持続化給付金の不正受給の摘発が相次いでいる。
家族ぐるみで計約9億6千万円もの持続化給付金の不正受給にかかわったとして、住居不詳の谷口光弘容疑者(47)が詐欺容疑で指名手配され、谷口容疑者の元妻と長男、次男が逮捕された。
17歳の少年を個人事業主と偽り、新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金を詐取したとして、詐欺の疑いで、東京国税局職員の塚本晃平容疑者(24)=横浜市旭区=ら7人を逮捕した。
家族ぐるみで10億円もの不正受給にかかわっていたり、国税局の現役職員が不正受給に手を貸していたりと、信じられないことが起きている。
もともと、この持続化給付金の制度は、迅速給付を優先し、要件審査は極力簡略化して制度設計されていた。
そのために、偽装申請が簡単にできてしまい、当初から、不正を誘発するような制度だと指摘されてきた。
もしかしたら、申請期間の初期に、不正申請を派手に摘発して、一罰百戒で不正を抑制するような動きがあるかと期待したが、まったくそのような様子は見られず、ひたすら迅速給付ばかりが優先されていた。
その結果、不正受給に一度成功した犯罪者は、「簡単にカネが手に入る」と味を占め、大々的な不正受給にいそしむことになった。
大々的な不正受給に携わって逮捕された者が共通して述べているのは、「詐欺だとの認識はなった」ということだ。
これはどういうことかというと、本人が何度も不正申請を繰り返して給付金を詐取するという方法をとっていないことによる。
彼らは、あくまでも指南役。
学生や主婦をそそのかして不正受給させ、手数料を受け取っていた。
だから、自分は詐欺を行なっているという認識がなくなっていたのだ。
捕まるとしても、不正受給した学生や主婦らであり、自分らは言い逃れができると踏んでいたのかもしれない。
中小企業庁によると、要件を満たさなかったとして給付金の受給者が自主返還を申し出た件数は5月26日時点で約2万2千件。
このうち約1万5千件についてすでに返還があり、その総額は約166億円に上っている。
自主返還があった場合には警察への通報や被害相談はしていないという。
経済産業省は、不正受給者の公表に踏み切った。
自主返還に応じていない者について、その氏名、法人名、住所がウェブ上で公開されている。
自主返還といっても、もらったカネをそのまま返せば済むというわけではなく、20%の加算金及び年率3%の延滞金がプラスされる。
指南役にそそのかされて不正受給してしまっている場合は、指南役への手数料を払っているはずなので、その分も過剰負担することになる。
自主返還に応じた者は、罪に問われることはないが、不正の代償は大きかった。
本来は、不正受給した時点で、犯罪が成立しており、返金したから罪が免除されるということはありえない。
だが、今回は、審査要件が緩すぎるために軽い気持ちで不正受給してしまっている事例が多いこと、そそのかされて不正受給してしまった事例もあることから、「間違って受給してしまった場合は、自主返還すれば罪に問わない」という形式をとっている。
犯罪の摘発よりも、給付金の回収を優先したということだろう。
だが、指南役として不正受給をそそのかし、手数料で荒稼ぎしていた犯罪集団は、自主返還で罪を免れるという方法がない。
今後も摘発は続く。
自主返還に応じた者らから、指南役の情報がもたらされ、その結果、摘発が相次いでいるのが実態だ。
2022年06月02日
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