2007年01月17日

不二家:不祥事対応の不手際

 不二家の消費期限切れ原料の使用が発覚した不祥事に始まった騒動は、まだ収まらない。
 他の商品の衛生管理の不備や過去の食中毒事件にまで話が拡散し、収拾がつかない様子だ。
 リスクマネジメントの新たな失敗事例になってしまいそうだ。

 社長が辞任したが、問題解決に結びついていない。
 それは、何の責任を取って辞任するのかが明確でないからだ。
 社長は謝罪会見を開き、深々と頭を下げた。
 しかし、社長のコメントはこうだった。
「これでは、組織ぐるみであったと疑われても・・・疑われかねない」
 言いかけたところで、言葉を言い換えた。
 ここに、彼の本音が見えてしまう。

 「これでは、組織ぐるみと疑われても仕方がない」
 と
 「これでは、組織ぐるみと疑われかねない」
 では、大違いだ。
 組織ぐるみだとは認めたくない、でも、組織ぐるみではないと言ってしまうと風当たりが強い。
 それで、このような芯の定まらない物言いになってしまうのだろう。
 これでは、せっかく社長が辞任しても、何の責任を取っての辞任なのかが判らない。
 社長辞任は、世論の風当たりをかわすためポーズに過ぎないように見える。
 むしろ、消費者の不信感を増幅させてしまう悪い対応であった。

 今回の不祥事は、本来なら、大騒ぎになるような内容ではない。
 食中毒が出たわけでもない。
 消費者から苦情があったわけでもない。
 外部機関の調査で不正が発覚したわけでもない。

 ところが、まるで、雪印の食中毒事件に匹敵するかのような印象を与えてしまっている。
 雪印のときは、1万3千人もの被害者がいたのだ。
 それと同列に扱われてしまっているのは、会社側の対応不足に尽きる。
 
 騒ぎを大きくした原因は、
1.事実の公表が遅れたこと
2.「パート労働者が勝手にやった」「体の弱い子どもがおなかをこわす程度」と事態を矮小化してやり過ごそうとしたこと
3.あらたな衛生管理不備の情報が小出しに漏れ続けたこと

 特に、2の当初から事態を矮小化してやり過ごそうという態度が見え見えで、それがマスコミの不信感を増幅させた。
 隠そうとしている、ごまかそうとしている、という態度は、マスコミの追求を激化させる。
 新たな不都合情報が続々と出てきたのは、このためだ。
 不祥事の発覚において、このような態度は一番逆効果だと心得るべきだ。
 
 不二家の経営陣としては、
「なんで、こんなちっぽけなことで、ここまで叩かれなければいけないんだ」
 との思いだろう。
 しかし、早期の事態の沈静化だけを狙うのではなく、これを契機に経営体制を根本から見直し、再生する姿勢で臨むべきだろう。
 むしろ、これを更なるブランド基盤の強化に利用するぐらいのことをやってもらいたいものだ。
posted by 平野喜久 at 21:34| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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