小林製薬が製造販売した紅麹成分のサプリで健康被害が相次いでいる。
1月15日に最初の症例報告があったにもかかわらず、自主回収が3月22日になったことが「対応が遅い」と批判されている。
当初、腎疾患をもたらす原因物質が見つからなかったために、対応が遅れたものと見られる。
ようやく未知の成分が見つかったが、それが原因物質なのかどうかは不明のまま。
昨日の社長の記者会見でも、「未知の成分」については物質名を避けていたが、厚労省が「プベルル酸」と公表したため、後追いで認めざるを得なくなった。
小林製薬が「原因はまだわからない」を繰り返しているため、厚労省がしびれを切らして物質名を発表したように見える。
小林製薬だけに真相究明を任せていたのでは、いつまでかかるか分からないので、いち早く公表して、広く知見を集めたほうがいいとの判断だろう。
今後は、この物質が本当に腎疾患をもたらしたのかについて、動物実験や臨床試験を行いながら解明していくことになりそうだ。
ことは長期化の様相を呈しており、その間に企業の信用は削られ続けることになる。
小林製薬は「製薬」と名乗っているが、一般にイメージする製薬会社とは違う。
管理の厳しい医療機関向けの医薬品は製造していない。
一般家庭向けのトイレタリー商品が中心だ。
事業買収で業容を拡大し、健康食品や美容品分野を強化していた。
紅麹サプリもグンゼから事業譲渡を受けたもの。
もともと、小林製薬にノウハウや技術があったわけではない。
健康被害の報告があっても、対応が後手後手で混乱しているのは、緊急時対応の経験値もなく、マニュアルも整備されていないせいだろう。
健康被害が起きているにもかかわらず、その原因を突き止められず、何が起きているのかさえ把握できていない。
これは、まったく製薬会社としての管理能力を有しているとは思えない。
紅麹の素人が作っていたサプリ、というのが実態だと捉えると、グズグズの対応も納得できるかもしれない。
サプリの利用者は、小林製薬という社名ブランドを信用して購入したはず。
いま様々なサプリが世の中にあふれているが、製薬会社の作ったサプリなら間違いはないだろう、というイメージがある。
小林製薬という社名で消費者に間違ったイメージを与えてきたと言われても仕方ない。
1月15日に最初の症例があったということになっているが、今年初めに株主に届いた商品パンフレットには、紅麹サプリが削除されていたという。
もしかしたら、去年の内に既に前兆をつかんでいたのではないのかが疑われる。
紅麹を製造していた大阪工場が去年末に閉鎖されていたことも、様々な憶測を招く。
今年2月初めに役員会議に情報が挙げられ審議されたらしい。
そこでは、自主回収の判断には至らなかった。
ところが、そのころから株価が下がり始めていることから、インサイダー情報が漏洩していたのではと疑われている。
長期間服用している人が腎臓への影響がでているので、問題は最近に限った話ではない。
既に去年の内から、なんらかの情報が入り始めていたとしても不思議ではない。
となると、早い段階で情報が分かっており、しかもそれが深刻な問題に発展する可能性があることも認識していたことを疑わせる。
これは、今後、対応を間違えると企業の存続にかかわる事態に発展する恐れがある。
2024年03月30日
2024年03月27日
偽情報に脆弱な日本人:読売新聞特集記事
読売新聞で「情報偏食」という連載記事が続いている。
26日の記事は日本人は偽情報に脆弱というもの。
日米韓で情報との向き合い方をアンケート調査の結果が報告されている。
情報に接した時、1次情報に遡って確認する割合が日本は最も低く、偽情報を「誤り」と判断できた割合も最低だったという。
日本人はネット情報に対して無防備な実態が浮き彫りになった。
面白いのは、デジタル空間の特性を理解するためのキーワードの認知度が米韓に比べて極端に低いという調査結果だ。
「アテンション・エコノミー」「フィルターバブル」「エコーチェンバー」という言葉、日本人の認知度はいずれも数%にとどまるが、米韓ではいずれも数十%の認知度になっている。
「アテンション・エコノミー」とは、記事や投稿に過激な見出しを付けて関心を引き付け、アクセスを増やせば広告収入が得られる仕組みのこと。
いかにキャッチ―なフレーズで注目されるかだけが目的となり、内容の真偽や重要性がないがしろにされる。
「フィルターバブル」とは、SNS上では、利用者の関心や興味に合わせてお勧めの情報をアップするようにアルゴリズムが設計されているため、受け取る情報が偏ること。
だから、受け身で目の前に現れる情報に接していると、同じような情報ばかりに接し、それ以外の世界があることに気づかなくなってしまう。
