10月10日から新しいドラマが始まった。
「日本沈没〜希望のひと〜」(TBSテレビ)
原作は、小松左京のSFで、1970年代に大ヒットし、映画化され、その後、ドラマ化され、高視聴率を取った。
それが再び登場だ。
ただ、原作通りではなく、コンセプトはそのままで、時代を現代に置き換え、新たにストーリーを構築したという印象だ。
災害多発の時代に合って、このテーマがリバイバルされるのは、タイムリーと言え、今後、どのようなストーリー展開になるのか、楽しみだ。
田所博士を香川照之が演じており、浮世離れしたマッドサイエンティストぶりを発揮している。
主人公は、原作とは違い、環境省の若手官僚:天海啓示という設定だ。
第2回までのドラマ展開では、当初は、田所の関東沈没説に反発していた天海が、田所を無理やりつぶそうとする政府や研究者の姿勢に反感を覚え始める様子が描かれている。
ここまでは、官僚同士の話し合いや、閣僚らの動きが中心になっており、ドラマとしては見どころがない。
伊豆半島沖にあるという日之島という島が突然沈没する様子が描かれていたのが、唯一の見どころだった。
旧作ドラマの日本沈没では、CGが存在しない時代で、すべてがミニチュアモデルを使用しての演出だったが、ここが今回はリアルに描かれることになりそう。
制作費に20億円をかけたらしい。
今後のスペクタクル場面に期待が高まる。
旧作ドラマは26回シリーズだった。
1回ごとに必ず日本のどこかで異変が起き、地震が発生し、有名な観光地が破壊される場面が登場した。
誰もが知っている観光地が被災する場面は、見る者がカタルシスを得られる見どころでもあった。
印象に残っているのは、金閣の水没、清水寺の倒壊、鎌倉大仏の地盤沈下、東京タワーの水没。
いま見直してみると、模型を作って壊しているだけというのがまるわかりだが、それでも、当時はその映像に目を見張った。
新作ドラマではCGでどこまでスペクタクル場面を再現できるだろうか。
さて、このSFの最初の見どころは、日本沈没説がどうして出てきたのか、というところだ。
現実には日本列島が沈没するというのはありえない。
これは、水に浮いている木切れが、突然沈み始めることはありえないのと同じように、日本列島が沈没することは原理的にありえない話だからだ。
しかし、SFではそこを乗り越えないとストーリーが進まない。
そこで、それをどのように乗り越えているのかというところが、注目ポイント。
ドラマ中では、田所が関東沈没説の根拠を説明する場面がある。
いきなり日本沈没ではなく、関東沈没から話が始まっているのが面白い。
田所の説明では関東沈没の根拠はこうなっていた。
関東地方は、太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレートという3つのプレートがぶつかり合っている世界でも非常に珍しいところで、この3つのプレートが重なり合って微妙なバランスを保っている。
ところが、最近の地球温暖化による海面上昇で、このバランスが不安定になってきた。
そのことで、プレートの境目ではスロースリップ現象が起き始めており、なおかつ政府が行っているコムスという海底掘削事業により、海側プレートの沈下速度が速まっている。
このことにより、関東の沈没が引き起こされる。
「地球温暖化」「海面上昇」「スロースリップ」という最近のキーワードを混ぜ、海側プレートの沈下と陸側プレートの引きずり込まれという専門知識をベースにうまく沈没説を構成していた。
専門家が見れば、「なんのこっちゃ」の説明にしかなっていないが、素人には十分リアリティのあるストーリーだろう。
日本沈没は、結論が題名になってしまっている珍しい作品。
結論がわかっていながら、どのようにそこまでのストーリーが展開していくのかについていろんなイマジネーションを掻き立て、期待感が大きい。
現代版の日本沈没、今後の展開を楽しみたい。