2013年、国土強靭化基本法が成立し、国が計画に基づき施策を推進する一方、地方でも計画の策定が進んでいる。
ところが、この国土強靭化は、行政がやるべき公共事業というイメージがあるために、誤解を与えることになった。
本来、国土強靭化とは、行政と民間が一体となって取り組むべき事業であるはずなのに、民間への普及がいまひとつ及んでいない。
そこで、民間を巻き込むために、国土強靭化に貢献している民間企業を高く評価し、インセンティブを与える仕組みを作ろうということになった。
民間企業の取り組む国土強靭化は、大きく3つに分類できる。
1、防災用品やサービスの提供。
2.事業継続のための自助活動。
3.社会貢献のための共助活動。
これらの活動を国としても積極的に評価し、後押ししようというわけだ。
ただ、1については国が評価すべきものではなく、市場が判断すべきものなので、ひとまず見送られることになった。
そこで、市場に乗りにくい2の事業継続のための活動を国として認証し、取り組みを促進しようというところに焦点が絞られた。
スキームとしては、外部委員による審査委員会を立ち上げ、そこが企業のBCPを審査し認証する。
認証企業には登録マークの付与などのインセンティブを用意する。
認証取得した企業は、それを積極的に広報に利用することができる。
事業継続の認証規格としては、すでにISO22301があるが、あまりにもスペックが高度で、一般の中小企業には不必要にハードルが高すぎる。
すると、一般に公表されているガイドラインやフォーマットに基づいて独自に策定したBCPで自己認証するしかないが、これではただの自己満足に終わってしまう恐れがある。
それで、その中間の仕組みとして今回の認証制度の構想が立ち上がった。
この動きは歓迎すべきだ。
国土強靭化政策が行政レベルでとどまっており、一向に普及しないことにじれったさを感じていたが、ようやくそこに手が届くように泣てきた。
民間企業のBCPは取り組みが随分進んではいるが、まだまだ一部の企業に限られている。
BCPの必要性を認識している経営者は多いのに、なぜ、取り組みが進まないのかは、明らかだった。
そのメリットがはっきりしないからだ。
BCPに取り組まないと取引が続けられないとなれば、真剣に取り組むだろう。
だが、取り組んでも取り組まなくても、ビジネスに何の影響もないとなれば、誰も真剣に取り組もうとしない。
国のBCP認証制度は、その問題を解消しようとするものだ。
この制度は、まだ構想段階であり、具体的な実行段階にはない。
今後、実務レベルの詰め作業が行われるのだろう。
実務レベルの話になると、いろんなところに問題や課題が出てきそうだ。
まず、心配されるのが、認証の審査基準をどうするのか、ということ。
その企業のBCPを調べて、形式的な要件が揃っていればOKとするのか。
それとも、その企業の事業実態を勘案して、BCPの実効性まで審査するのか。
形式的な要件に絞れば、基準は明確だし審査は簡単だ。
だが、それは、形を整えた書類がそろったことが証明できただけ。
BCPの目的は書類をそろえることではなく、実際に大災害に見舞われたときに、企業が生き残って事業を継続できるかどうかに重点がある。
形式審査では、ただ書類を整えることに注力し、実際の防災対策は何も行われていないということにもなりかねない。
これでは、何のためのBCPか分からない。
むしろ、認証制度のために企業を形式的な取り組みに向かわせてしまったら、それは弊害の方が大きい。
ならば、実態審査まで行うのか。
すると、審査にはかなりの時間がかかり、審査員には高度な知識と能力が求められることになる。
BCPは、単なる防災対策とは違うので、その企業の事業内容や経営実態を理解した上でないと評価できないはずだからだ。
それは、ただ提出された書類を見ただけでは判断できない。
更に、審査項目は多岐にわたり基準もあいまいにならざるを得ない。
どこまでの対策ができていることをもって認証とするのか。
この認証が国のお墨付きになるのだから、余計にその基準は重要になる。
この内容ならOK、この内容では不十分。
簡単にはこんな判断はできないだろう。
今回の認証制度の構想は、方向性としては素晴らしい。
ただ、運用面でまだまだかなりのハードルがありそうだ。
2016年03月30日
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