2017年12月06日

東レ子会社データ改竄問題:経営者の感覚のズレ

 東レ子会社の品質データ改ざん問題。
 東レ社長は、16年10月に不正を把握していたが、発表が1年以上遅れた。
 神戸製鋼、三菱マテリアルなど、素材メーカーによる品質偽装が次々に発覚する中、11月3日にネット掲示板に、次のような書き込みが行われた。

「東レのタイヤコード、産業用コードを生産するグループ会社にて顧客に提出する検査データを改ざんしていた。

 顧客と取り決めていた規格値に対して、実際には規格を満たしていないにも関わらず検査データを改ざんし、規格を満たしているかのように偽り、顧客へ納入していた。

 不正は10年前から行われており、品質保証部門の管理職が主導して改ざんに関わり組織的に不正を行っていた。」

 匿名の投稿であり、情報源も定かではない。
 普通なら、よくある「釣り」と言われるフェイクニュースとして立ち消えになってしまうような情報だった。
 ところが、これについて実際に東レに問い合わせた株主がいたらしい。
 それで、ネット上に不正情報が拡散し始めていることを知る。
 あらぬ噂が広がる前に、正確な情報を公表した方がよいと判断し、このたびの謝罪会見となった。
 一見、フェイクニュースと思われたネット上の書き込みが、図星だったわけだ。

 当初は、この不正を公表するつもりはなかったと、東レ社長は会見で言い切った。
 法令違反があるわけでもない。
 安全上の問題があるわけでもない。
 顧客も了承の範囲であり何ら問題はない、との判断だ。
 つまり、東レ社長の言い分は、「確かにデータの書き換えは行なわれていたが、それは形式上の問題であり、実質的な問題は何も起きていない」ということなのだろう。

 ところが、実態は、顧客の了承は取り付けていなかった。
 当初は、基準値を下回る製品については、「トクサイ」として顧客に説明を事前了承を得たうえで納品していた。
 それが慣例化し、いつのまにか、いちいち説明をしなくても、了承を得なくても、基準値以下の製品をそのまま納品するようになってしまった。
 その時、データ表示を基準値をクリアしているかのように書き換えていたというのだ。

 東レ社長の認識と、私たち一般が感じる認識との間に大きな隔たりを感じる。
 データ改竄は、単に書類上の数字が違っていただけの手続き上のミスで、実質的な影響は何もない、というのが東レ社長の認識。
 わざわざ公表して、自分から騒ぎを持ち掛けるほどの話ではないと感じているようだ。
 だが、少し基準に満たない製品を納品してました、という単純な問題ではない。
 基準を満たしていないにもかかわらず、満たしているかのようにデータを偽装するという行為は、明らかに一線を越えた不正の領域だ。
 ここが不正行為として問題視されているのだ。

 もともと基準値が不必要にハイレベルで、それを守っていたら過剰品質に無駄なコストをかけるだけという問題があったのなら、その基準値の見直しを優先して取り組むべきところだ。
 顧客との話し合いで、現実的な安全基準について話し合い、妥当なレベルまで落とせばいい。
 それを行なわずに、自社の都合で「ここまでだったら大丈夫」と勝手な安全レベルを設定していたとすると、問題は大きい。
 これは、品質基準を形骸化させる行為だからだ。
 しかも、データをこっそり書き換えるというのは、騙そう、ごまかそうという行為であり、これはどんな言い訳でも正当化できない、明らかな不正行為だ。
 とても、これでは取引先と信頼関係を維持できない。

 今回の不正で、取引先がどう受け止めているかは不明だ。
 実質的な損害や不具合が発生していない以上、この問題が賠償責任や取引停止にまで発展する可能性は低い。
 
 かつて、日本のモノ作りは品質の高さが信頼の証だった。
 製品検査でも、現実にはあり得ないような過酷な条件下で何度もチェックを繰り返し、少しでも不安のあるものは出荷しないという姿勢を貫くことで、信頼を得てきた。
 世界の製造業関係者が日本のモノづくりの強さの秘密を知ろうと現地視察に訪れたとき、過剰なまでの品質へのこだわりに舌を巻いて「これではかなわないはずだ」と納得して帰っていった。
 それが、いまやどうだ。
 コスト重視、効率重視が最優先になり、品質の日本ブランドは崩壊寸前だ。

 このような品質データの改竄は、いまやどの製造現場でも習慣として常態化してしまっているのではないか。
 かつて、あるレストランにおける食材の偽装表示が発覚した時、その他の高級レストランや高級料亭でも同様の偽装が見つかり、次々と謝罪に追い込まれたことがある。
 素材メーカーの品質偽装は、しばらく発覚が続くのかもしれない。
 
posted by 平野喜久 at 14:05| 愛知 ☀| Comment(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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