2020年04月28日

生き残り戦略が問われている:パンデミックBCP

 コロナリスクが継続している。
 緊急事態宣言が発出されて以降、人々の行動は変わった。
 東京、名古屋、大阪などの都市部では、明らかに人出が減少した。
 新宿:81.9%減、名古屋:80.9%減、梅田:87.8%減。
 公共交通機関も、利用者の減少が目立つ。
 特に長距離の特急電車は、ほとんど空の車両を走らせているような状況だ。
 その甲斐あってか、感染者の減少傾向がみられるようになってきた。
 まだ、予断を許さないが、行動自粛の効果は確実で出始めている。

 さて、企業にとって、このコロナリスクは、深刻だ。
 リスクは2種類ある。
 1つは、従業員が感染し出社できなくなるリスク。
 もう1つは、経済停滞による需要減少のリスク。

 従来、パンデミックBCPは従業員の感染リスクだけを想定しているケースが多かった。
 だが、いまの日本では、欧米のように感染爆発には至っておらず、このリスクはそれほど大きくない。
 それよりも、深刻なのは、国民の行動自粛による経済の停滞だ。
 飲食業、観光業、宿泊業については、行動自粛が需要の消滅に直結しており、既に深刻な状況にある。
 国民の行動自粛が直撃しない業界でも、間接的にその影響は出始めており、事態長期化にともなって、その影響は大きくなる。

 新型感染症リスクは、簡単には終わらない。
 一般には、二冬超えないと終わらないと言われている。
 すると、夏場に一旦小康状態に至ったとしても、次の冬場に第2波がやってくることを覚悟しなければならない。
 過去の例では、第1波よりも第2波の方が被害が大きいということもあった。
 いま、日本では感染拡大が落ち着く方向にある。
 一旦小康状態になったら、その時が非常に重要な時間となる。
 今までの分を至急取り戻すと同時に、やがてやってくる第2波への備えを万全にする時間だからだ。
 
 パンデミックBCPでは、単なる感染予防の話だけでは終わらない。
 長期的経済停滞への備えの方が重要度が高い。
 従来通りの業務のやり方や事業内容では立ち行かなくなる。
 ならば、我が社はこの難局をどのように乗り越えていったらいいのか。
 これは、戦略的に考えていく必要がある。
 
 今回のコロナリスクに直面して、既に新たな試みを始めている企業は続々と出始めた。
 酒造会社が、高濃度アルコールの消毒剤を製造。
 老舗料亭が、サテライトオフィスの場所貸し。
 雨合羽メーカーが、医療用防護服の製造。
 ホワイトボードメーカーが、アクリル板による防護壁の製造。
 これらは、我が社の技術力をいまの需要に役立てようとする試みだ。

 飲食店が、テイクアウトのメニューを開発。
 野菜の卸業者が、新鮮野菜の通信販売。
 学習塾がオンライン指導。
 音楽アーティストが、コンサートのライブ配信。
 これらは、お客様へのアプローチの仕方を変える試みだ。

 昨日ウェブ会議である中小企業の社長と話をすることができた。
 その会社では、2009年の新型インフルエンザの時に、パンデミックBCPの準備を始めたという。
 マスクや消毒剤の備蓄は十分あった。
 感染症が始まった時の行動計画も既に作ってあった。
 在宅勤務の備えもしてきた。
 今回は、計画にのっとり、3月には一部社員を在宅勤務に切り替え、4月からは全社員を在宅勤務にした。
 事前の準備のおかげでスムーズに移行できたらしい。
 この社長は、前回の新型インフルエンザの時に、新型感染症は10年に1回起きるリスクだということを認識しており、まさに今回がその時だと捉えて迅速に行動したようだ。
 当初は、社員から「そこまで大げさにしなくても」という声もあったそうだが、結果として正しかった。
 
 この夏場の小康状態の時が非常に大事だ。
 いままで備えのなかった企業は、その遅れを取り戻し、第2波に備える貴重な時間となる。
 コロナリスクは、まだまだ始まったばかりだ。
 長期的な視野で生き残り戦略を準備していこう。