特定の情報しか透過しないバブルの中に閉じ込められている状況をイメージした言葉。
「エコーチェンバー」とは、SNS上では、自分と同じ趣味や意見を持つ人とつながりやすく、それ以外の人物との接触が途絶すること。
閉じた空間の中では仲間内で共感を呼び盛り上がるので、狭い空間で音が反響する現象になぞらえた言葉。
このような現象は、別にSNSに限定したものではない。
ネットが発達する以前から人間社会では当たり前に起きていたこと。
「確証バイアス」という心理学用語がある。
これは、仮説や信念を検証する際に、それを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視したり集めようとしない傾向のことを指す。
そのために、情報収集すればするほど、その人の仮説や信念を確証するようになる。
間違った認識を持っている人は、その確信をますます強めてしまうというわけだ。
これが極端に表れるのが、SNSの世界だ。
「アテンション・エコノミー」「フィルターバブル」「エコーチェンバー」という言葉の認知度が日本だけ極端に低いのは、たぶん、メディアに取り上げられることが少ないからだろう。
これらの言葉は、自分で意識して探索しようとしなければ、接する機会がない。
日本人の情報特性は受け身型になってしまっているために、向こうから飛び込んでくる情報でなければ、知らないまま終わってしまうのだ。
まさに、フィルターバブルの中に閉じ込められている状態。
いま、電車に乗って気づくのは、誰もがスマホを見ていること。
寸暇を惜しんで情報収集しなければならないような切迫した状況でもあるのか、と問いたくなる。
だが、何もせずにぼーっとしているようだったら、情報収集したほうがいいというのがコスパの考え方だろう。
1時間ドラマを1.5倍速で再生し、乗車中に見ることができてしまえば、家に帰ってからはその1時間を別のことに使うことができる。
これも合理的な考え方かもしれない。
最近の若者は、行列を作ることが苦にならないという。
有名店の開店前から何時間も並んでいる。
その間に何をしているかというと、スマホで好みのコンテンツを楽しんでいるのだ、
行列しながらコンテンツを楽しめるのだから、一挙両得。
これほどコスパのいいことはない。
だが、彼ら彼女らは、いつ自分の頭で考えるのだろうか、と心配になる。
スマホを開けば、常に何か新しい情報がそこにある。
いつも、受け身で情報に晒されている。
それを永遠に続けている。
思考力と判断力が衰えていくのは目に見えている。
以前、別の調査結果でこんなものがあった。
ネットでSNSに接する時間の長い人ほど、自分が不幸だと感じている人が多いというアンケート結果があったという。
ネット上では、他の人たちの楽しそうな日常を目にすることが多い。
「〇〇に行ってきました」「〇〇で○○を楽しんできました」「○○と一緒に〇〇を食べました」
みんなが日常のたわいもない写真をアップしているが、いずれも楽しそうで幸せそうだ。
それを見せられると、自分はそこまで幸せではないように感じてしまうのだろう。
ネットで情報収集する人ほど、自分以外がみんな優秀に見え、自信を失っていく。
この現象もネーミングが必要だ。
「バーチャル・ミスフォーチュン(不幸幻想)」といった感じか。
26日の記事は日本人は偽情報に脆弱というもの。
日米韓で情報との向き合い方をアンケート調査の結果が報告されている。
情報に接した時、1次情報に遡って確認する割合が日本は最も低く、偽情報を「誤り」と判断できた割合も最低だったという。
日本人はネット情報に対して無防備な実態が浮き彫りになった。
面白いのは、デジタル空間の特性を理解するためのキーワードの認知度が米韓に比べて極端に低いという調査結果だ。
「アテンション・エコノミー」「フィルターバブル」「エコーチェンバー」という言葉、日本人の認知度はいずれも数%にとどまるが、米韓ではいずれも数十%の認知度になっている。
「アテンション・エコノミー」とは、記事や投稿に過激な見出しを付けて関心を引き付け、アクセスを増やせば広告収入が得られる仕組みのこと。
いかにキャッチ―なフレーズで注目されるかだけが目的となり、内容の真偽や重要性がないがしろにされる。
「フィルターバブル」とは、SNS上では、利用者の関心や興味に合わせてお勧めの情報をアップするようにアルゴリズムが設計されているため、受け取る情報が偏ること。
だから、受け身で目の前に現れる情報に接していると、同じような情報ばかりに接し、それ以外の世界があることに気づかなくなってしまう。
特定の情報しか透過しないバブルの中に閉じ込められている状況をイメージした言葉。
「エコーチェンバー」とは、SNS上では、自分と同じ趣味や意見を持つ人とつながりやすく、それ以外の人物との接触が途絶すること。
