2021年11月16日

新型コロナ3つの防波堤理論

 フランスのテレビ報道による。
 いまヨーロッパでは過去最大の感染拡大を起こしている国が散見される。
 ところが、すべての国が同じ状況ではなく、国によっては感染拡大を抑えられているところもある。
 2極分化している印象だ。
 その理由を、フランスのニュース番組で解説員が説明していた。

 いまフランスでは感染状況がひところと比べると落ち着いてきてはいるが、依然として1日1万人以上の感染者を出している。
 それでも政府が危機感を抱いていないのは、入院患者が過去7日間で6%増に抑えられているからだ。
 その理由は、フランスでは3つの防波堤が働いているからだという。
 1つは、ワクチン接種の進捗率。
 フランスでは接種率は77%に達しようとしており、周辺諸国の中ではかなり高い。
 2つ目は、予防措置のレベル。
 フランスでは、引き続き感染防止の措置がヨーロッパの中で比較的高いレベルで維持されている。
 3つ目は、罹患経験者の数。
 フランスでは、ここまでにコロナに罹患し回復した人が多く、その人たちは自然免疫を獲得している。
 これら3つの防波堤のおかげでフランスは重症患者を一定レベルに抑えることができているという解説だった。

 この理論は、ほかの国にも当てはめることができる。
 スペインでは、ワクチン接種率が82%と非常に高い。
 そのために、感染防止措置をかなり緩和していても、状況をコントロールできている。
 オランダでは、ワクチン接種率はフランスと同等なのに、感染防止措置を緩和してしまったために感染拡大が起きている。
 ギリシャは、感染防止措置は非常に厳しいのに、ワクチン接種率が66%と低く、そのために状況をコントロールするための防波堤が十分機能していない。
 ドイツやイギリスで感染拡大が収まらないのも、同じ理屈で説明できそうだ。

 この仮説を日本の状況に当てはめるとどうなるか。
 日本では、15日の新規陽性者数は79人。
 ヨーロッパの国々に比べると、桁が2つも3つも違う。
 ワクチン接種率は75%を超えた。
 スペインほどではないが、他の国に比べるとかなり高い。
 感染防止措置については、緊急事態宣言中に比べると緩和されてきているが、人々の基本的な感染防止行動は変わっていない。
 街中を行き来する人はみなマスクをしている。
 施設や店舗に入る際には、アルコール消毒をするようになっている。
 ソーシャルディスタンスは今でも気遣われている。
 1つめと2つめの防波堤は十分だ。
 ただ3つ目の防波堤、罹患経験者の数はヨーロッパの国々に比べると圧倒的に少ない。
 すると、日本では1つ目と2つ目の防波堤だけで、ほとんど収束レベルにまで抑え込むことができているということになる。
 この仮説で、各国の感染状況の違いをある程度は説明できそうで、興味深い考え方だ。
 だが、日本だけが極端に低いレベルに抑え込まれている理由は、これだけでは足りなそうだ。
 
 政府は、3回目のワクチン接種を8か月から前倒しして、6か月で摂取できるように準備を進めているようだ。
 医療関係者の接種を12月から始めるという。
 この冬を万全の態勢で乗り切りたいからだろう。
 日本政府はまだまだ警戒感を緩めていない。
 国民の感情も同じだろう。
 もうひと冬を我慢してやり過ごし、何事もなく春を迎えることができれば、成功ということになる。
 政府は、このような見通しや、今回のワクチン措置の狙いなどを国民に伝えればいいのに、それをしない。
 前政権も、説明不足が指摘されていた。
 それは総理の口下手のせいだといわれていたが、新総理になっても状況は同じだ。
 
 
posted by 平野喜久 at 09:31| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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