 



posted by 平野喜久 at 10:30| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月17日

10万円は寄付の選択肢を設置せよ:全国民一律給付

 安倍総理は、新型コロナウイルスの感染者急増を受け、全47都道府県に緊急事態宣言を発令した。
 ゴールデンウィークに向けて、ヒトの移動を全国的に抑制することで、感染拡大を抑えようとする考えによる。
 また、今回、「特定警戒都道府県」という位置づけも新たに設けた。
 既に警戒宣言を発令済みだった7都府県と合わせ特に感染拡大のリスクが高まっている地域を指定した。
 新たに加わったのは、北海道、茨城、石川、岐阜、愛知、京都。
 これらの地域は、累計感染者が100人以上、感染者数の倍増が10日未満、感染経路不明者が半数という3条件を満たす。
 全国一律に緊急事態宣言をだすものの、その中でも特にリスクの大きい地域を明確にしている。
 宣言の期間は、これまで通り5月6日まで。
 
 これに合わせて、10万円の一律給付も決まった。
 今までは、所得制限を設け、ダメージの大きい世帯を優先的に手厚い補助を行なうという考え方で対処してきたが、不公平感のない線引きが難しいこと、準備に時間がかかりすぎることから、批判の声が上がっていた。
 特に、公明党からの強力な要請があり、所得制限の30万円給付を撤回し、国民一人ひとりへの一律給付となったようだ。
 全国民一律給付の前提を整えるための、緊急事態宣言の全国拡大という側面もあった。

 この全国民一律給付は、損失補填の要素はなく、緊急事態宣言で行動自粛に協力してくれた国民に対して、協力謝礼金のような意味がありそうだ。
 収入が激減し、この給付金を必要とする人もいるだろう。
 ところが、今回のコロナリスクで、収入がほとんど変わらない世帯もある。
 中には、普段よりも繁忙になり、給料や臨時ボーナスが増えている人もいる。
 また、十分な資産のある人は、10万円をもらう喜びよりも、手続きのわずらわしさを感じているだろう。
 この給付の仕組みは、自己申告になりそうだ。
 ならば、受給の他に、寄付の選択肢も設置したらどうか。
 例えば、「医療関係者への支援に」という項目があれば、喜んで寄付する人もいるに違いない。

 補償金や給付金の話は、国民を卑しくする。
 国からお金がもらえることをありがたく思うどころか、「遅すぎる」「少なすぎる」という意見ばかりが先行する。
 お金は、どんなにあっても満足するものではないので、もらい始めると、「もっと欲しい」となりがち。
 他の人がもらって、自分がもらえないとなると、見過ごせなくなる。
 東京都民が十分な給付金をもらっているのに、神奈川県民が少ないと不公平だと文句が出る。
 ある報道番組で、ある国民のこんなインタビューが紹介されていた。
 「いつまでこんな状態が続くのか分からないのに、10万円ではやっていけない。まぁ、もらえるものは、とりあえずもらっておきますけど」
 国民みんなが、カネをたかり始めるようになる。

 こんなムードにしてはいけない。
 なぜこんなことになってしまうのか。
 それは、国が助ける側、国民は助けられる側、と位置付けられてしまっているからだ。
 だから、国民はただ口を開けて待っているだけになってしまう。
 政府の対策に、「遅い」「少ない」「不公平」と、ただ文句を垂れるだけの存在になってしまう。
 そうではなくて、国民がコロナ対策の主役であることを自覚してもらう必要がある。
 そのためにも、給付金の自己申告に、寄付の選択肢を設けることに意義がある。
 給付金は、本当に困っている人に回そう。
 みんなで我慢し、助け合って難局を乗り越えよう。
 という意識を国民全体で共有できる。

 大地震や大雨洪水の災害があれば、全国から義捐金が集まる。
 日本人はもともと他人を思いやる優しい民族だ。
 昔から自然災害に幾度も襲われてきた日本。
 本当に困っている人をみんなで支え合って、難局を乗り越えていくのは、私たち日本人のDNAにしみついた国民性のはずではないか。
 日本人を、カネをたかる卑しい国民にしてはいけない。
 
 
posted by 平野喜久 at 11:06| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月11日

