BCPに取り組んでいるというだけでも、特に意識の高い経営者であることが分かる。
非常に期待した。
内容はややがっかり。
やっていることは、防災対策にすぎなかったからだ。
ガラスに飛散防止フィルムを張る。
緊急地震速報装置を設置。
データのバックアップ。
もちろん、これらは重要な対策である。
これらに取り組んでいるだけでも先進的だ。
しかし、これらは、防災対策ではあっても、BCPではない。
BCPは、企業の存続を目的に対策することだ。
全社的な視野で、高度な経営判断が求められる。
ガラスが飛び散らないことよりも、まずどの事業を最優先で守り復旧させるのか、の方が重要なのだ。
では、なぜ、BCPが企業防災の範囲でとどまってしまっているのか。
1つは、高度な経営戦略の問題より、目先のガラスの飛散防止の方が取り組みやすいからだ。
防災対策は、少しずつでもできることからやっていきましょうというのが通例だ。
大上段に構えた大きな問題は何から手をつけていいかわからないし、時間がかかる。
画一的な解決策がないというのも取り組みにくさを助長する。
経営者は忙しく、総務の担当者に丸投げ。
それで、どうしても手近なころから、ということになる。
末端の些細な対策ばかりに目が向いて、根本的な対策にはいつまでも手がつけられない。
2つは、防災関連業者の売り込みだ。
飛散防止フィルム、転倒防止装置、緊急地震速報装置、データバックアップシステム、建物耐震化工事、地震関連の金融商品など、BCPに便乗した業者の売り込みが激しい。
業者は、「地震が来たら大変ですよ」と不安感をあおって商品を売り込む。
彼らは、自分の商品が売れることが目的。
自社商品に関連した地震リスクには目を向けるが、それ以外は無視するか、知識がない。
BCPはきっかけづくりの営業ツールにすぎない。
そもそも、BCPとは企業の地震対策のことだと思い込んでいる業者もあり、悪意がないだけ始末が悪い。
BCPの普及はぜひとも必要だが、防災対策が今風に名前を変えただけといった認識が定着してしまうことを心配する。