ビッグモーターの創業者社長がようやく謝罪会見を行なった。
予想されたことではあるが、とても謝罪会見とは言えないひどいものだった。
過去、ひどい謝罪会見はたくさんあるが、船場吉兆、ミートホープに続くトップスリーに含まれる。
ビッグモーターは中古車販売の大手。CMを大量に流しており知名度も高い。
不正問題は、2022年初めに発覚したが、ビッグモーターは当初、不正ではなく過失によるものだと主張していた。
しかし、外部の弁護士が行った調査報告書によると、ビッグモーターの全国33工場すべてで水増し請求の疑義があり、本社サイドが過度な営業ノルマを課していたことが明らかとなる。
社長が1年間の報酬を受け取らないという発表をした以外、これまで何の動きもなかった。
嵐が過ぎ去るのを待てば、やり過ごせると考えていたのか。
ところが、動きが鈍かったマスコミが報道し始めたために様子が変わってきた。
世論が沸騰し、それに応じて、国交省、経産省、金融庁までも調査に動き出すに及んで、事態がどんどんひどくなっていく。
たまりかねたか、25日になってようやく社長自らの謝罪会見となった。
会見の趣旨は、創業者社長と息子の副社長が26日付で引責辞任する、不正は板金塗装部門が勝手にやったことで幹部は知らなかった、というもの。
全国33工場のすべてで不正請求の疑義が出ている中、経営トップが知らなかったで逃げ切ろうとする神経のずぶとさに驚く。
記者が今回の不正の内容について具体的に質問するが、発言は第三者のコメンテーターのような回答に終始した。
「驚いている」「許せない」「普通はやりませんよね」などとまったく当事者意識が欠落していた。
時々、表情が半笑いになってしまうのは、自分を第三者の立場において「私もあきれ返っている」という姿勢を見せているのだろう。
極めつけは、ゴルフボールを靴下に入れて車体に傷をつけていたことに対し、「ゴルフを愛する人に対する冒涜です」と頓珍漢な答え。
「そこじゃないだろう!」と全国民から突っ込みが入りそうだ。
この謝罪会見が失敗である理由は、誰に対して何を謝罪しているのか分からないからだ。
「申し訳ございません」と頭を下げたが、いったい誰に対して謝罪しているのか分からない。
わざと傷をつけた自動車の持ち主であるお客様に対してか。
保険金の不正請求をした先の保険会社に対してか。
業界の信用を失ってしまったことに対する同業者への謝罪か。
事業者にとって最も大事なのはお客様のはずだが、この社長にはお客様の信頼を裏切ってしまったことへの申し訳ない気持ちがまったく見られない。
「ゴルフを愛する人に対する冒涜です」という答えになるのは、この社長にとって、お客様よりもゴルフの方が大事だという認識が無意識に出てしまったのだろう。
経営トップに座り、売上の向上ばかりを意識し、現場でお客様に向き合うことを忘れてしまっているようだ。
これが上場企業だったら、社長辞任だけでは終わらず、株主代表訴訟で、旧経営陣は損害賠償で身ぐるみ剝がされる。
この場合、「知らなかった」は許されない。
本当に知らなかったとしたら、それは知っていて見過ごしていたよりも責任が重大と判断される。
だが、非上場企業であり、株式は創業者一族で独占しているので、株主代表訴訟は起きない。
店舗前の街路樹に除草剤を撒き、葉を枯らして店の看板が道路から見えやすくするようなこともしていたようだ。
ビッグモーターの経営姿勢は、根本から腐っていたというほかない。
まだ、その全容は明らかになっていない。
今後の調査で少しずつ実態が判明していく。
ビッグモーターは、このまま事業継続は無理だ。
従業員の雇用を守るためには、同業者に吸収合併してもらうしかない。
その時、創業者一族が保有している株式は無償譲渡とならざるを得ない。
合併した側は、組織改革を行い、従業員教育をやり直し、お客様の信頼回復を目指さなくてはならない。
無償でも高い買い物になりそうだ。
2023年07月26日
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