産経新聞の報道による。
奇妙な裁判があった。
大手すしチェーン「無添くら寿司」を運営する「くらコーポレーション」が、プロバイダー業者「ソニーネットワークコミュニケーションズ(ソネット)」を相手取り、裁判を起こした。
訴訟の内容は、インターネット掲示板上に「無添という表現はイカサマくさい」などと書き込んだ人物の情報開示を請求したもの。
その判決が12日、東京地裁であった。
結果は、請求棄却。
「書き込みは、くら社の社会的評価を低下させるものではなく、仮に低下させるとしても、書き込みには公益性があるため違法性はない」ということだった。
株式情報を扱う掲示板に、ソネットのプロバイダーを利用する誰かが「くら寿司」を批判する書き込みをしたらしい。
それで、くら社がソネットに対して、投稿者の情報開示を求めていたのだ。
くら社は、投稿者の情報を得て、何をしようとしたのか。
投稿者に直接掛け合い、投稿を削除せよと要求するつもりだったのか。
それとも、このような裁判を起こし、批判的な投稿をする匿名者への脅しのつもりだったのか。
いずれにしても、上場企業の対応としては低レベル過ぎる。
実際の投稿内容は、次のようなものだったようだ。
「ここは無添くらなどと標榜するが、何が無添なのか書かれていない。揚げ油は何なのか、シリコーンは入っているのか。果糖ブドウ糖は入っているのか。化学調味料なしと言っているだけ。イカサマくさい。本当のところを書けよ。市販の中国産ウナギのタレは必ず果糖ブドウ糖が入っている。自分に都合のよいことしか書かれていない」
これを読むと、誹謗中傷やデマの類とは全く違うのが分かる。
この内容は、多くの人が漠然と感じていたことで、「確かに、そうだよなぁ」と思わせる。
「無添くら寿司」という店舗名は、まるで、出されている食材は、無添加に徹しているかのように連想させる。
ところが、この店舗の売り文句に、「無添加」の言葉はどこにもない。
テレビコマーシャルにも、広告にも、店舗内装にも、無添加をセールスポイントにしている様子はまったくない。
ならば、この「無添」とは、何の意味か。
誰もが疑問に思うだろう。
もしかしたら、「無添」とは、どこかの地名か? 人名か?
名前の由来も公表されていない。
もしかしたら、消費者に「無添加」を勝手にイメージさせるためにこのような店名にしているだけではないのか。
あの投稿者の思いは、ここにあったのではないだろうか。
それにしても、くら社の対応はお粗末すぎた。
裁判に訴えたことで、この案件が広く知られることとなり、むしろ企業イメージの低下につながた。
そして、店名のうさん臭さに改めて気づかせることになってしまった。
くら社としては、裁判に訴えるのではなく、「無添くら寿司」の店名の由来を丁寧に説明し、我が社の創業理念を広く知ってもらう絶好のチャンスにすべきだった。
2017年04月15日
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