8月27日に口蹄疫が終息した。
今回の口蹄疫は被害の大きさが特徴だった。
10年前の口蹄疫では、殺処分の対象となった牛は宮崎県で僅か35頭だったが、今回は牛や豚などを含めて28万頭にも上る。
なぜ、これほどまで被害が拡大してしまったのか。
検証は今後行なわれるのだろうが、今のところわかる範囲でまとめておく。
今回の口蹄疫がこれほど被害が拡大したのは、ブタに感染したせいだと言われる。
豚はウィルスの増殖が急激で、牛の100倍から1000倍の勢いがあるらしい。
これが急速な感染拡大を引き起こしたのではないかとされる。
だが、これは、現象面の分析にすぎない。
危機管理の視点から今回の災害を検証していくと、次の3つ原因が浮かび上がる。
1.口蹄疫の世界的感染拡大の状況を見誤った。
口蹄疫は日本で突然発生したわけではない。
アジア地域を中心に全世界で発生している状況だった。
隣の韓国でも発生が確認されており、日本上陸は目前だった。
リスクは高まっているのに、状況の応じた危機対策が取れていなかった。
2.10年前の成功体験から危機意識が薄かった。
2000年にも宮崎で口蹄疫が発生しているが、小規模の被害で終息させることができた。
たまたま零細農家からの発生だったこと、豚への感染がなかったことなどが幸いした。
この偶然の成功体験が、「今回も大したことはないだろう」という関係者の危機意識の欠如につながった。
3.感染拡大より風評被害の防止が優先された。
県や国は、変に慌てた対応をすると、そのことが地域住民や国民に不安感を与え、風評被害をもたらすことを恐れていた。
これが、初動対応の緩慢さにつながった。
この風評被害の防止が優先されたというのが曲者だ。
これは、言ってみれば、ことを荒立てないように穏便に済ませようとした、ということだ。
つまり、根本的な対策を施そうというのではなく、目先の騒ぎが起きないようにするだけなのだ。
特に、この時期の民主党は、普天間基地の問題がこじれて支持率が急落しているときだった。
それだけに、これ以上やっかいな問題を抱えたくなかったのだろう。
口蹄疫問題を必要以上にクローズアップしたくないという意識があったのに違いない。
これが、初期対応を遅らせ、被害拡大につながった。
赤松農水相はただちに現地に向かおうとしなかった。
農水相が動くことで世間を口蹄疫に注目させてしまう。
世間が注目すると、それに乗じた自民党からの民主党に対する追及が厳しくなる。
必要以上に世間を騒がせることを避けたかった。
それで、外遊も予定通り出かけ、何でもないことのようにふるまったというのが真相のようだ。
これでは、対応が後手後手になるはずである。
なんとも本質を見失った小手先の対応だ。
鳩山総理も、「風評が立つと農家の方々が大変困られるという状況があった」と言い訳している。
風評被害にかこつけて、行動を起こせなかった弁解をするのが見苦しい。
単に危機意識が低かっただけだろう。
総務相からは報道各社に風評被害防止を名目に報道自粛要請があったようだ。
これも風評被害防止が名目ではあるが、要は「マスコミは騒ぐな」という指示である。
このため、私たちは、ゴールデンウィークが明けるまで、ほとんど口蹄疫の報道に接するチャンスがなかった。
民主党の行動の鈍さに気づくこともなかった。
以上、今回の対応のまずさの最大のものは、目先の騒ぎを大きくしないことばかりに気を使い、本質的な対策を迅速に実行できなかったことだ。
危機管理の稚拙な内閣らしい対応である。
2010年09月30日
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