2005年06月08日

雑誌の取材を装った広告の売り込み

 ある出版社から電話があった。
 「御社は大変ユニークな事業をしているので、雑誌の取材に行きたい」とのこと。
 雑誌の名前は「○○グラフ」。
 有名タレントを連れて行くので、その対談を記事として掲載するという。
 この出版社からの電話は3度目だ。
 その都度断り続けているが、まだかけてくる。

 実はこれ、取材という名をかたった広告の売り込みなのだ。
 初めは、「御社の事業に興味を持ったので取材したい」という言い方で押してくる。
 我が社の何に興味を持ったのかといぶかしく思うが、雑誌社が取材したいというのに、拒む理由はない。
 そこで、「どうぞ」と答える。
 すると、有名タレントを連れてくると言い出す。
 別に、タレントに来てもらう必要はないが、それも雑誌社が勝手につれてくるのなら、
「ご自由にどうぞ」となる。
 で、日時も決めて、最終確認という段になって、相手はこう切り出す。
「つきましては、今回、有名人を同行するということで、誠に恐縮ですが、取材協力費というかたちで、費用の一部をご負担いただきたい・・・」
 ここで、ようやく本性が現れるという仕掛け。
 私が提示を受けたのは、80,000円だった。

 弊社には過去3回同じような勧誘があった。
 その時々でタレントが違う。
 渡嘉敷勝男さん、佐藤蛾次郎さん、清水章吾さん。
 タレントとの対談というのが売りであるが、対談とは名ばかり。
 スタッフがあらかじめ用意した当たり前の質問事項をタレントがしゃべり、こちら側が答えるだけ。
(だから、なにも難しいことはないと売り込みの主は言っていた)
 実際のやりとりが動画や音声で記録されるわけではなく、タレントと一緒に写った写真と文字情報しか掲載されない。
(記念写真を撮ってあげる、サインもしてあげる、握手もできる、と言ってた)

 この雑誌は、一般書店で売られていない。
 定期購読で販売されているわけでもない。
 病院や銀行の待合所に置いてあるらしい。
 たぶん、無料で配布されているのだろう。
 これは、零細企業の広告誌なのだ。
 雑誌と呼んでいいのかどうかも疑わしい。

 取材慣れしていない零細企業にとって、雑誌に紹介されるというのは、一大イベント。
 有名人が取材に来るというだけで舞い上がってしまうかもしれない。
 その心理につけこんだ営業である。
 初めから明確に広告記事の案内と言わずに、誤解させ、最後に「取材協力費」という妙な名目の金額を要求する。
 相手を小馬鹿にしたような営業スタイルである。

 この雑誌名でインターネット検索をすると、あるわあるわ。
 取材を受けた企業が自社HPで無邪気に喜んでいる。
「マスコミに取り上げられました!」
「雑誌が取材に来ました!」
「俳優○○氏が来社!」

 しかも、その会社をよく見ると、どこの地方にもあるような、こつこつまじめに営業している何の変哲もない企業ばかり。
 中には見るからに怪しげな商品を販売している企業もある。
 この雑誌掲載がどれほどの意味があるものかがよく分かる。

 私の知人の会社も同じような取材を受けてしまったことがある。
 家族で経営する零細企業。
 奥さんは、当初、雑誌に載ったと大喜び。
 会社の入り口カウンターには、掲載雑誌のページが開いて展示してあった。
 「この記事のおかげで、問い合わせや注文がありましたか」
 「それが、全然ないんですよ」
 あるわけがない。
 そもそも、この雑誌は知名度がないし、銀行の待合所に置いてあることがあるが、誰も見ない。
 たまたま手に取ったとしても、内容を見れば、その情報がどれほどの値打ちかは一目瞭然。

 ところが、雑誌掲載後、顧客からの問い合わせはないが、業者からの売込みが増えたという。
 「うちの新聞に広告を載せないか」
 「うちの製品を使ってみないか」
 「資金融資に用はないか」
 更に、他の雑誌社から、同じようなタレント対談の話が持ち込まれたそうだ。
 なんのことはない。
 この雑誌に載るようなところは物欲しげな企業と見て、更に広告を取ろう、物を売りつけようとする業者が集まってくるのだ。
 結局、この雑誌は、新たなカモを探そうとする業者にとっての顧客リストにしかなっていない。

 もちろん、広告記事とはいえ、プロモーションの一手段と考えれば悪くはない。
 有名人と一緒に写った写真を、HPやチラシに転用して、ちゃっかりPRに使うことも可能。
 地方の零細企業にとっては、これも有効利用できるかもしれない。
 厳密には、雑誌記事の転載は、著作権の侵害だし、有名人の写真は肖像権の侵害になる。
 しかし、もともとそれを承知の広告の売り込みなのだから、特に厳しいお咎めはない。
(むしろ、そのような有効利用をすすめてくれる)
 とにかく、40分間、有名人とサシでお話ができるというのが、何よりも楽しい、という人もいるだろう。

 このような広告業者は、実態を見抜いた上で、したたかに利用する気構えで望むべきだろう。

 もう1つ余計な話。
 信用調査会社の人に聞いた。
 危ない会社の見分け方はいろいろあるが、その1つに、
「社長が有名人と一緒に写っている写真が飾ってある会社」
というのがあるそうだ。
 特に、政治家とのツーショットは、かなりのマイナス評価らしい。
posted by 平野喜久 at 15:00| 愛知 霧| Comment(1) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も同じような広告営業の電話がよく掛かってきました。
また、最近のテレビは取材なのか広告なのか分からない番組も多数見受けられます。
広く生活者に知らせるべきリンクさせていただきました。
Posted by ハンディーマン at 2006年10月22日 20:41
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