2011年07月17日

著作権無視の出版は許されるのか:片岡K『ジワジワ来る○○』

 またまた、著作権を無視した乱暴な出版物が登場。

『ジワジワ来る○○(マルマル)』(アスペクト)

 片岡K氏が、自身のTwitter上でネットから拾った面白画像に"ジワジワ来る"とコピーを付けてアップしていたものを一冊にまとめた本。
 すべてネット上で拾い集めた面白い写真。
 もちろん、写真の著作権はその写真を写した人にある。
 だが、ネット上に出回っている写真は、もはや著作権者が誰か分からない状態にある。
 著作権者に確認しようとしても、できない。
 それで、「ネット上に公開されている写真は、みんなの物」という勝手な解釈で、著作権の問題を振り切ろうとしているようだ。
 「もしも、著作権者がいたら、名乗り出てほしい」とも言っているという。

 ネット上で拾ってきた他人の物を自分の著作物として売ることが許されるのか。
 著作権侵害は、親告罪なので、著作権者が直接訴えない限り犯罪は問われない。
 著作権者がいちいち名乗りを上げることはないだろうと高をくくって、なめているのだろう。
 万が一、著作権を名乗るものが現れたとしても、本当にその人が著作権保有者かどうかは分からない。
 明らかな証拠を提示してきたとしても、たった1枚の写真の著作権の話なので、内々の話し合いの中で決着をつけられる、と踏んでいるのだろう。

 更に問題なのは、取り上げられている写真には人物の写っているものが多数含まれている。
 その肖像権はどうなっているのか。
 この本は、著作権を無視しているうえに、肖像権にも無頓着だ。

 写真の著作権は写した人にあるが、肖像権は写っている人にある。
 写真をネット上にアップした著作権者も、肖像権を無視しているのかもしれない。
 となると、著作権者はますます名乗りにくくなる。
 こういう事情も承知で、この本の著者や出版社は、訴えられることはないと安心していられるのだ。

 2009年に「最後のパレード」というベストセラーが、著作権の問題で廃刊に追い込まれた事件があった。
 ディズニーの元キャストが自ら体験した取っておきの「いい話」を集めた本。
 だが、ほとんどがネットの掲示板から拾い集めたエピソードであることが後でばれた。
 中には、別の遊園地のエピソードをディズニーランドに置き換えて勝手に創作していたことも発覚。
 著者と出版社は「ネット上の文章には著作権はない」との主張をする一方、「著作権者は名乗り出よ」と、今回と同じことを言っていた。
 だが、他人の文章を自分の著作であるかのように偽装して売る行為そのものの倫理性を問われ、ついに店頭から姿を消した。

 今回の写真集は、すべてネット上で拾ってきたと開き直っているところが違う。
 世の中に堂々と挑戦しているようだ。

 この著者と出版社は、このような問題が持ち上がるのは先刻承知。
 この騒ぎが本の注目を集め、売上に貢献するということまで計算しているのかもしれない。

 この著作が、ネット上に公開されているものであり、紹介されている写真の取得元のリンクを添えているのだったら、問題は軽いだろう。
 その著作は、単なるリンク集のようなものであり、閲覧者は、写真の出典元をたどれるからだ。
 だが、書籍になった途端、出典元とのリンクは切れてしまう。
 書籍には、その写真がどのサイトから拾ってきたのかは明かされていない。
 読者は、出典元をたどりようがないのだ。

 「著作権者を捜しようがないから」と言っているが、本当にそうか。
 本当に著作権者を探そうと思ったら、可能だ。
 その写真を公開しているブログやウェブサイトの管理者に、画像の出所を確認すればいい。
 その管理者もどこかから拾ってきたものを載せているだけだったら、さらにその先をたどっていけばいいのだ。
 こまめにやっていけば、必ずどこかにたどり着く。
 著者はこのような努力をした形跡はない。
 著作権者を捜しようがないのではなく、探すのが面倒なだけなのだ。
 本当の著作権者にまでたどり着けなくても、「この写真については、このサイトが最初の出典元であることまでは判明したが、その先はいまのところ不明」との説明書きでもあれば、印象はだいぶ違うだろう。

