2019年01月22日

韓国との協議打ち切り:レーダー照射問題

 防衛省が、レーダーの探知音を公開するとともに、最終見解を発表した。
 探知音は、レーダー波を音声に変換したデータで、ビーという持続した音だ。
 探索レーダーであれば「ビ、ビ、ビ・・・」というパルス的な音声になる。
 だが、公開された音声は持続型のレーダーであり、これは火器管制レーダーがロックオンしたことの証拠となる。
 これは、韓国側が今月18日になって、「韓国の警備救難艦が捜索レーダーを発しており、それを日本側が誤認したのでは」と言い始めたため、それへの反証として公開されたものだ。
 日本の哨戒機が受信したのは、捜索レーダーではなく、明らかに火器管制レーダーであることが、素人でもはっきりわかる。

 ところが、韓国側はこの音声を「実態の分からない機械音」としてはねのけた。
 この音声を公開したことの意味をまったく理解していない。
 それとも、理解していないふりをしているのか。

 防衛省は、同時に最終見解として文書を公開した。
 その文書を読むと、いままでの協議の経緯と、韓国側がまったく真相解明に協力的ではないこと、それどころか主張が二転三転し、論点をずらし続け、とても話し合いで問題が解決できる状態ではないことが分かる。

 ここには、協議の様子を印象付ける文言が盛り込まれている。
 協議で韓国側が「脅威を受けたものが脅威と感じれば、それは脅威だ」とまったく客観性に欠ける主張を繰り返している、というくだりだ。
 協議に臨む日本側の担当者の脱力感が伝わってくるようだ。
 協議打ち切りもやむなし、との判断は実感として理解できる。

 今回公表された最終見解は、非常に冷静で論理的な文章で、分かりやすく納得感が高い。
 ところが、不安がある。
 このような客観的で理性的なメッセージは韓国国民には届かない。
 これは、韓国国民へではなく、日本人と世界世論へのメッセージなのだろう。

 韓国側の対応には終始驚かされどおしだ。
 国家機関が信じられない反応をし続けている。
 だが、これが韓国流のケンカの手法なのかもしれない。
 口論で勝つには、いかに相手を黙らせるかがポイントとなる。
 そこでは、事実であるかどうかや論理的であるかどうかは関係ない。
 黙ってしまうと負けを認めたことになるので、とにかく言い返す。
 さらに、相手のトーンよりも上を行く口調で攻撃をする。
 言い返す言葉を失った方が負けということになる。
 今回の韓国側の反応は、まさにこのパターンを再現しているかのようだ。
 特に、レーダー照射問題を、哨戒機の異常接近問題にすり替え、逆に日本に謝罪を要求するあたりは、韓国流クチゲンカの定石なのではないか。

 日本人としては、韓国流のクチゲンカは対応しにくい。
 論点が次々に拡散し、手が付けられなくなる。
 1つ1つは出鱈目な主張なので反論するのは簡単なのだが、それにいちいち反論していると、際限がなく本質からどんどん離されて行ってしまう。
 防衛省の最終見解も、哨戒機の異常接近の話、無線の問いかけの話など、本質と関係ないところに字数をかけている。
 そのために、文章が異常に長くなり、相対的にレーダー照射のウェイトが小さくなってしまっている。
 第三者がざっと目を通すと、日本側は細かい理屈をくどくどと言い訳しているような印象を持たれかねない状況だ。
 韓国流クチゲンカの定石に見事にはまってしまったか。
 日本を黙らせたということで、韓国側の圧勝ということになるのかもしれない。

 事件、事故が起きたとき、やるべきことは「事実の確認」「原因の究明」「再発の防止」。
 日本側が求めたのは、再発の防止だったが、韓国は最初の「事実の確認」から先に進めなかった。
 今回のレーダー照射はどうして起きてしまったのか、二度と起きないためにはどうしたらいいのか。
 韓国の軍組織に問題があるとすれば、それを至急取り除く絶好の機会だったはずだが、検証されることもなく、問題を温存したまま存続する。
 韓国軍の組織は本当に大丈夫か。
 

