政府の地震調査委員会は26日、南海トラフ地震の発生確率について、算出法を見直し発表。
複数の計算方法を採用し、今後は「60〜90%程度以上」または「20〜50%」と併記する。
いままでは、30年以内に80%程度とされてきた。
これは今年の1月に改訂発表されたばかり。
とことが、この数字は研究者から異論が出されていた。
それを踏まえて、今回の見直しとなったようだ。
地震学はまだ確立した学問ではなく、研究者の数だけ仮説が存在すると言われる。
いままでは、ある仮説に基づいた計算により80%という数字が採用され、国が公表していた。
当然、その仮説に否定的な研究者もおり、1つの仮説ばかりが一般に流布されることに異を唱える。
どの計算方法が正しいかは決着がつかず、2種類の算出方法で計算した確率を併記するという異例の措置となった。
さて、問題は、「いったい、国民はどの数字で認識すればいいのか」ということだ。
20%と90%では話がまったく違う。
降水確率が「20%」と「90%」では、今日の行動計画が変わってくるのと同じだ。
20%程度だから大げさに慌てる必要はないということか。
それとも、90%以上だから備えを急げということか。
いままでは、80%という数字が、全国民が同じ危機意識で防災に取り組むベースになっていた。
ところが、今後は共通認識が得られなくなった。
ある人は、20%と認識し、ある人は90%と認識する。
この両者が話し合っても、結論が出しにくくなる。
「そんなに慌てる必要はない」という人と、「急がないと間に合わない」という人が話し合って、簡単に合意に至るわけがないからだ。
せっかく、80%という共通認識を得て、各自治体、各企業、各個人が対策を進めているときに、その流れに水を差すような今回の発表だった。
今回、2種類の数字を公表するが、国としては60%〜90%以上の方を強調して呼びかけるという。
国民の危機意識を鈍らせるような呼びかけはできないという政策的判断だ。
科学的判断と政策的判断は違って当たり前。
政策的判断を優先するのであれば、従来の80%という数字のままでよかったのではないか。
今回の発表は、科学論争に国民を巻き込むものであり、混乱を引き起こすだけだ。
中には、「国から多額の研究費を獲得するためにわざと大げさな発生確率を強調している」という言説も見られ、こうなると研究者仲間での足の引っ張り合いに見える。
研究者は科学の領域で大いに議論を続けるべきだが、その論争に国民が巻き込まれるのは迷惑でしかない。
ところで、確率の正しさはどのように検証するのか。
例えば、降水確率20%と90%という2つの予報があったとしよう。
結果として雨が降らなかったとすると、さて、どちらの予報が当たりだったと評価されるか。
20%があたりで90%がはずれか。
そうはならない。
確率予想は結果からどちらが正しかったかを評価することはできない。
明らかにハズレと判断されるのは、100%の降水確率で雨が降らなかった場合か、0%で雨が降った場合だけだ。
こうしてみると、南海トラフ地震の発生確率をめぐる科学論議は、国民にとってほとんど意味がない。
20%であろうが、90%であろうが、巨大地震が間近に迫っていることに違いはなく、備えを怠ることはできないという認識で進めて行くしかない。
2025年09月28日
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