2021年06月19日

みずほ銀行システム障害調査報告書

 15日に、みずほ銀行のシステム障害に関する調査報告書が公表された。
 このシステム障害は、今年の2月28日から3月12日にかけて4回にわたって起きたATMをめぐるトラブルだ。
 みずほ銀行は過去にもシステム障害を起こしており、「またか」との印象が強い。
 過去のトラブルは、合併の際に複数の銀行系システムを統合する際のやむを得ぬ不具合があったのではと思われたが、今回のシステム障害は、過去の教訓を生かせず意識改革や事前対策がまったく進んでいなかった組織的な欠陥を露呈したようだ。

 今回のシステム障害のポイントは2つある。
 1つは、直接の原因であるシステムに不具合が起きたこと。
 もう1つは、システム障害による顧客への影響が多大であったこと。
 特に顧客への影響が広範で長時間にわたってしまったことが深刻な問題とされた。

 顧客への影響は次の3つ。
1.ATMの稼働停止
2.通帳やカードの取り込み
3.一部の取引不能

 この中で、深刻なのは通帳・カードの取り込みだ。
 ATMに通帳やカードを差し込むと、取り込んだままエラー状態になり動かなくなってしまう。
 利用客はここで困る。
 そのうち担当者が駆けつけてくれて復旧してくれるだろうと思って待つが、その様子がない。
 不用意にその場を離れ、その間にいきなり機械が動き出して、通帳やカードを排出したら、それを誰かに取られてしまう恐れがある。
 これで、ATMも前で待ち続ける客が続出することになる。
 みずほ銀のATM4300台で同じ現象が起きており、この通帳・カードの取り込み事案は5200件起きていた。
 被害客にとって、その日の行動計画はすべて台無し。
 中には7時間もの間、待ち続けた人もいたという。

 なぜこれほどまでの影響が起きてしまったのかというと、それはみずほ銀の顧客対応の遅れによる。
 初動から顧客対応の視点が完全に欠落しており、有効な対応が何もとれていなかった。
 被害客に対しては、いち早く状況説明を行ない、「取り込まれた通帳やカードは後日に責任をもって返却すること」「今日は現場を離れても構わないこと」を伝えなくてはいけない。
 だが、ウェブサイト上にメッセージが公開されたのが、障害発生から6時間たった午後4時。
 7時間も待ち続ける人が出てしまったのはこういう事情だ。
 
 なぜこのような緩慢な対応になってしまったのかについて、調査報告書では詳細に分析されていて、読みごたえがある。
 この種の調査報告書は、依頼主への忖度から、「落ち度はあるものの、やむを得ない面もあった」という分析でお茶を濁すケースが多いが、この報告書は違う。
 実態が弁護の余地のないほどの失態であるために、このような厳しい報告になったのだろう。

 この報告書を読んで感じたことは、銀行にとってATMを利用するような一般客は、主要顧客ではないのではないか、ということだ。
 いまや大規模都銀にとって、一般客は収益の源泉ではない。
 特にATMサービスは、コストばかりかかって利益を生み出さない余分な業務だ。
 金融機関の社会的責任としてやむを得ずサービス提供しているに過ぎない。
 いわばボランティア。
 ATMトラブルに迅速に対応し、一般客への影響を最小限に抑えようという意識がそもそも欠落しているように見える。
 「いつでもお金が出し入れできるサービスがあるだけでもありがたいと思え」というのが本音かもしれない。

 これが、システム障害の復旧が1分遅れるごとに数億円の損失が累積するのであれば、経営層は必死で対応するだろう。
 ところが、システム障害による経営への影響は、ほとんどない。
 現に、みずほ銀行の決算は絶好調で、前年比20.5%の増益だ。
 システム障害の影響はどこにもないどころか、V字回復で躍進中。
 システム障害の客対応が緩慢に失した背景は、ここにある。
 
 
posted by 平野喜久 at 10:25| 愛知 ☔| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月09日

