企業のパンデミック対策、新型インフルエンザ対策は、ブレーンストーミングから始めるべきだ。
BCP(事業継続計画)の策定に失敗する理由は、3つある。
1.経営者や主要幹部が関与せず、総務部の1担当者が一人で作っている。
2.定型的なテンプレートに、いきなり記入し始める。
3.社外のどこかに先行事例やお手本があり、それをコピーしようとする。
1の理由は深刻で、これはBCPが途中で頓挫して完成に至ることがない。
それは、BCPは1担当者レベルで解決する内容ではないからである。
最近もある流通業者のBCP策定のお手伝いをしたが、そこも、総務部の平社員がBCPの策定を任されていた。
直属の上司は相談には乗ってくれる程度、社長はまったく内容にはノータッチ。
この総務の平社員が一人であれこれ悩みながら作っているのだ。
中核事業は何か。
重要な経営資源は何か。
目標復旧時間はどうするか。
こんな重要な内容を、平社員が悩みながら決めているのだ。
緊急連絡網の整備とか、避難経路の確認などという防災対策レベルの話であれば、総務の1担当者で十分だろう。
しかし、BCPは経営の根幹にかかわる内容を含んでいる。
明らかに1担当者の範囲を超えている。
その担当者は、
「考えれば考えるほど、難しい話が出てきて、どうすればいいのかわからなくなる」
と嘆いていた。
当たり前だ。
「BCPは本来、社長が主導で作るもの。少なくとも重要幹部が関与しなければ、まともに作れるはずがない」
と伝えた。
しかし、社長は忙しくて時間が取れない。
主要幹部も、重要な案件を抱えて忙しく飛び回っている。
とても、BCPをゆっくり考えているひまがない。
「ある程度形ができたところで、役員会にあげて承認を得るつもり」
と、その担当者は言っていた。
BCP策定は遅々として進まず、ある程度形ができるのはいつになることやら。
どうやら、その担当者も、真剣にBCPに取り組もうという気概はないらしい。
社長も上司も無関心のまま、マイペースでBCP策定作業を進められている現状が心地いいようだ。
社長や幹部を巻き込むと、要求レベルが厳しくなって、自分の業務負担が増える。
どうも、それを恐れているようだ。
次に多い失敗は、定型的なテンプレートに必要事項を記入すればBCPが出来上がると思っているケースだ。
BCPのテンプレートは、それほど分量は多くない。
特別複雑なものがあるわけでもない。
内容はいたって単純。
しかし、本当は、このテンプレートに情報を書き込むまでの検討過程が重要なのだ。
会社として検討しなければならない重要なことが山ほどあるからだ。
その膨大な検討過程を経て、初めて1つの答えが出る。
BCP文書にはその答えだけを書くので、結果だけを見ると、簡単な文書類に見えるのだ。
BCP文書を作成するのは、最終結果ではあるが、それは目的ではない。
その次に多いのは、社外に理想的なBCPのお手本があると思っているケースだ。
いきなりBCP文書を作り始めると、何を書いていいかわからないところだらけだ。
それで、どう書いたらいいのか、見本が見たくなる。
理想的なお手本があれば、それをそっくり移せば、それなりの形ができるのではないかと考えていたりする。
一番困る依頼は、他社さんのBCPを見せてもらえないか、というものだ。
BCPのお手本というものはない。
他社のBCPは、最高機密文書であり、他人に見せられるものではない。
完璧なBCPはありえず、その会社が独自に最善を目指してバージョンアップしていくもの。
会社外部に理想的なBCPが存在するということがそもそも幻想である。
これは、パンデミックBCPでも同じ。
新型インフルエンザ対策は企業として何をしたらいいか答えを知りたいという要望が多い。
しかし、考え方をアドバイスすることはできても、答えをお教えすることはできない。
答えは、あくまでも企業の経営者が考えることだからである。
パンデミックBCPに取り組むにあたっては、いきなり文書を作り始めるのではなく、まずは、パンデミックになった時、世の中で何が起き、この会社にどのような影響を及ぼすのか、ということをブレーンストーミングで情報を出し合うことだ。
ブレーンストーミングをすることで、問題点や、取り組むべき課題が明確になる。
社内で、パンデミックに対する共通認識を得ることが最大の効果だ。
これができていれば、結論を出すのは簡単。
結論が出れば、それを文書にまとめるだけ。
2008年12月16日
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