正月休みを利用して久しぶりに小説を読了。
高嶋哲夫著『首都崩壊』(幻冬舎)
kindle版の電子書籍で読んだ。
ディザスター小説の第一人者による最新作。
それだけに期待値は高かった。
首都崩壊と題していることから、首都直下地震を扱っているのは明らか。
でも、高嶋氏は首都直下地震を扱った作品を既に書いている。
東日本大震災の経験と新たな知見を加えて、新しいストーリーを組み立てたのか、と思われた。
だが、この作品は、首都直下地震を扱ってはいるが、それはメインテーマではなかった。
メインテーマは首都移転だ。
つまり、首都直下地震が頻発するようになり、5年以内にM8クラスの巨大地震発生の確率が92%という状況が明らかに。
この災害リスクを回避するために、首都移転プロジェクトが動き出すという仕掛けだ。
はじめのうちは、一部の官僚たちの間でひそかに進められていた移転構想。
新進気鋭の地震学者の解析により、巨大地震が間近に迫っているという研究成果が政府に届く。
この研究成果は公表できないまま、首都移転プロジェクトだけがひそかに進められる。
東京で大きい地震が発生するたびに、加速度を増して前へ前へと進んで行く。
頻発する地震に人々の不安感が増大し、巨大地震が東京に迫っているという出所不明のデマが世界中に駆け巡るようになる。
やがてマスコミによって、首都移転プロジェクトがスクープされた。
もはや政府は秘匿しておくことができず、首都移転構想を公開。
猛烈な反対運動が起き、国会議員の大半が反対を表明した。
そこに、また大きい地震が発生。
政府は、研究者による巨大地震切迫の研究成果を公表。
首都移転は、単なる思い付きや気まぐれで行おうとしているのではなく、具体的なリスク回避のための方策であることを強調。
反対勢力は急速に勢いを失い、首都移転プロジェクトは一気に動き始める。
そして、最後に首都の移転先が発表される。
この首都移転先が意外な場所だった。
首都の移転先としては、大阪、名古屋がまず考えられるが、今回の首都移転の目的は地震リスクの回避なので、南海トラフ地震のリスクを抱える大阪、名古屋はまず落選。
すると、南海トラフ地震の影響を受けにくい岐阜か長野だろう、と思っていた。
だが、この小説では意外な場所が設定された。
選定理由は、災害が最も少ない土地であるということ。
交通の要衝であるということ。
ここを読んだ時、「なるほど、これはありかも」と思った。
実際には、首都移転がこんなにすんなりと進むとは思えない。
ストーリーも都合のいいように展開しすぎで、リアル感に欠ける部分もある。
しかし、東京一極集中のリスクは明らかであり、首都直下地震が切迫している現在、この首都移転は真剣に考えなくてはいけない重要テーマだ。
この小説に答えを求めるのではなく、この作品を通じて、首都移転について考えさせるという点で価値が高い。
2016年01月04日
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