4月14日に始まった熊本地震。
これまでに余震が1100回を超え、最大震度7を記録する地震が2回も発生するなど、観測史上例を見ない推移を見せている。
今なお余震は続いており、今後も震度6弱以上の地震が発生する可能性ありとして気象庁は注意を呼び掛けている。
今回の地震で一番驚いたのは、地元の人たちだろう。
なぜなら、熊本では地震は起きないというのが普通の認識だったからだ。
2014年に公表された地震動予測地図によると、首都圏と静岡県から紀伊半島、四国の太平洋側に高確率の赤い色が塗られている。
これは、以前から予想されている首都直下地震と南海トラフ巨大地震の影響する地域だ。
それ以外の地域はオレンジ色か黄色に塗られている。
この地図は、地震リスクの高い地域を知らせ、その地域の人々への啓発を目的に作られたものだ。
だが、本来の目的に反して、利用されてしまっている。
赤色に塗られていない地域は、地震の起きないところだ、という誤ったメッセージを送ることになってしまったのだ。
この地図で、熊本は黄色になっている。
このことで、熊本は地震の起きないところという根拠のない安心感を与えることになってしまった。
以前、熊本県は、企業誘致のうたい文句として地震の少なさを売りにしていた。
過去100年間に起きた地震を日本列島の地図上にプロットし、東北地方を「危険地帯」、熊本周辺を「安全地帯」と表示していた。
過去100年だけのデータをもとに危険地帯と安全地帯を分けてしまうのはかなり乱暴だし、科学的根拠のない危なっかしい主張だった。
熊本を安全地帯と信じて拠点を移した企業があったとしたら、詐欺にあったようなものだろう。
このように、地震の少なさを企業誘致の売りにしようとする自治体は、日本海側にもいくつか存在するが、同じような危なっかしさを抱えている。
地震調査研究推進本部が公開した地震動予測地図は、次はどこで大地震が発生するかを予想したものではない。
過去の地震発生のパターンから確率的にはじき出された数値を、分かりやすいようにビジュアル表示させたものだ。
だから、研究の進んでいる首都直下地震と南海トラフ巨大地震の発生確率だけが際立って高く表示される。
それ以外の地域は軒並み発生確率は低く表示される。
発生確率が低いのは、2つの理由がある。
1つは、発生周期が長いので、今後30年間に限ってみると、確率は極端に小さい数値になってしまうこと。
もう1つは、発生周期が不明なので、確率計算できないこと。
特に活断層が引き起こす内陸型の地震は、何千年に1回、何万年に1回という頻度なので、次の発生時期を予測するのは不可能だ。
無理やり計算したとしても、ほとんど0に近い数字にしかならない。
しかし、どんなに発生周期の長い地震であろうと、その時はいずれやってくる。
「ちょうどその日が万年目」ということがありうるのだ。
しかも、活断層は、日本列島には無数に存在し、今なお新たに発見されるものもある。
まだ見つかっていない活断層も相当あると予想されている。
それらの活断層1つ1つは、数千年に1回の頻度であったとしても、日本列島全体でみれば、常にどこかの活断層がいつ破壊するかわからないという状態にある。
そう考えると、地震の発生確率が低く表示されている地域は、地震の起きない地域と考えるのではなく、次にいつ地震が起きるかわからない地域と捉えた方がいい。
その意味では、首都直下や南海トラフよりも、リスクは大きい。
首都直下や南海トラフについては、どこでどのぐらいの地震が発生し、各地の被害はどの程度になるのかなど、既に豊富な情報が提供されている。
ところが、それ以外の地域は、いつどんな地震が起きるかわからないので、予想ができず、切迫感もなく、対策も進んでいない。
そこを地震が襲うと、地震の規模以上に被害を拡大させてしまうことになる。
いま、地震対策に積極的な自治体と消極的な自治体がある。
消極的な自治体にもそれなりの言い分がある。
「あまり地震の脅威ばかり強調すると、人が住みたがらなくなってしまう。企業がほかに逃げてしまう」
だが、この認識は、間違いだろう。
地震リスクがあるにもかかわらず、それが認識されていない地域は、地震対策が進んでいないのは明らか。
そんな地域に住むことは、安心できるどころか、むしろ不安が大きい。
地震の少なさを売りにして企業誘致をしようとする自治体は、一番危なっかしい。
そのような自治体は、地震への備えは何もできていないと宣言しているようなものだからだ。
2016年05月03日
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