ロジャー・ノリントン指揮の演奏を初めて聴いた。
ノリントン氏は、ノン・ビブラート奏法で有名。
つまり、弦楽器をビブラートをかけずに演奏させるのだ。
これは、ビブラート奏法は現代になって流行した演奏方法で、クラシックが作曲されたときには存在しなかったという解釈に基づいている。
なるほど、面白いこだわりだ。
ベートーベンの第5交響曲を聴いてみる。
第2バイオリンが右に位置する両翼配置。
コントラバスは、なんと、木管楽器の後ろ中央に位置する。
音響は?
全く違う響きに聞こえる。
弦楽器に音の揺れが全くない。
音がストレートに伸びている感じだ。
確かに、正確な音程でしっかり鳴っているという印象がある。
アンサンブルも和音も非常にきれいに澄んだ音に聞こえる。
ピュアサウンドとはこういうことかと納得。
弦のビブラート奏法は、独奏者の表現方法として始まったらしい。
それが、のちに、オーケストラでも採用されるようになり、いまでは、ビブラート奏法が当たり前になっている。
ビブラートとは、目的の音程を中心に音程をわずかに上下させ続ける奏法。
ということは、厳密にいうと、常に目的の音程とは外れた音を出し続けていることになる。
しかも、アンサンブルになると、個々の奏者のビブラートはランダムに揺れ続ける。
ということは、全体としては、完全なアンサンブルにならず、不協和音を出し続けていることになってしまう。
ピュアな音響にならないのだ。
ノリントン氏は、これが納得できないのだろう。
弦からビブラートを取り除いただけで、全く違う響きが現れる不思議。
第5交響曲は、耳なじんだ曲でありながら、非常に新鮮な感覚で聴くことができた。
2014年01月06日
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