地域ごとの警戒レベルの発信をせよ:緊急事態宣言

 愛知県、京都府、岐阜県が、国の緊急事態宣言の対象地域への追加を要請していたが、国からは現時点での追加の必要性はないとの見解が出された。
 今回の緊急事態宣言の対象地域の選定には専門家会議の判断によっている。
 その判断基準も明確だ。
 1つは、感染拡大スピードの変化。
 もう1つは、感染経路不明の感染者の増加傾向。
 この判断基準は非常に明確で、先日の総理記者会見の場で、専門家会議の尾身氏からも説明があった。
 愛知県、京都府、岐阜県については、感染拡大も落ち着いており、経路不明の感染者も限定的であることから、対象地域からは外された。
 ただ、対象外であるからといって、警戒を緩めていいわけではなく、行動自粛を呼び掛けながらも、今後の推移を見守っていくという位置づけだ。

 だが、愛知県などから国に対して対象追加の要請が出る事情も分かる。
 対象地域から外されたことで新たな不安が増幅しているのだ。
 愛知県は、警戒が緩んで感染拡大がひどくなるのではないか。
 医療現場に適切な手が打てずに手遅れになるのではないか。
 国から見捨てられているのではないか。
 コロナリスクに敏感な人ほど、国の慎重な姿勢に苛立ちを覚えるに違いない。

 緊急事態宣言の対象地域になるかならないかの2つしかないために、このようなことが起きる。
 緊急事態宣言は、最終段階であり、いきなりここに行ってしまうと、もうこれ以上のステージがない。
 早々と緊急事態宣言を出したとしても、更に事態が進行した時に、もう次のカードがないのだ。
 いま、警戒レベルは、地域によってまったく様子が違う。
 緊急事態宣言の出ていない地域でも、もう緊急事態目前の地域もあれば、ほとんど感染者が出ていない地域もある。
 なので、地域ごとの警戒レベルが判断できる指標を作るべきだ。
 
 気象情報の場合、注意報、警報、特別警報というように、警戒レベルが人々に正しく伝わる仕組みができている。
 状況が刻々と変化していく災害の場合、このような判断基準が必要だ。
 今回のコロナリスクも、緊急事態宣言に至る前段階の警戒レベルを提示するようにしたらどうか。
 例えば、「注意地域」「警戒地域」「特別警戒地域」そして最終が「緊急事態」だ。
 そうすれば、自分の地域がどのレベルにあるかが分かる。
 事業者の対応も、全面休業にするか、時間短縮にするか、業務縮小で対応するか、注意しながら平常業務とするかなど、判断がしやすくなるだろう。

posted by 平野喜久 at 09:28| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月08日

タクシー会社の乗務員解雇:建前と本音のはざま

 朝日新聞の報道による。
 東京都内でタクシー事業を営むR社が、グループ会社を含む5社で約600人いる乗務員全員を解雇する方針であるという。
 同社グループは、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で業績が急激に悪化。
 緊急事態宣言で今後も回復が見込めないためだ。
 乗務員には「感染拡大が収束した段階で再雇用する。希望者は全員受け入れる」と説明したという。

 先の見えない中、雇用したまま丸抱えして経営が行き詰まり、休業手当すら払えなくなったら、従業員を路頭に迷わせることになる。
 それよりも、早々に解雇し、失業手当を受け取れるようにしてあげた方が、従業員のためだ。
 いきなり全員解雇というと非情な経営者というイメージだが、これは従業員の立場を慮っての行動だろう。

 このように、企業が突発的な非常事態に見舞われたとき、従業員を解雇してあげるということは実際によく行われる。
 ところが、今回のケースは大きな問題がある。
 それは、企業側が、「感染拡大が収束した段階で再雇用する」と約束してしまっていることだ。
 再雇用を約束した解雇では、一時帰休しているだけで、失業者にならない。
 それでは、失業手当をもらえないのだ。
 再雇用の約束を隠して失業手当をもらったら、それは不正受給ということになる。

