東京、大阪で自衛隊によるワクチンの大規模接種が始まろうとしている。
それに先駆け、ウェブによる事前予約が始まったが、その予約システムに欠陥があったとの報道で話題が盛り上がった。
AERA.dot、毎日新聞の記者が、この予約システムにデタラメの氏名や接種番号などを入力したところ、予約ができてしまったことを確認し、それを「予約システムに致命的な欠陥あり」と報道したことがきっかけ。
国のやっていることの杜撰さや記者の業務妨害的な取材手法などが話題になったが、その前に、指摘されている点は、予約システムの欠陥ではないのではないか、との問題提起をしたい。
というのは、防衛省は厚労省や自治体とのデータベースの共有や照合ができておらず、入力段階で入力情報の適否を判断できるようにはなっていない・・・このことは初めから分かっていたことで、それを前提にシステムも作られていたからだ。
何も、誰も気づいていない重大な欠陥が記者によって発見されたわけではない。
政府がひた隠しにしていた重大な欠陥が記者によって暴かれたわけでもない。
防衛省も、当初からデータベースの共有ができていないため、自治体への予約と大規模会場への予約を同時に行うと、2重になってしまうので、どちらか一方に限定するように呼び掛けていた。
誤って2重の予約をしてしまった場合は、必ずどちらかをキャンセルするようにお願いしていた。
このような不便なことになっていることを隠すことなく、公表し、注意喚起していたのだ。
当然ながら、間違ったデータを入力してもシステムはエラー表示することはないことも分かっていた。
ただ、それについては事前公表はなかった。
当然だ。
「架空のデータを入れても予約できてしまうので、架空の入力をしないように」などという呼びかけは無意味だからだ。
むしろ、こんなことを公表したら、「本当かどうかやってみよう」といういたずらを誘発するだけだ。
予約システムの入力には、4つの情報を入力するようになっている。
「氏名」「生年月日」「自治体コード」「接種券番号」
もちろん、入力ミスは避けることができない。
しかし、このうちの1つや2つに入力ミスがあったとしても、当日会場にやってきたお年寄りの本人確認ができなくなることはない。
接種券番号に1桁番号違いがあったとしても、その他の情報が一致すれば、本人とみなして、接種をすることができる。
だから、入力ミスを無理やりはじく必要はないのだ。
自治体のワクチン接種の受付が始まっているが、その仕方は様々だ。
ウェブ受付、電話受付、窓口の記名受付など。
このうち、窓口の記名受付とは、かかりつけ医の予約窓口に予約記名用紙を用意しておき、希望者は窓口にやってきて、氏名を記入して帰るだけ。
後日、氏名を記入した人に対して、接種の日時を連絡するという仕組み。
予約用紙に記名をするときに、記入ミスをはじく仕組みはない。
間違った名前を書いても、間違った番号を書いても、受付拒否はされない。
わざとデタラメの名前と番号をかきこんで、「デタラメの情報でも予約できてしまった!!」と誰が騒ぐだろうか。
「この予約システムには欠陥がある!!」と誰が批判するだろうか。
手書きの記入用紙なのだから、そんなのは、当たり前だし、みんな気付いていることだ。
少々の書き間違いがあったとしても、普段から来院している患者の本人確認ができなくなるわけはなく、なんら問題はない。
ワクチン接種に支障を来すことも考えられない。
むしろ、自分がいつも行っているかかりつけ医の窓口に行って、ペンで名前を書いてくるというのは、お年寄りにとって、最も実感として分かりやすく実行しやすいシステムとして優れモノだ。
この窓口の記名受付をウェブ上に置き換えたのが、今回の防衛省が行なった事前予約だったと思えばいい。
この予約システムは、ウェブ上ではあるが、ただの予約用紙に記入するだけの機能しか持たせていない。