 ネット上の面白いコンテンツを拾い集めて出版物を作るというのは、一番安易な方法。
 初めから手抜きをしようとしているのだから、著作権者を探すなんて面倒なことをするつもりは、初めからない。
 
 それにしても、著作権者の探索を怠り、「著作権者がいたら名乗り出よ」とは、勘違いも甚だしい。
 これは、著者ひとりの勘違いではない。
 最大の問題は、出版社とグルだということだ。
 出版社も安易なヒット作の誘惑に勝てなかったか。
 出版社は、コンテンツ産業である以上、著作権には最も慎重でなければならないはず。
 これは、食品会社が衛生管理に一番神経質になるのと同じだ。
 出版社が、著作権をないがしろにしたら、自らの事業基盤を否定しているようなものではないか。 
 
 出版業界は、これを許すのか。
 読者(消費者)は、これを許すのか。



 やはり、著者自身も、やや後ろめたさがあるのだろう。
 予想される批判に対して、本書のはしがき部分で弁明を用意している。
 写真はネットで拾ったものだが、この本は自分の著作物だと言い張っている。
 その理屈が、自分勝手で非常に幼稚。
 まともに一般社会で通用するものではない。
 著者は本当に社会人か。
 小学生レベルの社会性しかないように見える。
 ますます、これを放置しておいてはいけないだろう、という印象を持つ。

 以下はその引用。
 記録のためにここに残しておく。
--------------------------------------------
最初に断っておくが、この本の中にはポクが撮った写真は1枚もない。
すべてはポク以外の、どこかの誰かが撮った写真だ。ボクはそれを拾い集めただけ。
いつどこで拾ったかを記録していないため、誰が撮ったものなのかわからない。
いや、たとえ記録していたとしてもそれは同じ。
著作権が明示されていない写真はインターネットにアップロードされたが最後、
コピーにコピーを重ね、時にはフォトショ職人の手で改変されたりしつつ、
世界中のパソコンを渡り歩くのだ。
どれがオリジナルでいつ誰が撮ったか、それを特定するのは絶望的に困難だ。
なので、もし「この写真は間違いなく私が撮った写真だ!」
という人がいたら、名乗り出てほしい。
もし、あなたが本当の著作者であるならば、逃げも隠れもしません。
お知らせください。
えーっと、出版社の人に。
で、ボクの写真でもなくあなたの写真でもないとしたら、
著作者が見つからない以上、これはもうみんなのモノ。
ポクはそう考えることにした。
だって、どれもホラ、こんなに面白い写真なんだし。
みんなで楽しんだほうがイイに決まってるし。
撮った人も撮られた写真も、大勢の人の目に触れたほうがうれしいだろうし。
そんな信念のもと、ポクはアカの他人が撮った写真で1冊の本を作ったのだ。
つっても、ただ写真を並べるだけじゃないのよ.そこに絶妙なキャプションをつけたり、
どういう順番でどう見せるかってことが大事だから。
写真を生かすも殺すもポク次第だったりして、
なんだ、だったらもうポクの著作物みたいなもんじゃね?
なんて思ったりもするんだけど、さすがにそこまではポクのロからは言えない。
だからキミタチからそう言ってほしい。早く。
片岡K
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posted by 平野喜久 at 14:12| 愛知 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Google画像検索を使えば、結構すぐに出典元わかったりするんですけどね。
それすらやってないんでしょうね。

