の機会だったはずだが、検証されることもなく、問題を温存したまま存続する。
韓国軍の組織は本当に大丈夫か。