 失業手当は、本当に失業してしまった人のためにある。
 突然に会社都合で解雇され、収入の道を断たれてしまった人に、次の職が見つかるまでの生活支援をするための制度だ。
 だから、失業中は、求職していることも条件となる。
 ハローワークに通い、職探しをしていなければならない。
 次の職が見つかるまでの生活支援なので、職を見つけようとしていない人に手当てが与えられるわけがない。
 更に、失業中は収入のある仕事をしていないことも条件だ。
 災害で会社が行き詰まり解雇された場合、元従業員が会社の後片付けや再開準備に呼び出されることがある。
 その時、ただ働きさせるわけにいかないので、いくらかの給金を出す。
 すると、収入があったということで、失業手当の受給資格を失う。
 収入があったのに、失業者を装い続けると失業手当の不正受給だ。
 これも当たり前の話だ。
 突然に収入の道を断たれてしまった人を救うための失業手当なのだから、収入のあった人に手当てが出るはずがない。

 失業手当の不正受給は公金の横領と同じなので、罰則は厳しい。
 給付金の返還を求められるのは当然だが、その2倍額の罰金が科される。
 つまり、不正受給は3倍返しなのだ。
 罰金が科されるのは、会社ではなく元従業員の方だ。

 企業が突発的な非常事態に見舞われたとき、解雇することで従業員を守るというのは、現実に行われることだ。
 だが、これは、見方によっては制度を悪用した不正になりかねず、公には推奨されていない。
 しかも、従業員に犯罪まがいの危ない橋を渡らせようとする一方、会社側はノーリスクである点も問題だ。
 ここには、本音と建前があり、そのはざまで有用されている手法ということになる。

 今回は、タクシー会社の側が、従業員をいきなり切り捨てる非情な経営者と思われないために、思わず口走ってしまったようだが、迂闊であったとしか言いようがない。


posted by 平野喜久 at 22:56| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

緊急事態宣言:日本の戦略が明確になった

 緊急事態宣言が出された。
 対象となるのは、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡。
 昨日、総理の記者会見が行われたが、今までと違うのが、専門家会議の尾身氏が同席したことだ。
 今回の判断の裏付けとなる考え方を尾身氏の口から聞くことができた。
 対象となるのがどうしてこの7都府県になったのかについても尾身氏から説明があったが、まことに明快で説得力のあるものだ。
 まず、感染拡大のスピードについて、感染者が倍増するのにどのぐらいの時間がかかっているかを見る。
 2,3日になると感染爆発の恐れありと判断したらしい。
 もう一つは、感染経路不明の割合の増加。
 これが増加してきているとリスクが高いと判断したようだ。

 特徴的なのは、福岡県が入っていること。
 いままであまり福岡県は話題にならなかった。
 ところが、感染拡大のスピードが急激に上がっていることと、感染経路不明の割合が全国で一番高い。
 これで対象に入った。

 逆に、北海道と愛知県が外れた。
 当初は、感染者や死者の多い順番に対象が選ばれるのではないかと言われ、北海道と愛知県も当然入るものと予想する人もいた。
 だが、北海道と愛知県は、一時感染拡大した時期があったものの、最近は落ち着いてきている。
 そして、これまでの感染も、ほとんどが感染経路をたどれるものだった。
 クラスターつぶしを徹底したことで、いま感染拡大を抑えることができているのだろう。

 ヒトとの接触を8割減らすことで確実に感染拡大を減らせるという説明もあった。
 2週間ぐらいで、状況が好転し、1か月で結果が出るという見通しだ。
 いま、日本がどのような戦略で対応しようとしているのかも明確だ。
 
 尾身氏が同席することで、総理会見の裏付けが明確になった。
 そして、日本がこのコロナ禍にどのように対処しようとしているかもはっきりした。
 リスクコミュニケーションとしては、申し分ない。

 
 
posted by 平野喜久 at 11:54| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月02日