閉じた空間の中では仲間内で共感を呼び盛り上がるので、狭い空間で音が反響する現象になぞらえた言葉。
このような現象は、別にSNSに限定したものではない。
ネットが発達する以前から人間社会では当たり前に起きていたこと。
「確証バイアス」という心理学用語がある。
これは、仮説や信念を検証する際に、それを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視したり集めようとしない傾向のことを指す。
そのために、情報収集すればするほど、その人の仮説や信念を確証するようになる。
間違った認識を持っている人は、その確信をますます強めてしまうというわけだ。
これが極端に表れるのが、SNSの世界だ。
「アテンション・エコノミー」「フィルターバブル」「エコーチェンバー」という言葉の認知度が日本だけ極端に低いのは、たぶん、メディアに取り上げられることが少ないからだろう。
これらの言葉は、自分で意識して探索しようとしなければ、接する機会がない。
日本人の情報特性は受け身型になってしまっているために、向こうから飛び込んでくる情報でなければ、知らないまま終わってしまうのだ。
まさに、フィルターバブルの中に閉じ込められている状態。
いま、電車に乗って気づくのは、誰もがスマホを見ていること。
寸暇を惜しんで情報収集しなければならないような切迫した状況でもあるのか、と問いたくなる。
だが、何もせずにぼーっとしているようだったら、情報収集したほうがいいというのがコスパの考え方だろう。
1時間ドラマを1.5倍速で再生し、乗車中に見ることができてしまえば、家に帰ってからはその1時間を別のことに使うことができる。
これも合理的な考え方かもしれない。
最近の若者は、行列を作ることが苦にならないという。
有名店の開店前から何時間も並んでいる。
その間に何をしているかというと、スマホで好みのコンテンツを楽しんでいるのだ、
行列しながらコンテンツを楽しめるのだから、一挙両得。
これほどコスパのいいことはない。
だが、彼ら彼女らは、いつ自分の頭で考えるのだろうか、と心配になる。
スマホを開けば、常に何か新しい情報がそこにある。
いつも、受け身で情報に晒されている。
それを永遠に続けている。
思考力と判断力が衰えていくのは目に見えている。
以前、別の調査結果でこんなものがあった。
ネットでSNSに接する時間の長い人ほど、自分が不幸だと感じている人が多いというアンケート結果があったという。
ネット上では、他の人たちの楽しそうな日常を目にすることが多い。
「〇〇に行ってきました」「〇〇で○○を楽しんできました」「○○と一緒に〇〇を食べました」
みんなが日常のたわいもない写真をアップしているが、いずれも楽しそうで幸せそうだ。
それを見せられると、自分はそこまで幸せではないように感じてしまうのだろう。
ネットで情報収集する人ほど、自分以外がみんな優秀に見え、自信を失っていく。
この現象もネーミングが必要だ。
「バーチャル・ミスフォーチュン(不幸幻想)」といった感じか。
2024年03月26日
大谷投手の記者会見:不正アクセスの疑問が残る
ドジャース・大谷翔平投手は25日午後2時45分(日本時間26日6時45分)、
水原一平通訳が違法賭博問題で解雇された件に関して、声明文を発表した。
記者会見という形式だったが、質疑応答はなく、用意された主張を一方的に表明しただけなので、実質「声明文の発表」となった。
結論は、「スポーツ賭博に関与も送金していた事実はない」「水原氏が口座から金を盗み、嘘をついていた」という2点。
日本では大谷投手に同情的な報道が多かったが、アメリカメディアの中には、「オオタニが主犯で、通訳はいけにえにされたのでは」という疑惑が上がっていた。
まずは、その疑惑を全面否定するために行われた会見だったようだ。
だが、その内容は、いままで代理人が発表していたストーリーを大谷投手の言葉で詳しく説明し直しただけのもので、新たな発見はほとんどない。
たぶん、事前の打ち合わせが綿密に行われていたのだろう。
これで疑惑は払拭されたかというと、ほど遠い。
自らの言葉で語ったということで、人柄の良さが実感され、ファンにとっては高評価の会見だった。
だが、肝心の疑惑が残ってしまったという点では残念な会見だった。
なぜアメリカメディアで「オオタニが主犯ではないのか」という疑惑が持ち上がったのかというと、別にアジア人の活躍を快く思わない人が言いがかりをつけているわけではない。
他人が不正にアクセスして高額の送金を何度も繰り返すことができてしまったことが不自然だからだ。
いまは、マネーロンダリングの警戒から、高額送金については金融機関は何重ものセキュリティチェックを設けており、正規の送金でも手続きは面倒なことこの上ない。
