『簡単モデルでパンデミックBCPを作ろう〜中小企業の新型感染症対策〜』

https://www.amazon.co.jp/dp/B08MD4JMPW
9月に滋賀経済同友会が中小企業BCPモデルのパンデミック版が公開されたが、その活用方法を説明した解説書だ。
滋賀経済同友会では、7年前に「中小企業BCPモデル」を公開していた。
このBCPモデルは、同友会の会員事業者の方々でプロジェクトチームを作り、私もその一員として参画して、ともに作り上げていったもの。
以来、多くの事業者様にご利用いただいてきた。
たが、今年に入って始まったコロナ禍については、従来のBCPでは対応しきれないことが分かり、改めて「パンデミック版」の制作についてご相談を受ける。
2009年の新型インフルエンザの時に制作したフォーマットがあったので、それをベースにリニューアルして今回の公開に至ったという次第。
このパンデミック版BCPは、新型感染症を企業の危機管理の問題として捉え、中小企業がどのような考え方で対応したらいいのかというところに重点を置いている。
これはあくまでもBCPなので、単に「感染しないように気を付けましょう」などというレベルの話は含まれていない。
企業がこの新型感染症リスクの中でいかに業務を継続し生き残っていくのかというところに焦点が当たっている。
パンデミックBCPの2大テーマは、「職場の安全を守る」「重要業務を継続する」というところに重点がある。
手洗い、消毒、マスク、3密回避などいう話題は、個人が感染しないために重要だが、BCPの主要テーマではない。
あくまでもBCPの最終目的は「企業が生き残る」にある。
新型感染症は、いかにしたら感染が防げるか、というところに話題が集中しがちで、企業のパンデミック対策も、感染防止対策に終始してしまっているケースがある。
だが、個人の感染防止は完璧を目指すのは無理だ。
どんなに気を付けて徹底した防止策を行なったとしても、目に見えないウィルスを完全シャットアウトすることはできない。
誰でも運悪く感染してしまうことがあり得る。
企業として考えなくてはいけないのは、従業員に感染者を出さないことではなく、運悪く従業員に感染者が出てしまったとしても、職場の集団感染だけは起こさないようにする、ということだ。
職場で集団感染が起きると、その部署の従業員全員が自宅待機を強いられ、その時点で直ちに業務停止に追い込まれてしまう。
こんなことになったら、会社の業務が回らなくなるので、職場の集団感染だけは絶対に避けなくてはいけないのだ。
個人の感染リスクは完全になくすことはできないが、職場の集団感染は対応次第で防ぐことができる。
だから、集団感染を起こさないルール作りが求められるということになる。
2大テーマの1つ「職場の安全を守る」は「職場で集団感染を起こさない」と言い換えることができる。
もう1つの重要テーマは、重要業務を継続するということだ。
感染拡大が進行してきた状況でも、重要業務だけは簡単に止めることができない。
ならば、感染リスクを回避しながらどのように業務を継続するのかという対策が必要になる。
また、重要業務を継続するということは、重要ではない業務は早々に縮小または停止していくという判断も必要になる。
ここでは、どうなったらどの業務から縮小していくのかという判断が求められる。
パンデミックの対応の難しさは、状況変化に合わせて対応の仕方を随時切り替えていかなくてはならない点にある。
ここが地震や風水害と違うところだ。
この、どのような感染状況の時にどのような業務体制に切り替えるのかは、BCP発動フローとして決めておく必要がある。
この2大テーマ、「職場の安全を守る」ためのルール作り、「重要業務を継続する」ためのBCP発動フロー作り。
これがパンデミックBCPの中身だ。
これを分かりやすくシンプルなフォーマットにまとめたものが、滋賀経済同友会の「中小企業BCPモデル<パンデミック版>」だ。
私は、このフォーマットを使って、実際に中小企業のパンデミック対策の支援を行なっているが、なかなか使い勝手がいい。
BCPモデル本体にも簡単な解説を載せてあるが、不足部分の詳しい解説をまとめたものが、今回の電子書籍だ。
モデルフォーマットを手元で参照しながらお読みいただければ分かりやすい。
フォーマットデータは滋賀経済同友会のウェブサイトから自由にダウンロードできる。