日本経済新聞の記事による。
内閣府と法務省は25日、家族の法制度に関する世論調査の結果を発表した。
夫婦が同姓か別姓かを選べる選択的夫婦別姓を「導入した方がよい」と答えた容認派は29%だった。
夫婦同姓の制度を「維持したほうがよい」は27%だった。
42%は夫婦同姓を維持したうえで「旧姓の通称使用の法制度を設けた方がよい」と回答した。
調査方法と設問が異なり単純比較できないが、17年の前回調査は夫婦別姓のため「法律を改めてもかまわない」が43%、「法律を改める必要はない」が29%だった。
この記事には誤りがある。
17年の前回調査で、「法律を改めてもかまわない」は43%ではなく、24.4%だ。
他の数字と取り違えたようだ。
この記事は、共同通信を利用したようで、元記事が間違っているのだろう。
同様に他の新聞記事でも間違ったまま報道されている。
さて、今回の問題は、過去データの間違いではない。
内閣府では数年ごとに夫婦別姓の世論調査をしているが、今回は、従来とは違う設問で実施したという。
従来の質問では内容が理解しにくいためというのが理由だ。
では、従来の質問ではどんな選択肢になっていたかというと、「法律を改めても構わない」「旧姓を通称として使えるように法改正しても構わない」「法律を改める必要はない」となっていた。
前回17年の調査では、それぞれ、24.4%、42.5%、29.3%となっている。
共同通信の記事は、通称使用の数字を別姓賛成の数字と勘違いして取り違えたのだ。
従来の世論調査の特徴は、選択肢に「〜してもかまわない」という表現があることだ。
普通の世論調査では、「〜すべき」「〜すべきではない」とか、「〜したほうがいい」「〜しないほうがいい」という表現になる。
ところが、別姓の世論調査は、「〜してもかまわない」という奇妙な表現になっている。
これには意図があって、別姓容認の世論を最大限にかき集めることを狙っているのだ。
この形式の質問になったのは、1996年6月の世論調査からだ。
それ以前は、単純に別姓に賛成か反対かを尋ねる形式だった。
ところが、1994年に行った世論調査では、賛成が27.4%、反対が53.4%になってしまった。
別姓に対する国民の理解は進んでおり、世論は変化している、というのが別姓推進派の主張だった。
実態は、何度世論調査しても、一向に賛成が増える様子がない。
むしろ、減少傾向さえ見えていた。
そこで、1996年に、選択肢をがらりと変えて、世論調査をやり直したというわけだ。
「〜してもかまわない」という表現を使い、数字をかさ上げしようとした。
さらに、通称使用の法改正の項目も入れることで、「法改正への理解が進んだ」とぶち上げたのだ。
結果は、賛成32.5%、通称使用22.5%、反対39.8%となった。
賛成と通称使用を合わせて、「別姓容認派が半数を超えた」と法務省やマスコミはぶち上げた。
ところが、通称使用の項目は、別姓導入に反対している人たちなのだから、別姓賛成が増えていることにならない。
むしろ、反対派が過去最大の数字を記録してしまったことになる。
その後も、数年ごとに同じ世論調査を続けているが、近年、また賛成派の数字が減少傾向を見せ始めていた。
別姓推進派の主張は、「国民の理解は進んでおり、世論は常に変化している」というものだったはず。
なのに、賛成派は一向に増える様子がないのだ。
そこで、再び、法務省は質問形式を変更することを思いついた。
質問形式を変えてしまっては、過去からの世論の変化が分からなくなってしまうのだが、むしろ、変化が分からなくしようとしているとしか思えない。
本当の世論の変化を見ようとしているのではなく、選択肢をいじることで数字を変えてしまおうとしているのではないか。
今回の質問形式は、従来の「〜してもかまわない」などという奇妙な表現ではなく、比較的素直な表現に置き換わっている。
「選択的夫婦別姓を導入したほうがいい」という容認派が29%となった。
現状維持が27%。
通称使用が42%。
なんのことはない。数字の配分としては、前回の世論調査とほぼ同じ。
現状維持と通称使用を合わせると、69%となり、別姓反対派が圧倒的多数であることに変わりはない。
夫婦別姓の導入は時間の問題だという人がいる。
とんでもない。
別姓賛成派は相変わらず少数派だし、時間とともに増加する様子もない。