なのに、水原氏は堅牢なセキュリティを突破し、本人に気づかれないように高額送金を繰り返すことができたという。
そんなことは不可能だろう、と考えるのが常識だ。
だから、「オオタニが主犯」という疑惑が持ち上がったのだ。
ということは、「僕は何も知らない」ということをいくら繰り返しても、疑惑の払拭にはつながらない。
大谷投手も同じ疑問を持ったのなら、「いま銀行側に問い合わせている」という言葉があってしかるべきだった。
水原氏が不正アクセスできた理由を知りたいと多くの人が思っている。
この知りたいというのは、単に興味本位で真相を暴きたいという意味ではない。
これが、例えば銀行側のセキュリティに誰も知らない重大な穴があり、そこを突破された、というのなら、これは一人のスポーツ選手の話にとどまらず、社会全体に影響の及ぶ問題になるからだ。
そうではなくて、事前に代理人登録してあって、登録代理人なら本人に代わって50万ドルまでネット送金できるシステムを悪用されたというのであれば、そのような説明をひとことするだけで済む話だ。
(この場合は、窃盗ではなく、横領になるが)
大谷投手の会見では、不正アクセスの疑問について触れることがなかった。
ということは、大谷投手がそこに疑問を感じていないか、弁護士に言及を止められているのか、どちらかだろう。
政治家の不祥事だったら、秘書のせいにして逃げようとするのをメディアは許さない。
だが、今回のスキャンダルは、アメリカのメディアが沈黙すれば話題が遠のき、みんなが興味を失ったところで収束しそうだ。
水原一平通訳が違法賭博問題で解雇された件に関して、声明文を発表した。
記者会見という形式だったが、質疑応答はなく、用意された主張を一方的に表明しただけなので、実質「声明文の発表」となった。
結論は、「スポーツ賭博に関与も送金していた事実はない」「水原氏が口座から金を盗み、嘘をついていた」という2点。
日本では大谷投手に同情的な報道が多かったが、アメリカメディアの中には、「オオタニが主犯で、通訳はいけにえにされたのでは」という疑惑が上がっていた。
まずは、その疑惑を全面否定するために行われた会見だったようだ。
だが、その内容は、いままで代理人が発表していたストーリーを大谷投手の言葉で詳しく説明し直しただけのもので、新たな発見はほとんどない。
たぶん、事前の打ち合わせが綿密に行われていたのだろう。
これで疑惑は払拭されたかというと、ほど遠い。
自らの言葉で語ったということで、人柄の良さが実感され、ファンにとっては高評価の会見だった。
だが、肝心の疑惑が残ってしまったという点では残念な会見だった。
なぜアメリカメディアで「オオタニが主犯ではないのか」という疑惑が持ち上がったのかというと、別にアジア人の活躍を快く思わない人が言いがかりをつけているわけではない。
他人が不正にアクセスして高額の送金を何度も繰り返すことができてしまったことが不自然だからだ。
いまは、マネーロンダリングの警戒から、高額送金については金融機関は何重ものセキュリティチェックを設けており、正規の送金でも手続きは面倒なことこの上ない。
なのに、水原氏は堅牢なセキュリティを突破し、本人に気づかれないように高額送金を繰り返すことができたという。
そんなことは不可能だろう、と考えるのが常識だ。
だから、「オオタニが主犯」という疑惑が持ち上がったのだ。
ということは、「僕は何も知らない」ということをいくら繰り返しても、疑惑の払拭にはつながらない。
大谷投手も同じ疑問を持ったのなら、「いま銀行側に問い合わせている」という言葉があってしかるべきだった。
水原氏が不正アクセスできた理由を知りたいと多くの人が思っている。
この知りたいというのは、単に興味本位で真相を暴きたいという意味ではない。
これが、例えば銀行側のセキュリティに誰も知らない重大な穴があり、そこを突破された、というのなら、これは一人のスポーツ選手の話にとどまらず、社会全体に影響の及ぶ問題になるからだ。
そうではなくて、事前に代理人登録してあって、登録代理人なら本人に代わって50万ドルまでネット送金できるシステムを悪用されたというのであれば、そのような説明をひとことするだけで済む話だ。
(この場合は、窃盗ではなく、横領になるが)
大谷投手の会見では、不正アクセスの疑問について触れることがなかった。
ということは、大谷投手がそこに疑問を感じていないか、弁護士に言及を止められているのか、どちらかだろう。
政治家の不祥事だったら、秘書のせいにして逃げようとするのをメディアは許さない。
だが、今回のスキャンダルは、アメリカのメディアが沈黙すれば話題が遠のき、みんなが興味を失ったところで収束しそうだ。