ここにわざとデタラメの情報を記入し、欠陥発見と大騒ぎするのは、予約用紙にデタラメの名前が書けてしまったことを騒いでいるのと同じで、まったくナンセンスとしか言いようがない。
防衛省も、愚かな取材で勝ち誇ったような報道をするマスコミに対して、きっちり反論をすべきであった。
「それは、欠陥ではない。意味があってそのようなシステムにしてあったのだ」と。
「防衛省は分かっていながら隠していた」と報じるマスコミもある。
その通り。
だが、これは公表する意味がなかったからだし、公表することでいたずらを誘発することを恐れたからだ。
「不備がありながら、見切り発車した」と報じるマスコミもある。
その通り。
ことはスピードを求められており、最低限の機能だけで走らせることを優先したからだ。
むしろ、必要最小限の機能だけに限定して、そのほかの付随的な機能は思い切ってそぎ落としたという点で、防衛省の判断は正しかった。
緊急時においては、巧遅よりも拙速を尊べと言われる。
危機対応の要諦を理解する者がコントロールしていることが分かる。
さすが防衛省は緊急時対応のプロフェッショナル集団だ。
情けないのは、マスコミのレベルの低さだ。
本質を捉えることができずに、表面的なあら捜しに堕してしまっている。
「突貫工事で仕上げた予約システムなら、どこかに不備があるに違いない。欠陥を見つけてやろう」と、試みたところ、造作もなく不備が見つかった。
記者も、いきなり「ビンゴ!」で驚いただろう。
勝ち誇ったような論調の記事に、飛び上がらんばかりに喜んでいる姿が見える。
「ワクチンテロを企てようとする者が、乱数表でデタラメの番号で入力しまくれば、全予約枠を架空の予約で占有できてしまう」と説教を垂れている記事もあった。
まるで説教強盗だ。
本当に、ワクチンテロで日本社会に混乱を引き起こしてやろうとするのであれば、デタラメ入力などという面倒なことをチマチマする前に、予約システム自体をシャットダウンさせてしまうほうが遥かに簡単で威力が大きい。
となると、わざとデタラメな入力をしようとする者は、政府批判のためのあら捜しをしているマスコミぐらいしかいない。
そのようなマスコミのいたずらを排除するために完璧なシステム構築を目指すのは、コストと時間の浪費だ。
マスコミの報道は、システムの修正が行われる前になされたので、模倣犯のようないたずらによる予約が何件も入るようになってしまったのだそうだ。
防衛省が事前に公表しなかったのは、これを恐れてのことだったのだ。
それを、公益性を盾にしたマスコミによって、台無しにされた格好だ。
公益に資するどころか、マスコミの政府批判を目的とした報道は、ワクチン接種の業務妨害にしかなっていない。
更に情けないのは、野党だ。
立憲民主党党首の枝野氏は、会合でこんなコメントを発したらしい。
「システムの欠陥を指摘したメディアに『早い段階で気付かせてくれてありがとう』と言うのが本来の姿だ。意味不明な対応をしている」
野党の堕落がはなはだしい。
2021年05月21日
2021年05月13日
日本人の他人の邪魔をする国民性
ニューズウィーク日本版5月18日号に気になるコラム記事があった。
経済評論家・加谷珪一氏による『経済ニュース超解説』。
このコラムの中で、日本だけが消費を拡大できない理由として、ある研究が紹介されている。
大阪大学社会経済研究所のグループによる研究。
被験者に集団で公共財を作るゲームをしてもらったところ、日本人はアメリカ人や中国人と比較して他人の足を引っ張る行動が多いという結果が得られた。
日本人は、他人を他人と割り切れず、互いに相手の行動を邪魔してしまうという。
この研究内容の原典は確認できていないので、どのような実験を行なったのか、どこまで検証された研究かも不明。
だが、この研究結果は、意外だ。
元来、日本人は他人を気遣う国民性で、災害時の秩序正しい行動は世界的に称賛されることが多い。