 
 
 
 

 


posted by 平野喜久 at 09:39| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月14日

韓国大統領の記者会見:がっかりは日本人だけではなさそう

 10日に韓国大統領の年頭記者会見が行われた。
 その中で、日韓問題について「日本政府はもっと謙虚な態度をとるべき」と発言したことが報じられ、日本の世論に火が付いた。
 大統領の発言のすべてに突っ込みを入れたくなるほどの無責任な発言に終始していた。
 普段は韓国の立場を配慮した言説を心がけている朝日新聞や毎日新聞までが批判的な社説を掲載。
 大手マスコミの論調が一致するのは珍しい。
 それほど、大統領の発言は擁護のしようがないほどの無責任なものだった。

 日韓問題への言及は、年頭の所信表明では一切触れられず、その後の記者会見でも、韓国の記者からは一切質問がなかった。
 その場に居合わせたNHK記者は、その雰囲気に違和感を覚えたという。
 このままでは、日韓問題への言及はないまま終わってしまう。
 大統領の指名する指先が自分に向いたと思った瞬間、直ちに立ち上がり、徴用工問題についての質問をぶつけた。
 この質問への回答で、あの問題発言が飛び出したのだ。
 この時、大統領はNHK記者を指名したつもりではなかったようだ。
 後ろの記者を指名したつもりが、NHK記者が質問を始めてしまったらしい。
 日韓問題はこじれにこじれており、できれば言及を避けたかったのかもしれない。

 日韓問題に対する大統領の発言を聞くと、問題を我がこととしてしっかり受け止め、自らの責任で解決していこうという姿勢はまったく見られない。
 ひたすら責任逃れをしようとしているようにしか見えない。
 これは、日韓問題だからこうして逃げ回るしかないのだろうと思ったが、どうやら、今回の記者会見全体がこのような雰囲気だったらしい。

 韓国人記者から日韓問題に関する質問が一切出なかった。
 これは、日韓問題に触れなくない大統領に配慮したためではない。
 韓国人記者には、もっと他に聞かなくてはならない重大な問題が山ほどあったのだ。
 現在、韓国経済は冷え込んでおり、若者の失業率は10%を超えている。
 年齢層を限れば、4人に1人が職に就けないような状況だという。
 ポスト半導体、ポストサムスンの見通しが見えず、先行きの不安ばかりが増幅している。
 これに韓国国民は危機感を抱いている。
 この経済問題に対する大統領の明確な答えを聞きたがっているのだ。

 ある韓国記者は厳しく大統領に詰め寄った。
「現在の経済が凍り付いている。それでも、経済政策を変えようとしたいのはなぜか。その自信はどこからくるのか」
 大統領の回答は、とても国民を納得させられるようなものではなかった。
「先ほどの年頭所感で30分も述べており、これ以上新しい答えは不要だ」と突っぱねるような回答だった。
 具体的な経済政策としてはっきりしているのは、最低賃金の引き上げと労働時間の短縮。
 これ以上のものは何も出てこなかった。
 たぶん、経済浮揚策も具体的なものが何もないということだろう。

 文大統領は、北朝鮮問題については、実に行動的だった。
 これだったら、自分が積極的に進められる。
 行動を起こすたびに世界の注目を浴び、世論の喝采を受ける。
 今年のノーベル平和賞かと噂されたことも。
 これほど気持ちのいいことはない。
 北朝鮮問題にかまけている間、経済と日韓関係は悪化し続けた。
 もはや国内経済や日韓問題を真正面から受けとめ、責任をもってドライブするだけの意思も力量もなさそうだ。

 この北朝鮮問題も、いろいろは政治イベントは行なわれたものの、実質は何も進展していない。

 いま、日本は文大統領に絶望している。
 同じように、韓国国民も彼が大統領のうちは経済好転の可能性はないと絶望しているのではないか。


 
posted by 平野喜久 at 10:44| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月06日