例えばこのTweetのリスの写真
https://twitter.com/#!/kataoka_k/status/187060221691179009

この画像URLを
http://s1-03.twitpicproxy.com/photos/full/552541752.jpg?key=550339

Google画像検索すると↓
http://www.google.co.jp/search?tbs=sbi:AMhZZivqzduk0U_1ckODNs5tnFp7lG0m2UMqYIN5R850_1hmiDhC6RodEp-7daX5zx2oQGsj7NpfaEEwBOd_1IHOEKS7YFHpKNjRSN-UoewRfQNADjXzkmULuLE_12OE6o4K0WBvZg7usKasV9nUJrqfeetV24reW1sG46qi3eF6iKo6EZqgZwg5PMMSQkjLnuPjGJUUSY-pqUf1s4RTbV-l40hroiGdpBu49B9BaaeyY3yb803vWK_1NkmWFxhU9HcnBplJ7Mlv2i6cbyIcTEwxJlkCnSiSwgm0VKQf06IMgkq4japll8DVgHBTltibY3YGZS3DTGQkfMpOFBy4igeWKyMNz2qSbcer_1TElxaLS4S1yoHw7yq3ph1ZexjGafS-Vn0e6YMc7mktuA7GC0FWxl-sFGZEYb-7FfDrIgMiapXtGKkv5QR37vNO8ZrwM0w01k5C4yeoGJfn3mlM6juuXjHU0VKOqkZW-HwKqGOB0o5ZAKGz66MB7d8u1W_1cFeSDHwyWaVufevq5spcbMMFoRk2jI3mRW5fKokrpS9xjI_1ftKm20Z-IxY2CTL5ED-ZrTM9-EreBSiMkSjDZVxLGT4uCByTf8G8WBIbtc8CJg6H6p5WuDHVOqyitf-FkLhv6Ykl8x6UmbIrHnK-txveZHNIkE9FjKqfourA81s3hc5APompVDhQpRNFyAVMXeeVmCsrvUoM5ZRa1ZMiGLnY9Np9hu-j-cHdB_1meIT0LOrLAoh6zLzoyQget_1bPCn4-vX1_1WtfH1lzvrHXK9ZRyHZ3a0dmR0RexfYV5LBvIIeu0z41QGmPO8uA9JGFMEWcE7ENkVqNSoQwpb0hDA7Fd8n4YeaxDsSwG7lm007RbCZCXHgPN_1WsxFvowzGcQMXtKi2vLQRd9I8Xc6wutXSVhBw8QN162jwzRiF3SMaTdBFUrXgD4kr_1L5oiWSap7YHOuKkyn1ZrxlqK62w8v7CMtklw59Kf6EAwpAyu2zbzoJ1zBMSUCf7DQE0AnoP0ORMNHL-vZRBbZmgas-GgVAgnZys42sWpbK_19Agqp6YJeazbaV3teBDyGtJ9bnt4YliR40WZoLzlX_1ASQaab0_1wpQQPYMsWWFTGT_1iKIoQSCWouEw2a2z4LhGJnCa7uybGJwof0_1ntnytFCQx_1wG4mWZu2v-fr5YrGkm5B6RDNBkE3vFuiZRK1fwrU79mBdY38WlAevgiiwaWQ-3cCIHqKvvocpWEG1huO-g4XKSoHC9RjsIALwtziDx9REjMYyYPQUT0JUJTwGmtBWxRGVBwBRBufgocEPub8ru83FrlObF8OjeIL0F1aNt48O52AyvG0&btnG=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&hl=ja&client=firefox-a&sa=N&rls=org.mozilla:ja-JP-mac:official&biw=1185&bih=616

動物写真家の前川貴行さんが撮り下ろしたフォトギャラリー「zoom±ZOO」の写真であることがすぐわかります。

また、その「zoom±ZOO」のサイトの利用規約には、
http://www.sandisk.co.jp/about-sandisk/terms-of-use

「いかなる形態または手段によっても、サンディスクまたは著作権所有者の事前の書面による許可なく、素材を複写、複製、配布、再発行、ダウンロード、表示、投稿、転送することはできません。商用目的ではない個人利用目的に限り、素材を変更せず、著作権および素材に含まれるその他の知的財産権表示をすべて保持するという条件で、サンディスクサイトの素材を表示、複写、配布、ダウンロードする許可が与えられます。」

とありますね。
Posted by at 2012年04月03日 17:14
「ネコでプッ!」という宝島社の本で、
タカハシヒカルという男も同じ商売をしています。
しかも何冊もシリーズを出しています。
残念ですが、出版界では当たり前なのかもしれませんね…。
Posted by いしだ at 2014年11月01日 01:14
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