ところが、その一方で、他人の足を引っ張る行動が多いのだという。
「他人を気遣うのに、他人の足を引っ張る」
一見、相矛盾する特性のようだが、よく考えると、これは日本人の国民性の裏表なのかもしれない。
他人を気遣うというのは、自分だけ突出しない、ということの裏返しでもある。
このことは、他人が突出することも受け入れられないということにもなる。
日本人は、他人を気遣うことにかけては世界一だが、その代わり、他人に気遣いのない人に対する風当たりはものすごく強い。
コロナ禍にあって「自粛警察」「同調圧力」という言葉が聞かれるが、これはまさに日本社会特有だろう。
他人のことを放っておけないのだ。
新型コロナに感染するのは本人が悪いと考える人の割合が、中国やアメリカに比べて、日本人の比率が圧倒的に大きい。
感染者がまるで犯罪者であるかのように非難される。
地方では、感染者を出した家は、周りから白い目で見られ、そこに住めなくなってしまうこともあるという。
職場でも、感染して長期休業することになった社員は「この忙しいときに何をやっとるんだ」と同僚や上司に責められる。
スギ薬局の会長夫妻がワクチン接種で優先枠を要求したニュースが話題になり、会長夫妻への批判が高まるのも、ずるいことをして自分だけ得をしようという行動が許せないからだろう。
有名人の言動に対して、ネット上で匿名の誹謗中傷が殺到することがあるのも、日本人の特性と言えるかもしれない。
中国人やアメリカ人の場合は、他人は他人、自分は自分と割り切る傾向が強い。
悪く言うと自己中心的だが、反面、他人の言動に寛容だ。
自分が前に出ることにしか関心がなく、他人にかまっていられないという感じだ。
このような社会では消費経済が活性化しやすいのだそうだ。
日本は、コロナの感染状況は世界的にみても極端に低いレベルで抑えられているにもかかわらず、消費の低迷はどこよりも深刻だ。
世界はコロナ後の経済再生に話題が移りつつあるが、日本経済はいち早く立ち上がれるだろうか。
経済評論家・加谷珪一氏による『経済ニュース超解説』。
このコラムの中で、日本だけが消費を拡大できない理由として、ある研究が紹介されている。
大阪大学社会経済研究所のグループによる研究。
被験者に集団で公共財を作るゲームをしてもらったところ、日本人はアメリカ人や中国人と比較して他人の足を引っ張る行動が多いという結果が得られた。
日本人は、他人を他人と割り切れず、互いに相手の行動を邪魔してしまうという。
この研究内容の原典は確認できていないので、どのような実験を行なったのか、どこまで検証された研究かも不明。
だが、この研究結果は、意外だ。
元来、日本人は他人を気遣う国民性で、災害時の秩序正しい行動は世界的に称賛されることが多い。
ところが、その一方で、他人の足を引っ張る行動が多いのだという。
「他人を気遣うのに、他人の足を引っ張る」
一見、相矛盾する特性のようだが、よく考えると、これは日本人の国民性の裏表なのかもしれない。
他人を気遣うというのは、自分だけ突出しない、ということの裏返しでもある。
このことは、他人が突出することも受け入れられないということにもなる。
日本人は、他人を気遣うことにかけては世界一だが、その代わり、他人に気遣いのない人に対する風当たりはものすごく強い。
コロナ禍にあって「自粛警察」「同調圧力」という言葉が聞かれるが、これはまさに日本社会特有だろう。
他人のことを放っておけないのだ。
新型コロナに感染するのは本人が悪いと考える人の割合が、中国やアメリカに比べて、日本人の比率が圧倒的に大きい。
感染者がまるで犯罪者であるかのように非難される。
地方では、感染者を出した家は、周りから白い目で見られ、そこに住めなくなってしまうこともあるという。
職場でも、感染して長期休業することになった社員は「この忙しいときに何をやっとるんだ」と同僚や上司に責められる。