日本国民は密室での協議を望んでいない:韓国レーダー照射問題

 韓国国防省の公開した映像。
 日本人から見ると、一方的な主張を述べただけで、何の説得力もない。
 ところが、これが韓国世論への情報発信という視点で見ると、別の見方ができる。
 このような働きかけでないと韓国世論は動かないのだ。

 日本の防衛省が公開した動画は、自らの主張は控え、客観的な事実を淡々と提示しただけで、その解釈を視聴者にゆだねている。。
 一方、韓国国防省の動画は、客観的な事実よりも自らの主張を前面に押し出したものになっている。
 だから、動画に含まれるメッセージはすべて、主観的な表現で飾り立てられている。
 例えば、動画中に出てくる字幕には、こんなメッセージがあった。

「人道主義的な救助作戦中の艦艇に非紳士的な偵察活動を継続し、広開土大王艦の人道的救助作戦を妨害する、深刻な威脅行為を行いました」

 ここに客観的な情報は1つもない。
 事実を提示する前に、結論を先取りした主観的な表現だけで構成されている。
 全編がこんな感じなのだ。 
 だが、韓国国民が見たとき、納得感が高いのは、韓国国防省の動画の方かもしれない。

 日本防衛省の動画は、ぼーっと見ているだけでは何を言おうとしているのか分からない。
 ただ、機内から撮影した映像と機内での会話が延々と続いているだけだ。
 13分もの間、この動画を集中して見続けるのは辛い。
 更に、いったいこれで何が分かるのかは自分で考える必要がある。

 一方、韓国国防省の動画は分かりやすい。
 4分という集中力を途切れさせない短さ。
 そして、結論をはっきり提示してくれる。
 この問題をどうとらえるべきかは、すべて動画の中に提示されている。
 視聴者は余計なことを考える必要はない。
 
 韓国世論は論理よりも感情による感応度が高い。
 だから、韓国の政治家やメディアに登場する有識者は、主観表現だらけの感情に働きかける言説が多いのだ。
 過去に何度も繰り返された歴史問題もすべて同じ構図だろう。
 慰安婦、徴用工、旭日旗、靖国神社・・・。
 日本側が、「強制連行の事実はない」「20万人などあり得ない」と客観的なデータで説明しても受け入れられる素地がない。
 きめ細かい説明で事実を証明しようとすればするほど、伝わらなくなる。
 あの防衛省の動画が韓国国民に伝わらないのと同じだ。
 
 韓国国防省は今回のレーダー問題を実務者協議に舞台を移そうとしている。
 密室における話し合いなら、日本側をうまく抱き込めるからだ。
 これで過去に日本側は何度も失敗し、問題をこじらせ続けることになった。
 今回の問題を密室で決着させたらどうなるかは、手に取るように見える。
 決着したあと韓国側は次のようなメッセージを国民に発するだろう。

「韓国国防省の毅然とした対処で、日本の悪辣な策謀をはねのけた」

 そして、韓国側のレーダー照射の事実はなく、日本側が低空飛行で救助活動を妨害してきたということだけが事実として書き込まれる。

 日本国民は密室でのあいまいな決着を望んでいない。
 事実はどうだったのか。
 原因は何だったのか。
 再発しないためにどうするのか。
 これらを明確にしてもらいたい。
 
 
posted by 平野喜久 at 11:41| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月05日

日本は韓国国民への説得を試みたらどうか:レーダー照射問題

 日本の自衛隊の哨戒機が韓国の駆逐艦から火器管制レーダーを照射された事件。
 韓国側の対応がぐずぐずで決着の糸口が見えない。
 韓国国防省の対応は、不祥事を起こした企業のダメな対応ぶりをそのまま再現したかのような様相を呈しており、事態はますます悪化している。

