2021年08月30日

若者はコロナリスクに無頓着という先入観

 東京都では、渋谷で若者向けのワクチン接種会場を設けたところ、予想以上の人が集まってしまい、混乱を引き起こしていた。
 都の担当者が「こんなに集まるとは思っていなかった」と驚いているという。
 当初の目論見は、街中を出歩いている若者を接種センターに誘い込んで、少しでもワクチンを打ってもらおうということだった。
 渋谷の目立つところに設置することで、話題にもなり、その様子を見せることで、啓発活動にもなると思っていたようだ。
 この目論見の前提には、「若者はコロナなど気にしておらず、ワクチンにも消極的」とのイメージがあった。
 このイメージは、マスコミ報道で作られた虚構だった。
 テレビの報道番組では、街中の人出が減っていない報道とともに、渋谷の人込みを映し、ついでに出歩いている若者にインタビューを試みている。
 人込みを歩いている若者に聞いているので、その答えはたいていコロナに無頓着なものが多い。
 「若者は感染しても重症化しないみたいだから、大丈夫かな・・・」
 「緊急事態宣言が出ても、何も変わらないし・・・」
 「ワクチンはなんか怖いって話を聞くし・・・」
 こんな調子で、「無頓着な若者が不用意な行動をするために、感染が拡大している」という先入観に基づいて報道取材が行われており、報道内容はそのイメージに沿った内容になる。
 都の担当者は、マスコミ報道に引きずられ、無頓着な若者にワクチンを打たせるかと考えてしまったようだ。

 だが、実際は、若者の多くはコロナリスクを恐れており、一刻も早くワクチンを打ちたがっていた。
 ただ、中高年を優先に接種が進んでいるために、若者にまで順番が回ってきておらず、打ちたくても打てないのが実情だ。
 地元自治体で接種しようとしても、予約希望が殺到して、予約を取ることはおろか、ウェブサイトにアクセスすることすらできない日々が続いている。
 予約なしでも摂取できるという渋谷の接種センターに、ワクチン難民の若者が殺到するのは当たり前だった。

 テレビ報道では、街中の人出について取り上げるときに、渋谷のスクランブル交差点が映し出されることが多い。
 その意図は、緊急事態宣言なのに人出が減っていない、と言いたいのだ。
 だが、実際のデータを見てみると、渋谷スクランブル交差点の人出は、コロナ前に比べて半分以下に減っている。
 いまでもずいぶん人出が多いように見えるが、コロナ前はこの倍以上の人込みだったのだ。
 既に半分以下に抑えられているのに、更に人出を減らせとは無謀な要求だ。
 デルタ株に置き換わって、感染の現場は、街中や飲食店ではなく、家庭内や職場が主流になってきている。
 いまのコロナリスクは、従来とは違うステージにあることをまず認識する必要がある。
 
 
posted by 平野喜久 at 10:20| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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