TBSのドラマ「陸王」が高視聴率で続いているらしい。
「半沢直樹」で大当たりとなった池井戸潤氏の作品。
「ルーズベルトゲーム」「下町ロケット」に続き、同じようなビジネスドラマだ。
非常に硬派なストーリーで、ビジネスの成功物語だけに焦点を当てている。
零細企業の経営者のストーリーで、一般の人には感情移入しにくい面があるが、流れを単純にし、ロマンスなど余計な要素を排除して、分かりやすくしている。
連続ドラマは、登場人物を複雑に絡ませたり、複数のストーリーを同時進行させて幅を広げたり、謎の人物を登場させて先を読みにくくしたりと、いろいろな仕掛けを作るのが通例だ。
だが、池井戸ドラマは、全くコンセプトが違う。
むしろ、ストーリーが単純すぎるために先が見える。
その見えている先の展開を期待させるような仕掛けになっている。
視聴者は、最後の零細業者の大成功を期待している。
ちょうど、主人公の経営者と同じ夢を見ながら視聴することになる。
基本的に男の世界の物語。
女性も登場するが、すべて補助的な役割しか担うことがない。
これも、最近のドラマにしては珍しい。
キャスティングも秀逸。
主人公の足袋製造会社社長の宮沢役:役所広司。
さすがにベテランの演技力で、見るものを引き付ける。
本物の零細企業の社長に見える。
寺尾聡は重要特許を持つ元経営者の役だが、従来とは声色まで変えて、武骨な職人気質を見事に演じている。
ヒール役として登場するピエール瀧。
いままでの役柄とは違う憎々し気な表情作りに苦労している様子。
その他、お笑い芸人が多数出演しているのも特徴。
普段はおちゃらけイメージの芸人を、敢えてシリアスな役どころに充てているようだ。
歌舞伎役者、スポーツキャスタ、エッセイストも役者として登場する。
全キャストが同じストーリーの流れの中に乗っているので、違和感を覚える間もない。
ストーリーは、いつもの池井戸作品のように、経営の視点で見たときにいたるところに違和感がある。
この「こはぜ屋」という会社、まったくまともな経営ができていない。
すべてが、社長の思い付きと行き当たりばったりで進んでいる印象。
昔ながらの稼業レベルの経営しかできておらず、とてもランニングシューズで新規事業に進出できる体制ができているように見えない。
銀行が融資を渋るのも当然だ。
第7話では、アッパー素材のメーカーの裏切り、シルクレイ製造機の火災で窮地に陥る。
こんなことで窮地に陥ってしまうようなビジネスをしているようでは、経営者失格。
そんな重要な機械に保険をかけていなかったのか。
横山顧問が作った機械は試作機のようなもので、これで量産体制に対応するのはもともと無理があったはず。
既に「足軽大将」というシルクレイを使った地下足袋の製造販売が始まっていたが、それをこんな試作機一台ですべて賄うのは不可能。
足軽大将の製造の段階で、まず設備投資が必要になったはず。
現実には、「こはぜ屋」の戦略としては、商品開発と品質管理に特化し、量産品の製造は外部委託の形をとるの通例だ。
次回以降では、フェリックスという外資系企業から買収の話が舞い込むらしい。
これがどのように展開していくのか注目だ。
2017年12月05日
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