ニューズウィーク日本版5月18日号に気になるコラム記事があった。
経済評論家・加谷珪一氏による『経済ニュース超解説』。
このコラムの中で、日本だけが消費を拡大できない理由として、ある研究が紹介されている。
大阪大学社会経済研究所のグループによる研究。
被験者に集団で公共財を作るゲームをしてもらったところ、日本人はアメリカ人や中国人と比較して他人の足を引っ張る行動が多いという結果が得られた。
日本人は、他人を他人と割り切れず、互いに相手の行動を邪魔してしまうという。
この研究内容の原典は確認できていないので、どのような実験を行なったのか、どこまで検証された研究かも不明。
だが、この研究結果は、意外だ。
元来、日本人は他人を気遣う国民性で、災害時の秩序正しい行動は世界的に称賛されることが多い。
ところが、その一方で、他人の足を引っ張る行動が多いのだという。
「他人を気遣うのに、他人の足を引っ張る」
一見、相矛盾する特性のようだが、よく考えると、これは日本人の国民性の裏表なのかもしれない。
他人を気遣うというのは、自分だけ突出しない、ということの裏返しでもある。
このことは、他人が突出することも受け入れられないということにもなる。
日本人は、他人を気遣うことにかけては世界一だが、その代わり、他人に気遣いのない人に対する風当たりはものすごく強い。
コロナ禍にあって「自粛警察」「同調圧力」という言葉が聞かれるが、これはまさに日本社会特有だろう。
他人のことを放っておけないのだ。
新型コロナに感染するのは本人が悪いと考える人の割合が、中国やアメリカに比べて、日本人の比率が圧倒的に大きい。
感染者がまるで犯罪者であるかのように非難される。
地方では、感染者を出した家は、周りから白い目で見られ、そこに住めなくなってしまうこともあるという。
職場でも、感染して長期休業することになった社員は「この忙しいときに何をやっとるんだ」と同僚や上司に責められる。
スギ薬局の会長夫妻がワクチン接種で優先枠を要求したニュースが話題になり、会長夫妻への批判が高まるのも、ずるいことをして自分だけ得をしようという行動が許せないからだろう。
有名人の言動に対して、ネット上で匿名の誹謗中傷が殺到することがあるのも、日本人の特性と言えるかもしれない。
中国人やアメリカ人の場合は、他人は他人、自分は自分と割り切る傾向が強い。
悪く言うと自己中心的だが、反面、他人の言動に寛容だ。
自分が前に出ることにしか関心がなく、他人にかまっていられないという感じだ。
このような社会では消費経済が活性化しやすいのだそうだ。
日本は、コロナの感染状況は世界的にみても極端に低いレベルで抑えられているにもかかわらず、消費の低迷はどこよりも深刻だ。
世界はコロナ後の経済再生に話題が移りつつあるが、日本経済はいち早く立ち上がれるだろうか。