富士山大噴火被害想定:中央防災会議

 政府の中央防災会議の作業部会が富士山噴火の被害想定をまとめた。

 富士山の大規模噴火で首都圏周辺に降灰の被害が及ぶ。
 微量な降灰で鉄道が運行停止。
 乾燥時10p以上、降雨時3p以上で二輪車が通行不能。
 降雨時0.3p以上で絶縁低下(ショート)による停電発生。

 最悪のケースとして、西南西の風が強く、雨が降っていた場合、
 噴火後3時間で横浜市から千葉市にかけて鉄道の運行が停止し、都市の大部分で停電が発生。
 降灰が継続すると15日目には鉄道への影響は関東一円に拡大。
 停電は、東京と神奈川全域、千葉と埼玉の一部に拡大。

 政府は4月に関係省庁や事業者による検討会を設置し、具体的対策の策定に着手するという。
 コロナ禍の対応に追われる中ではあるが、従来からの災害リスクへの備えも着実に進んでいることは頼もしい。

 コロナ禍は長期化の様相を見せている。
 いまコロナ禍への対応が忙しいからといって、その間、別の災害が発生を控えてくれるわけではない。
 最悪の事態は最悪のタイミングでやってくる。
 いま一番起きてほしくないのは、大地震や大噴火だろう。
 起きてほしくないことは考えないようにするのではなく、起きてほしくないからこそ、いま敢えて検討する意味がある。
 日本は、先進国の中では新型コロナの被害は最小限に抑えることができているが、自然災害の多発国としては、いま最もリスクの高い状況に置かれていると言えるかのかもしれない。


posted by 平野喜久 at 09:57| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

津波28m予測:千島海溝地震

 産経新聞の報道による。
 3月29日、内閣府の有識者会議「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」が新たな検討結果を発表した。
 心配されている千島海溝地震が発生した場合、北海道東部の太平洋側で最大約28mの津波が襲来し、市街地で最大14.5mの深さで浸水する可能性があるという。

 えりも町:27.9m
 釧路町:27.3m
 広尾町:26.1m
 釧路市:20.7m
 択捉島:29m
 地震発生から最大波が到達するまでの時間は最短で29分。

 千島海溝地震は、今後30年以内に7〜40%という確率で予想されている。
 南海トラフ地震や首都直下地震ばかりが取りざたされるが、切迫性としては千島海溝地震も同列だ。
 北海道東部は、過疎地域であること、避難できる高台が少ないこと、寒冷地であることなど、条件としては対応が難しいエリアだ。
 内閣府としては、令和2年度から具体的な対策作りに着手するらしい。
 
 
posted by 平野喜久 at 09:41| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月01日

パンデミックBCP:事業継続に必要なもう1つの視点

 新型コロナウィルスのリスクが拡大し続けている。
 いままで、新型感染症のリスクは何度も世界を襲ったが、幸いにも日本での被害はほとんどなかった。
 2003年のSARSの時には、中国に始まり、世界に感染が拡大したが、日本だけでは感染事例がほとんどなく、死者も出ずに終わった。
 この時、台湾や韓国では深刻な被害があり、その時の経験が今回の新型コロナの迅速な対応に生きているのだという。
 2009年の時には新型インフルエンザが世界を襲った。
 春先に日本にも感染が広がったが、夏場に一旦小康状態になり、秋ぐちになって再燃し始めた。
 インフルエンザの最盛期1月2月に最大の山が来るだろうと警戒したが、インフルシーズンが来る前にいつの間にか立ち消えになった。
 この時の経験から、「新型感染症といっても大したことないね」というのが日本での受け止め方だった。

 ところが、今回だけは様子が違う。
 武漢での謎の感染症発生直後から日本でもしきりに報道され、人々の関心を集めた。
 最も注目されたのは、クルーズ船が横浜港に寄港したことによる。
 日々、感染者や死者の数字が公表され、その深刻さを実感することになった。
 このクルーズ船がなかったら、日本でもそれほど報道されず、人々の関心も高まらなかったかもしれない。

 いま、コロナウィルスが日本社会に及ぼす影響は大きい。
 だが、感染拡大や死者の増加という点で深刻になっているのではない。
 諸外国に比べて、日本だけが極端に感染者や死者の数値が低く、そのことが世界の謎と言われている。
 いまのところ被害を最小限に抑えることができている日本も、いつイタリアやフランスのように感染爆発を起こすか分からない状況にあり、予断を許さない。

