2014年04月16日

韓国旅客船沈没事故:船内に謎のアナウンス

 韓国の旅客船転覆沈没事故。
 修学旅行生ら477人のうち、2人の死亡、約290人が行方不明。
 大惨事に発展する懸念が出ている。
 韓国政府当局は当初、368人が救助されたと発表したが、まったく根拠のない数字だった。
 情報の混乱ぶりが分かる。

 旅客船は船首で「ドン」という音がした後、左舷が傾きはじめ約2時間後には完全に沈没した。
 客船が傾き始めたとき、船内アナウンスで「そのままとどまりなさい」と案内があったという。
 危険を感じた乗客は、アナウンスを無視し、ライフジャケットを着用し、外に出て助けを求め、救助された。
 行方不明の270名の多くは、船内に取り残されているのではと見られている。

 客船が何かに衝突した後、僅か2時間という速いスピードで沈没した。
 非難するとしたら、直ちに行動しないと間に合わない。
 ところが、「とどまれ」のアナウンスに従って、客室内にとどまった人が多かったようだ。
 なぜ、このようなアナウンスをしたのか。

 この事故で、思い出される事例が2つある。
 2003年に韓国で地下鉄火災。
 地下鉄車内で、自殺願望の男がガソリンをまいて放火。
 その車両は大火災を起こした。
 ところが、その隣の線路に対抗列車が入線。
 燃えている車両の隣に別の列車が横付けされる形となった。
 この時、対抗列車で車内アナウンスが流れた。
「そのまま、待機してください」
 なんと、乗客は慌てることもなく、アナウンスに従って、待ち続けた。
 対抗列車にも炎が燃え移り、結果としてこの列車で142名が焼死した。
 火元となった列車では死者6名だった。
 謎のアナウンスが、乗客の避難行動を遅らせたのは間違いない。 

 もう1つは、2001年の同時多発テロ。
 貿易センタービルの北棟に旅客機が突っ込んだ時、南棟では慌てて非難を始めた人たちがいた。
 ところが、その時に、館内アナウンスが流れた。
「火災が起きているのは北棟です。南棟に問題はありません。職場に戻ってください」
 せっかくビルの1階まで降りてきた人も、このアナウンスを聞いて、またエレベーターで戻っていったという。
 その直後に、2機目が南棟に激突した。
 
 異常事態が発生した時の謎のアナウンス。
 たぶん、現場の管理者が人びとのパニックを恐れて、落ち着かせるためにこのようなアナウンスをしてしまうのだろう。
 一般に誤解が多いが、本当のパニックというものは、めったに起きない。
 だから、パニックを恐れるのは、ありもしないリスクに怯えているだけなのだ。
 緊急事態が発生した時は、人びとを落ち着かせるのではなく、むしろ、危険を知らせて素早い行動を起こさせなくてはいけない。
 人は、緊急事態に遭遇した時、正常性バイアスが働いてしまう。
 正常性バイアスとは、本当は危険にさらされているのにもかかわらず、それを認識せず、平静を保とうとしてしまう心理傾向のこと。
 このような心理状態の時に、「おちついて」というアナウンスを聞くと、ますます正常性バイアスを強化させてしまう。
 これが、避難行動を遅らせてしまうのだ。
 
 今回の沈没事故でも、アナウンスを聞いて、避難行動を起こさず、客室内にとどまり続けた人が多かったに違いない。
 客船が傾くと床に立っていられない。
 船体が横倒しになれば、もう客室から出ることができなくなる。
 こうなる前に、行動を起こさなくてはいけないのだ。
 現在のところ、乗客数に対して、行方不明者があまりにも多すぎる。
 事故が起きたのが朝で、場所は半島沿岸近く、日中の明るい中で救助活動が行われているにもかかわらずだ。 
 
 今後の救助活動を見守りたい。
 
posted by 平野喜久 at 21:33| 愛知 | Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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