「週末起業」が低リスクやノーリスクの起業法だというのが、まやかしであることは以前から主張してきた。
リスク分散でリスクが減らせるという単純な誤解が根底にある。
今回は、その誤解についてリスクマネジメントの観点から解説しよう。
リスク分散とは、文字通りリスクを複数に分散させることだ。
金融商品を購入するときは、1種類に投資を集中させるのではなく、いろんなタイプの商品に分けるべき、というのが常識だ。
このため、リスク分散を単純にリスクを減らす手法と勘違いしている人が多い。
リスク対策としての手法は、様々なものがあり、リスク分散はそのうちの1つに過ぎない。
当然、メリットもあればデメリットもある。
リスクの種類によって対策が異なってくるのは当たり前だ。
リスク分散のメリットは、すべてを1度に失ってしまうリスクを減らせるところにある。
逆にデメリットは、リスクにさらされる局面を増やしてしまうことである。
たとえば、原材料を取引先に運搬するケース、
トラック1台に積んで運ぶ方法と、2台に分載して運ぶ方法を考える。
相手先に届くまでに、トラックが事故にあう可能性が10%としよう。
トラックが定刻に到着しない可能性は?
1台の場合:10%
2台の場合:10%×10%=1%
トラックが定刻に到着することを最優先するのであれば、2台の場合が断然有利だ。
ところがである。
すべての原材料が無事に先方にく可能性は?
1台の場合:90%
2台の場合:90%×90%=81%
なんと、2台に分載した方が、可能性が低くなってしまう。
つまり、原材料を少しも無駄にしないことを優先する場合は、分載はリスクを高めてしまうことになるのである。
この場合は、1台に積載し、十分に余裕のあるスケジュールで安全運転で運ぶことを考えるしかない。
「週末起業」が低リスクとかノーリスクにはならない理由がお分かりいただけただろう。
起業に失敗しても会社勤めをしていれば収入は確保できる。
会社を突然リストラされても週末起業があればなんとかなるかも。
その意味では有効だろう。
しかし、それは、突然ゼロになってしまうリスクを減らしているに過ぎない。
トータルで見たとき、会社業務に専念する人や、独立して個人事業に専念する人に比べて、収入を減らしたり、余計なトラブルに巻き込まれたりするリスクは大きくなっていることに気づくべきだ。
週末起業の仕掛け人は、「リスクがないんだから気楽に取り組みましょう」と呼びかける。
非常に危なっかしい。
2007年02月27日
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