2024年05月08日

生成AIと著作権の悲劇

 生成AIの隆盛で、著作権の問題がクローズアップされている。
 AIはネット上の画像や文章を勝手に使って新たなコンテンツを生成するので、著作権侵害が簡単に起きてしまう。
 
 生成AIが作成したニュース記事をアップしたサイトが、あるメディアに著作権侵害で訴えられたことがある。
 なぜ著作権侵害になったかというと、元の記事は非常にオリジナリティの高い内容を含んでおり、他のメディアに同じ情報がアップされるのはおかしいことが明らかだったからだ。
 サイト運営者は、著作権を侵害しているという認識すらなかったようだ。
 AIに勝手に記事を作成させていただけで、どこから情報を得てきたか知らなかった。
 だが、そのことで知らぬ間に著作権侵害をしてしまっていたことになる。

 著作権は、表現を守る権利だ。
 つまり、文章や映像をそのままコピーして他に利用したら権利侵害となる。
 しかし、オリジナルの内容を別の言葉と表現で発表した場合は、著作権の侵害にはならない。
 著作権法は表現を守る法律であり、その内容やアイデアまで特定の権利者に独占させようとしていない。

 問題になったAIによるニュース記事は、オリジナル記事の表現がそのまま使われている箇所がいくつかあったために、著作権侵害を訴えられた。
 だったら、表現を一新し、同じ内容をまったく別の文章で再現したらどうか。
 これを著作権侵害で訴えるのは難しいだろう。
 となると、剽窃とか盗作とか模倣で訴えるしかない。
 しかし、訴える側がこれを証明するのはハードルが高い。

 生成AIが普及することで心配されるのは、これだ。
 オリジナルコンテンツを勝手に利用され、好き勝手に改変され、別のコンテンツとして発表される。
 著作権侵害だったら、まだわかりやすく話は早い。
 これが剽窃、盗作、模倣、参照というレベルの利用だったら、どこまでオリジナルコンテンツの権利を主張できるか。
 しかも、権利侵害しているのはAIであり、AIを利用して新しいコンテンツを作ろうとしている人は、権利侵害している意識すらない。
 罪の意識なく、勝手に他人の権利侵害が横行することになる。
 更に、問題なのは、ネット上によく似たコンテンツが複数存在した時、どれがオリジナルなのか分からなくなること。
 AIによる生成画像の方がオリジナルより完成度が高いという現象は簡単に起きる。
 AIならいろんな画像からいいとこどりできるからだ。
 そうなると、オリジナルが必ずしも価値があると評価されなくなる。
 むしろAI画像の方が美しいと好まれるかもしれない。
 すると、AI画像が本物であり、オリジナルは劣化コピーと認識されかねない。
 これは悲劇だ。

 今後は、ネット上にAIコンテンツがあふれかえる事態が訪れる。
 ネット上で見る画像はAI画像。
 ネット上で読む文章もAI文章。
 すると、新たに生成AIが作り上げるコンテンツも、ネット上にあふれかえるAIコンテンツを基に作られていくことになる。
 いまは、人間が作った文章や画像を基にAIがコンテンツを作っている。
 ところが、今後は、AIが作ったコンテンツを基に、更にAIが新しいコンテンツを再生産する。
 AI技術の進展でコンテンツレベルはどんどん高くなる。
 AIコンテンツだけで自己完結する世界の誕生だ。
 ネット上では、人が作るようなオリジナルコンテンツはどんどん出番がなくなり、脇に追いやられる事態が起きるのだろうか。

 
posted by 平野喜久 at 13:51| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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