 問題が発覚した時は、「事実の把握」「原因の究明」「再発の防止」とステップを踏んでいかなくてはいけない。
 だが、最初の事実の把握の段階で、行き詰まっている。
 韓国国防省が、日本防衛省の主張をことごとくはねのけており、そこから先に進まない。

 日本防衛省が最初に火器管制レーダーの照射を発表したとき、韓国側の言い分は「レーダーの照射はしていない」だった。
 そこから、韓国の主張は、防衛省の反論を受けるたびに、二転三転し続けた。
 「遭難船探索のレーダーは照射したが、管制レーダーは照射していない」
 「荒天だったため、管制レーダーを含めあらゆるレーダーを総動員して探索した」
 「たまたま、管制レーダーの照射範囲に自衛隊の哨戒機が入り込んだ」
 「日本哨戒機が異常接近したため、警告のためレーダー照射した」
 「日本哨戒機からの無線は、受信状態が悪く他船への呼びかけだと思った」
 「日本哨戒機が韓国駆逐艦に威嚇行動をとったが、わが軍はレーダー照射は行なわなかった」
 「日本哨戒機からの無線は、受信状態が悪い上に、英語の発音がひどく聞き取り不能だった」

 いったいどこに韓国側の最終回答があるのか不明だ。
 反論する側としても、次々に繰り出す言いがかりに、どこから反論すればいいのか戸惑う。
 
 4日になって、韓国側の反論動画がネット上にアップされた。
 それを見た多くの人は驚いただろう。
 新しいデータの開示も確定的な証拠の提示もなく、これまでの自分らの主張を稚拙な動画にまとめているだけだったからだ。
 全4分の動画のうち、韓国側が撮影したとされる現場の映像はわずかに11秒だけ。
 あとは、自衛隊が撮影した現場映像と意味不明な民間の旅客機が空港に着陸するシーンが編集されている。
 バックにはBGMが流れ、字幕が躍動的に表示される。
 安っぽい演出は、バラエティ番組でよくあるUFO目撃談の再現映像を見るようだ。
 本当にこれは韓国国防省が正式に発表したものだろうか、といぶかしく思っていると、最後に「韓国国防省」のロゴマークが表示され、背筋が寒くなるような驚きを覚える。

 一体、これで韓国国防省はなにを証明しようとしているのか。
 一説には、この動画は防衛省や軍事専門家に向けた情報発信ではなく、韓国一般国民への言い訳動画であるらしい。
 日本に言われっぱなしで、何の反論もできない国防省は国民世論が許さない。
 その国民世論に応えるために、今回の動画公開となったようだ。
 だから、その内容に客観的なデータや決定的な証拠は不要。
 力強く日本側の主張をはねのけている姿勢を見せられればOKというわけだ。

 不思議なのは、韓国の一般国民は今回の騒動をどう見ているのか、ということだ。
 これが、まったく逆の立場で同じことが起きていたらどうなっていたかを考えてみよう。
 自衛隊の言い訳が二転三転し、あんな無様な動画を公開してぐずぐずの対応を続けていたら、日本国民は黙っていない。
 自衛隊は国民の信頼を失い、その批判は政府にまで及び、安倍政権は吹っ飛ぶだろう。
 韓国でそうならないのが不思議でならない。

 もしかしたら、国民には正確な情報が届いていないのではないか。
 日本の防衛省が説得を試みるのは、韓国国防省ではない。
 韓国国民ではないのか。
 韓国は国民情緒が何よりも優先する国だという。
 だとしたら、日本が相手にすべきは韓国政府ではなく、韓国国民だろう。
 大臣や官房長官が記者会見で日本語のコメントを発表しただけでは、韓国国民には伝わらない。
 韓国のマスコミによって情報がゆがめられ、大事なニュアンスはすべてそぎ落とされてしまうからだ。
 防衛省の反論も、韓国語で韓国国民に直接届けられるような工夫がいる。




 
 


 


 
posted by 平野喜久 at 13:18| 愛知 ☔| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする