
2013年に電子書籍の初版をリリースしてから、多くの方々にお読みいただいてきた。
3年の間に、新たな知見が蓄積してきた。
また、この間、八甲田山リーダーシップ研修を行なう中で、私自身も受講者の皆様から多くの気づきをいただいた。
それらを電子書籍に反映させ得るため、このたび、内容を全面的にリニューアルすることとした。
古くなった情報は最新の事例に置き換え、説明の不足する部分は加筆し、新たな論点は項目を増やして丁寧な説明を追加した。
分量としては、1.5倍ぐらいになった。
内容の充実度としても、1段階レベルアップしている。
『八甲田山死の彷徨』にこれから読んでみようとする初心者の方はもちろん、今まで何度も読んできたベテランの方にも、十分な気づきを提供できるコンテンツに生まれ変わった。
初版と改訂版との違いは次の通り。
初版では、「ムービー・ガイド」というコーナーを設け、映画『八甲田山』を観るときの手助けになる豆知識を収録していたが、改訂版ではすべてカットした。
その代り、『八甲田山死の彷徨』のケーススタディの方を充実させた。
ケーススタディの前に序章を設けた。
この序章では、なぜいま『八甲田山死の彷徨』なのかについて、詳説した。
この小説を題材にしてケーススタディを行う意味づけをはっきりさせるためだ。
特に、失敗事例から教訓を学ぶ意義と、後知恵の講釈を排除することの重要性をここでご理解いただくことに重点を置いた。
第31連隊の成功事例の分析を充実させた。
この小説は、第5連隊の失敗事例が主要テーマだが、それは、第31連隊の成功があったからこそその意味が際立つ。
その成功要因もしっかり分析するとともに、徳島大尉の欠点にも敢えて言及してある。
最後は、第5連隊の失敗要因の分析に一章を費やした。
第5連隊の失敗要因はさまざまなものが考えられるが、その失敗の本質は何だったのかをここで見極めたい。
今回のケーススタディは、少し趣向を凝らしてある。
それは、ケーススタディ全体が、第5連隊の失敗の本質は何だったのかという謎解きになっている。
ストーリーの進行に従ってケーススタディを進めるが、その都度、第5連隊の様々な失敗要因が出てくる。
そこには、表面的な失敗要因もあれば、本質的な失敗要因もある。
では、本当の失敗要因は何だったのか、というのがケーススタディ全体の大きなテーマになっている。
これは、ちょうど、推理小説を読むときの謎解きに似ている。
推理小説では、犯人は誰か、動機は何か、トリックはどうしたのかが謎解きのテーマだ。
同じように、このケーススタディでは、本当の原因は何か、なぜそうなってしまったのか、そうならないためにはどうしたらよかったのか、が問われることになる。
最後には、私なりの答えを用意している。
読者の皆様にも謎解きに挑戦していただきながらケーススタディを進め、最後に答え合わせをしていただきたい。