いま、オーケストラの両翼配置に凝っている。
両翼配置とは、第1バイオリンが舞台に向かって左側、第2バイオリンが右側に並ぶ。
チェロとコントラバスは中央寄りの左側、ビオラは中央右。
もともとの配列はこの並びが普通だった。
戦後になって、名物指揮者のストコフスキーが大胆に楽器の配列を変えて演奏するようになり、その1つが左から高音→低音と並ぶような現代の配列だった。
第1バイオリンと第2バイオリンは隣同士でいた方が音が合わせやすい。
それに、ステレオ初期の録音では、左から高音のバイオリン、右から低音のチェロ、コントラバスという極端に分離した音が出た方がステレオ効果を実感させやすかった。
このスタイルは、いつのまにか現代の主流になっていった。
ところが、作曲家が生きていた時代は両翼配置が当たり前だったはず。
ということは、作曲家は両翼配置を前提に曲作りをしているのではないか、という疑問が浮かぶ。
バイオリンが左右に分かれていることを想定して音響効果を狙った作曲をしていたとしても不思議ではない。
多くの指揮者は、ストコフスキースタイルの配置で演奏するが、時々、古典スタイルを堅持して両翼にこだわる人もいる。
クレンペラー、クーベリック、ムラビンスキー。
シノーポリのマーラー全集を持っているが、これも両翼配置だったということに最近気づいた。
最近のデジタル録音は昔のアナログ録音と違って、左右の分離を強調しないので、なかなか気づかないのだ。
そして、今日見つけたのが、イギリスの指揮者ボールト。
ボールトのCDは初めて買う。
レコード時代も買ったことがない。
彼も両翼配置の信奉者だったことを偶然知って、早速購入。
11枚CDボックス。
いま、ベートーベンの田園を聴きながらブログを書いている。
左右の分離がはっきり分かるアナログ録音。
第1バイオリンと第2バイオリンがきれいに左右に広がっている。
これを聴くと、ベートーベンは明らかに両翼配置の場合の音響効果を意識して作曲しているのが分かる。
第1バイオリンと第2バイオリンが掛け合いをする場面があるが、ここは両翼でないとその効果は分からない。
普通の録音では、左側にかたまったバイオリンが複雑に演奏しているのは分かるだけ。
平面的なべた塗りになっているという印象。
それが両翼になると、左右にくっきり分かれてたちまち音響が立体的になる。
「あぁ、この場面は、こういう構造になっていたのか」と驚く。
「ベートーベンは、この音響効果を表現したかったんだな」と感心することしきり。
田園交響曲など聴き慣れた曲のはずだが、新しい発見があって実に新鮮の感覚を味わえる。
第1と第2の区別を意識して曲作りをする作曲家の作品は、両翼配置で聴くべき。
聴き慣れた名曲が両翼配置だとどういう風になるのかが興味の対象。
それで、両翼配置のCDを探して買いあさっている最中。
ワーグナーも意識した作曲家らしい。
ボールトのボックスには、ワーグナーの作品がたくさん入っている。
これから聴くのが楽しみだ。
そういえば、プロコフィエフの「ピーターとオオカミ」を自分のシンセサイザーで演奏してCDに仕上げたことがあった。
その時、当然ながらバイオリンは両翼配置にした。
このCDは、日本語のナレーションつき。
オリジナルのシナリオとオリジナルの演奏で個性的な作品ができあがった。
ネット上で販売していたが、制作したCDを完売して、いま在庫がない。
2012年10月10日
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