スギ薬局の会長夫妻がワクチン接種で優先枠を要求したニュースが話題になり、会長夫妻への批判が高まるのも、ずるいことをして自分だけ得をしようという行動が許せないからだろう。
有名人の言動に対して、ネット上で匿名の誹謗中傷が殺到することがあるのも、日本人の特性と言えるかもしれない。
中国人やアメリカ人の場合は、他人は他人、自分は自分と割り切る傾向が強い。
悪く言うと自己中心的だが、反面、他人の言動に寛容だ。
自分が前に出ることにしか関心がなく、他人にかまっていられないという感じだ。
このような社会では消費経済が活性化しやすいのだそうだ。
日本は、コロナの感染状況は世界的にみても極端に低いレベルで抑えられているにもかかわらず、消費の低迷はどこよりも深刻だ。
世界はコロナ後の経済再生に話題が移りつつあるが、日本経済はいち早く立ち上がれるだろうか。
2021年05月11日
スギ薬局の印象の悪い謝罪文
スギ薬局が謝罪文を公開した。
「会長杉浦広一および相談役昭子へのコロナワクチンの優先的接種を西尾市様に依頼したことにつきまして、ワクチン接種をお待ちの西尾市の方々はじめ、全国の皆さまにとって不快な行為であったこと、日夜尽力されている全国の行政の方々の努力に水を差す結果となってしまったことに深くおわび申し上げます」
この後、背景事情の説明が続く。
その要旨は以下の通り。
・秘書が会長を慮って市役所に問い合わせを入れた。
・使命感ゆえ何度も問い合わせを繰り返した。
・会長自身はアナフィラキシーショックを経験しており、ワクチン接種は希望していない。
・今後はこのようなことがないようにする。
たぶん、全国報道でこのニュースが知られるところとなり、各方面からスギ薬局に批判が殺到したのだろう。
慌てて謝罪コメントを出した感じだ。
だが、謝罪文に続いて背景事情の説明がついているために、謝罪効果が減殺されてしまっている。
しかも、その背景事情も不自然さを感じさせる。
本人の意向を無視して、勝手にワクチン接種の優先枠を繰り返し要求する秘書の行動がまず不自然。
ワクチンが必要なら、既に本人が自分で予約を入れているかもしれないし、家族が代わりに予約をしているかもしれない。
それを確認せずに、秘書が勝手に市役所に強硬な働きかけを始めるなんてことは考えられない。
正規の手続きではなかなか予約が取れないために、会長から秘書に何らかの指示があったのは間違いない。
アナフィラキシーショックの経験があり、会長本人はワクチン接種をするつもりがなかったとは、無理な言い訳だ。
別の報道では、「会長夫妻には、接種会場に向かっている途中に連絡を取って引き返してもらった」との西尾市側の説明があった。
結局、会長の名誉を守るための無理なコメントになってしまっている。
会社の気遣いが会長に向いており、消費者に向いていない。
この謝罪文の印象は非常に悪い。
少なくとも謝罪文は会長名で出すべきであった。
謝罪文は一発でダメージ回復を狙わなくてはならない。
絶好のチャンスを逃し、事態を更に悪化させてしまった。
スギ薬局は株価を落とし、不買運動も引き起こしかねない事態に至っている。
「会長杉浦広一および相談役昭子へのコロナワクチンの優先的接種を西尾市様に依頼したことにつきまして、ワクチン接種をお待ちの西尾市の方々はじめ、全国の皆さまにとって不快な行為であったこと、日夜尽力されている全国の行政の方々の努力に水を差す結果となってしまったことに深くおわび申し上げます」
この後、背景事情の説明が続く。
その要旨は以下の通り。
・秘書が会長を慮って市役所に問い合わせを入れた。
・使命感ゆえ何度も問い合わせを繰り返した。
・会長自身はアナフィラキシーショックを経験しており、ワクチン接種は希望していない。
・今後はこのようなことがないようにする。
たぶん、全国報道でこのニュースが知られるところとなり、各方面からスギ薬局に批判が殺到したのだろう。
慌てて謝罪コメントを出した感じだ。