コロナ終息はいつか

 世界中でワクチン接種が急ピッチで進められており、その効果が出始めている。
 ワクチン接種が順調に進んでいるのはイギリスだが、日によっては陽性者がゼロになるケースも出るレベルまで感染状況は落ち着いてきた。
 ワクチン効果の高さがうかがえる。
 それでも、1回のワクチン接種がようやく6割程度まで来たところで、集団免疫には道遠い。
 BBCのニュースによると、インド由来の変異株の感染拡大がイギリスの一部地域で起きており、予断を許さない状況だという。

 アメリカもワクチン接種のおかげで、感染状況はかなり落ち着いてきた。
 ところが、感染状況の落ち着きとともに、人びとの警戒が緩み、なし崩し的に感染防止策がうやむやになりつつあるようだ。
 既に人々はマスクを着けず、手洗い消毒も行わず、飲食店は通常営業、コンサートホールでは今までの遅れを取り戻そうと連日イベントのラッシュだそうだ。
 ワクチン接種も途中までは順調に進んだが、今ではワクチン接種しようという人がいなくなってしまった。
 やむなく、ご褒美を上げたり、ビールを飲ませたり、宝くじで大金が当たると誘って、ワクチン接種を無理やり進めている状況だ。
 もともと、アメリカでは政府の政策に反抗する勢力が常に存在しており、行動自粛の呼びかけもマスク着用の呼びかけも無視するような一定層がいた。
 ワクチン接種にも信念をもって拒否をする人々もある程度のボリュームで存在するのだそうだ。
 アメリカでは1日に何十万人もの陽性者が出ていたころに比べるとかなり落ち着いてきたが、それでも、1日に2万人もの陽性者が出ており、これ以上減る様子がない。
 アメリカは、完全終息は見込めず、今の状況が常態化するのかもしれない。

 さて、日本はどうか。
 先進国中では最もワクチン接種が立ち遅れている。
 だが、これは、先進国中で最も感染状況が小さいことの裏返しでもある。
 ワクチンも既に全人口を賄える分量を手配済みだが、これも、オリンピック開催を理由付けにした粘り強い交渉の成果であって、これほど感染状況が小さい国に優先的にワクチンを回すということは常識ではありえない話だ。
 医療従事者についてはほぼすべての人に1回目のワクチン接種が行われ、いま高齢者のワクチン接種が盛んにおこなわれている。
 この高齢者向けのワクチン接種も、開始当初は、希望者が殺到し、予約システムのトラブルや会場のオペレーションの不備が問題になることもあったが、軌道に乗り始め、いまでは大規模接種会場では予約枠が余るほどになってきた。
 意外に早く余裕が出始めたので、企業や大学向けの集団接種も今月中には開始することになった。
 企業単位の集団接種であれば、組織的な対応が可能で、混乱なくスムーズに進みそうだ。
 働いている人は職場で接種し、それ以外の人が地元の自治体の接種会場で、というようにすみわけをすることで、混乱と集中を避けることができる。
 中小企業の場合は、地域の商工会議所が主体となって集団接種を進めていくことになる。
 いままでは自治体のオペレーション能力が問われていたが、今後は、各企業の対応力が問われる段階になる。
 ワクチン接種は、誰から順番に進めるのか。
 社長からか、現場の作業員からか。
 今から検討しておくべきだ。
 また、同じ職場の従業員を同日に一斉に接種させてしまうと、翌日には職場が倦怠感を覚える人だらけになってしまう。
 副反応は、若い人ほど強く出やすい。
 このあたりも考慮しながら接種の順番を決めていくことになる。

 3月にイギリスの研究所が出した各国の集団免疫に達する予想時期を見ると、日本は来年の4月8日、となっていた。
 それほど日本のワクチン接種は遅れに遅れると予想していたのだ。
 ところが、ワクチンの集団接種のような単純なオペレーションは日本人の最も得意とするところだ。
 一度効率のいいシステムができれば、そのあとは猛スピードで進んでいくだろう。
 もしかしたら、秋口にはワクチン接種の効果が表れ始め、次の冬にはかなり感染状況が抑え込めるのではないだろうか。
 
 今後の課題は、3つ。
1.変異株の動向
2.ワクチンの有効性
3.日常復帰のタイミング

 コロナ終息はまだまだ先だが、状況は最終局面に差し掛かっている。
 私たちは、次を見据えた準備を進めていく段階にある。
posted by 平野喜久 at 11:14| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする