日産自動車は17日、資格のない従業員に完成車両の検査をさせていた問題で、不正の実態や再発防止策をまとめた調査報告書を国土交通省に提出。
同日、西川社長が会見を開き、「日産に対する信頼を裏切り、改めて深くお詫びしたい」と謝罪した。
この検査不正の問題は、9月18日に国交省の立ち入り検査で発覚した。
29日に日産が不正を発表。
10月2日に西川社長が会見。
6日に116万台のリコールを国交省に届け出。
このような初動だった。
ところが、問題が大きくなったのは、この後だ。
10月11日になって、社内で無資格検査を続行していたことが発覚したのだ。
2日の社長会見では、はっきりと「検査員による正式な検査体制に切り替えた」と述べていた。
だが、それは社長の口先だけの言葉でしかなく、現場はまったく変わっていなかった。
ここで、経営トップと現場との断絶が露呈した。
これを受けて、国内全6工場での出荷停止に追い込まれた。
11月7日に順次、生産と出荷を再開したが、業績の下方修正は免れない。
弁護士を中心とする調査委員会による報告書の提出を機に、西川社長の謝罪会見となった。
今回の日産自動車の不正問題。
初動対応にミスがあった。
当初、この問題は内部告発により国交省が動き出したらしい。
国交省の立ち入り検査の際に、関係書類を削除したり無資格検査員を現場から遠ざけたり、隠蔽工作をしていたという。
国交省による立ち入り検査から日産が不正発表まで、11日も時間がたっていた。
社内調査に手間取ったというより、この問題をいかに穏便にやり過ごすかというところで逡巡していたというのが実態だろう。
9月29日、日産が初めて不正を発表した会見に臨んだのは、「グローバルコミュ二ケーション本部ジャパンコミュニケーション部長」「企画・管理部エキスパートリーダー」という肩書の人物だった。
社長でも幹部役員でもなく単なる部長クラスだったのだ。
現場の一部で問題があった程度の話で終わらせようとしていたことが分かる。
10月2日になってようやく社長の会見となったが、これは謝罪会見ではなかった。
もちろん、「お詫び申し上げます」という言葉はあったが、役員そろって深々と頭を下げる姿を見せることはなかった。
そもそも、この会見は社長単独で臨んでいた。
社長の簡単な受け答えで対応可能とみていたようだ。
さらに、不正は認めたものの、「検査そのものは確実に行われていた。安心して使ってもらえないことは全くない」ということを強調していた。
つまり、この不正は、資格があるかないかという単なる形式上の問題で、実態はしっかり検査は行われていたのだから大した問題ではないという認識だったのだ。
だから、正式な謝罪をしなかったのだろう。
新聞でも、「お詫び申し上げると陳謝した」と報道された。
そう、謝罪ではなく、陳謝だったのだ。
企業不祥事の会見で、陳謝で済んだ例は存在しない。
かつて、食品偽装で問題が発覚した時、同じ言い訳でやり過ごそうとした企業があった。
「表示は違っていたが、中身は同等の上質な食材を使っている」「おいしさや安全に問題はない」
ただ原材料表示にミスがあっただけということで済まそうとした。
だが、これは手前勝手な理屈であり、この姿勢がますます消費者の反感を買うことになった。
日産では、10月2日の社長会見以降でも、現場では無資格者による検査が行われていることが発覚し、騒ぎを大きくした。
社長は現場の実態を知らず、口先だけでこの問題をやり過ごそうとしていたことがばれてしまったのだ。
ここでようやく経営トップがことの深刻さに気付き、問題に真剣に向き合い始めた。
10月19日に社長会見。
全工場での生産出荷停止を決断。
問題発覚から1か月が経過していた。
調査結果の報告を兼ねた今回の社長会見は、明らかな謝罪会見だった。
記者の前で他の幹部とともに深々と頭を下げた。
問題発覚から2か月が経過していた。
企業の不祥事発覚で、一番大事なのは初動対応だ。
ここで、きっちり対応できるかどうかで、その後のダメージの大きさが決まる。
日産自動車は、これら過去の企業不祥事の失敗事例に学ばなかったのか。
これほどの大企業になれば、それなりの危機管理アドバイザーがついているはずだが、彼らはいったい何をしていたのか。
2017年11月18日
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