岡山県美咲町で4月下旬にあった新型コロナウイルスのワクチン接種のための予行演習の求人情報が、
8月下旬になって「ワクチン接種を促すための演出」といった誤った情報とともにSNS上で飛び交ったという。
事の真相はこうだ。
今年4月、美咲町でワクチン接種のシミュレーション訓練を行うにあたって、役所の職員だけでは足りず、協力者を募集した。
会場で案内する人、接種を受ける人、問診をする人、接種をする人などの役を募集したのだ。
求人票には「ワクチン接種デモンストレーションのエキストラ募集、時給1400円」とあった。
これが、実施から4カ月たった8月28日ごろからSNSで拡散した。
どのような文脈でこの求人票が拡散したのかというと、「渋谷の若者向け接種会場の大行列は仕組まれた演出」と言いたいわけだ。
この情報は、明らかにワクチン反対派の仕業による。
渋谷の接種会場が始まった時、大行列を作る若者の姿がニュースになった。
若者はワクチンに消極的と思われていたが、実態はまったく違うということに皆が驚いた。
だが、ワクチン反対派は、この様子が気に入らなかった。
「みんながワクチンを打ちたがっているかのような様子を見せ、若者に接種させようとする陰謀だ」とばかりに、関係ない求人票をネタにデマを拡散した。
デマの発信者の意図はどこにあるのか。
1.衝撃的な情報を投げかけ世間を騒がせたい。
2.ワクチン接種にブレーキをかけ、コロナ終息を妨害したい。
3.ワクチンの危険性を知らせ、騙されている人々を救いたい。
3は悪意がないだけに厄介な存在だ。
ワクチンが危険だと思い、自分が接種を拒否するだけでは収まらない。
家族にも親戚にも知人にも危険情報を伝えたがる。
更に、一般社会に向けて危険情報を拡散しようとする。
デマは、発信されても拡散する人がいなければ立ち消えになる。
このような悪意のない人がいる限り、拡散し続ける。
デマ発信者は、このような善意の拡散者をいかにその気にさせるかに長けていて、今回の求人票のネタはうまくはまった。