兵庫県議会から不信任決議を受け失職した斎藤元彦前知事が出直し選で再選。
昨日20時の投票終了時間直後に「当選確実」を報じたテレビ局があった。
それに刺激されたように、他局も次々と当確を打っていった。
NHKだけは慎重だった。
10時10分に中間の集計が発表されたが、それでも慎重だった。
NHKが当確を報じたのは23時過ぎ。
既に斎藤氏の勝利宣言が済んだ後だった。
新聞やテレビ報道は驚きをもってトップニュースで報じている。
注目は、なぜあれほど不人気だった斎藤氏が当選したのか、というマスコミの解説だ。
というのは、斎藤知事はマスコミ報道によって、ものすごい逆風にさらされていたからだ。
職員への「パワハラ」や外部業者に対する「おねだり」や「キックバック」、更に内部告発者への不当な圧力で自殺に追いやったことなど、一方的な報道洪水によって、斎藤氏のイメージは地に落ちていた。
普通に考えれば、その斎藤氏が当選できるわけがない。
どうして斎藤氏は当選したのか、これはマスコミがまず分析し、解説しなければならないところだ。
いまのところ、この分析をしっかりできているマスコミはない。
「候補者が乱立して、反斎藤票が分散した」
「政党の支持があいまいで反斎藤の候補に強力なバックアップができなかった」
「斎藤陣営はSNSを駆使して、ネット世論を盛り上げることに成功した」
斎藤氏勝利の理由づけに苦労している様子が見える。
産経新聞は記事の中でこんな言葉で分析を締めくくっている。
「今回は知事の資質だけでなく、既成政党の存在意義も問われる選挙だったといえる」
政党の対応がバラバラだったために「四面楚歌だった斎藤氏の猛追を許した」と結論づけているのだ。
まるで政党がだらしないために「斎藤氏の再選」なんてあってはならないことが起きてしまったかのようだ。
だが、この分析は本質をわざと隠している。
今回の選挙で問われたのは、既成政党の存在意義ではなく、マスコミの存在意義だろう。
SNSで斎藤支持が盛り上がったのは、単に話題作りに成功したためではない。
大手メディアが、県民が本当に知りたがっている大事な情報をしっかり報じないことが原因だ。
当初は、マスコミの報じる情報洪水の中、斎藤知事への不信感が蔓延していた。
ところが、斎藤氏自身がかたくなにパワハラを否定し続けたこと、告発者への処分を正当だったと主張し続けたこと、そして、斎藤氏の見るからに繊細で優しそうな風貌から、違和感を覚える人々が出てきた。
決定的だったのは、失職の後、次の知事選に再出馬すると表明したこと。
誰もが当選の可能性がない無謀な挑戦だと思った。
ところが、斎藤氏がひとりで駅頭に立ち、深々と頭を下げ続ける姿を見て、印象が変わり始めた。
これまで報じられてきた内容を思い返すと、「不正を働いた」とか「公金を横領した」とか、明らかな犯罪はなかったし、私欲のために県政をゆがませたような話もなかった。
県職員を厳しく叱責したというだけだ。
あの優しそうな斎藤氏が厳しく叱責するぐらいだから、むしろ県職員の働きが悪すぎたのではないのか。
叱責された職員が腹いせに告発文をマスコミや議員らにばらまいたのではないのか。
という疑問が浮かぶ。
そこに、ネット上で影響力のあるユーチューバーが呼応し、疑問を発し始めた。
更に、フリーのジャーナリストが応じ、ついにNHK党の立花氏が動くに至った。
なんと、立花氏は県知事選に立候補し、発信力の弱い斎藤氏を助けるために選挙活動を始めたのだ。
立花氏の発信力が抜群で、すぐにネット上の注目を集めた。
そうなると、関係者しか知らないような情報が続々と彼のもとに集まるようになる。
それを立花氏はためらいもなくネット上にアップし、街頭演説で披露し、さらには政見放送の中で暴露する。
その中で、県民局長の死は、斎藤知事の圧力が原因ではなく、プライベートの事情に起因するものであることをぶちまけた。
この情報に接し、いままで違和感を覚えてきたもやもやとしたものが一気に晴れた。
それで、ネット上で斎藤支持の世論が急速に拡大していったのだ。
告発文を作成した県民局長の使用していた公用パソコンの中身に、自殺の原因かもしれないプライベートの情報が記録されていたが、それを百条委員会で公表を無理やり差し止めていることが分かる音声情報が流出。
更に、副知事がマスコミの囲み取材を受けたときに、プライベート情報の存在を述べようとするのを、記者らが無理やり静止した音声まで流出。
マスコミの記者が取材対象者の発言を封じようとする異様な光景だった。
議会やマスコミが総ぐるみで大事な情報を隠そうとしているのではないか、マスコミはすべての事情を分かった上で、世論を特定の方向にもっていこうとしているのではないか、との疑念が噴出。
ネット世論の沸騰に拍車をかけた。
ネット世論の呼びかけは、「マスゴミに騙されるな。斎藤さんを守れ」だった。
今回の選挙は、既成政党が敗北したのではない。
大手マスコミがネット世論に敗北した事例だ。