ただし、通称使用への理解は進んでいる。
これが世論調査から見える実態なのだ。
2022年03月27日
2022年03月17日
有事のリーダー:ゼレンスキー大統領
ウクライナのゼレンスキー大統領の評価が高まっている。
コメディ俳優がドラマで大統領を演じたところ好評を得たので、そのまま実際の大統領選に出馬したところ、本当に当選してしまったという経歴を持つ。
政治経験も行政経験もないまったくの素人。
政権運営もうまくいかず、国民の支持率は20%程度で低迷していたという。
海外からも、まったくの素人に政権を任せて大丈夫かという心配の声もあった。
もしかしたら、プーチン氏が武力侵攻に踏み切ったのも、ゼレンスキー氏の無能を見込んでのことだったかもしれない。
ところが、ロシアの軍事侵攻を契機に、様子が激変した。
たちまち、国民の支持率が90%に跳ね上がったのだ。
外敵の脅威が国民を結束させた面もあるが、国民を結束させたのは、明らかにゼレンスキー氏の姿勢だった。
ロシアに対して毅然とした姿勢を見せ、無謀な侵略行為に断固戦う姿勢を明らかにした。
この大統領の様子を見て国民の覚悟が決まったように見える。
思いのほかウクライナ軍の抵抗が激しく、ロシアが攻めあぐねている背景にはこのような事情がある。
ゼレンスキー氏は、国民向けにメッセージを発すると同時に、海外を意識した情報発信にも余念がない。
イギリス議会やアメリカ議会でモニター越しの演説をこなした。
イギリスでは、チャーチルの名言を引用したり、シェークスピアの一節に触れたりと、レトリックは抜群。
そして、何より、その語りのうまさ。
官僚の書いたメモを読み上げている政治家とは違う。
自らの言葉で語りかけているのが分かる。
ここは、俳優のスキルが全面に表れている場面だ。
イギリス議会でもアメリカ議会でも、ゼレンスキー氏のスピーチの後は、スタンディングオベーションで喝采が鳴りやまない。
それだけ、彼の語りには人の心を動かす力がある。
ウクライナ側から、日本の議会でも演説をさせてほしいとの打診が来ているそうだ。
前例のないことで戸惑っているようだが、ぜひ実現してほしい。
「非常事態は、無能に見えた人物を有能にし、有能に見えた人物の無能を暴露する」という。
ゼレンスキー氏は、まさに前者だ。
コメディ俳優がドラマで大統領を演じたところ好評を得たので、そのまま実際の大統領選に出馬したところ、本当に当選してしまったという経歴を持つ。
政治経験も行政経験もないまったくの素人。
政権運営もうまくいかず、国民の支持率は20%程度で低迷していたという。
海外からも、まったくの素人に政権を任せて大丈夫かという心配の声もあった。
もしかしたら、プーチン氏が武力侵攻に踏み切ったのも、ゼレンスキー氏の無能を見込んでのことだったかもしれない。
ところが、ロシアの軍事侵攻を契機に、様子が激変した。
たちまち、国民の支持率が90%に跳ね上がったのだ。
外敵の脅威が国民を結束させた面もあるが、国民を結束させたのは、明らかにゼレンスキー氏の姿勢だった。
ロシアに対して毅然とした姿勢を見せ、無謀な侵略行為に断固戦う姿勢を明らかにした。
この大統領の様子を見て国民の覚悟が決まったように見える。
思いのほかウクライナ軍の抵抗が激しく、ロシアが攻めあぐねている背景にはこのような事情がある。
ゼレンスキー氏は、国民向けにメッセージを発すると同時に、海外を意識した情報発信にも余念がない。
イギリス議会やアメリカ議会でモニター越しの演説をこなした。
イギリスでは、チャーチルの名言を引用したり、シェークスピアの一節に触れたりと、レトリックは抜群。
そして、何より、その語りのうまさ。
官僚の書いたメモを読み上げている政治家とは違う。
自らの言葉で語りかけているのが分かる。
ここは、俳優のスキルが全面に表れている場面だ。
イギリス議会でもアメリカ議会でも、ゼレンスキー氏のスピーチの後は、スタンディングオベーションで喝采が鳴りやまない。
それだけ、彼の語りには人の心を動かす力がある。
ウクライナ側から、日本の議会でも演説をさせてほしいとの打診が来ているそうだ。
前例のないことで戸惑っているようだが、ぜひ実現してほしい。
「非常事態は、無能に見えた人物を有能にし、有能に見えた人物の無能を暴露する」という。
ゼレンスキー氏は、まさに前者だ。