2005年06月18日

マルチ商法に手を出す中堅層

 マルチ商法は、世間知らずの若者や主婦が手を出してしまうものだと思えば、そうではないようだ。
 最近は、40代50代の人が手を染めているケースが見られる。
 彼らに共通するのは、事業が経営不振で廃業したとか、勤めていた会社が倒産したとか、リストラにあったとか、定職を失い、不安定な状態である点だ。
 昔は、マルチ商法は、世間知らずを騙して引き込むのが手口だったが、いまは、収入の道を絶たれた中堅層がねらわれているのかもしれない。

 古い知人から、マルチの勧誘を受けたことがある。
 会社を経営していたが、事業不振から廃業したことは知っていた。
 うまく事業転換できたか、気になっていた。
 私も、中小企業診断士という肩書きを持つ以上、何らかのお手伝いができるかもしれないと思っていた。
 が、興味本位に詮索しているように思われてもいけないし、善意の押し売りになってもいけないので、そっとしていた。
 その彼から突然電話があったのだ。

「このたび、食品販売を始めた」とのこと。
 いよいよ私の出番か、と思い、喜んで彼の旧会社事務所に行った。
 彼が始めたのは、健康食品のマルチの勧誘だった。
 いかに、この商品が優れているか、安全で健康に効果があるかを真剣に説明してくれた。
 自分や家族が使って間違いがないと思うから信頼できる知人に薦めている、と言っていた。

「マルチのことはいいから、新しいビジネスのことについて教えてよ」と聞いた。
「いまは、この食品販売に集中しようと考えてる」
 ショックだ。
 以前は、従業員を何人か雇い事業経営を行なってきた人だ。
 世間知らずのはずがない。
 ビジネスがなんたるかも十分承知しているはず。
 その彼が、こんなマルチ商法に再起を賭けているとは。

 私がビジネスの話を持ち出した途端に、今度は、マルチの儲け話の説明が始まった。
 例の多段階販売システムの説明だ。
 努力次第で、いくらでも儲かる仕組み・・・と本人は本当に思っているようだった。
 先の、食品の品質の良さを説明する時の顔と、ビジネスとしての儲け話をするときの顔が全然違う。
 マルチは、商品販売という形式を取ったネズミ講だ。
 で、健康にいいと言う食品の説明が表向きにあって、衣の下に金儲けという鎧が隠れている。
 友達に本当にいい商品を紹介したいという善意の顔と、カネを吸い上げて金儲けをしたいという裏の顔が共存しているのだ。
 
 それにしても、マルチの勧誘を受けたということが何よりのショックだった。
 インターネットで商売したり、本を書いたり講演やセミナーでしゃべったり、わけの分からんことをしているということで、つけいるスキがあると思われたのかもしれない。 
 
  
posted by 平野喜久 at 11:02| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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