2021年05月11日

スギ薬局のダメージコントロール

 東京新聞その他の報道による。
 新型コロナウイルスワクチンの接種を巡り、愛知県西尾市の副市長が、スギ薬局を展開する「スギホールディングス」の会長夫妻の予約枠を優先確保するよう、市の担当部署に指示していたらしい。
 副市長は「夫妻は市への貢献度も大きく、忙しいお2人なので担当部署に依頼した」と説明。
 市は夫妻の予約を取り消した。
 会長夫妻は既に接種会場に向かう途中だったが、連絡して引き返してもらったという。
 
 4月初旬ごろ、スギHDの社員から市健康課に「夫妻がいち早くワクチンを打てないか」と相談があった。
 杉浦夫妻が薬剤師で医療従事者に当たると主張。
 しかし、市の担当者は拒否。
 その後も、何度も依頼が繰り返される中、副市長のところにまで話が届き、今回の予約枠の優先確保となったようだ。
 この話が、なぜか事前にマスコミに知られるところとなり、西尾市長の謝罪会見となった。
 スギ薬局側は、「市に問い合わせは何度かしたが、便宜を図ってもらうよう依頼したことは一切ない」とコメントしている。

 このニュースで、ダメージを受けたのは、西尾市ではなく、スギ薬局だ。
 スギ薬局の会長夫妻がどのような意図で市に問い合わせをしたのかは、容易に想像できる。
 会長夫妻は地元の有名な名士であり、地域経済にも多大な貢献をしている。
 市側が会長夫妻から依頼を受けて、形式上のルールを盾に拒否し続けるのは難しい。
 会長夫妻の方も、「自分らを、その他一般の年寄りと一緒の行列に並ばせるつもりか」との思いがあったかもしれない。
 このような会長夫妻の思い上がった心根が透けて見えてしまうために、非常に印象が悪い。 
 このニュースは、各局の全国放送で報道されており、スギ薬局側のイメージの棄損は甚だしい。

 不思議なのは、なぜこの話が事前に発覚したのか、だ。
 市役所内部からのリークであるのは間違いない。
 もしかしたら、市長自らが公表に踏み切ったのではないか。
 これが、接種が終わってから発覚した場合は、市側のダメージの方が大きくなる。
 一部の市民だけ特別扱いした事実は否定できず、取り返しのつかない事態になりかねない。
 事前に止めるにはどうするか。
 市長自らが会長夫妻に連絡して遠慮していただくしかない。
 だが、市長にとって、地元の名士を敵に回すほど怖いことはない。
 残る道は、事前に事実を公表し、謝罪会見を開くこと。
 市長はカメラの前で深々と頭を下げたが、ほとんどダメージを受けていない。
 便宜を図った副市長も、自らの愚かさを責めて謝罪したが、処分を受けることはないだろう。
 実は、市長と副市長は、自分らが頭を下げることで、会長夫妻の身勝手な行動を非難しているのだ。

 スギ薬局広報部のコメントは、まずい。
 批判の矛先が我が身に向いていることに気づいていない。
 スギ薬局は一般消費者相手の商売なのだから、一般の人々のイメージダウンは極力避けなければいけない。
 医薬を扱っている商売であれば、なおさらだ。
 コメントは、まずは「お騒がせして申し訳ない」という言葉から始まるべきだった。
 そのあと、「市に問い合わせを入れたことは事実だが、便宜を図ってもらう意図はなかった」と続ける。
 そして、「ワクチンが市民にいきわたり、1日でも早くコロナが終息することを願っている」と結べば完璧だった。
 
 
posted by 平野喜久 at 19:18| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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