だが、謝罪文に続いて背景事情の説明がついているために、謝罪効果が減殺されてしまっている。
しかも、その背景事情も不自然さを感じさせる。
本人の意向を無視して、勝手にワクチン接種の優先枠を繰り返し要求する秘書の行動がまず不自然。
ワクチンが必要なら、既に本人が自分で予約を入れているかもしれないし、家族が代わりに予約をしているかもしれない。
それを確認せずに、秘書が勝手に市役所に強硬な働きかけを始めるなんてことは考えられない。
正規の手続きではなかなか予約が取れないために、会長から秘書に何らかの指示があったのは間違いない。
アナフィラキシーショックの経験があり、会長本人はワクチン接種をするつもりがなかったとは、無理な言い訳だ。
別の報道では、「会長夫妻には、接種会場に向かっている途中に連絡を取って引き返してもらった」との西尾市側の説明があった。
結局、会長の名誉を守るための無理なコメントになってしまっている。
会社の気遣いが会長に向いており、消費者に向いていない。
この謝罪文の印象は非常に悪い。
少なくとも謝罪文は会長名で出すべきであった。
謝罪文は一発でダメージ回復を狙わなくてはならない。
絶好のチャンスを逃し、事態を更に悪化させてしまった。
スギ薬局は株価を落とし、不買運動も引き起こしかねない事態に至っている。
スギ薬局のダメージコントロール
東京新聞その他の報道による。
新型コロナウイルスワクチンの接種を巡り、愛知県西尾市の副市長が、スギ薬局を展開する「スギホールディングス」の会長夫妻の予約枠を優先確保するよう、市の担当部署に指示していたらしい。
副市長は「夫妻は市への貢献度も大きく、忙しいお2人なので担当部署に依頼した」と説明。
市は夫妻の予約を取り消した。
会長夫妻は既に接種会場に向かう途中だったが、連絡して引き返してもらったという。
4月初旬ごろ、スギHDの社員から市健康課に「夫妻がいち早くワクチンを打てないか」と相談があった。
杉浦夫妻が薬剤師で医療従事者に当たると主張。
しかし、市の担当者は拒否。
その後も、何度も依頼が繰り返される中、副市長のところにまで話が届き、今回の予約枠の優先確保となったようだ。
この話が、なぜか事前にマスコミに知られるところとなり、西尾市長の謝罪会見となった。
スギ薬局側は、「市に問い合わせは何度かしたが、便宜を図ってもらうよう依頼したことは一切ない」とコメントしている。
このニュースで、ダメージを受けたのは、西尾市ではなく、スギ薬局だ。
スギ薬局の会長夫妻がどのような意図で市に問い合わせをしたのかは、容易に想像できる。
会長夫妻は地元の有名な名士であり、地域経済にも多大な貢献をしている。
市側が会長夫妻から依頼を受けて、形式上のルールを盾に拒否し続けるのは難しい。
会長夫妻の方も、「自分らを、その他一般の年寄りと一緒の行列に並ばせるつもりか」との思いがあったかもしれない。
このような会長夫妻の思い上がった心根が透けて見えてしまうために、非常に印象が悪い。
このニュースは、各局の全国放送で報道されており、スギ薬局側のイメージの棄損は甚だしい。
不思議なのは、なぜこの話が事前に発覚したのか、だ。
市役所内部からのリークであるのは間違いない。
もしかしたら、市長自らが公表に踏み切ったのではないか。
これが、接種が終わってから発覚した場合は、市側のダメージの方が大きくなる。
一部の市民だけ特別扱いした事実は否定できず、取り返しのつかない事態になりかねない。
事前に止めるにはどうするか。
市長自らが会長夫妻に連絡して遠慮していただくしかない。
だが、市長にとって、地元の名士を敵に回すほど怖いことはない。
残る道は、事前に事実を公表し、謝罪会見を開くこと。
市長はカメラの前で深々と頭を下げたが、ほとんどダメージを受けていない。
便宜を図った副市長も、自らの愚かさを責めて謝罪したが、処分を受けることはないだろう。
