読売新聞のスクープだった。
世界初のiPS細胞の臨床応用に成功したという内容。
研究者はハーバード大学の森口尚史客員講師。
山中教授がノーベル賞を受賞した直後でもあり、続けて同じ日本人による快挙かと世間の注目を浴びた。
ところが、この研究者は、とんだ食わせ物だったらしいことが分かってきた。
ハーバード大と、患者への治療を実施したとされる米マサチューセッツ総合病院は、「森口氏の一切の臨床試験は、我々が承認したものではない」との声明を発表したのだ。
臨床試験は病院の承認を得ていないこと、現在、ハーバードには在籍していないことなどが明らかになってきた。
過去の研究実績でも捏造が疑われる事例が見つかり始めており、この研究者は、とんでもない詐欺師だったというオチ。
それにしても、こんな詐欺師に簡単に騙される読売新聞。
この詐欺師の所業はあまりにも隙だらけ。
どこをつついても怪しいところばかりだ。
少しでも裏をとろうとすれば、容易に根拠がないことが分かりそうなものだ。
それなのに、読売新聞はトップ記事で報じ、他のマスコミも慌てて追随した。
この臨床試験の内容は、専門家が見ればあまりにも不自然に見えたに違いない。
再生医療分野はようやく技術が確立されはじめたところ。
動物実験が精一杯で、人の臨床試験などとんでもない。
本当に人の臨床試験ができるほどの段階にあるとしたら、ノーベル賞の山中教授を遙かに超える高度な技術がすでにできあがっているということになってしまう。
これだけでも、疑いの目が向けられてしかるべき。
しかも、「心臓に直接、再生した細胞を30カ所注射した」という手法。
「え? こんな乱暴な治療法で大丈夫なのか?」と素人でも不安になる。
その後、各マスコミが本人に直接取材を行い、信憑性のある情報がなにもないことが明らかになってきた。
その映像が報道されているが、マスコミの厳しい追及に逃げ場を失った偽研究者の哀れな姿が痛々しい。
読売新聞は、数時間に及ぶ本人取材をし、論文草稿や手術動画の資料の提供を受けていたらしい。
事実を正確に把握した上で、読者に改めて結果を報告すると言っている。
いまや、偽研究者の捏造事件より、こんな程度の低い詐欺師にひっかかって大誤報を流した読売新聞の取材レベルの方に、関心が移っている。
読売新聞の検証結果を待つとしよう。
2012年10月12日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック