政府の中央防災会議の有識者会合が、「半割れ」の時の一斉非難を呼び掛ける内容を示した。
「半割れ」とは何かというと、南海トラフ巨大地震が発生した時、想定される震源域全体が一度に破壊されるとは限らず、部分的な破壊から始まり、時間差をもって残りが破壊するというケースがある。
今回は、この時間差で破壊が起きた時を想定した緊急時対応のことを言っている。
過去に時間差の破壊が起きたケースは、1854年と1944年〜45年だ。
1854年の場合は、32時間後。1944年の場合は、2年後に残りが破壊している。
時間差で連続して破壊が起きるとしても、どのくらいの時間差になるか不明だ。
数時間かもしれないし、数日、数か月、数年かもしれない。
ただ、過去の事例から、想定震源域の半分が破壊しながら、残りが破壊せずに済んだケースはないので、一部でプレートの破壊が起きれば、残りは間もなくと考えるのが妥当だ。
それで、今回は、一部の破壊が始まった時は、残りの地域も避難を開始した方がいいという指針を示したことになる。
これには戸惑いの声も多い。
残り地域の避難は、地震が起きる前に行動を起こす必要がある。
これがまず大変なこと。
風水害避難でも、大雨暴風が目の前で激しくなってきているのを目の当たりにしていながら、避難の呼びかけに反応せず、逃げ遅れる人がいる。
何も起きていない地域の人々を避難させるのは、並大抵ではない。
そして、必要な人が全員避難したとしても、問題はある。
時間差で地震が起きるとしても、どのぐらい後で起きるかは分からない。
避難完了したタイミングに合わせるように次の地震が起きてくれればいいが、そんな都合のいいことはないだろう。
いまのところ、1週間ほどの避難を想定しているらしいが、1週間たっても何もなかった時、そのまま帰らせるのか。
その直後に地震がきたら?
1週間も避難生活をしている間に、少しでも自宅の地震対策や荷物の整理などをしておいた方がよかった、となりかねない。
さらに、1週間も公的避難所に避難するとして、それだけの備蓄があるのか。
福祉施設や医療機関の場合は、入所者や患者が移動するだけでは足らず、スタッフや医療機器も同時に移動しなければならず、その負担は膨大になる。
具体的に考えれば考えるほど、非現実的な事態が想定され、とても対応不能に見える。
だが、今回の呼びかけは、国民に対する問題提起だと捉えるべきだろう。
こういうことが起こり得るとして、さて私たちはその時どうしたらいいのか、ということを一人一人が考える時期がきている。
だれかが答えを教えてくれる、だれかが指示を出してくれる、という人任せの姿勢に対する戒めにもなっている。
簡単に答えが出せる問題ではない。
だからこそ、私たち一人ひとりが真剣に考え始めなければいけない。
新聞報道では、戸惑う自治体の声が取り上げられている。
ある市の担当者は、「国や県の指針ができていない段階で、市の防災対策を検討するのは難しい」と言っている。
これは、「国や県が指針を示したら、それを見ながら考えます」ということで、まさに人任せの姿勢に陥っている。
地域の防災は、国や県よりもまず市がその責任を負う。
第一の責任者として、市が対応を検討し始めるべきだろう。
市の担当者も、自分らだけですべての行動計画を明確にしなければいけないと思うから気後れし、その責任を国や県に求めたくなる。
そうではなく、まずは、現状の問題のありのままに住民に伝え、住民自らに考えてもらうチャンスを与えてあげるべきではないか。
住民は、すべて公的避難所に頼らなければならない人ばかりではない。
中には、親戚や知人宅に身を寄せることができる人がいる。
「いざという時には、あの人のところにお世話になろう」と考えれば、事前に話をしておくこともできる。
自宅にこもってその時を迎えようと覚悟を決める人もいるだろう。
その人は、屋内の安全対策や食料の備蓄を真剣に考えるはず。
こういうことを検討するチャンスを与えるべきだ。
この話は、企業におけるBCPでも重要となる。
「半割れ」で避難勧告、避難指示が出たときに、会社の操業をどうするのか。
直ちに行動計画の確定までは難しいが、具体的な想定に基づいて、イメージトレーニングをし始める時期にある。
2018年12月13日
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