実は、市長と副市長は、自分らが頭を下げることで、会長夫妻の身勝手な行動を非難しているのだ。
スギ薬局広報部のコメントは、まずい。
批判の矛先が我が身に向いていることに気づいていない。
スギ薬局は一般消費者相手の商売なのだから、一般の人々のイメージダウンは極力避けなければいけない。
医薬を扱っている商売であれば、なおさらだ。
コメントは、まずは「お騒がせして申し訳ない」という言葉から始まるべきだった。
そのあと、「市に問い合わせを入れたことは事実だが、便宜を図ってもらう意図はなかった」と続ける。
そして、「ワクチンが市民にいきわたり、1日でも早くコロナが終息することを願っている」と結べば完璧だった。
新型コロナウイルスワクチンの接種を巡り、愛知県西尾市の副市長が、スギ薬局を展開する「スギホールディングス」の会長夫妻の予約枠を優先確保するよう、市の担当部署に指示していたらしい。
副市長は「夫妻は市への貢献度も大きく、忙しいお2人なので担当部署に依頼した」と説明。
市は夫妻の予約を取り消した。
会長夫妻は既に接種会場に向かう途中だったが、連絡して引き返してもらったという。
4月初旬ごろ、スギHDの社員から市健康課に「夫妻がいち早くワクチンを打てないか」と相談があった。
杉浦夫妻が薬剤師で医療従事者に当たると主張。
しかし、市の担当者は拒否。
その後も、何度も依頼が繰り返される中、副市長のところにまで話が届き、今回の予約枠の優先確保となったようだ。
この話が、なぜか事前にマスコミに知られるところとなり、西尾市長の謝罪会見となった。
スギ薬局側は、「市に問い合わせは何度かしたが、便宜を図ってもらうよう依頼したことは一切ない」とコメントしている。
このニュースで、ダメージを受けたのは、西尾市ではなく、スギ薬局だ。
スギ薬局の会長夫妻がどのような意図で市に問い合わせをしたのかは、容易に想像できる。
会長夫妻は地元の有名な名士であり、地域経済にも多大な貢献をしている。
市側が会長夫妻から依頼を受けて、形式上のルールを盾に拒否し続けるのは難しい。
会長夫妻の方も、「自分らを、その他一般の年寄りと一緒の行列に並ばせるつもりか」との思いがあったかもしれない。
このような会長夫妻の思い上がった心根が透けて見えてしまうために、非常に印象が悪い。
このニュースは、各局の全国放送で報道されており、スギ薬局側のイメージの棄損は甚だしい。
不思議なのは、なぜこの話が事前に発覚したのか、だ。
市役所内部からのリークであるのは間違いない。
もしかしたら、市長自らが公表に踏み切ったのではないか。
これが、接種が終わってから発覚した場合は、市側のダメージの方が大きくなる。
一部の市民だけ特別扱いした事実は否定できず、取り返しのつかない事態になりかねない。
事前に止めるにはどうするか。
市長自らが会長夫妻に連絡して遠慮していただくしかない。
だが、市長にとって、地元の名士を敵に回すほど怖いことはない。
残る道は、事前に事実を公表し、謝罪会見を開くこと。
市長はカメラの前で深々と頭を下げたが、ほとんどダメージを受けていない。
便宜を図った副市長も、自らの愚かさを責めて謝罪したが、処分を受けることはないだろう。
実は、市長と副市長は、自分らが頭を下げることで、会長夫妻の身勝手な行動を非難しているのだ。
スギ薬局広報部のコメントは、まずい。
批判の矛先が我が身に向いていることに気づいていない。
スギ薬局は一般消費者相手の商売なのだから、一般の人々のイメージダウンは極力避けなければいけない。
医薬を扱っている商売であれば、なおさらだ。
コメントは、まずは「お騒がせして申し訳ない」という言葉から始まるべきだった。
そのあと、「市に問い合わせを入れたことは事実だが、便宜を図ってもらう意図はなかった」と続ける。
そして、「ワクチンが市民にいきわたり、1日でも早くコロナが終息することを願っている」と結べば完璧だった。