 さて、企業がパンデミックBCPを考えるとき、そのポイントは1つだった。
 それは、職場の集団感染を起こさないことだ。
 場合によっては、従業員に自宅待機を求めたり、一部の業務を縮小したりして、重要業務の継続に注力する。
 感染症の拡大レベルに合わせて、業務対応の仕方を柔軟に変え、最悪の時でも最低限の機能維持を続けながら、状況回復を待つ。
 感染が収束に向かってきたら、それに合わせ、少しずつ業務を復旧していき、通常業務に戻していく。
 常に、感染拡大の状況を見ながら対応を考えるというところがパンデミックBCPのポイントとなる。

 ところが、今回の場合、日本ではまだ感染爆発という状況にない。
 にも関わらず、既に業種によっては業務に深刻な影響が出ている。
 特に、観光業、宿泊業、飲食業、イベント業、旅客業などだ。
 国や自治体による各種の自粛要請によって、ヒトの活動が激減した。
 そのために、これらの業種については、売上が一気に消滅してしまった。
 ヒトやモノなど経営資源は何も傷ついていないにも関わらず、突然、事業継続不能の状態に陥っている。
 これは、従来のBCPでは想定してこなかったケースだ。

 普通、需要の減少により経営難に陥るケースは、BCPの対象リスクにならない。
 というのは、需要の増減は常に起こり得るものであり、それを想定しながら経営をするのが当たり前だからだ。
 日常業務の中で経営を脅かすリスクは「経営リスク」と呼ばれ、BCPの対象リスクから外されるのが通例だ。
 本来、BCPは、自然災害のように、我が社のコントロールではどうしようもないところで発生し、突然に我が社を非常事態に陥れるようなリスクを対象とする。
 今回のコロナ禍による需要減は、一部は経営リスクに入るものだが、それを超えるような影響が出ている。

 インバウンド狙いの観光業。
 中国や韓国の団体客をあてにした業者が、いま窮地に陥っている。
 これは、経営リスクに入る部分が大きい。
 コロナ禍とは関係なく、もともとリスクが大きかった。
 尖閣諸島で問題が起きただけで、中国の団体客が激減したことがあった。
 韓国旅行客は、最近の日韓関係の悪化の時から減少が始まっていた。
 京都では、ホテルの建設ラッシュが続いており、レンタル着物店が相次いで開店した。
 ところが、当てが外れ、ホテルの建設予定が中断したり、レンタル着物店が閉店したりしている。
 これらは、もともと不安定な需要に頼り切ったビジネスがリスクが大きいことの表れに過ぎない。

 一方、ほとんど想定外の売上消滅も起きている。
 飲食業、イベント業などがそうだ。
 これらの業種も、社会情勢の変化で需要の変動は常にあるが、突然に売上が消滅することはない。
 これは、明らかに世の中の自粛によるものだ。
 そして、このような全世界レベルの活動停止状況というのは、感染症災害でなければあり得ない。
 地震や風水害の場合は、被害が深刻だったとしても、対象エリアは限定的だ。
 東日本がダメなら、西日本で代替ができる。
 建屋や機械が傷ついたとしても、直ちに復旧すれば業務を立ち上げることができる。
 ところが、新型感染症の場合は、逃げ場がない。
 経営資源は何も傷ついておらず、復旧するすべがない。
 
 学習塾が、オンライン授業に切り替えている。
 老舗の旅館が、客間をサテライトオフィスとして貸し出そうとしている。
 突然の需要消滅の中でも、知恵を出し合って何とか新規の需要に対応できる道筋を模索が始まっている。
 今回のコロナ禍は、長期戦を覚悟する必要がある。
 事業者も、国の支援策を待っているだけではだめだ。
 この長期戦をいかに乗り越えていくかという生き残り戦略を考える段階にある。


 
 
posted by 平野喜久 at 20:20| 愛知 ☔| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする