なぜか。
それは、保険のコストが見えないからだ。
私たちは保険料を支払う。
そして、もしものときに保険金を受け取る。
表面的に見える金額はこれだけ。
たとえば、3千万円の生命保険の毎月の保険料が1万5千円としよう。
受け取る3千万円と支払う1万5千円。
「たった1万5千円払うだけで、3千万円ももらえる」
なにか、儲かるような、得するような錯覚を覚える。
実際に、どれだけの保険料を払い続けるのかが分からない。
期間中、いつ保険金をもらうような事態になるか分からないからだ。
何事もなく満期を迎えれば、掛け捨ての場合、保険料はすべて無駄になる。
だから、3千万円の保険にたいして、どれだけのコストをかけているのかが直接見えないのだ。
これは、契約者の側から見るからコストが見えなくなるのである。
保険会社の側から見ると、コストは明白だ。
顧客が支払う保険料が、そのまま保険金の支払いに当てられていると漠然と思っている人がいるが、違う。
それでは、保険会社がやっていけない。
そこには、保険会社の経営維持の経費や利益が含まれている。
それを「付加保険料」と言う。
その他の部分が保険金や補償に回される金額で、「純保険料」と言われる。
つまり、「純保険料」部分の補償を得るために、「付加保険料」を経費として保険会社に支払っていることになる。
この付加保険料が保険のコストだ。
では、「付加保険料」はどのくらいの割合を占めるのか。
実は、これは公表されておらず、正確には分からない。
保険会社の保険金不払いの不祥事が多発してから、情報開示が進むようになってきた。
それでも、表面的な数字だけで、実態の分かるデータは出てこない。
内部からもれ出てくる情報から推測すると、付加保険料率は30%〜40%だろうと言われている。
仮に40%としよう。
すると、保険会社は、1千万円の保険料を受け取っておきながら、600万円しか補償にまわさないということになる。
契約者側から見ると、600万円の補償を得るために、400万円のコストを払っていることになるのだ。
どうだろう。
保険とは、いかにコストの高い商品であるかが分かるではないか。
あらゆるリスクを保険でカバーしようとしたら、保険料だけで資金繰りが破綻する。
リスク対策を考える場合、保険は必要最小限にとどめるというのが、最も正しい方法だ。
「保険は、なるべく少なく入る」これが鉄則である。
「心配だから、多めに入っておきましょう」という保険屋のセールストークは、悪魔のささやきだ。
本当に心配なら、もっと他のリスク対策をきっちり行なうべきなのだ。
そして、余分な保険に入る余剰資金があるようなら、その分をしっかり積み立てておくべきなのである。