2009年05月09日

マスコミ対応のデタラメ:最後のパレード盗作疑惑

 「最後のパレード」の出版偽装事件。
 出版業界が、著作権法違反と表題の偽装表示についてどう対処するのかについて注視してきた。
 出版社が流通在庫を回収することでひとまず決着となりそうだ。
 出版社側の対応のだらしなさが、問題を大きくし、引き伸ばしてしまった感じである。
 著作権侵害という法律違反を含んでいるだけでなく、うその表題や売り文句で読者を騙そうとした表示偽装を含んでいたことが、今回の特徴であった。
 最近の書籍は、内容よりも大げさな表題と張ったりの売り文句で売りつけようとする傾向が目立つが、今回のような明らかなウソには読者が黙っていなかったということだろう。
 やはり、消費者をだました報いは重い。

 ところで、今回の事件で、もうひとつ特徴的なのは、著者の事後対応の不思議さだった。
 事件発覚後の著者の対応ぶりは、理解を超えるものだった。
 一度も自らの非を認めず、自己弁護に終始した。
 公式には謝罪の言葉はひとつもない。
 それどころか、盗用疑惑を報道した読売新聞や日本テレビを悪しざまにののしるなど、世論に挑戦的な言動が目立った。
 まるで、わざと刺激的な言動を続けることで、世間の注目を集め、ネット上の騒ぎが大きくなることを楽しんでいるかのようだった。

 その不思議な謎が解けた。
 本日の著者のブログにその答えが公表されている。

http://gpscompany.blogdehp.ne.jp/article/13447951.html

 彼は、危機管理の専門家を自認しているようだ。
 で、緊急事態におけるマスコミ対応のノウハウも持っているそうである。
 その有料のノウハウを特別に無料で公開している。
 そのレポートを読んでびっくり。
 なんと、彼はいままで、適切なマスコミ対応をしているつもりだったのである。

 このレポートは、冗長な文章でポイントを把握するのに骨が折れるが、緊急時のマスコミ対応の要点として、次のようなことを言いたいらしい。

1.トラブルは想定していた範囲内であること。
2.トラブルが拡大することはないこと。
3.これらを、迅速に表明する。

 なるほど、著者が事件発覚後に取ってきた不思議な態度は、このノウハウ通りだったことがわかる。
 「盗用疑惑が持ち上がることは前もってわかっていたので、事前に出版社側と対応を協議していた」と言っていたのは、このトラブルは想定の範囲内ということを言いたかったのだ。
 「著作権者からの申し出があり次第、誠実に対処する」というのは、トラブルがこれ以上拡大することはないことの表明だったのだ。

 で、結果、どのようになったか。
 すべて、裏目に出て騒ぎを大きくしただけである。
 
 結論から言う。
 このやり方は、不祥事のマスコミ対応としては、最悪である。
 典型的な失敗パターンをそのままトレースしてしまったと言っていい。
 
 「想定の範囲内で大したことはない」と表明することは、騒ぎを鎮静化するためについついやってしまいがちだが、対応としては逆効果だ。
 なぜなら消費者の不安や不満を理解しない態度だからである。
 このような態度は、消費者を無理解な素人と見下すような姿勢が見え、感情的な対立をもたらしてしまう。

 事故米の不正流通が発覚したとき、農水大臣が「この程度のことは何も問題ないので、われわれは騒いでいない」と無神経な発言をしたことで、国民の不信感を増大させた。
 船場吉兆が客の食べ残しを使いまわしていた不祥事では、「食べ残しではなく、手つかずのお料理をもったいないので使ったと言ってください」と口を滑らせ、信用は地に落ちた。 
 今回の出版偽装における著者の対応も全く同じパターンである。
 いずれも、消費者の感じている問題の深刻さをまったく理解しない態度が、不信感を増大させた事例だ。

 つづいて、早期に騒ぎを鎮静化させたい焦りから、実態解明をしないうちから、問題がこれ以上拡大することがないと宣言してしまうのも、よくある間違いである。
 なぜなら、これは口先だけでその場限りの対応をしているのが明らかだからだ。

 赤福の食品偽装が発覚したとき、当初は冷凍在庫を出荷した日を製造日としていたことが問題となった。
 記者会見で、それ以上の不正はないかと問われた社長は、「ありません」と答えた。
 後日、売れ残り商品の包装を巻き直しして製造年月日を改ざんしていたことが発覚。
 さらに後日、売れ残り商品の原料再利用が発覚。
 再利用は1割と会見で説明したが、後日、9割が再利用されていたことが発覚。
 これは、騒ぎを早期に鎮めようとするあまり、問題はこれ以上ないと安易な記者会見を繰り返してしまったことで、却ってダメージを深くした事例だ。
 
 今回の出版偽装も、著者が「著作権者に事後承諾をもらうので問題ない。マスコミや世論は騒ぎすぎだ」と表明しつづける一方で、ネット上では、盗用の事実が次々に暴かれ、内容のほとんどがパクリと勝手な改変によるものであることが明らかになっていった。
 
 彼があげるマスコミ対応のノウハウがデタラメであることは、結果が証明している。
 何をもって危機管理の専門家を自認しているのかが新たな謎である。

 本当の危機管理では、不祥事のマスコミ対応のポイントは次の3つ。

1.実態の解明(何がどうなっているのか)
2.原因の追及(どうしてそうなったのか)
3.再発の防止(今後どうするのか)

 これらを、「迅速に」「正確に」「詳細に」伝え、責任の所在を明確にすることである。

 著者はどれ一つできていなかった。
 だから、読者(消費者)の不信感を増大させ、騒ぎが大きくなったのである。
 
  
posted by 平野喜久 at 22:44| 🌁| Comment(1) | TrackBack(1) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 はじめまして、以前自分のブログで感想を書いた『最後のパレード』の本について、事実関係等を検索していたらば、貴ブログへたどり着きました。
文章だけを読んだらば、私は読んだとき素直に感動いたしました。
パクリ問題も、ただ注釈が小さかっただけだったのだと勝手に解釈していましたが、こちらの記事を読んで、文章の誇張、マスコミへの著者の無責任な対応、何よりこの本によって、悲しんでいる個人、団体がいることを認識することがようやくできたので、この本の感想は否定する気持ちが整いました。
参考にさせて頂きました。
ありがとうございます。
Posted by えり at 2009年05月10日 03:43
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こんなものが有料?中村克氏が売っていた品の無いノウハウ。
Excerpt: 品どころか、効果も全くない。 最後のパレード盗用問題の張本人である中村克が、本来は有料のノウハウを「家族を守るため」に公開するとして、ブログに掲載している。 マスコミ対策は準備が必要 http:/..
Weblog: 頭に汗をかく……だけで済ませていないか?
Tracked: 2009-05-10 21:31