読売新聞の報道による。
総務省消防庁は、南海トラフ巨大地震で東側の震源域で地震が起きた場合、西側の和歌山や高知などからは救援隊を出動させない方針を決めた。
南海トラフ巨大地震は、静岡県駿河湾から紀伊半島沖、四国沖、九州沖にかけて東西700qにわたって震源域が想定されている地震だ。
過去に何度も繰り返し発生しており、毎回発生パターンは違うものの、一定の傾向は把握されている。
それは、東から地震が始まり、西側に広がっていくという傾向だ。
南海トラフ巨大地震は、いくつもの震源域が連続して破壊する連動型の地震なのだ。
時間を置かずに続けて破壊が広がっていくことが多いが、時には時間を置いて連動する場合がある。
1854年に起きた地震では、東側が破壊した後、32時間後に西側が破壊した。
1944年の東南海地震が発生した時には、約2年後に西隣の南海地震が発生している。
いずれにしても、東から西というパターンは決まっており、いまのところ例外はないらしい。
次に起きると想定される南海トラフ巨大地震も、東から始まって西に広がっていく可能性が高いと見られている。
その想定を前提とした今回の消防庁の対策だ。
例えば、駿河湾から愛知県沖にかけて巨大地震が発生したとしよう。
この時、全国から救援隊が駆けつけることになるが、西側の救援隊まで駆けつけて、留守になったすきに西側で巨大地震が発生したら大変なことになる。
これを恐れて、東側にだけ地震が発生した場合は、和歌山、高知、徳島、愛媛、香川、大分、宮崎の7県からは救援隊を出動させないこととした。
これは実際にあり得る想定を前提にした現実的な行動計画といえる。
今回は、緊急消防救援隊の行動計画だが、同じことは自衛隊でもいえる。
当然ながら、防衛省内でも同じ行動計画が進んでいるに違いない。
東側と西側の境目は紀伊半島沖と見られている。
紀伊半島沖に固い固着域が存在していて、それがストッパーの役割を果たしているらしい。
東側で始まった破壊が、この固着域をやすやすと超えた場合は、西側まで連続して一気に破壊が広がる。
固着域でストップした場合は、一旦、地震は収束し、時間を置いて西側が破壊する。
過去の事例では、東側が破壊した後、西側が破壊せずに終わったケースはなく、いずれかのタイミングで必ず西側も破壊する。
ここにどのぐらいの時間差があるのかが分からない。
数時間かもしれないし、数年かもしれない。
人間の感覚では、数時間と数年は大違いだが、地震メカニズムの時間感覚ではほんの一瞬の違いでしかない。
タイムラグがどのぐらいになるのかを事前に予測するのは実質的に不可能だ。
東側だけで巨大地震が発生した場合は、近いうちに西側も巨大地震に見舞われることを前提に非常態勢に入らざるを得ないだろう。
その時、どのような非常態勢を取るべきかは非常に難しい。
どのような対応をすべきかは、各地の自治体で検討が始まったところだが、これは企業のBCPにおいても同じことだ。
西側の巨大地震が数時間後か数年後かでは対応の仕方が全く違う。
数時間後と想定すれば、東側の地震直後に操業を停止し、直ちに避難開始となる。
ところが、緊急避難をしたまま何も起きなかったとき、どこで避難解除するのか。
何日も操業を停止したまま従業員を避難させているわけにはいかない。
いずれかのタイミングで避難解除し、警戒態勢を維持しながら操業再開せざるを得ないだろう。
いつ操業再開するのか。
判断をする人の責任は重大だ。
重要な判断をしなければいけない人の心理的負担を軽減する方法として、あらかじめ判断基準を決めておくという方法がある。
例えば、こんな感じだ。
東側で地震が発生した場合は、直ちに操業を停止し、従業員を避難させる。
72時間以内に東側で地震が発生しなかった場合は、一旦、避難解除し、操業再開。
その場合も、いきなり100%操業にいきなり戻すのではなく、重要業務に限って再開する。
その一方で、いずれ起きる西側の巨大地震に向けて、事前対策の最終確認を進めていく。
その後も警戒態勢は維持しながら、状況に応じて操業割合を変動させていく。
南海トラフ巨大地震は、東から始まる可能性が高い。
西側には事前に身構えるチャンスがあると捉えるべきだろう。
2018年04月23日
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